人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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先刻前

茶々「うわっ!?茶々が拠点にしてた公園が酷い血みどろ模様になってる!?何故に!?」

龍馬「あちゃぁ・・・ここ、一応皆の公園だよ?」

お竜「全くだ。お竜さんだってもうちょっと優しくやるぞ」

「いや、それは割りといい勝負・・・こほん。茶々さん、此処で楔は合ってる?」

「うん、茶々此処で待ちぼうけしてた!いやだって誰もいないし!敵とかうじゃうじゃで動けなかったし!他に誰か・・・あ!」

「ん?・・・あぁ、いたいた。おぼろ丸くんが言ってた通り」

土方(ボリボリボリボリボリボリボリボリボリボリ)

沖田(チーン)

「・・・保護、しよっか。カルデアのサーヴァント・・・で、いいんだよね?」

お竜さん「お竜さんに聞くな。まぁ、あんなユルいの、戦争には呼ばれないだろ」

「それもそうか。・・・よろしく、茶々さん」

「茶々ァ!よーし・・・って!なにゆえ!?」

「ほら、僕・・・敵味方わからぬうちに新撰組と顔合わせたら大変な事になりそうだし、ね?」

「むむ、変なしがらみとかいつもそんなんばっか。茶々そーいうのもういいのになー。おーい!沢庵ー!」



信長「・・・何?キャスターは聖杯をこちらに譲る、じゃと?」

信勝「どうもそうみたいですね。同盟は組むけど聖杯はいらない・・・どゆことですかね、姉上」

「此処では信長と呼べというに。・・・さてな。一々殺す相手の志などに思いは馳せぬ」

「さすがー!姉上はやっぱり魔王です!感服いたしました!」

「信長と呼べ。・・・キャスターの陣営に伝えろ。同盟、受けてやるとな」

「はい!いやー、姉上の恩情に感謝してもらいたいですねー!」

「おい、次は本当に許さんぞ」


それぞれの向かうべき戦場

「おう、帰ったな。それで、戦果はどうだ」

 

ランサーを下し、探偵事務所へと帰還したリッカとマジンさんに真っ先に声をかけしは意外な人物であった。洋風の服に黒き羽織を纏い、茶と沢庵茶漬けを啜りながら椅子に腰掛けくつろぐ長身の男。──カルデアよりやや紆余曲折あり、この帝都に足を運びリッカを迎えに来たとするものの、公園で新撰組にて誠の旗を先程まで打ち立てていた人斬り治安維持部隊・・・

 

「ヒッジ!ヒッジなの!?来てたんだ!?」

 

「おう。ったく、目を離したらすぐに迷子になりやがって。新撰組としての自覚が足りねぇぞ自覚が」

 

御茶漬けを啜り、沢庵をスナック感覚で食べつつ土方はリッカを諌める。全く探す方の身にもなりやがれと。一頻り暴れ抜いた後であるが故か、先程までの鬼神がごとき迫力と気迫は鳴りを潜め、仲間を穏やかに迎え入れる副長としての顔が面へと表れているのだ

 

「むむ、ヒッジ。羊のようなものか。随分と怖いヒッジがいるのだな、リッカ」

 

「・・・あん?お前・・・」

 

リッカの傍にぴったりとくっつくマジンさんを垣間見て、土方は眉を上げる。肌の色は違えど、胸の大きさは異なれど。見間違える筈もない。このサーヴァントには、彼は心当たりがある。それはいつも顔を合わせている・・・

 

「戦果は上々だ。リッカとマジンさんが力を合わせて大勝利ー。ポメ蔵は噛ませになった。以上」

 

「何が以上じゃ素人女ァ!見ちょれよ、わしぁ生まれてはじめて真面目に気合いいれて特訓しちゃるき、目を見開いとけや!」

 

「・・・あぁ、まぁお前がいいんならいい。大体、お前の覚悟はお前のもん、お前の人生はお前のもんだ」

 

自分が口を挟む問題ではない。相手が、このマジンさんとやらが何者であろうが。成し遂げることや接する態度が代わり映えするものではない。此処にいるならそれでいい。そう結論付ける事により、土方は折り合いをつけたのだ。──沖田総司の、有り得たもう一つの可能性に

