人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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チン「ほう・・・レフ・ライノールとやら、かの真人を爆破にて瀕死に追い込むとはな。有能ではないか。──なんと!カルデアのメンバーは今が適正では無かったというか!うぅむ・・・此方の人類の命運、風前の灯であったということか・・・人龍めがかの御機嫌王を招いた事こそ、かの魔術王の計画の瓦解であったと言うことに他ならん、な」

(・・・む?予期せぬ召喚の兆しか。ふむ、業務外ではあるが・・・まぁよい、どれ、判定は・・・)

「・・・良し。手配をしておくか。──冷凍保存は英断であったなぁ。オルガマリー・アニムスフィア・・・んー、良玉みを感じるのぉ。うちの家臣はキモい軍師と渋めな好好爺だし、割とここら辺から人類史の凄みを痛感するな。・・・我が治世にて、これ程までに朕に敬意を払いし魂が在るかと問われれば、返答に窮せざるを得ぬ。無銘の魂、まこと良き拾い物を・・・ほう、改築とな!カルデアに脚を運んだ際は、是非改築担当に着手するとしよう!」


ネコアルク(なんかめっちゃ楽しそうだニャ・・・)


恩赦

「ふぃー、作った作ったー!後は当日を待つのみって感じかな!じゃんぬに沢山付き合って貰っちゃったなぁ・・・いつか埋め合わせ、ちゃんとしてあげなきゃ!」

 

 

夜も更けし2時。女性職員一同によるチョコレート製作に参加しており、皆に渡すためのチョコを製作していたリッカ。じゃんぬに監修を受け、ようやく作り終え御風呂に入ろうと廊下を歩いていく。お世話になっている皆に渡すチョコに拘りをもって行っていたら、すっかり深夜・・・夜更けの頃合いとなってしまっていたので、抜き足差し脚でそっと、自分の部屋に戻るために廊下を進んでいくリッカ。改修された金色の廊下が、非常外灯に照らされシックな雰囲気を醸し出している。いつもと違う雰囲気の中、新鮮な心持ちにてカルデアを散策するリッカ。いつもは許可証か特別な認可を得なければ、部屋から消灯以降は出ることは許されない。下手に外出すれば、恐ろしき首切りバニーに出くわすこととなる。問答無用で殺される恐ろしき見廻りを、等しく一同が抑止力として恐れているが故に誰もが外出を控える。故に物音一つしない、足音が響くのみのカルデアであるのだが・・・

 

「・・・ん?あれ?」

 

ふと、リッカの目に仄かな光と機械の駆動音が聞き及び届く。この時間に稼働している器具は有り得ない筈であり、有り得ない筈の物音にリッカは心が弾む感覚を覚える

 

「誰かが夜食でも食べてるのかな・・・?」

 

命要らないのかな・・・許可証取ってるのかなと、もし式に見つかってしまったら問答無用で首が跳ねられてしまう故に、割と危なっかしい生命の危機である事を実感し、不安となったリッカはその音の方へと歩み出す。注意と、万が一式に出くわした場合の弁明と執り成しを行う為、合流を果たさんとしたためだ。AからZ区画まである楽園を夜間かけて回っている式へ、突然会わないことを祈りつつ音の方へと忍び足で駆けていく

 

どうか早まりませんように、そう祈りながら音の出所へと足を運ぶリッカ。その部屋の位置を見ると・・・

 

「召喚室だ・・・誰かがこっそり召喚してるのかな?」

 

そういえば、前にじゃんぬと一緒にこっそり召喚して、ギルに怒られたっけ。そんな懐かしの記憶を思い起こすと同時に、石板正座はしんどい罰であることも思い返したリッカはやっぱり注意喚起を促すために声をかける

 

「もしもーし、召喚の許可はとりましたかー?無許可だと、色々まずいことになりますから早急にギルに連絡を・・・」

 

「お?リッカ先輩ではないか!夜更かしの深夜徘徊とは中々に悪じゃの、流石はわしのマスター!たまにはうつけムーブもしっかりやらないとネ!」

 

朗らかに挨拶を返したのは、バスターパジャマに身を包んだノッブこと織田信長であった。カタカタと軽快に召喚機能を整備し、何者かの召喚を行っている様子である。召喚はギルの号令であるものであり、無許可は割とまずいよ?と説明したのだが・・・

 

「百も承知。じゃがのぅ、どうしても招いてやらなければならん者どもがおってなぁ。なんとかして呼んでやらんとなとこっそり抜け出して来た訳じゃ」

 

