人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ちょっと時系列が解離していますが、バレンタイン編です!ゆっくりお楽しみください!

きよひー『ま す た ぁ♥』

リッカ「ヒェッ」

『本日はバレンタインですね、リッカ様!不肖きよひー、チョコレートなどを作って参りました!』

「え、何処にあるの・・・?」

『ふふ、目の前です!正確にはチョコレートに『成った』のですが!』

「!?」

『思い込んで一千年、竜になってしまうわたくしにとって、チョコレートに成るくらい容易いものです!』

「ヒェッ」

『さぁ!それでは定番の口説き文句を真に!成就させていただきます!──わたくしを、た・べ・て・♥ちなみにわたくしが全部チョコレートになるとすると、大雑把に24万キロカロリーでぇす♥保存して、小分けにしてくださっても結構ですよ♥』

「ぇええぇえぇえ────!!?」


甘味を追いし、天の鎖──バレンタイン大騒動!前編
果てしない感謝への道筋


「うん、流石にそれは私もノーサンキューかな!?」

 

部屋にて跳ね起き、叫ぶは藤丸リッカ。あまりにもあんまりな夢の様子を目の当たりにし、いつになく慌てふためきながらの目覚めとなった。夢であって本当に良かった、きよひーそれは流石にアウトだよね・・・と胸を撫で下ろしていると、たおやかな気配が傍にあることを感じとる。そちらの方に、ふと目線をやると・・・

 

「やぁ、リッカちゃん。どうやら素敵な夢を見たみたいだね。起こした方が良かったかな?気が利かなくてごめんよ。ベッドをひっくり返してでも起こしてあげるべきだったかい?」

 

「え、エルキドゥ!?」

 

にこやかに、いたずらっぽい笑みを浮かべながら物騒な物言いを告げてくるは緑髪の麗人、王の無二の朋友、エルキドゥであった。やほー、と軽く手を振りベッドの縁に腰掛け、柔和な態度にてリッカの目覚めを微笑ましげに見守っている。なぜ、彼・・・彼女・・・彼?が此処にいるのか。そんなリッカの気持ちを読み取ったのか、エルキドゥは穏やかかつにこやかな態度を崩さずにベッドから立ち上がり、ぐぐっとのびを行う

 

「ほら、今日はバレンタインだろう?男子も女子も大いに賑わっていて楽しそうだ。朝早くからね。その君が寝過ごして不参加・・・なんてあまりにもあんまりだろう?だからこうして、起こしに来たのさ。まぁ君がうなさ・・・こほん、夢を見ているみたいだから、起こしちゃ悪いかな?なんて思って様子と寝顔を見てたんだけどね」

 

「うなさ、ってその後に続く言葉が凄く気になる・・・もしかしなくても楽しんでたでしょ!うなされてたの!」

 

「あはは、まぁね。清姫辺りの夢だろう?なんとなく想像がつくよ。起こすどころか自分から起きるなんて、随分とセンセーショナルな夢だったんだね」

 

けろりと言ってのけるエルキドゥ。彼は穏やかではあるものの、生粋の悪戯好きかつ自由人であり、うんうんうなされている自分をニコニコしながら見つめていたと言う。そのあまりにも自由な在り方に、ギルが振り回される側になっている事実を痛感するリッカ

 

「んー、さすがはギルにちょっとどうかと思うと言わしめる親友・・・フリーダム!」

 

「あはは、良く言われるよ。と言うわけで、無事に起きてくれたね。──その起き抜けで申し訳ないのだけれど、君にお願いがあるんだ」

 

着替え出すリッカに向けて、エルキドゥは歌うように言葉を紡ぐ。このバレンタインイベントを利用して、君にお願いしたいことがあると

 

「エルキドゥが私に?いいよいいよ、何でも言って?私に出来ることなら張り切っちゃうよ!」

 

「ふふっ、ありがとう。そんなに難しいことじゃない。ただ、僕と一緒に行って欲しい場所があるんだ」

 

エルキドゥは告げる。バレンタインが想いを伝える日であり、行事であるのなら。自分もそれに倣って行ってみたい場所、伝えるべき想いを告げる場所があるのだと。その為に、マスターたるリッカにもついてきて欲しいのだと

 

「何処へ行くかは、お楽しみと言うことでどうかな?勿論対価として、君のやるべきことを全力で応援し、片付け終わってから向かおう。ちょっと不明瞭な件が多いけど、どうかな?付き合ってくれるかい?」

 

エルキドゥが手をぱんと合わせて願いを告げる。彼は自分をちょくちょく兵器と言うが、感情豊かかつ自由な振る舞いは、その単語が懐かせる冷たい印象を全く感じさせない。気遣い、話し、そして笑うその様はなんら人間と変わりないものだ。少なくとも、こうして話すリッカはそう捉え、そう定義しそう感じ取る。何より彼は、彼女は大切な楽園の仲間である。そんな誘いを断ると言う発想は、この頑張りやさんには有り得なかった

 

「勿論!他ならぬエルキドゥが頼りにしてくれるなんてテンション上がるぅ!私に任せて!割りとどんな環境でも適応できちゃうよう楽園で仕込まれたから!何処だって行けるよ!」

