人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カーマ「簡潔に補足を。小説の保存、というか変換出力は小説目次の『PDF』という所で出来ますよ。そこでパソコンに保管するなりして、確保する事をお勧めします」

「──さて、このまま新しい紹介にいきましょうか。では、そうですね・・・たまには趣向を変えて・・・マハーバーラタの苦労人、カルナさんを紹介しましょうか。長いので、休日跨ぎになります。お付き合いください」



カルナさんはマハーバーラタ、叙事詩の倒される側の英雄です。不幸、とにかく不幸です。順を追って説明しますね

クンティー、という女性がいました。王に寄り添う方でしたのですが、その王は呪いにより、子を残せなかったのです。と言うわけで、それぞれの后がそれぞれの手段で子を成すしか無かったのです。クンティーも例に漏れず、ですよ

そして彼女は自分が存じていたマントラを使い、神様を呼び出す儀式を行いました。・・・ですが、クンティーはやや頭が弱く奔放で、そのマントラがどのような意味を持っているか理解していませんでした。ここで呼び出されるのが太陽の神、スーリヤなのですが・・・

『大変申し訳無いのだが、そのマントラは『呼び出した神と子を成す』というものだ。大変すまないが、覆す事は叶いそうにない』

そう、これは子作りのマントラだったのです。大層驚いたクンティーは、拒否できぬと悟り『この子が愛されているという証がほしい』とスーリヤに願いました。そして託されたのが、肉体と一体化した光の鎧、カルナさんの代名詞ですね

こうまで祝福されたカルナさんをクンティーは・・・

河に流しました。だって望んで作った子じゃありませんし。王族に生まれる筈だったカルナさんは、なんとカースト最下層の御者に拾われ、最悪の生を受けるのでした──



「序の口、序の口ですよ。こんなもの。カルナさんの人生は不幸な事しかありません。それでは、またおあいしましょう」


ジェネラル・コンタクト・パニッシュ・ハート

『お、ようやく到着か。ったく、待ちくたびれたっつーの。お前らアレだろ?鈴鹿の心をバキバキにしに来たんだろ?よし、ちゃっちゃとやってやれ。あの無理してウェーイ系演じてるぶっちゃけイタい姫様をシメてやってくれや』

 

──心の内、遥かどこまでも下に落ち行く黒と桜のコースター。乙女の心に潜入する狼藉と突破口を果たした藤丸に語りかける者はそう語った。精悍かつ引き締まった総ての女性を魅了するような絶世の美貌に、砕けた口調にて話し掛けしその存在はなんと、『さっさと鈴鹿をシバけ』と伝えてきたのである。落下する速度と浮遊感に負けじと、藤丸がその所在と在り方を問う

 

「こんにちは!藤丸立香です!すみません、どちら様でしょうか!」

 

『あー、オレか。オレはあれだ、田村麻呂。つっても・・・コイツが思い描く理想の男のカタチが喋ってるだけで別にモノホンじゃねぇぞ。勘違いしてくれんなよ』

 

田村麻呂──坂上田村麻呂。征夷大将軍にして、鈴鹿御前と愛し合い、そして悲恋のままに鈴鹿もろとも大鬼、大獄丸を葬った日本の大英雄。彼女からしてみれば理想の男子であることに全く異論はなく、また納得の人選ではあるが・・・

 

『オレはあれだ。イマジナリ・パートナーってやつだ。心の軋みや葛藤を都合よく肯定してくれる脳内カレシってヤツだ。だからオレは鈴鹿のヤツに都合のいい返事しか返せねぇ。『だよね!』『やっぱり!』とか言って空元気を出しやがるがすぐに鬱に戻りやがる。当たりめぇだろ、妄想で悩みが解決できりゃ苦労はしねぇ。阿片吸ってんのと何も変わらねぇだろが』

 

だからオレでは無理だと言う。都合のいい肯定しか返せないから、決定的な痛打は落とせない。いつまでも自己嫌悪でウジウジしているヤツを何とかしてやってくれと、こうして待っていたのだと

 

『なんならお前がアイツを奪ってやっても構わねぇ。いつまでも過去にしがみついてんな、オレに惚れろ!くらい言ってもいーんだぜ』

 

「いやいやいやいや畏れ多いです!オレにはとても・・・で、ではその鈴鹿さまは何処に・・・?」

 

おそるおそる藤丸が聞くと、深紅のマフラーに大刀を構えた坂上は顎で背後を指し示す。其処には・・・

 

「うぁ~~~~・・・・・・私は一体何をしているのか・・・生き恥。これを生き恥というのだ、うぁ~~・・・」

 

天女のような出で立ちで、ぐったりと机に突っ伏している美女が一人。・・・ひょっとして、アレが・・・

 

『おうよ。我等が鈴鹿姫サマだ。アイツ、キャピキャピのJK演じてんのはいいが生来の真面目さと思慮深さが災いしてよ、『何アホな事やってんだ自分、鬱だ・・・死のう』みたいな事にずっとなってんだよ。心に隠してるけどな』

