(オタクのグッズを壊させるなんて同類には辛すぎるじゃないか!なんとかしてフォローしてあげたいけれど・・・)
「・・・ん?」
『私の攻撃に合わせて。いいわね?』
「所長・・・!はい、任せてください!」
ダ・ヴィンチ「うんうん、皆生き生きしてるなぁ。これは私も魔法少女に相応しいボディのお披露目とか、できちゃうかも?」
「・・・えっ?」
「なんというか、言わなくてはならない気がするから言いましょう。このグッズこそがあなたの力の源ね、魔法紳士」
そこにありしは夢の魔法少女に捧げる数多の手作りグッズ。服装、手製小道具、オリジナル妖精、変身呪文などの選り取りみどりな夢の具現化。収まること無い紳士の発露を形にした汗と涙の結晶。力の源であるがゆえに遠くには置けず隠しておかなくてはならない・・・そんな矛盾を、リッカとオルガマリーの探知によって暴き立てたのだ。その指摘を受け、余裕は一転して顔面蒼白となる魔法紳士黒ひげ。在処を暴かれるのはいい、趣味嗜好が読み取られるのは憤死ものではあるがそれはそれで仕方ない。一番まずいのは、導かれるものは・・・
「──後生!後生でござるからそれをぶっ壊すのは待ってくだち!それは拙者の理想かつ最高の魔法少女に捧げる魂の写し身!破壊するなら拙者を、拙者を壊してもそのグッズだけは永遠に残すものであり──!」
「散々おぞましい趣味嗜好を押し付けといて何言ってるのよ・・・!永遠に残るものなんか私とパンケーキで十分──口にしていると可笑しいわねこれ!」
ぐっちゃんが躍り出、血相を変えた黒ひげを血の剣で遮断、阻み押し返す。いい加減辟易してきた魔法紳士の異常性に背筋を震わせていたため、それをまぎらわす意味でも身体を動かさずにいられなかったというのもあるが故の制止である
「オルガマリー、リッカ!それが魔法紳士の弱点だって言うならやっちゃいなさい!粉々にするか灰にするのよ!」
そう、それが最適解。それを行えば最低でも魔法紳士の無限ガッツは滅び、倒せる存在となるだろう。──為すべき事は決まっている、見えている。ならばそれをやるべきなのだ。だからこそ迷う必要はない。リッカとオルガマリーの位置ならば、それをやる事は容易い。だからこそ、それを躊躇なくやるべきなのだが・・・
【・・・──っ・・・】
「リッカ・・・」
振り上げた拳が重い。振り下ろす覚悟が奮い起たない。苦虫を噛み潰したような顔でコレクションを睨みつけるリッカの真意を、今のオルガマリーは読み取れる。理解できるのだ。何故なら彼女もまた──立場が違うだけで、魔法紳士の言葉や活動の意味や重みが理解できるから。そのグッズから伝わる熱意がどれほどのものか、痛いほど理解できるから
その活動に、出来上がったものに罪はない。そう思うが、またこれを成し遂げなければ自分達に未来はない。先に進めないのなら粉微塵にするのが正解なのだ。解ってはいる、同情はない。だが、それでも・・・
「リッカ!?どうしたのよ、あんたなら楽勝でしょ!?」
「先輩!心中御察ししますが、ここは・・・!」
「止めるでござる!止めるでござる!!殺すなら拙者に!殺すなら拙者にィ!!」
最早迫真を通り越し必死となりし紳士をマシュら総出で押し返している。その必死さでなにか新しい道を、更なるパワーアップを果たしてしまうかもしれない。選ばなくてはならない。誰かの大切にしたものを踏みにじる選択を──
【──うぉおおぉおっ!!】
ここで躊躇っていては、とてもメイヴには辿り着けない。ここに来て、やっぱり出来なかったということなど選んではいけない、選んではならない。オタクとしての矜持、文化としての感謝を乗り越えて、更なる先へ進むために手を振り上げ・・・
「──失礼、リッカ。徹底的にやるなら私がやるわ」
【えっ──!?】
そのリッカの決断を横から制止し割って入り、ライヘンバッハを呼び寄せ全砲門を展開し魔法少女コレクションへと向け──
「ロマニ」
『勿論、解っていますよ!』
