人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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コンラ「はい!ムニエルさん!どーぞ!」

アストルフォ「いつもボクらに良くしてくれてるしね!これは、感謝の気持ちさ!」

デオン「君をはじめとしたスタッフがあればこそ、私たちは頑張れる。本当に、ありがとう。君に、白百合の祝福があらんことを」

ムニエル「──お、ぉお、ぉおぉおぉお・・・!!」

オルガマリー「ふふっ、良かったじゃないムニエル。これであなたも、立派なリア充ね・・・ムニエル?」

ムニエル「────我が生涯に・・・一片の悔いなし・・・」

「ちょ、バイタル停止!?そんな安らかな顔になって・・・!ムニエル!しっかりなさいムニエル!ムニエル──!」

「俺、楽園に来てよかった・・・ありがとう王様、ありがとう皆──」



──バレンタイン・フォーエバー────

「勝手に終わらせてはダメよ!メディック!メディック!」

ナイチンゲール「衛生と聞いて」

「心臓マッサージを!」

「了解、殺してでも治療します──蘇生!!!」

「ぶべらっっっ!!!」

ムニエルは──口から愛を吐き出し蘇生に成功した

その顔はただただ、安らぎと誇りに満ちていたという──そしてマッサージにより肋骨が軋み絶対安静となった  



少女の夢

「おぉ、おお・・・!?」

 

 

童話、そして少女。それらの符号とキーワードを示されたリッカとエルキドゥの足取りに迷いはなかった。目指すべき元凶、そしてかの魔術師の細やかな善意にて巻き起こされたこの騒動の解決と収束を行うために、二人はその足取りを楽園の一室に向けた。扉を開けると広がる、屋内に在りし屋敷。──子供のサーヴァントの溜まり場である、子供たちの夢の御屋敷だ。其処に広がっていた景色に、リッカは思わず野太い声を上げる

 

「おやおや、チョコサーヴァント達の舞踏会・・・中々珍妙な光景だね。食べられるものがこうして豪華に踊ったりパーティーをするなんて。とてもシュールと言うべきかな?」

 

そう、数多のチョコサーヴァントが沢山の相方と共に躍り、優雅にティータイムを楽しんでいる光景が目の前に拡がっていたのだ。豪奢なホールに、オシャレな音楽。着飾ったチョコサーヴァント達が優雅なステップを踏んで楽しんでいるその光景。色素バランスが少し偏り気味なパーティー風景に、くすくすとエルキドゥは笑みをこぼす。素敵な夢だね、と

 

「けれど、夢に引き込まれる訳にはいかないな。夢は褪めるが故に夢、いつまでも続いていたら歩み、進む心を失ってしまう。そうだね、リッカ?」

 

「うむむ、一人一人取っても凄まじい優雅さに風靡さ・・・チョコサーヴァントとは社交的でもあったのかぁ・・・、へ?あ、あぁ勿論!さぁ、終わりにしよっか!」

 

そう、エルキドゥに促され、リッカはホールにて声を上げる。この屋敷の持ち主、豪華なるホールに住む、子供たちの夢と希望の結晶

 

「──ナーサリー!出てきてー!お話ししよー!」

 

そう、童話のサーヴァントと言えば彼女だ。子供たちの英雄、お伽噺の存在。ナーサリー・ライム。この騒動に関与する、カルデアのサーヴァントに呼び掛けると・・・

 

「まぁ!マスター、来てくださったのね!私が呼ぶ前に来てくださるなんて、やっぱりあなたは誰もが望む王子様なのね!」

 

返答はすぐにやってきた。黒いドレスに身を包んだ、可愛らしい少女のサーヴァント。ナーサリー・ライムが姿を現す。二階の階段より飛び出して、すたりと二人の前に素直に現れる様子に、敵意は感じられない

 

「ふふふナーサリー、私は生物学的には王子様を待つお姫様の方なんだよ?ホントはね?」

 

「そうなのかしら?それじゃあ仕立屋が困ってしまうわ。だって、そんなにギリシャな身体にピッタリなドレスは作れない筈だもの!」

 

「子供は残酷ゥ!!」

 

口からトマトジュースを吐き膝をつくリッカをニコニコしながらスルーし、エルキドゥが素早く本題に入る。彼に、世間話に興じるような無駄な機能は基本的には備わっていない

 

「ナーサリー。そのチョコサーヴァント達はね?カルデアのサーヴァント達が頑張って形にしようとしたものなんだ。悪いけれど、全て回収させてもらうよ」

 

「えっ、ま、待って!まだダメ、ダンスも御茶もマスター出来ていないもの!まだ返すわけにはいかないわ!」

 

「・・・どういう事だい?」

 

『まだ』というニュアンスが気にかかり、問いただすエルキドゥ。リッカをぺしぺしと抱き起こし、そしてナーサリーの言葉に耳を傾ける。何を企んでいるのか、そして、何を考えているのか・・・

 

「皆はチョコが大好きでしょう?チョコと一緒に楽しく毎日を過ごすでしょう?それなら、『チョコも楽しく動き出せば、もっともっとバレンタインは楽しいはず』でしょう?だから私はチョコサーヴァントを集めたの!皆でパーティー出来るように、バレンタインを楽しめるように!ね?素敵でしょう?」

 

チョコレートを巡るイベントならば、チョコレートもまたイベントを彩る者となればいい。そう考えたナーサリーはチョコレートに形を与えた。チョコレートを作るもの、チョコレートとして作られたもの。そのメルヘンな枠決めを、彼女は取り壊し、一緒に楽しむべきだと考え・・・チョコレートを形取り、共に遊ぶ仲間として作り上げたのだという

