人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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【【【【【・・・!!!】】】】】


リッカ【!?】

オルガマリー「──なにかしら、急に残骸達が動きを止めて・・・」

クリス【一ヶ所に集まっていくぞ!?なんだありゃ──!?】


墓標の残骸【⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!】

クリス【ナヨモヤシ!なんだありゃあ!?】

『クラスカードにて活性化させられていた怨念や無念が密集して形を作ったんだ!全域を覆わなくなり再生は潰えたけれど、そのかわり凄い魔力と密度だ!魔神、いや精霊クラスかもしれない!』

ぐっちゃん「デザインにもうちょっと気を配ってほしいわ・・・!腐った巨神兵とどっこいじゃないの!」

フェイト「斬り倒すには骨が折れそう、でも、やる」

ビッキー【リッカちゃん!】

リッカ【おうっ!!なのはさん!】

なのは「うん、そうだね!」

風鳴司令『何をする気だ、お前たち!?・・・いや、──まさか・・・』

ロマン『いやいや、まさかだよね・・・?』

はやて「いやいやいや、そこまではっちゃけるとかないや」

ビッキー【クリスちゃん!師匠!トライバースト!此処にいる全員で!!あそこにいる──】

リッカ【ワールドエンドブレイカーを!】

なのは「スターライトブレイカーを・・・」

なのは&リッカ【「狙いの付けやすくなったアレに叩き込む!」】

はやて「生き生きと何を言うとるんや自分ら──!?」

司令『全力全開だとッ──!?』

ロマン『やっぱりね、了解だ!余波相殺は任せてくれ!』

はやて「一人だけめっちゃ迅速やん!?なに!?馴れとるん!?」

『日常的に世界を切り裂く王様がいるからね!慣れっこさ!』

クリス【あー、あーもう!迷ってる場合じゃないみたいだ!お待ちかねだぜ!】

【⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!】

オルガマリー「なら時間を稼ぐわ。行けますか?ソニックセイバー」

フェイト「勿論。行こう、オルガマリーちゃん」

ぐっちゃん「真面目同士気が合うのね、凄く単純かつ分かりやすいわ!」

クリス【磁石かお前ら!バカとインテリ同士ベストマッチなわけだな!】

「・・・」

【・・・】

「・・・大変ね」

【あんたもだろ、多分・・・】

はやて「こっちも案外、チーム分けされてるみたいやな!突っ込みで!」

「【誰か突っ込みや(よ!)】」


無限大の希望

砲撃(フォイア)ーーッ!!』

 

『くっ・・・!!』

 

魔法少女ファースト・レディ。この特異点を作り上げた原初の魔法少女。魔法少女の軍団を作り上げ、魔法少女の愛と希望を振り撒く為に全世界へと魔法少女を送り出さんとする魔法少女。原初であり、そして世界を救うことすら為し遂げた絶大なる力を持つ魔法少女である彼女が、たった一人の・・・歴史も戦歴も浅い魔法少女と互角に持ち込まれている。

 

ただの覚醒、ただの気迫の差ではない。ファースト・レディの積み重ねた実力と想いに匹敵する何かを、確実に何かをイリヤは掴んでいる。そうでなければ説明がつかない。自分が展開している何重にも束ねた魔術障壁を、単なる稚拙で幼稚な魔力の放射が貫くなど・・・!

 

『この力は・・・!』

 

そして想い至る。貸しているのだ。託しているのだ。この場に、この固有結界に流れ着いた魔法少女達の魂が、意思が、思念が。イリヤを支え助けている。自分達を限界まで燃え上がらせ、智恵と勇気をイリヤにもたらしている

 

『負けないで。頑張って』

 

『私達もいるから』

 

『真っ直ぐ前見て、腰を入れて!ファイト!』

 

「はいっ!斬撃(シュナイデン)──!!!」

 

絶えずイリヤに語りかけ、己の魂を乗せてイリヤの攻撃と魔力を増大させる。イリヤの想いを糧に自らを燃やす。亡霊でありながら誇り高き魂を失わなかった数多の魔法少女の先輩が、後輩を支えているのだ

 

己の攻撃を相殺され、その分此方に反撃が返ってくる。一丸となったイリヤら魔法少女達の奮闘が、己の戦いにて極めた力量に並ばんとしているのだ。かつて魔女を倒し、世界を救った自分の、このファースト・レディの実力に・・・!

