(かつての私達の中で、一番自己主張や自我が薄かった彼女が、こうして私に声をかけに来るなんて)
~
あ、はい。御茶会に・・・ですか。すみません、それはどういった意図なのでしょう。ブリーフィングの延長線、でしょうか
そうではない?交友、交流のようなもの・・・?
・・・すみません。その行為に意義が見出だせません。申し訳ありませんが・・・作戦の立案や訓練があるので。失礼いたします
~
「・・・そういえば、最後まで友達にはなれないままに別れてしまっていたのね。むしろ、覚えてもらえていただけ幸運だったのかしら」
(・・・今、考えてみれば。何処にもいけない、何も成し遂げられない。そんな印象を彼女に重ねていた時点で。友達だなんて虫のいい話だったのかも知れないわね・・・)
「・・・ここね。まさか一室を借りきるだなんて・・・」
(マシュ、少しは笑えるようになったのかしら。ペペロンチーノは『三日会わなかったら女は変わるものよ。あっと驚く準備をしておきなさい?』と言ってはいたけど・・・)
「・・・一体何が変わると言うのかしら。そんなに簡単に人が変われたらどんなに・・・」
マシュ「こんばんはー!お久し振りですオフェリアさん!元気にしていましたでしょうか!お変わりありませんか?私はとっても元気です!」
「──────────はい?」
「再会に、かんぱーい!前は申しわけありませんでした!あ、こちらのパーティーグッズはですね、オフェリアさんとの再会を祝して私が所長と用意したものです!はい、こちらの七面鳥はですね!腕利きのシェフに依頼したもので、こちらのケーキは・・・」
「・・・・・・マシュ?え、え・・・ぇえ・・・?」
「まずは、声をかけてくれてありがとう!えっとその、楽園におけるパイレーツ・オブ・カルデアンの三人組!」
コロンブスが最低限の礼節をもって挨拶を交わす。彼に声をかけたのは歴史に名を残す女海賊、アン・ボニーにメアリー・リード。男性よりも猛々しく雄々しく海賊人生を送ったとされる二人組、そして世界を押し広げ決定的なターニングポイントとなりし星の開拓者の称号を受けた女海賊。真名は伏せるがとある黒ひげがリスペクトを止めない至高の船乗り、フランシス・ドレイクである
「リッカも来るとは幸先良いねぇ。一度じっくり『操船』を教えてやりたいと思ってたところさね!歓迎するよ?大事な妹分はさ!」
「──あぁ、なるほどね」
ドレイクの言葉に一人頷くリッカ、それとは対称的に、コロンブスはドレイクの誘いにはやや恐縮気味に挨拶と会釈を交わし、その偉大さに気後れしている様子が見られる。何よりも彼のいたスペインは、フランシス・ドレイクに徹底的に叩き潰された事のある過去があるのだ
「国同士の因縁は僕らには関係無くとも、どうしても意識しちゃうのは許してほしいな。ほら、冒険の出資をしてくれたから恩義は感じているつもりなんだ。だからこそ、ね?」
「あーあー、そんな事気にしてたのかい?国は国、自分は自分じゃないか。胸を張りなよクリストフォー・コロンブス。あんたのやった事は色んな意味で輝かしい栄光だ。国がどうとか知ったことじゃないさね。アタシはあれだよ?アンタが金持ってるオヤジの姿だったら色々ふんだくってやろうかとも考えてたわけだし?」
そんなあっけらかんと剣呑気味な言葉を爽やかに言ってのけ笑うその風格は、海を渡り歩く大海賊の気骨そのものだ。嵐に晒され雨に打たれ未知の海路を行く者が神経質ではやっていけない。豪快に割り切り、また即断即決を下せるのは船長として当然のスキルであるからだ
「ありがと姉御!というか、海賊会って言うけど楽園に流石に海は無いよね?ギルも『海を再現できぬ訳ではないが、産み出される生命と環境の維持は尋常でなき人員と手間がかかる』って言ってたしね」
そう、カルデアは楽園なれど地理的な面で海には縁遠い。どこぞの海域や制海権を掌握できれば話は早いのだが、この現代にて誰の手にもつかぬ秘境はそうそうない。そしてそれらは三人も理解しており、決して船山に登る付き合い等ではないと語る
「まぁ酒場や飲み会みたいなもんさ。どんな場所に行ったか、どんな航海をしたかどんな宝があったか。そんなのはいい酒の肴になるし聞いてて面白いだろ?せっかくゴージャスな提督サマが歴史と偉人を繋げたんだ、そんな場を作らないなんてもったいないさね!」
「なんでも良いのですよ?リッカさんやコロンブスくんの武勇伝、馬鹿話、昔を懐かしむ話。私達はサーヴァントとして、仲間として物凄く興味がありますわ」
アンやドレイクの言葉が示すのは海賊の定義には囚われない会合であり、単なる海における集まりや物語の持ちよりであることを示す。勿論メアリーが言葉にするように、海賊ならではの話も行うと言うのだ
「もし新しい御宝の話があればそれを交換したりしなかったり、一緒に目指したり同じ船に乗ってレイシフトしたり。そんな海賊らしいやりとりを楽しむ会でもあるんだ。リッちゃんもコロンブスも大歓迎だよ。一緒に七海を荒らそう。海賊旗の製作とかも面白そうだよね」