 

「・・・ふむ、そうか。其処に、一欠片も悪気は無かったんだね」

 

少女の夢を壊すこと、それは即ちナーサリーからチョコレートを没収し、チョコレートのイベントを壊すことに他ならない。例え悪気は無かったとしても、チョコレートは彼女だけのものではない。──誰かに思いを告げ、誰かとの親愛を確かめ合うものなのだから

 

「──うん、そうだね、ナーサリー。皆で楽しむのはとっても大事。本当にありがとう。──でもね、ナーサリー」

 

その言葉を告げる役目は、せめて自分が。そう意を決し、リッカは告げる。誰かが言わなくてはならない事だから。そのために、ここまでやってきたのだから

 

「チョコレートを返してもらえないと、私達が悲しいんだ。皆、とっても大事な想いを込めてチョコレートを作っていたから。だから、皆が待ってるんだよ。チョコレートが帰ってくるのを」

 

「そ、それは・・・ずっと独り占めという訳ではないわ。せめて、チョコレート達がしっかり楽しめるようになるまで・・・」

 

「きっとバレンタインは終わってしまうね。いいかい、ナーサリー。人間は時間を大切にするものだ。ずっと続いていくという行き止まりに、いつまでも留まってはいられないのさ」

 

だから、チョコレート達を返してほしい。そう、誠意を以てナーサリーに伝えるリッカとエルキドゥ。その想いに、嘘や偽りが無いことをナーサリーは理解している。理解しているが故に・・・

 

「・・・・・・解ったわ。マスターと、エルキドゥがそう言うのなら。わがままばかり言う子は、狼に食べられてしまうものね」

 

ナーサリーは頷いた。夢の終わりを受け入れた。バレンタインにて、マスター達の時間を奪うわけにはいかないと、彼女は決断したのだ

 

「ゴージャス様も仰有っているもの。一人で寂しくないのは我だけだ。共に笑い、共に語れる者がいるのなら共に楽しむがよい・・・って!」

 

「ふふっ、ギルは此処に来てくれているのかい?」

 

「えぇ!凄いのよ、私が御茶会をしたいなーと思ったら来てくれるの!ジャックやコンラ、アステリオスを連れてきてくれるのよ!」

 

その言葉は弾み、目は輝いている。この少女に、然り気無く気を遣い足しげく通っている王のマメさと優しさに、エルキドゥとリッカの二人は顔を合わせて笑い合う

 

「そうだ、リッカ。奪うだけと言うのもあれだし、ナーサリーと御茶会なんてどうかな?散々頑張って来たんだし、それくらいの寄り道は許してくれるさ」

 

「さんせー!それじゃそれじゃ、御茶とか机とか用意しなきゃね!」

 

「まぁ!一緒に御茶会してくれるの!?やった、やったわ!それじゃあ、チョコレート達と交換でいいかしら?」

 

「あぁ。話が分かってくれて助かるよ。わがままを言うようだったら・・・鎖でむち打ち31回をしてあげなくちゃいけないところだったからね」

 

「ひゃっ!?ま、マスター!エルキドゥはやっぱり恐ろしいのだわ!大人しいジャバウォック、いえ、麗しいモンスターなのだわー!」

 

「あはははは、酷いなぁ。お仕置きや躾はしっかりしなくちゃいけないだろう?そうしないと、悪い子になってしまうからね。──ラフムみたいに」

 

「子供に酷いことはダメだよ流石に!?──い、いやエルキドゥなら冗談だって分かってるけど、なんか本当にやりそうな危なさがあるよ・・・ね?大丈夫だよね?」

 

「あはははははは」

 

「否定してぇ!?」

 

──そうして、ナーサリーを言い含め、必ずチョコレートを皆の下へと返すことを約束しながら、リッカ達は残りのチョコレートの全てを回収することに成功する

 

「御願いね、マスター!チョコレートたちも、バレンタインの主役なのだから!」

 

「うん!任せて!そして・・・はいこれ!ナーサリー!」

 

そうしてリッカは、ナーサリーに渡す。手塩にかけて作り上げた、ナーサリーの為の傑作チョコを

 

「──まぁ!何て素敵なのかしら!何て、輝いているのかしら──!」

 

「──ふふっ、店長がぐったりするのも納得だ。こんな力作を一人一人作ったのだから、ね」

 

それは・・・『不思議の国』を再現した一メートルのチョコレートに、黒いメルヘン龍が遊びに来たというシチュエーションのジオラマ。アリスの国に、仲間はずれはいないというメッセージの証

 

「ハッピーバレンタイン!これからも、小さい子達と仲良くね!ナーサリー!」

 

「えぇ!ありがとう、マスター!アリスは幸せよ。だって、こんな素敵な場所で毎日過ごせるのだもの!」

 

少女の夢は、笑顔にて締め括られる。誠意と喜びを交わらせることにより、涙の塩辛さは不要なものである故に。──此処に、バレンタインは元通りに──




エルキドゥ「納品完了・・・と。これでカルデアのチョコレートを回収は完了したね、お疲れ様。・・・ようやく僕の本題が果たせるね」


リッカ「あ、そういえばなんなのかな?エルキドゥの頼み事って?」

エルキドゥ「あぁうん、話していなかったね。簡単な事さ。チョコレートを渡したい相手がいてね。その様子を見届けて欲しいのさ」

『ラフムチョコレート』

『チョコレート内臓』

「・・・あの、エルキドゥ?それってもしかして・・・」

「うん。じゃあ、行こっか。──僕らのふるさと、ウルクへ、さ」

(い──嫌な予感しかしない・・・!!)

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