 

「やぁあぁあぁあぁーっっ!!」

 

『──ッッッ・・・!』

 

一気呵成、ただひたすらがむしゃらにやってくるイリヤに重なる何かがある。真面目で、一生懸命で、それでいて何度も自分を助けてくれたもういない大切な友達。世界の敵となり、自分が倒した大事な友達。その面影が、姿が。イリヤ達魔法少女の姿と重なって過去の記憶を引きずり出される

 

『──嘗めないで!そんな有象無象に・・・!!』

 

「くぅ、ッ──!!」

 

過去を振り払うように魔力を全方位に放ち一帯を塗り潰す。ファースト・レディの力と実力は魔法少女の中でも最強といっていい。あのメイヴですら攻めることは出来ず、その想いが魔法少女を引き寄せる魔法少女の固有結界を発動させたことからも明白だ。単純にして圧倒的な質量がイリヤを襲い、その突進を撥ね飛ばす

 

『そんな程度で私に勝とうだなんて・・・!私の前に、魔法少女の力で立とうだなんて烏滸がましい!』

 

放つ、一本一本が極太の魔力放出。一撃当たれば即座に蒸発するそれらを網目の様に放ちイリヤを呑み込まんとする。それに対しランサーのカードをインストールし即座に俊足にて対応、かわしながら反撃を行い槍を構え飛びかかる

 

『私が何れ程の敵を、魔物を退治してきたと思っているの・・・!魔法少女として戦いを挑んだ事こそがあなたの敗因と知りなさい・・・!』

 

「うあぁっ──!」

 

乱雑な腕の一振りに乗せた障壁により、鈍器の殴打が如くの一撃を受けイリヤが吹き飛ぶ。追撃として展開された射撃ユニットを認めた瞬間に槍を投げ、詰みとなる援護射撃を先んじて潰し叫ぶ

 

「──違う!あなたを倒すのに、あなたに勝つのに魔法少女だとかどうかは関係無い!」

 

『・・・なんですって?』

 

「あなたを倒すのは、あなたが抱える心に触れたいから!あなたに勝つのは知ってほしいから!手を取り合えば、きっと絶望なんて乗り越えられるって!」

 

倒すため、滅ぼすためではない。分かり合うために、心に触れるために戦う。そこに魔法少女だとか立場は関係ない。単純にして明快な理由が其処にある

 

「だって、まだファースト・レディと・・・!何にもお話しできていないから!」

 

『──何を世迷い言を・・・!何を甘いことを・・・!』

 

その純真さ、純粋さを見ることで熱湯を飲まされているような熱い怒りが沸き上がってくる。それはかつて遠い昔、自分が友と語り合った幼稚な理想であるから。それを、見せ付けられたような想いになったから

 

かつて願った『世界中の人と仲良く出来ますように』などという、そんな愚かで稚拙な夢を思わせるような願いが、ファースト・レディの諦感を、力の源である絶望を奮い起たせた。迅速の魔力光が、イリヤ等を徹底的に打ちのめす

 

『バカにしないで・・・そんな夢や理想、とっくの昔に夢見ていた!世界中の人達と仲良くなれますように、ずっと平和でありますように、素敵な明日が来ますように・・・!』

 

「くっ・・・!」

 

嵐が、雷が、灼熱がイリヤを襲う。ファースト・レディの心の激憤を形にするように、それらは総て赤と黒に染まっている。絶望を、怒りを、諦めをファースト・レディは叩き付けているのだ。土砂崩れのように、溜めに溜め込んだ負の感情を

 

「────」

 

『む、──よもや、貴様・・・』

 

「いいえ、何も。無粋なネタバレは無しでお願いしますね?」

 

子ギルがほくそえむのをギルガメくん以外が見逃す中、ファースト・レディの莫大な魔力と術式は台風の如くイリヤを打ち据える。かつての自分のように、屈することを強要させるが故に

 

『世界を救う、誰かを救うと言うけれど!救われた人間がいつまでも感謝をするだなんて有り得ない・・・!人が称賛し喜ぶのは最初だけ。その感謝と称賛は直ぐ様次の要求に変わる!』

 

「──!」

 

『『何をしているんだ、早く私達を救ってくれ』『こんなに苦しいのに、何故私達を見捨てるんだ』って・・・!いつか私達魔法少女は、弱者を助ける為の奴隷となる宿命を背負っている!総てを、何もかもを費やすことを誰も彼もが望むの!だってそれが、魔法少女だから!』

 

オーラを放ち、剣に変化させイリヤを切り裂かんと突撃するファースト・レディ。咄嗟にルビーを手に持ち剣を即座に受け止め拮抗しはね除ける

 

『ふわぁあぁあぁあぁ!!?』

 

