人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「最終回になるかもしれない。覚悟して読んでほしい(フォウ)」


終幕――混沌の麻婆――

光が収まり、目を開けてみると、そこは見慣れたカルデアの管制室が広がっていた

 

 

無事に戻ってこれたらしい。ふと右手に何かが握られていることに気付く。なにかと思い見てみれば、それは、拠点に埋め込んだ聖杯であった

 

 

白と黒、二人の聖女が向かい合うデザインが象られた、中身が存分に満たされた聖杯が、今手にある

 

 

「余さず汲み取ったか。よしよし、使い途はいずれ来ようさ。それまで保管しておくか」

 

――そんな予感を思いながら、そっと黄金の波紋にしまいこむ

 

 

「リッカ!マシュ!」 

 

見ればオルガマリーが、マスターとマシュに駆け寄り二人を抱き締めていた

 

「良かった……本当に良かった……!よく、無事で……!」

 

「帰ってくるって約束でしょ?私達が友達を裏切るわけないじゃん。ね、マシュ?」

「はい、ただいまです。所長!」

 

「うん、うん……!」

 

 

……心配だったんだろうな。よっぽど。うん、良かった

 

迎えるなら、笑顔で。涙や悲しみは、これから先、自分が出来る限り蹴散らしていこう

 

 

それが……転生した、自分と器の役割だと思うから

 

「はーいお邪魔ー。ロマン、これが歴史の証明書だよ。お帰りゴージャスキング!やりたい放題だったね!」

 

ダ・ヴィンチちゃんが現れる

 

「フッ、王の旅というのはそう言うものだ。思うがままに我は振る舞い、その足跡が路となる。それだけの話よ」

 

「……よぉし!フランスは無事に元の歴史に戻っている!やったぞ!たった一つだが、僕たちは確かに――歴史をあるべき姿に戻したんだ!」

 

大歓声に、沸き上がるカルデア

 

「やったぜ!俺達はやったんだ!」

 

「当たり前だ!ギルガメッシュ王に目をかけられてる俺達だぞ?」

 

「むしろ、出来て当然だな!うまい飯、最高のベッド、無限の娯楽があんだから、これで働けなきゃ無能だぜ!」

 

「よく頑張ったね、マシュも、リッカも……本当に、こんな小さいのに……」

 

「サーヴァントの皆もカッコ良かったぜ!こんな頼もしい人達を使い魔扱いとか、やっぱ魔術師はダメだな!」

 

「キャストオフ……うっ頭が」

 

 

「「「「「「「ギルガメッシュ王、万歳!!!!」」」」」」」

 

 

「フッ、随分と舞い上がったものよ」

――無理もない。これはそれだけの冒険、それだけの偉業なんだ

 

 

歴史を元に戻す、果てない旅

 

その一歩は……紛れもない、大躍進だったのだ

 

そして、一歩が上手くいったのなら、きっとその先も上手くいく

 

だって、総ては、一歩一歩の積み重ねなんだから

 

 

「皆、静かに!……ギル」

 

「うん?」

 

オルガマリーが口を開く

 

「――どうか、オルレアン修正作戦の終了の号令を。私を含め、皆は貴方の期待に報いるために、頑張ってきたのですから」

 

まっすぐ見つめてくる、オルガマリー

 

「――フッ、良かろう。労働には労いが無くてはならぬしな――聞け!カルデアに集いし精鋭どもよ!」

 

器のカリスマに任せ、激を送る。共に戦った、仲間たちに

 

 

「此度の貴様らの奮闘、大儀である!この奮闘により、一つの狂いし歴史が元の姿を取り戻した!――誇るがいい!此は紛れもなく、貴様らが足掻き、掴みとった成果である!」

 

 

「この結果がもたらすものは、歴史の是正だけではなく、貴様らが狂いし歴史に歯向かう力を持った人間であるという事の証左である!」

 

「貴様らの価値を、我が認める!――言葉にしよう!貴様らの内に只の一人も雑種はおらぬ!」

 

思うままに、言葉を紡ぐ

 