その言葉を合図に──放たれる無数の魔弾が着弾していき爆炎を巻き起こす。積み上げてきた時間、重ねた熱意と労力を纏めて灰に帰す怒濤の砲撃が唸りをあげる
「ほぁああぁあ!?せ、拙者のコレクション!?大炎上!?そ、それが魔法少女のやることでつか──!!?」
魔法紳士の慟哭にも全く耳を貸さず、ミサイル、弾丸を情け容赦なく注ぎ込み叩き込む。爆炎の中に消えていく魔法紳士の生き甲斐。無表情のまま破壊し、粉々に破壊していくオルガマリー。排出した煙が立ち上ぼり、ライヘンバッハが沈黙する頃には、最早その先には何も残らず、残っているのは崩れた灰と吹き飛ばされた瓦礫の山。撃ち放たれた魔弾の空薬莢のみであった
「拙者のコレクション・・・一から積み重ねに積み重ねてきた理想的な魔法紳士コレクションが・・・!」
「──・・・行けるわね。マシュ、ヒナコ、やるわよ!」
「了解です!」
「気色悪いのは、此処で終わりよ!!」
がっくりと項垂れる魔法紳士、それらに渾身の一撃を叩き込み決着を告げる。盾が、剣が、銃が、魔法紳士を一斉に襲い掛かり──
「し、紳士死すとも黒ひげ死せず!魔法少女という御宝に輝きあれ!そして望むなら臨終する拙者をお迎えにきてくだち──!!」
無限ガッツ、発動せず。吹き飛ばされたことによりその無敵さと執念の大本を消したがゆえに、魔法紳士のMS力を産み出すものが消え去ったからだ。断末魔の咆哮を上げ、見果てぬ夢と想いを告げて消え去っていく魔法紳士。此処に、大海原と竜の国の魔法紳士は打倒される
【あ・・・、・・・・・・】
その結末は望むべきものであるが、その為に非情な決断を取らざるを得なかった。よりにもよって、サブカルチャーの同士であった筈の者のコレクションを破壊するしかなかった苦い選択。そしてそれを自分で行えなかった事実に、リッカは苦々しく舌を噛む。魔法紳士、せめて出逢いが違っていれば。何よりあの魔法紳士は、カルデアにおける自分の恩人と同じ姿であり、嗜好であり、同じ思想を持っていたが故に・・・
【・・・次はもっと、違う出逢いをしようね。魔法紳士。それならきっと、仲良くなれる筈だから・・・】
巡り合わせが悪くとも、またいつか。魔法紳士を倒し喜ぶイリヤやクロ達の側で、ちょっぴりセンチメンタルな気分となり天井を見上げるリッカであった・・・
大海原と竜の国、其処の戦いは幕を閉じる。次なる世界は何が待ち受けているのか・・・リッカ達は立ち止まらず、更なる魔法少女達の国を進んでいく。イリヤの友を救うため、そして特異点を進んでいく──
オルガマリー「リッカ、お疲れ様」
リッカ「えっ?あ、ああそだね!お疲れ様!・・・ごめんね、土壇場で躊躇っちゃって。ほら、どうしてもくろひーとかオタク活動にも思うところがあってさ・・・ごめんね?」
「知っているわ。あなたらしい選択と決断ね。・・・そう選ぶと解っていたもの」
「えっ?」
そうして、オルガマリーは指を鳴らす。ロマンと共に、映し込まれるもの、それは・・・
「戦利品よ。大事にしてあげなさいね」
『紳士を憎んでグッズを憎まず!個人的にも、それは賛成だからね!』
「・・・二人とも・・・!」
それは、先に破壊されたはずであった魔法紳士のグッズ。破壊される前にロマンに保護、転移を頼んだオルガマリーが手を撃ち、弾を放つ前に依頼していたのだ
「『魔法紳士を倒す』『魔法少女達の笑顔を曇らせない』。両方やらなくちゃならないのがサポーターの大変なところよね」
そう。リッカなら必ず躊躇うこと、グッズをおもんばかる事は予想済みだったのだ。だからこそ率先し自らが攻撃を行い──
「黒ひげに預けておくから、後で確認しておきなさい。さぁ、メディアリリィに報告しに行きましょう?」
「──うん!ありがとう!オルガマリー!」
共の粋な計らいに笑顔の曇りを晴らすリッカ。改めて──前を向いて次なる行き先へと歩き出すのであった
・・・無限のパンケーキを皆に分け与えながら
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