 

「そぼろ丸ー!かすてぃら!かすてぃらまだか!茶々はいい加減空腹ぶりが有頂天!はよ、はよはよ!」

 

「おぼろ丸だ。こちらにある、確かに納品した」

 

「モヤシ丸、あれだ。カエルを食べるか?旨いぞ、カエル」

 

「おぼろ丸だ。遠慮しておく。・・・カエルはいささかいい思い出がない」

 

おぼろ丸もまた、主君らの帰還を歓迎し買い出しを終える。茶々、そしてお竜の要望や無茶ぶりをいなしつつやんわりと家事をおこない、カルデアへの報告書を纏め上げているのだ。分身を帝都に派遣し、それぞれの勢力の情勢を推し量り偵察している。直接戦うばかりがサーヴァントではない。こうした影の労働は忍としても望むところであった

 

「ごめんね、ありがとうおぼろ丸くん。お竜さんも楽しそうだよ。以蔵さんもやる気が出たようで何よりさ」

 

「はっ!勘違いすな。わしは報酬の為にやるだけじゃ!一度受けた仕事、一度受け取った報酬分の働きは絶対に裏切るわけにはいかん。次の仕事の評判に繋がるきのぉ!」

以蔵もまた、先程の戦いにて精神に些かの改革が起きたらしく、意気軒昂に特訓を申し出ている。本人は否定しているが、その身を磨かんと奮い立っているその姿は紛れもなく修行者、鍛練に励む剣豪が如しだ。あまりに美しい意識改革、無邪気にはしゃぐ以蔵の姿に、龍馬はかつてはしゃぎ回った小さき頃を思い出し笑みを浮かべる

 

「あん?何を笑っとるがじゃ龍馬!覚悟しちょれ、鍛えた剣で必ずおまんを血祭りにあげちゃるきのぉ!」

 

「はいはい、御手柔らかにね。ほらほら、お竜さんも構えないの」

 

「そぼろー!かすてぃらおかわり!茶々、一つで満足する茶々じゃないんだけど!」

 

「承知した。拙者の分を食べるがよし」

 

賑やかかつ和やかな一時にて騒がしく愉快な時間を過ごす中、一息着いた一同が情報を整理する。買い出しにいった茶々、それについていった龍馬が一通りの状況の説明を行う

 

「ランサーをマジンさん、リッカちゃんが倒してくれたお陰で楔が壊れ、特異点の強度が揺らいでいる。この調子でいけば、問題なくリッカちゃんらはカルデアに戻れる筈だよ」

 

ライダー、バーサーカー、アサシンの楔はこちらへと渡り、ランサーは討ち果たした。残るはセイバー、アーチャー、キャスターの楔であるが故に攻略の担当を割り振るための会議を開く。・・・キャスターの陣営の攻略は除外された。他の勢力がいるなか、陣地作成を旨とするキャスターに掛かりきりになるにはあまりにもリスクが高いからだ。そして自然と、狙いはセイバーにアーチャーへと絞られる

 

「羽織のセイバー・・・土方氏の御墨付きも貰ったよ。彼女は沖田総司。新撰組最強と謳われた剣士だ。これは一筋縄ではいかない相手だよ」

 

「あぁ、だろうな。俺も奴の剣は見えた試しがねぇ。挑むならそれなりの覚悟はしておけよ」

 

天才剣士にして、新撰組最高の剣客。沖田総司の名を聞き土方は沢庵のお代わりをよそい飯をかっ込む。そして同時に、その言葉を聞いたマジンさんがリッカへと手を上げる

 

「・・・リッカ。私は、マジンさんはこのセイバーに挑みたいぞ。なんだか分からないが、挑まなくてはならない気がするんだ」

 

「マジンさん?」

 

マジンさんは、その名を聞いた際に胸に何かを感じたのだ。懐かしいような、何かただならぬ意思を、宿命を感じるかのような気概を覚えている。その名前にて結ばれしものが、見えざる何かに牽かれるような、そんなえも言えぬ言葉が