「招いてやらなければならん者?」

 

然り。是非もなしに落とし前をつけてやらねばなるまい、とばかりに溜め息をつき、コンソールを弄るノッブ。召喚サークルが動きだし、その当の人物を招き入れる術式が展開されていく

 

「んー、まぁのぅ。わしの周り拗らせてめんどくさいヤツばっかじゃろ?野放しにしとったら絶対またやらかすのは目に見えておるからのぅ。・・・いい加減リッカ先輩に身内がらみで迷惑かけるわけにもいかんでな」

 

全く、有能なのは間違いないんじゃがのー、とリッカに御茶とマントを羽織らせカタカタと機器を弄る。リッカはその物言いにて、彼女が招きたいと願っている相手が何者かを察し、読み取った

 

「疲れとらんか?無理に付き合わず寝るが良かろ?先輩毎日ワーキングし過ぎじゃからな。たまにはぐだぐだするのも大事じゃ」

 

「んー、そうする。ノッブのやること見届けたらね!」

 

「うはは、悪い子じゃな!だがうつけの方が人生楽しいし、是非も無いよネ!」

 

そんな軽いノリで自分に付き合う話の解るマスターににかっと笑みを見せながら、召喚の儀式を起動する。光が満ち、輝き、やがて部屋が白く包まれていく。その様子を見定めながら、ノッブは頬杖をつき隣に座るリッカにもたれながら呟く

 

「まぁ、まともに召喚にも応えられるかどうか解らんクソ雑魚霊基じゃが楽園なら大丈夫じゃろ。まぁいてもおらんでも変わりはせんが・・・賑やかしくらいにはなるじゃろな」

 

「ウンウン、ソダネー」

 

「なんじゃ、その棒読み!ノッブ嘘つかない!ホントじゃし!リッカ先輩、わしをツンデレキャラと勘違いしてはいかんでな!勘違いしないでよねっ!」

 

そんな夜のやりとりを行いながら、召喚の光をアンニュイかつぼんやりと眺める二人。深夜のローテンションにて現れし、ノッブが招いた英霊、それは・・・

 

「織田信勝!織田信勝です!え、僕でいいんですか!?僕でいいんでしょうか!?やったー!わーい!わーい!お会いしとうございましたー!」

 

「うるさっ」

 

そう、ノッブが招きたかった者。それは身内にして弟、帝都にてなんかいた信勝であった。感激に満ちた物言いにて姉である信長へとコンタクトを果たすも、ノッブのテンションはうってかわって平静を保っており何処と無くアンニュイさを崩していない。変わっとらんのぅこやつ、みたいな感じな対応にて如何にノッブに会うことを熱望しているかを聞き流し、やがて頃合いとばかりに・・・

 

「分かったから退けぃ、信勝。身柄だけ手にしたのならば十分であるがゆえな」

 

「あいたっ!?」

 

デコピンにて沈黙させ、更に召喚サークルを起動させていく。たった一発にて撃沈する儚い霊基に涙を禁じ得ない信勝にリッカはそっと手を合わせる。だが、どうやらノッブの喚びたい者はまだ終わっていないようである。引き続き、軽快にカタカタと、機械を一人で器用に動かしていき更なる招集をかける

 

「え、僕に会いたかったんじゃないですか姉上!」

 

「お前ともう一人招かなきゃならん輩がおるのじゃ。また暴れられたら面倒じゃからのー。とりあえず、夜分だから静かにせい」

 

引き続き召喚の儀式を展開するノッブ。リッカはその様子をただ静かに目の当たりにしている。やけに落ち着き、かつ分かりきったようなツーカーな反応を示す二人に信勝は困惑しながらキョロキョロ交互に見つめている。そして、光が収まり・・・

 

「──まさか・・・私を、招いてくださるとは・・・信長公・・・」

 

紫色のスーツ姿、サングラスをかけ桔梗の家紋のネクタイにて現れし、かつての忠臣にして裏切りを行った武将。──帝都にて、狂気に等しき感情にて神を産み出さんとした者・・・

 

「おうキンカン。サルより早く招いてやったぞ。感謝せい。とりあえずまた阿呆な事をせんようにな」

 

「──信長公・・・!!」

 

明智光秀。召喚した際に彼が求め、そして欲した言葉をかけ労り、そして楽園に招き入れる。感激に打ち震える光秀、そして・・・

 

