オルガマリー「有給・・・、受理したわ。ゆっくり休みなさい」
リッカ「ん、ありがと!ちょっと海に沈む夢を見てくるね!」
オルガマリー「もっと穏やかな夢を見なさい」
「はーい!じゃ、御休みー!」
オルガマリー「──リッカ」
「?なぁに?」
「・・・必ず元気になりなさいね」
「勿論!じゃ、御休みー!」
オルガマリー「・・・」
ロマン「そんなに疲れてたのかぁ、リッカちゃん・・・これは部屋のモニターも切っておいた方がいいかもですね」
「えぇ。ついでに立ち入りも禁止にしておきましょう」
「自室でぐっすりしてくれれば・・・いや、大丈夫な筈!だって此処は楽園ですからね!」
「そうよ、・・・心配はいらないわ。だって・・・リッカだしね」
いざ、羽化せし獣の征伐へ
「取り乱して申し訳無い。こちら月の銘菓のお饅頭。御疲れの身体にスーっと効くから食べてみて」
マイルームに帰還したリッカを迎えし突然の御客様。それは月の新王、フランシスコ=ザビエルことはくのん、岸波白野であった。滅多な事では笑顔を見せない彼女の突然の来訪に驚きながらも、リッカは新王の言葉に耳を傾けんと同じテーブルに座り饅頭を頬張り合う
「御丁寧にありがとうございます!で、どったの急に。何か月の方で問題が起こった?」
レガリアを持つ月の新王、白野が手を焼く案件なら相当なものだろう。聞けば楽園の此度の来訪はギルにしか話を通していない極秘の中の極秘だという。それほどに切迫した事態など考えにくいものではあるが・・・
「──かつて月で起きた事件。それを元にして『ビースト』案件の事象が観測された。私とも、リッカ達の世界とも違う場所で獣が羽化寸前の状況になってる」
「──!」
「獣の名前は『ビーストⅢ・
真面目な話をし、全く変わらない表情にて饅頭を頬張りながら白野は説明を行う。此処ならざる世界にてやらかした、魔神の致命的な失策にて導かれたその事件を
「まず他の世界の時間神殿から逃げ出したゼパルっていう魔神柱がいた。コレは負けたあととある海上油田基地に逃げ込んで雌伏の時と人類の管理を命題に姿を隠した。その潜伏先に選んだのが・・・殺生院キアラ」
「キアラさん!?あの敏腕セラピストなあの!?」
「そのキアラ。私が知る限り、こことゼパルが潜伏したキアラしか善性のキアラは存在しなかった。そしてゼパルはキアラに取り付いて自分の命題に取り掛かるために・・・私の世界、月の記録にあるキアラをインストールした」
そのせいで善のキアラの人格は消され、月にて神に至ろうとした魔性菩薩が海上に降臨したという。それを聞かされても、正直リッカには半信半疑であった。キアラと言えばカルデアにて職員の精神的な平静やケアを担当する聖女がごとき輝きの人、そんな彼女が自分と同じような獣に、或いは神に至ろうとするとは・・・
「ちなみに神様になりたい理由は全人類を使ってハイパークリボーテクノブレイクを目指す為。キアラがビーストになるのを目指したのは地球の性感帯になってウルトラクリボーテクノブレイクを果たすため」
「ソルマック!?え、いやあの、ゼパルはどうなったの!?」
「精神体に肉体の快楽を教え込まれて『気持ちよければいい!気持ちよければいい!』とメス堕ちして最終的にキアラにゴミのように捨てられ幼児退行しながら消滅しました」
うっわぁ・・・・・・と呻くのをリッカは堪えられなかった。姫様の対話にて総てが昇華された魔神達。異なる次元から紛れたグラシャラボラス、ハーゲンティが遺してくれた魔法少女達の楽園、減らないパンケーキに比べたらあまりにも惨くあんまりな最期ではないだろうか
いやそれよりも・・・キアラさんとはそんなに獣に堕ちたら凄まじい存在であったという事実に愕然とする。自分もセラピーに参加してみた事はあるが、その自我の絶対性や悟りへの境地に至っている精神性は、自分が獣であった場合でも通用するか分からないほどの規格であったと感じている。そんな彼女が、今回はビーストだなどと・・・