 

「──分かったよ。なら私とマジンさんはセイバーに挑む。私はマジンさんの直感を信じてみるよ」

 

リッカにはその感覚は感じることが叶わないが、マジンさんの直感、フィーリングを信じることとした。言われてみれば、沖田さんとマジンさんは見た目が極めて近しい。何かしらの因果関係を感じる風体と装いに通ずる何かを掴むと言うならば、マジンさんの謎を解明することが叶うならば。如何なる死地であろうとも、共に飛び込んでいく覚悟をリッカは決めているのだ

 

「じゃあ僕とお竜さんはアーチャー・・・織田信長だね。アーチャーは強敵だけどなんとかやってみるよ。こっちは任せてほしい」

 

龍馬はその返答を以て行く末、自らの相手を定める。第六天魔王なる織田信長を相手取るという大志を躊躇いなく告げる。聖杯戦争という大一番を乗り越える為には、けして素通りできない壁だ

 

「お竜さんと龍馬に任せとけ。茶々は留守番、モヤシ丸と糞雑魚ナメクジは仲良く稽古でもしてるといいぞ」

 

「あぁん!?何を言うちょるがじゃ!龍馬がアーチャー、信長に勝てるわけがなかぞ!撃ち殺されゆうに決まっとる!」

 

以蔵は理解している。サーヴァントとしての位置と実力を把握している彼だからこそ、サーヴァント間の戦力差は明確に掴み取れている。織田信長は極めて強力なサーヴァントであり、自分が直接対決することを避けるほどに強大である。そんな相手に龍馬がお竜さんと二人で挑むなど、無謀を通り越して自殺にしか思えぬ判断であった

 

「そこはまぁ、何とかしてみるよ。──なんなら僕たちを、以蔵さんやおぼろ丸くんが助けてくれるのもアリだと思わないか?」

 

なんじゃと、と言い淀む以蔵と対照的に、おぼろ丸は理解する。自らに求められたもの、成し遂げるべきことを

 

「──アサシン。これより拙者を含めた腕の立つ楽園のサーヴァント達との組手を行う。彼等が戻ってくる間、拙者としのぎを削るぞ」

 

「なんじゃ、藪から棒に。まぁわしとしちゃ断る理由もないきに構わんが・・・」

 

(──ありがとう、おぼろ丸くん。頼むよ)

 

(もしもの時は、このアサシンの力も必要となる。でっかいことをやるには、沢山の人が必要であるのだから)

 

おぼろ丸はアサシン、以蔵に師事し刀を、剣を教授し鍛え上げる選択を行う。その際を進むべき道標とするために、自らを含めた数多無数の剣技を身に付けさせるためにあえてこのタイミングにての待機を買って出た

 

「主君。・・・いいか?」

 

「勿論!ポメ蔵さんをよろしくね!」

 

その判断を尊重し、二つ返事でリッカは頷く。おぼろ丸は龍馬に通常以上の感慨を懐いている事は見てとれた。なればこそ、ここは彼の意志を優先する選択をとったのだ

 

「忝ない。分身は使役している故、会話と通話に支障はない。──始末剣を、更なる高みへと導いてみせよう」

 

「はっ、忍なんぞが随分といきりよるがじゃ。おまんの何処にわしが覚えるような剣が──」

 

・・・瞬間、瞬時に刃が煌めき、首筋に日本刀が突き付けられている事に思い至る。気配を乗せず、音も立てずに突き立てられた暗殺の刃。それが始末剣を振るう以蔵へと開帳されたのだ

 

「天賦の才を持つ人斬りよ。外道の剣に近しき暗殺の剣、見事モノにしてみせるが良い。・・・ついぞ修めただけで、一度も人を斬り殺めた事は無いのだがな」

 

「・・・上等じゃ。後ろから切り捨てるんは手のもんよ。──さっさと始めようやおぼろ忍者。その剣、余さず覚えちゃるきのぅ」

 