『それでも私は絶望しなかった、魔女にはならなかった!そうすることが使命だと信じていたから!でも、そうすることで・・・ミラーが、私の友達が世界の敵になった・・・!魔女に・・・!』

 

「友達が・・・魔女に・・・」

 

それを倒し、世界に平和をもたらした者こそがファースト・レディ。自由も尊厳も友も、何もかもを世界に捧げ救った。そしてその果てに迎えた世界が・・・最愛の友人を喪い、誰も自分の名前を呼んでくれない世界だったのだとレディは戦慄く

 

『救っても救ってもキリがない、魔法少女あるかぎり人は救いを求める!なら救うわ、助けるわ!魔法少女の愛と希望を、必ず世界に振り撒いて見せる!例え、魔法少女の力で世界が滅びようとも。魔女の種子として魔法少女が絶望に染まろうとも!だってそれしか、私には残されていないんだから──!』

 

友ももういない、救うべき世界が何処だったのかもう思い出せない。だけど自分には、魔法少女という世界を救う資格しか持ち合わせていない。ならば作るのだ、魔法少女の軍団を。ならば赴くのだ、助けを求める総ての世界を。魔法少女の絶望の先が、魔女となり世界を滅ぼすものだと知っていながら

 

『それしか無いのだからそれをするしかない、だってそれが私の選んだ道だから!それを邪魔する事は、あなたにも──!』

 

そのファースト・レディの絶望を、慟哭を受け止め、イリヤは顔を上げる。ならば自分はどうするべきか。ならば自分は何をするべきか。悩みに悩んだが、今の自分は最早答えを見失わない

 

「あなたが世界を救うなら!私はあなたの心を救いたい!そして、その絶望と諦めをやっつけたい!!その為に、今の私は此処にいる!」

 

『──!?』

 

「どれだけ傷付いても、どれだけ嘆いても一人でいたあなたを、もう一人にしない!魔法少女の先輩として、今度は私が、私達があなたを支える!」

 

その為にイリヤに亡霊達は集ったのだ。その為にイリヤに力を貸しているのだ。ファースト・レディの心の快癒無くして、この特異点は墓標より脱却できない。その為に、それだけの為に。自分達は今一度魂を後輩に託しているのだから

 

「信じて、ファースト・レディ!魔法少女は、絶望に堕ちる存在じゃない!希望と夢に、願いの翼で翔んでいくものだから──!」

 

『そんなもの──信じられるわけないでしょう!』

 

「なら信じてくれるまで戦う!分かり合うことも、魔法少女の未来も──私は絶対、諦めたりなんかしない!!絶対、届かせてみせるんだから──!!」

 

同時に放たれる極大のレディの魔力。それに呼応するかのように最大の奥の手を使わんとするイリヤを、魔法少女達が援護する。イリヤへの魔力へと魂達が還元されていき、その魔力放出を無限大に高めていく。魔法少女の夢と願いは、無限大だと示すように

 

『躊躇わず進んで!』

 

『──!』

 

魔法少女の亡霊が盾となり、レディの絶望の波動よりイリヤを護る。吹き散らされながらもイリヤを、後輩を護り決して退かないその姿を蹴散らさんと、レディが更に勢いを増して魔力を放つ

 

『やってみせて、後輩』

 

『負けないで!頑張って!』

 

『シャキッとする!ファイト!』

 

呑み込まれる瞬間も、消える最期も誰かに希望を残していく。魂の輝きが、絶望に消える事はない

 

『私達は、自分の選択に後悔していない』

 

『そりゃあ、好きだった子が親友と結ばれた時にはショックだったけどさ?』

 

『それ以上に嬉しかった!自分の戦いが、誰かの幸せに繋がった事が!』

 

イリヤの魔力が、MS力が高まっていく。先輩達が支え、放つ力が際限なく満たされていく

 

『始まりは棚ぼたで、あの金髪の子が言うように甘ったれてたのかもだけど』

 

『だからこそ、アタシ達は自分の選択に悔いはない、やり直したいなんて思わない!』

 

『自分の道を、それでよしと受け入れる。それが責任、奇跡を手にした者の想いと責務でしょ?ファースト・レディ』

 

『──そんなものの何処に、救いがあるというの・・・!』

 

『もう、間違えないの。私達は救われたくて戦って来たんじゃないの。忘れちゃった?』

 

『・・・!』

 

そう、逆なのだ。魔法少女は夢見る力を活力とする。その理想は、いつだって変わらない

 

『私達は、『誰かの力になりたくて魔法少女を選んだ』の。魔法少女が魔法少女である理由は、その心を曇らせずそう願ったから!』

 

『私利私欲で魔法少女になれるかよ、思い出せバカタレ!』

 

『・・・誰かの、力に・・・それが、魔法少女の原泉。世界に届く、願いと理想・・・』

 

『裏切られたからって、その始まりは穢れない。魔法少女が生まれるのは、そういうことよ』

 

『向こう見ずは、乙女の特権なんだから!』

 

魔法少女達の魂の言葉に、レディの心が揺らぐ。いや、思い出す。自分は世界を救いたいと願って魔法少女になることを選んだのか?最初から、礎となるつもりで?