 

力になれるなら力になる。頼ってくれるならその信頼に全力で報いる。その為に、リッカはどんな事だって聞き届け、全力を尽くすのだ。それが、自分自身の生きざまであると信じて

 

 

「あははっ、ありがとう。そう言ってくれる確信があったよ。頼みごとは、信頼できる人間にしか持ちかけないものだから。断られたらショックで自爆するところだったよ」

 

「断るわけ・・・自爆!?此処で!?」

 

「あははっ、うそうそ。大切な楽園を壊しはしないさ。そうだな、どろりと泥になるところだったよ。──泥だけに」

 

「あ!AUOジョーク!」

 

「しまった、ギルがいないや。笑い転げているところを眺めるネタにしようと思ったのになぁ。ま、いいや。それなら行こう、すぐ行こう。まずはチョコを配るんだよね?長い旅だけど頑張ろうじゃないか、リッカ」

 

やるぞー、とアンニュイに決意を示すフリーダムなエルキドゥに、リッカはそうだそうだと冷蔵庫をまさぐる。じゃんぬとギルに頼んで、時空をくっつけてもらったチョコ保管冷蔵庫に手を突っ込んだのだ。そして・・・

 

「じゃあ、はいこれ!エルキドゥの分のチョコ!」

 

リッカがそれを差し出す。エルキドゥの性質を再現した『天の鎖』型チョコレート。鎖の部分はクランチを混ぜ、先端はホワイトチョコレートなどで作った鎖のチョコレートを、エルキドゥに渡す

 

「エルキドゥが一番乗りなのは意外だったけど、渡せてよかった!ほら、ギルの親友だから『生半可なもの渡したら我激おこだぞリッカ!』なんて言われたらどうしよ!なんてビクビクしちゃってさぁ」

 

「──くれるのかい?僕に?ホント?」

 

珍しい、王が見たのならば眼を剥くであろうキョトンとした顔をうかべながら、そっとエルキドゥはチョコを受け取る。甘い香りに、尋常でない努力の証。練磨と研鑽が伝わってくるそのチョコレートを、彼はじっと見つめている

 

「・・・これ、ひょっとして一人一人形が違うのかい?」

 

「勿論!一人一人のイメージを大切にして形にしたよ!それはそれは時間がかかったけどやりきった!ほら、感謝の気持ちにコンパチは無礼でしょ?」

 

「──」

 

「これからもよろしくね、エルキドゥ!さぁ、何処から行こっか!」

 

さらりと難行を告げ、歩き出すリッカをじっと見つめるエルキドゥ。手に収まる鎖のチョコレート、その努力と心意気に、エルキドゥの心には理屈や数値では語れない思いが去来し、ふと、所感が口をつく

 

「・・・うん。やっぱり君は、ギルのマスターに相応しい人間だよ、リッカ」

 

「?どったの?何か言った?」

 

「ふふっ、何でもないさ。さぁ行こうか、リッカ。君の頑張りと健闘を全力で受け取ってもらうとしよう。いらないと言った者の処理は、僕に任せておくれ」

 

「物騒な事はNG!NGだからね!?」

 

はーい、と手を上げて頷くエルキドゥと共に、バレンタインにてリッカは歩み出す。自分を形作ってくれた人達への感謝を示すために

 

「食べるの勿体ないなぁ。永久保存していい?保管しておきたいし・・・あ、リッカ。もう一個作って?」

 

「尋常でない労力がかかるの!来年まで待ってほしいな!」

 

「約束だよ?嘘ついたら僕の泥一杯飲ませちゃうからね?」

 

「アカン内臓ズタズタになるぅ!」

 

バレンタインにて結成された、珍妙な組み合わせの二人。──しかし、バレンタインといえど此処は楽園。穏やかかつ穏当なだけのイベントになる筈もなく──




エルキドゥ「誰に何を渡すのか、どんな順番で渡すのか・・・もう決まっているのかい?リッカ」

リッカ「ん!まずは感謝の気持ちを示すのはねー、じゃんぬだって決めてるんだ!徹夜になっても文句ひとつ言わないで協力してくれたし!やっぱり私だけのサーヴァントとしてじゃんぬははずせない・・・外せないよ!」

「重要なことなんだね。解った、それじゃあ気配を察知して・・・おや?」

じゃんぬ「あ、いたいた!リッカ、大変よ!いやもう、私何言ってるのってなるのは承知で言うわ!物凄く大変なのよ!」

リッカ「噂をすれば!じゃんぬ、ハッピーバレンタ・・・どったの?」

「はぁ、はぁ・・・いい、リッカ、落ち着いて聞いてちょうだい・・・一大事、大変な事が起きたわ・・・!」

「どしたの?何があったの?」

エルキドゥ「くんくん・・・あれ?・・・匂いが動いてる?」

「実は・・・!チョコが逃げ出したのよ!

リッカ「チョコが!?

エルキドゥ「あ~、なるほどなるほど。これは大変だ。やっぱりギルの楽園、リッカには試練が与えられるのはご愛敬って事なのかなぁ・・・?」

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