「・・・・・・まずくない?」
「すっごくまずい。獣から昇華されたリッカが世界を救う最高最強のマスターに転身したように、世界を救える資質を自分のために使って堕ちたビーストⅢの力は凄まじい。実際シミュレートして、『誕生した次元のカルデアに存在する藤丸立香』は敗北、消滅させられるという結果が出ている」
その事実に更に驚愕の重ね合わせに至るリッカ。人類最後のマスターとなっているだろう藤丸が敗北する。それは即ち本当に人類の滅亡を意味するであろう事は想像に難くない。そんな事になればその世界は・・・
「・・・知らんぷりするには月のやらかしが多すぎる。だけど、私の力だけでは虚数事象編纂・・・即ち、起きた事を『無かった事』にして獣が存在しない未来を選択することしか出来ない。・・・観測された獣を討伐する、という条件付きで」
単独顕現を持つビーストは、タイムパラドックス系列の干渉を無効化する。虚数事象にて編纂するには、どう足掻いてもビーストⅢを討伐せざるを得なくなっているのだ
「私はキアラをかつて倒した身、干渉してしまえば即座に対策をとられてしまう。精々BBを派遣してキアラの権能を剥奪するのが限度。だからといってこのままではあと一押しが足りない。・・・──『藤丸立香の生還』『ビーストの討伐』、そして・・・いや、こっちはあとでいい」
だからこそ、新王直々にやってきてリッカと王に依頼をしに来たと告げる。尻拭いを共にやってもらうという情けない事になってしまっているが、それでも、ビーストの顕現は阻止しなくてはならない。完全な形で顕現すれば、人類史にどのような形で破綻をもたらされるやも分からない
「・・・リッカ、お願い。力を貸してほしい。『無かった事になる』し、『自分の世界』ですらない。誰の記憶にも残らないし、そもそも力を貸す義理もない。だけど・・・あの愛欲の獣に対して立ち向かえる人類は、二人か三人しかいない。救世主と、悟った人と・・・対話という快楽に左右されない理を持つ龍、リッカだけ」
知恵あるもの、叡智あるものではキアラには敵わない。なればこそ、獣を倒すには人の誇りを懐いた人類悪たるリッカの力がどうしても必要だという。どうしようもない菩薩の掌の虫から、喰うか喰われるかの対等の勝負が出来る。そして勝負さえ出来るのならば・・・
「・・・どうか、力を貸してほしい。世界を救うために奮闘しているマスターを助ける形で、セラフィックスに顕現してほしい。バックアップ、サポートを約束する。必ず楽園に帰還させる。──それだけでは納得できないかも知れないけれど、どうか・・・」
「うん、いいよ!待ってて、有給取ってくる!」
迷うまでもなく、白野の問いに肯定を介したリッカ。即座に了承し、力を貸すことを良しとし、立ち上がる即答ぶりに今度は白野が驚く番だった
「・・・いいの?正直に言って負け戦の敗戦処理。愉悦も何もない、胸糞悪いだけの戦いになっちゃうかもだけど・・・」
もう既にセラフィックスの内部は凄惨な事態であることが観測されている。異なる次元、ゴージャス時空でないが故に最早完全無欠の結末は絶たれ、カルデアのマスターの無事の帰還という名目しか、獣の打倒という名分しか残っていない。自分達には関係ないと告げても誰も責めない、むしろ自分のケツは自分で拭けと詰られてもおかしくは無いのだが・・・
「ん?友達の頼みの為に戦うならそれが何よりの理由でしょ?」
「・・・友達・・・」
「そ!友達!困ってる友達の力になる!女の子が命を懸ける理由なんてそれだけで充分!」
拳を鳴らしサムズアップを行う。そう、別に誰が覚えていなくとも。向かう場所が地獄でも。何も得るものが無くてもそんなものは関係無いのだ。ただ、自分が戦う理由は自分の心が望むまま、思うままに