 

『──違う、私は・・・ミラーと、一緒に。一緒に・・・』

 

友達と、また平和な日常を過ごしたい。それこそが・・・魔法少女になる為の最初の願いでは無かったか?始まりを自覚し、絶望を力としていた己の間に、致命的な空白が埋まれ一瞬の停止を生み

 

『今です、イリヤさん!魔法少女達の力を集めた一度きりの大技!どうぞぶっぱなしちゃってくたださい!』

 

「うん!魔法少女の皆がくれたこの力で・・・!今レディの絶望を吹き飛ばす!!行くよ──!」

 

カレイドステッキに超密度の魔力を凝縮、魔法少女達の魂を魔術回路に変換、己の総てを魔力の経路に変換させ魔力を無限大に加速させる

 

「『無限大(アンリミテッド)・──!!」

 

虹色に満たされた魔法少女達の想いと願いを循環させ、けして潰えぬ希望を概念とし、高々と掲げたステッキより撃ち放つ──

 

円環螺旋(インフィニティ)・──!!」

 

そのたった一度きりの大技にして切り札。魔法少女の魂達の心中覚悟の燃焼にて放たれる最後にして決意の大魔力放出。その道理を越えた対絶望宝具、その名は──!

 

「『極限砲(フォイヤ)』ーーーーーッッッッッッ!!!!」

 

放たれた魔力は、絶望を終わらせる一撃は極限まで収束した結果矢の形を取る。軌道上総ての障害と絶望を安寧と安らぎに導き、その果てへと招き入れる一撃。それらの前に防御は意味を成さず──

 

『──ミラー・・・──』

 

否、防御など不要だった。それらは戦い抜いた魔法少女、ファースト・レディへ向けられる幕引きの一撃。己を魔法少女の英雄とするために友が選んだ魔女という結末。それらを総て、優しく包む労りの一撃

 

『・・・また、いつか出逢えたら。同じ夢の話をしましょう──』

 

魔法少女の奥義を受け、心の哀しみと絶望を撃ち抜かれたファースト・レディは、安らかに倒れ沈黙する

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・やっ、た。届い、た・・・」

 

イリヤもまた、総ての魔力を使い果たしその場にて力尽きる。勝者も敗者もない、理解する為の戦い

 

・・・ファースト・レディの力の源は、もうない。魔法少女達の奮闘にて、心の闇は晴れたのだから──




子ギル「──期待通り、いえ、期待以上でしょうか。えぇ、よくやってくれました。慣れない偽悪的な振るまいが効を奏したと言うものです」

──!ギルくん、貴方は・・・!

「『概念的な絶望と停滞』はイリヤさんがたった今消し飛ばし、『妄執と怨念は』クロさんが決着をつけてくれました。後はこの場に集う『負の残骸』の掃除だけです」

『──読めた。はじめから貴様はこの特異点の清掃を我等に担わせる腹積もりであったのだな。魔法少女どもの、固有結界の澱みを顕現させる依り代にこやつらを選んだか』

「そういうことです。あなたたちに世界の被害者(魔法少女)を恨み、憎む戦いなんて似合わない。分かりやすい悪役がいなくちゃ。大義ある戦いとはそういうものです」

ミユ「は、うっ──」

残骸を産み出していたアンリマユのカードをミユより抜き取り、手に取るギルくん。そして──

「さぁ、あとはこのクラスカードで表層化した残骸のみ。魔法少女達の組織化、楽園の構築までもう少しです。気に食わなくても、ただ害するだけじゃ神でいいのですから。きっちりケアはしてあげなきゃ」 

──ギルくん!それは──!

「──どうかこれ以上焦がれさせないでください。僕は最初から最後まで、あなたに逢いたくてこんな事を考えたんだから──」

魔法少女の固有結界に溜まった吹き溜まり、負の感情・・・それらを引き受けたクラスカード、アンリマユをギルくんは、深々と自分に捩じ込む──

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