「信勝、そして光秀。色々禍根を残しているかどうかは知らぬ。だがそれは今は忘れよ。我等の確執は此方の者等にはなんら関わりはない。なればこそ、わしは貴様らを招いたのじゃ」

 

「ノッブ・・・」

 

サーヴァントとはそういったもの。生前の確執は我等には最早終わったものである。なればこそ、こうして共に存在が叶う。なればこそ再び招いた。なればこそまた共に轡を並べんとした。なればこそ・・・

 

「──励め、貴様ら。再びわしと共に世界を、遥かな未来を見据え邁進するのじゃ!」

 

「「──ははっ!!御心のままに!!」」

 

例え敵対していようとも、自らに仇なそうとも。見処があるならば重用し、赦し、共にある。仇なし刃向かうとあらば灰塵とし、無慈悲であるノッブであるが・・・一度見定めた者であるならばこうして寛容な処置と恩赦を与える。こういった一面こそが、第六天魔王と呼ばれながらも畏怖と畏敬を集め、人気と人望を集めに集めた要因であるのだ

 

「──ふふっ、やっぱりノッブは身内には寛容なんだね!」

 

「うはは、わしは気に入った相手はとことん重用するのじゃ!──あぁ、そうじゃそうじゃ。言っておかねばな!」

 

ふと見れば、自分が一番ノッブに上手く仕官できるのだと息巻き火花を散らすキンカンとカッツを華麗にスルーし、リッカのほっぺをむにむにと引っ張りながら、再び白き歯を見せリッカに笑いかける

 

「そなたも今生にて見つけたわしイチオシのマスターじゃからな!最早わしらは一心同体!これより先も面白おかしく過ごし、そんでたまにはぐだぐだしたりして・・・楽しく人生を過ごすがよいのじゃ!なんせ、人間五十年!めっちゃ短いんじゃからな!」

 

「うん!これからもよろしくね、ノッブ!是非も無しだよね!うん!」

 

「あー!いいなー!そんなに御気に入りになってるなんて羨ましいです!マスターズルい!」

 

「あやつでないなら良し!!」

 

「あ、気を付けるのじゃぞリッカ先輩、こいつら解釈違いと思えば謀反反逆当たり前な戦国畑。わしみたいに本能寺にならんようにのぅ!」

 

「それどうやって気を付ければいいの!?」

 

そんなこんな、なんやかんやでこっそり仲間が増えたぐだぐだ面子。光秀、そして信勝

 

「言っときますけど、僕が一番姉上を理解しているんですからね!勘違いしないでくださいね!」

 

「愚かしさ極まったな。私こそ!私こそ信長公の唯一無二の理解者!私こそ信長公の竹馬の友なのだ!!」

 

「おう、お主らボイラー室な。改築とか100年早いわ。あとわしに会うときは売店でなんか買ってくることじゃ。手ぶらで会ったら打ち首な」

 

「えっ!?姉上、打ち首・・・い、いやだなぁ、冗談ですよね?」

 

「わしは無能は好かん。簡単なパシりも出来ん家臣など・・・是非も無いよネ?」

 

「ははっ、お任せください。美味、完璧な小間遣い、完璧なパシリをこなしてみせましょう!」

 

「・・・もしかしてノッブ・・・パシリが欲しかったからとか?」

 

「ま、ぶっちゃけて言うとネ!」

 

なんだかんだで、その真意は何処へあるのやら。ノッブは今日も己の生きざまと道を、マスターと共に歩むのだった──

 

 

 




ノッブ「よし、夜も更けて来たし!そろそろ寝るかのぅ!わしんとこ来て一緒に寝るかの!」

「一緒に!!?」

「寝る、ですと・・・!?」

「あ、いいね!たまには一緒に」

「姉上!!僕も是非一緒に!」

「布団の仕入れはお任せください。万全な温度にて暖めてみせましょう!!」

「貴様らなんぞ招くわけないじゃろ!女同士水入らずなんじゃ!控え!控えぃ!」

リッカ「・・・あれ?なんだか忘れているような・・・」

式「そうだな。今が深夜で、皆が寝てるって事だな」

「──あっ」

「──よし、とりあえずお前ら、其処に並べ。話は夜通し、じっくり聞いてやる」


~この後、徹夜にて絞られ・・・同時にギルに話が伝わり、ぐだぐだメンバーは連帯責任にてトイレ掃除を、『ぜひもなし』石板を背負い行うはめになりましたとさ──

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