即座にやる気をみせる以蔵。おぼろ丸の言に容易く乗せられし彼の素直さとチョロさに一同はほっこりとした感情を浮かべる。どうやらおぼろ丸や龍馬は、以蔵の無茶を諌める為にこそこの提案を行ったようだ

 

「俺は今は待機だ。連れが・・・沖田が寝込んでるんでな」

 

暴れまわるのみ暴れまわった土方は待機を決断した。途中で血を吐き、寝込んでしまった沖田を介抱すると言う。強面らしからぬ気遣いの細やかさに、茶々やお竜さんは意外そうに声をあげる

 

「そんな怖いのにパパみを感じるとか愉快じゃなお主!茶々、そーいうの嫌いじゃないかも」

 

 

「しっかりやれよ。事務所を壊すなよ」

 

「当たり前だ。いいかお前ら、やるからには勝て。諦めるな、進め。もし諦めたなら・・・俺がお前らを叩き斬ってやる。いいか、よぉく覚えとけ」

 

「うん!勿論!じゃあ皆、頑張ってこう!!また必ず、此処で再会するために!!」

 

「「「「おー!」」」」

 

リッカの音頭に、一同は共鳴しあわただしく準備を行う。休息を終え、力強く夜明けを望むために

 

「リッカ、先に言っておくぞ。どんな真実が待っていても、マジンさんはリッカのマジンさんだ。名前をくれた恩は絶対に忘れない。だからリッカも、忘れないでくれ」

 

「(ヒュバァ)」

 

「そぼろ丸ー!茶々、アイスが食べたいんだけど!ダッシュダッシュ!」

 

「・・・すまぬ、アサシン。稽古は暫し待っていてくれ」

 

「おまん、忍なのにぱしられちゅうんか。・・・全くもって命令で生きるもんはやりきれんのぉ」

 

「あはは、そう言わないで。じゃあ、皆・・・気を付けて。おぼろ丸くん、終わったなら様子見に来てくれるかい?」

 

「任されよ」

 

「おう、戦果を期待してるぞ。・・・おい、マジンとかいったな」

 

「?」

 

「・・・死ぬなよ。そんで忘れるな。お前はお前だ」

 

「・・・良く分からないが、勿論だ。私には、頼れるマスターがいるのだから」

 

それぞれの決意を乗せ、探偵事務所の扉が開き。・・・──一同は、自らの戦場へと向かっていく・・・──

 




アーチャー陣営

信長「ほう、我が軍勢を容易く蹴散らし此処に至るとは。それなりに出来る英傑なようじゃな」

龍馬「いやはや、見た目は珍妙だけどとんでもない兵器だね、あれ。お陰で手間取っちゃったよ」

「フン、そうは見えぬがな。だがまぁよい、ライダー如きがわしの首を奪えると思うてか。──屍、三千世界に晒してくれよう」

「ライダー、ライダーか・・・ああ、それなんだけどね。『本来のライダーは、もういないよ』」

「・・・何?」

お竜「お竜さんがぶっ飛ばしたからな」

龍馬「僕らは本来の顧客の枠外・・・『世界の後押し』で此処に来た」

信長「・・・───うはははははははは!!そうか!抑止力!わしもいよいよ世界の敵となろうたか!そうかそうか!!」

「織田信長。この特異点を崩壊へと導く鍵・・・此処でなんとかさせてもらうよ。──行くぜよ、お竜さん!」

「おう、本気を出して魔王なんかケチョンケチョンだ!」

信長「くっ、くく。竜退治とは面白い!良かろう、逆鱗と言わずすべての鱗を貫いてくれるわ──!」

~セイバー陣営

リッカ「あっさりついちゃったね」

マジンさん「うん、シンプルはいいな」

沖田総司「・・・呑気なものです。この場を陣取った私の目の前に現れたことの意味、理解していますね?」

マジンさん「───お前は・・・」

沖田「・・・随分と私に似ているようですが、関係のないことです。すぐに終わるのですから」

リッカ「──来るよ!マジンさん!」

「戦場に、事の善悪なし。・・・いざ、参りましょう」

マジンさん「お前は・・・私、なのか・・・?」


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