「貴様ら総てが――我と共に戦うに相応しき、人理を救う勇者たちである!此度の活躍、見事であった!!」

 

 

「「「「「「うぉおおぉお――――――!!」」」」」」

 

沸き立つ大歓声。英雄王の称賛と証明が、カルデアスタッフ達の心を沸き立たせる

 

「その労に報い、貴様らには3日の休暇を与える!最低限のメンテナンス以外の労働は禁止する!思うがままに、このカルデアで羽根を伸ばし、英気を養え!この施設の充実は、その為に誂えたモノであるゆえな!」

 

「休み、魂を癒し、再び訪れる戦いに備えよ!貴様らの一人でも欠ければ、このカルデアはたち行かぬと知るがいい!努、自らが最後の人類であるという自覚を損なうな!我の赦し無くして、死ぬことは赦さん!貴様らは総て、我の財(モノ)なのだからな!!――以上!解散ッ!!」

 

「「「「「「「ギルガメッシュ王!万歳!ギルガメッシュ王!万歳!ギルガメッシュ王!万歳――!!」」」」」」」

 

――うん。まだまだ感謝を言い尽くした感じはしないけど……自分の言いたい事は、大体器がいってくれた

 

ありがとう、カルデアの善き人達。そして――英雄王ギルガメッシュ

 

――貴方の至宝に手を伸ばした栄誉、けして忘れません。貴方の偉大さに、敬意と感謝を。――偉大なりし、最古の王よ

 

 

「貴様らは我の財……どうやら貴方は、本当に私の知りうる英雄王ではないようだ」

 

歩み寄る赤いアーチャー。エミヤだ

 

「なんだ贋作者。ついぞ出番がなかったな。申し開きか?懺悔でもするか?」

 

「いや、私はそう強い英霊ではない。貴方が前線に立つ以上、私は裏方に徹するさ」

 

「ようやく身の程をわきまえたか。贋作者は贋作者らしく、お握りでも拵えておけ」

 

――この人も、また一緒に戦えたらいいな。きっと頼もしいだろう

 

「返す言葉もない――ところで」

 

――悪寒が、背筋を走る

 

「かつてジャンヌが言った事を覚えているかね、英雄王」

 

――フォウが言った言葉を思い出す

 

オマエのせいで、キミは墓穴を掘ったんだ――

 

「ん?そう言えば言っていたな。手作りの料理で王を歓待すると」

 

――エミヤが、ニヤリと笑った

 

「二言はあるまいな英雄王。――では、食べてもらうとしよう。ジャンヌ!」

 

 

「はーい!」

 

笑顔で現れるジャンヌ。

 

 

――その手には、地獄が顕れていた

 

「ぬ――――――、な――――――――」

 

「良かった!無事に帰ってきてくださって!本当に・・・!」

 

「――ジャン、ヌ。なんだ……そのおぞましき、地獄がごとき威容のアレは・・・――」

 

――今までで一番動揺、いや、狼狽する器

 

――あぁ、そういう……なるほど、そういう事か、墓穴って……

 

 

「はい!私が修業の一環で作り、英雄王の為にこしらえた、『ダンテ・ヘル・麻婆・ルチフェロなりしサタン風味』です!」

 

立ち上る湯気で世界が歪んでいる。地獄の叫びが届くようだ

 

「私が英雄王の為に、一生懸命作った自信作です!――食べて、くださいますか――?」

 

「く「食うかなどとは言わせんぞ英雄王!!貴方は言ったはずだ!『王の名にかけ、完食してやろうではないか』とな!!」

 

「ぐ、ぬ――――!!記憶に無いわ――!!」

あのときか……墓穴ってそういう事か……

 

「モニター班!音声を回せ!!」

 

『ほう?田舎娘なりに気が利くでは無いか。良かろう、特に許す。王の名にかけ、完食してやろうではないか』

 

確かに流れる器の……いや、自分の声

 

「言質は取っている!貴方の王の誇りにかけ、逃げることは玉座から陥落する事としれ!!」

 

「あ……――ア――――――――――チャ――――――――――!!!!」

 

器の絶叫が響き渡る

 

――諦めよう。ここが、自分達の終着点だったんだ

 