 

「あ・・・無理してる自覚を隠して明るく振る舞うタイプ・・・」

 

『おまけにテメェの出生も『鬼の娘とか悲恋負けヒロイン役満じゃん・・・勝ち目ゼロじゃん・・・』ってなってやがって自己嫌悪に拍車かけてやがる。生まれなんぞ気にしてもどうにもならんだろが。まぁ、生真面目すぎてドツボってヤツだな』

 

 

バカじゃね?と言いたいけれど言えない。『おう』『せやな』としか返せないのだ。心のカレにはせめて全肯定していてもらいたいから、という意地らしく彼にとっては傍迷惑な理由のお陰である

 

「はぁ・・・解っている。解っているのだ。人に惚れ、恋をする異種など所詮は異端であり夢に終わるものだと。鶴しかり、狐しかり。人と鬼然り。人は未知なるものを受け入れられるようには出来ていない。例え寄り添った所で報われる事はない。──でも、それでも・・・」

 

『テメェは諦められないんだろ。『今度こそ絶対完璧に可愛い自分になって、自分だけのカレシをゲットして幸せになってみせる!』って夢がよ』

 

「・・・うぅ。あけすけに物を言う。笑いたくば笑え、天魔の姫、第四天の娘と言えどこんなものだ。──いや、最も解せず愚かなのは・・・」

 

『似合わないJKムーブを恥ずかしげもなく行っている自分自身だ』と突っ伏してしまう。才知に溢れ、理知に満ちた彼女の本心は、表層の自分を冷静に評価しているのである。『黒歴史確定じゃん』と。そんな彼女を適当に坂上が慰め、立ち直りかけてはでもなぁとへなへな自己嫌悪のウジウジ。帰りてぇと思ってもイマジナリなので自害も出来ずに困り果てた坂上は告げる

 

『よし、さっさとアレをブッ壊してやれ。気にすんな。肉体には傷ひとつつかねぇよ。いっちょグーパンかましてやれ』

 

「で、でもどうやって・・・!?」

 

『決まってんだろ、『否定』か『発破』だ。正解はねぇが問題ねぇ、好きに言ってみろ。安心しな、地雷なら庇ってやるからよ』

 

ほとんど丸投げに近い注文に困惑するも、やるしかないので藤丸はぐっと全身に力を込める。ここは精神の空間。あの本体をなんとかしなくてはどのみち突破は叶わない。やるしかないのなら──

 

「──この・・・!」

 

「──?」

 

「──アンニュイ系才色兼備委員長!!!」

 

「なぁっ──!?」

 

思った事を口にし、心を揺さぶる事こそが最適解。とりあえず印象を叩き付けてみればそれがクリティカルだったのか、ずるりと椅子から鈴鹿は転げ落ちる

 

「な、な、何をいきなり言い出すのだ!それより貴様は何者か!どこから入った!?」

 

『鍵開けて真っ正面からに決まってんだろ。カウンセラーだ喜びやがれ』

 

「何故排除せぬのか!?し、しかし・・・アンニュイとは・・・才色兼備もついて狼藉なのか称賛なのか微妙に判断に困る・・・」

 

戸惑い、迷う間にもパニッシュは続く。藤丸が思った事が鈴鹿にとって効果があれば、それは凄まじいダメージとなるのだ

 

「キャピキャピなキャラしてるくせに純情気質で、でもそんな自分のキャラがなんだかなーとドツボにはまってるインテリ姫!」

 

「く、ぐっ・・・!事実と罵倒をこやつ、的確に・・・!」

 

「理想の相手が見つかればいいなと思ってるし骨抜きにできると思ってるけど、いざ目の前にしたら誠心誠意尽くそうと誓っちゃう系女子!」

 

ビシビシと揺れるコースター内。鈴鹿の心がダメージを受けている証拠である。坂上が腹を抱えて笑い、鈴鹿が困惑を露にしながら逃げることも出来ずにいる。ここは、彼女の心の中なのだから

 

「ところで鈴鹿さま!キャラが違うのでは!?」

 

「JKが作りのキャラだと言っておろうが!此方が素なのだ!素!」

 

「そうですか!嫌がっている割にノリノリですね!JK演技!」

 

「くぁあぁっ──!だ、だってやるなら本気じゃないと身に付かないし・・・!」

 

 

『わははははは!言え言えどんどん言え!心の澱みをとっぱらっちまえ!』

 

味方する気ゼロな坂上を憎々しげに睨む鈴鹿であるが、同時に辺りに満ちていたダウナーな気配が消えていく。彼女の溜め込んでいた想いを、抉り出される形で突きつけられているが故に『スッキリしている』

 

「そ、そうよ・・・!私、スゴいバカな事をしている!慣れないJKなんぞを真似し、出逢えるかも知れぬ新たな伴侶の為に己を磨く!──報われぬと、解っていながら!」

 

『・・・──』

 