「義を見てせざるは勇なきなり!頭を下げて御願いしてきた白野の為に、私は戦うよ!任せて、獣をブッ飛ばしてリツカ、リツカだよね?も助けて必ず帰還してみせるから!」
自分の力が必要な世界ならば、何処だろうと駆け付ける。それこそが自分が身に付けた単独顕現だと信じているから。だからこそ白野の頼みに応えてみせると。魔法少女を経験した彼女は笑うのだ。自分のために、自分が満足する結果を信じて
「・・・──ありがとう。リッカ。正直、そんなリッカだからこそ、必ずOKしてくれると思ったからこうして頼みに来たのも、ある」
「期待に応えられて何より!じゃ、行こっか。そんなに時間が無いんでしょ?」
頷き合う月の新王に人類最悪のマスター。此より行われるは海底に沈むビーストⅢの討伐、此処ならざる世界の獣を討ち果たす戦い
「よし!じゃあ有給届け出してくる!待ってて、部屋にいてね!」
「こっちのBBに虚数事象編纂は頼んである。それとBBコピーを現地に派遣してあるから、協力して何とかしよう。・・・転移は、レガリアで行う」
立ち上がる王と龍。──此より始まりしは、異なる世界を救うための手助けなる戦い──
リッカ【よし、オッケー!行こっか、はくのん!】
はくのん「オッケー。現地にはリッカの身分はその鎧で隠しておいて。万が一にもバレないように」
【えっと、サーヴァント・アヴェンジャーって名乗ればいいんだよね?藤丸くんに協力するためのサーヴァントとして振る舞うって事で!】
「うん。月から私が、現地でBBが通信でサポートする。もしかしたらサーヴァントが襲い掛かってくるかもだから、協力か対立かはその時々で。まずは、藤丸と合流しよう」
【了解!じゃあ──】
「うん。──転移、開始。必ず成功させよう」
頷き合い、リッカは目を閉じる。身体と意識が、単独顕現にて沈み行くセラフィックスへと誘われ──
~
【・・・此処が、ビーストⅢの羽化現場・・・】
目を開けたリッカ。其処は電脳の海と化した基地。セラフィックス・・・アニムスフィアの設立した組織
【・・・】
・・・実のところ、単独で受けた理由はもう1つ。オルガマリーの父親が作り出したアニムスフィアの暗部を、はくのんから聞き及んだ瞬間から決めた事があった
こっちの次元ではオルガマリーはセラフィックスの解体を認め人事異動の手配をしている。その決断の仮定にて、彼女に必要以上の精神的な負担をかけたくなかったからだ
はくのんが言うには、ここではレイシフト適性の検査を行い、素質がある人間を使い潰していたという。それを聞いたとき、彼女は決断したのだ。──オルガマリーの為にも、この事件は一人で挑もうと
父の負担や罪を、異世界の分まで背負わせたくはない。はくのんやBBの後始末を信じて、ここは一人で立ち向かい、文字通り闇に葬るべきだと決断したのである
【えっと、まずは・・・】
座標の確認と、はくのんへの通信を開こうとしたその時・・・
「・・・あらら?変な姿で来たんですね。まぁ、人の事は言えないんですけれど。まぁ、なんでもいいか。どうせ私のやれることなんて此処ではありませんし。賑やかしとして、案内役としてだから張り切る理由もないし」
【?】
其処にいたのは、華のように可愛らしく、また気だるげな少女。ふわぁとあくびを伸びをし立ち上がり──
「ようこそ、酔狂な方。私はあなたの協力者、面倒臭くてうんざりするけれど心からあなたを愛し、協力するもの・・・」
【・・・何処かで、見たような・・・?】
「──アサシン、カーマです。どうぞ適当に、宜しくお願い致します」
華のように笑う少女のサーヴァント。協力者を謳い、真名すら明かした彼女の目的は、果たして・・・
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