「席につけ!ナプキンを取れ!完食してもらおうか――カルデア全職員の前でな!!」

 

「お、のれ――おのれ、おのれ――!!おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ――――!!!!」

 

壊れたテープレコーダーみたいに繰り返す英雄王。どれだけ嫌なんだ……

 

……まぁ、罰だと思おう。ジャンヌを散々馬鹿にしてたし、麻婆を教えたのも自分だし

 

――なんだかアレ、薄味魂の自分からしてみたら美味しそうだ

 

 

「天の鎖よ!!頑張って我を助け――!」

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛(ダメです)」

 

「何ィイィイィイィイ肉だるまお前もか!!それより何よりどういう事だ!あんな目にするのも憚られる汚物を――完食せねばならんと覚悟を決めている我がいる――!!」

ジャンヌが作ってくれた料理だ。どんなモノであれ、無下にするという選択肢はない

 

「何故かまるごしワカメも使う気がおきん――!!どういう事だ我!口にする前から狂っているのか!!ランサー!ランサーは何処か!食え!我の代わりに食ってしね!自害は貴様の芸当であろうが――!!」

 

「クー・フーリンは未召喚だ。慢心したな英雄王。

身から出た錆、軽はずみな発言の責任を取るがいい」

 

「貴様出番が無いと思えば――我を仕留める算段を立てていたな――!!獅子身中の虫とは貴様であったか――!!!」

 

「なんとでも言うがいい。――さぁ、覚悟を決めろ、英雄王」

「はい、どうぞ!お疲れさまでした!――英雄王」

「ジャンヌ――」

 

「……とっても、格好良かったです!えへへ……」

 

――食べなきゃ

 

「可愛さで誤魔化そうなど――!!待て、止めろ我!何故スプーンを取る!!落ち着け、早まるな我!まだ第一特異点だぞ!?まだバビロニアどころか小便王にすら逢っておらぬ!!我が至宝の真価も発揮しておら――!!」

 

わぁ ぐつぐつ して おいし そう

 

「むぐっ、ぐあっ――!!熱気で肌が爛れるようだ――!!待て、よせ、踏みとどまれ我――!!おのれ、このような――!!よもや、そこま――――!!!」

 

 

――死ぬときは一緒です、貴方と自分は一蓮托生

 

感謝を込めて――頂きます!!

 

「止めろぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおのれぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ――――――――!!!!!!」

 

――ハムッ

 

「ガ――――――!!!!!!????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憎しみで、人類は滅びない

 

 

いつの日か、憎しみは必ず癒えるからだ

 

 

 

――もし。人類が滅ぼす悪があるとするならば

 

 

――その根底にあるものは

 

 

 

――愛、なのだろう




これにて、オルレアン編は終了になります!


読んでくださった方、コメントをくださった方、お気に入りにしてくださった方、誤字を直していただいた方、激励してくださった方

本当に本当に、ありがとうございます!最初は、一件だけでもお気に入りにしてもらえればいいかなぁとか考えていました!

それが今では、日間ランキング一位を獲得し、300件近くの評価を頂き、1000件近くのコメントをいただくという、大反響をいただける事態に――夢のようです・・・!


投稿する度に書き込まれるコメントを見るのが嬉しくて嬉しくて、はやく皆さんの反応をみたい!と気がついたら打っていました!

自分にとって、この作品は奇跡のようなもの。その奇跡を起こしてくださったのは、ハーメルンの皆さま方です!

書くためにマテリアルを読み返し、また書いて、マテリアルを読み返す・・・その繰り返しで、ますます自分もfateが大好きになっていく素敵なループに入れました!

重ね重ね、ありがとうございます!今からセプテム見返しますので、しばらく幕間を投稿すると思います!

召喚サーヴァントも、ほわほわ考えています!意見をくださったサーヴァントは、遅くなれど優先して出したいなぁとかんがえていますので、ワインを飲んでお待ちください!

重ね重ね、感謝を!ありがとう、ハーメルンの善き人達!

ギルガメッシュ王、万歳!ウルクに永遠の栄えあれ――!!

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