「だが、それでも止められぬ、止められぬのだ!何故なら、何故ならば・・・!『今度こそ、愛するものと共に幸せになりたい』!それが私の願いなのだ!それを、それを間違っていると・・・貴様はこんなところまで告げに来たのか、人間・・・!」

 

悲恋に終わろうと、決して報われなかろうと。それでも追い求めたいのだ。幸せになりたいのだ。家庭を築き、共に生きる。そんな細やかな幸せこそが、私が求めるものなのだ

 

心に踏み込んでまで、私を否定するのか。幸せになりたいという願いを、お前は否定するのか──。先の願いの重さを肌で感じながら、藤丸は最後の〆を口にする

 

「──だったらまずは!自分を信じてみましょう!!」

 

「!?」

 

「だって貴女の魅力を、愛する人に伝えたい魅力を!貴女自身が信じていないじゃないですか!!」

 

「──────、それは・・・」

 

『おう、それだ。──バカ野郎が。『私こんなことしてもなー』とか半端なキモチでやる花嫁修行なんぞ、実るわけねぇだろ』

 

ようやく心の枷から解き放たれた坂上が呆れながら告げる。あまりにも生真面目すぎて、賢しすぎでドツボになっていた・・・最愛の女へのアドバイスを

 

『まずはな、テメェがテメェを好きになれって。男を惚れさせんのは厚い化粧か?上っ面の均整か?──ちげぇだろ。テメェの魅力(おんな)だろうが。違うか!鈴鹿!』

 

「・・・・・・、ちが、わない・・・」

 

『んなノリでオレより魅力的な男を落とせんのか!マジでイケると思ってんのか!征夷大将軍嘗めんな!』

 

「おも、わない・・・別に嘗めてはいない・・・」

 

『よし、言ってやれ少年!このバカへの手向け代わりだ!』

 

屈服寸前の鈴鹿の心。その最期のだめ押しとして──

 

「──『魅力が無いから頑張る』のではなく、『より魅力的になるため』に頑張ってください!だって、鈴鹿様は今も十分可愛いと思います!」

 

「──!」

 

「よろしければ、自分にもお手伝いさせてもらえたら!いつか、理想の彼氏が見つかる日まで!」

 

・・・──その言葉をもって、勝負は決する。鈴鹿にとって、最早戦う意義すらも無くなったのだ

 

「・・・今も十分可愛い・・・。・・・そうか・・・そうかぁ・・・」

 

『おう、もうテメェのネガティブキャンペーンは止めろよな。世界で一番の女!くらい言ってみろ。何せ──オレが惚れた女なんだからよ』

 

「・・・、・・・うん・・・」

 

『・・・わりぃな、犬も食わねぇもん見せちまってよ。──だがよ、その甲斐あって・・・』

 

同時に、ふわりと浮き上がる藤丸の身体。光と、浮遊感が広がっていき──

 

『・・・あんたらの勝ちだ。向こうのコイツを、よろしく頼むわ。めんどくせぇが、いい女なのはオレが保証するぜ。征夷大将軍、御墨付きってな』

 

元の世界に帰る藤丸を、鈴鹿の頭を撫でながら。坂上田村麻呂は、少年のような笑顔で見送るのだった──

 




藤丸「──はっ・・・!?」

メルトリリス「起きたわね。・・・よくやったわ、マスター。終わったみたいよ」

鈴鹿「見られた──私の心の中、見られちゃった・・・」

はくのん『やったぜ』

リッカ【ないすぅ】

「よし、死ぬわ。ちょうど崖もあるし身を投げて逝くわ、私」

【待たれぃ】

「あいったぁー!?いきなり飛びかかってくるにはゴツゴツし過ぎだしぃ!?」

キャット「止めるに決まっていよう!というか何故退去しかけている!?身体にダメージはないはずでは!?」

「そりゃ消えるでしょ!?脳内カレシ見られたら無理っしょ!?JKは心も体も大事なの!どっちか砕かれたら消えるしかないの!・・・それに、きっと負けてた。何処にもいないなんて泣き言言って、マスターのカタキを討たなかった時点でさ」

藤丸「なら、今から勝とう!」

「!?」

「一緒に勝って、今度こそマスターの敵を討つんだ!力を貸してほしい!身投げよくない!」

「・・・・・・・・・しつこいのやくどいと弄られるかもだけど・・・まぁ、仕方ないか!勝者がそう言うならね!じゃ──セイバー!鈴鹿御前!付き合ってやろうじゃん!」

メルトリリス「・・・仲間が、戦力が増えるのは良いことね。──そして、鈴鹿御前がこちらについた以上・・・」

はくのん『BB』

BB『はーい!聖杯戦争の勝者が決まった今!皆様を招くことができます!それではお疲れ様でした!マトリックス同座標──『BBスタジオ』に!皆様纏めてご招待でーす!』

カーマ「・・・管理や支配って面倒くさいんですね。・・・それよりは、誰かの為を想う方が暖かいし、楽でいい」

【むにゃむにゃ・・・】

「そう思いませんか?マスター。・・・ふふっ」

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