三人は心から歓迎を示してくれている。彼女らは華がある美女達であり、男であるなら光栄極まる申し出であることに異論はない。そしてマスターとして、大事な妹分や対等な仲間であるリッカとは別に、特にアンやメアリーはコロンブスを歓迎しているのだ
「私達が駆け回っていた『カリブ海』という舞台そのものをあなたは発見したようなもの。大先輩も大先輩ですわね。・・・まぁ島についてからはともかく、航海については聞きたい話、いっぱいありますわ」
「うんうん。君がその姿なら二度美味しいじゃないか。君の晩年の行動はどう映るのか、ってさ」
その悪気なく他意ない誘いを嬉しく光栄に思いながらも、それを断りに来た自分にやや申し訳無さを感じ目を伏せるコロンブス。そんな彼をフォローすると同時に、いて然るべき人物がいないことにリッカは気付く
「あれ?くろひーは?」
大海賊も大海賊。海賊と言えば彼といったイメージすらあるリッカは不思議に思い訪ねる。彼から貰ったキャプテンハットは最高の宝物であり今も部屋に飾ってある。そんな彼が海賊会にいない筈は・・・
「リッちゃんは奇跡的に波長があってるから大丈夫かもだけど、あの変態は初手でブラックリストに入っちゃってるんだ。逆にあいつだけは絶対に入れない会だよ。というか・・・」
「『BBAにリッカたんがいる空間とかエモくてとうとみまみれでいれたもんじゃねぇ!こっちから御断りですありがとう!』とか言っていっちまいやがった。なんというか拗らせてるねぇ・・・」
そんな自主的辞退と出禁の他に、それこそが入ってほしい理由の一つでもあるというのだ
「恐らくあちらはあちらで徒党を組むでしょう。世紀の大変態ではありますが海賊としては一流ですし。超変態ですけど」
「わかりみ。いつもアニメとかお奨めとか勧めてくれて本当面白いんだよねぇくろひー。自主辞退かぁ・・・」
「それにさ、これからカルデアにまた別の海賊が召喚されるかもしれないじゃない?もしチキンのラカム、キャプテン・キッド。イケメンバーソロミューが召喚されたらさ、もしかしたら黒ひげのほうに付くかもしれないんだ」
メアリーが語る海賊たちは召喚がされていない者達、名の知れた海賊達だ。彼らが蜂起するとするならば、黒ひげはパイケットの同士としても誂え向きな旗印なのである
「ま、そんな訳で客寄せパンダは多いほどいい。アタシにコロンブスの名前がありゃ、少しは感心が集まるだろ?固いこと言わずに乗ってみな、って話さ!」
そんな朗らかに告げる三人に、コロンブスはあえて告げる。此処だけはハッキリさせておかなきゃと、あぁ確実に答えは一つだろうなぁと諦めも込めて彼は口を開く
「根本的に、根本的にだよ?確かに若い時、独り立ちしてた頃には私掠船に乗ってた事もあるけど、生業としてみたらというと・・・僕は海賊じゃないと思うんだけどなぁ・・・」
「あ、そうなの?未知の島を見つけて好き放題に略奪とか誰がどう見ても海賊だと思うんだけど」
「御自身が仰有った通り、私掠船に乗っていた。それはつまり合法的に海賊行為を行った証左。いつの若い頃かは変わってきますが、それは紛れもなく海賊なのでは無いでしょうか?」
うむむむ、とコロンブスは閉口してしまう。彼は若い頃、私掠船・・・政府に容認され略奪行為を認可された船に乗っていたという。それは間違いなく事実であるし若い頃ゆえ否定もできない。しかしコロンブスからしてみれば今の自分は冒険に憧れ、希望を夢見た駆け出しの頃の自分であるのだ。まだ船に乗ることを夢見ているような始まりの少年であるため、海賊を行う自分にはピンと来ていないのである
(ま、マスター!お願い、何とか上手い感じに・・・!)
(オッケー、とりあえず言ってみようかな!)
コロンブスの困り果てた顔にウィンクを返し、リッカが交渉に挑む。その対話にて事を納めんと決意し言葉を紡ぎ出す。マスターとしての戦いであり、技術であり対話を行うのだ
「まず二人とも。此処のコロンブスはリリィ・サーヴァント。どんな未来にいくかどんな明日を選ぶかはまだ自分にも分かっていないサーヴァントで、そして成長した自分とは別人と言っていい彼な訳なの。だから往年の海賊行為や駆け出した頃の自分の行いはピンと来てないだろうし、それをこれだからこうだと決めつけて価値を当てはめちゃうのは少しどうかと思うんだよ、私」
「むむ、正論で攻めてきたね」
「確かにリリィと呼ばれる彼には、謂れは無いのかも知れませんわね。彼の半生は謎が多いですし」
リッカの言葉に理解と同意を示すアンとメアリー。コロンブスが頼みにしたのはこういった人望とコミュニケーションであり、彼女の口添えには不快になるような感情論は挟まらない。だからこそ、其処には円滑な議論がうまれるのである。そして・・・
「そして、あえてケツの穴のちっちゃい事を言うようだけど・・・此処がコロンブス、今の彼を海賊会に入れる訳にはいかない理由だと私は思う。いい?」
こほんと咳払いし、当たり前の真理を告げるリッカ。言われてみればまぁそうだよねとされる当然の真理を、ピシリと告げ断りの理由を告げる
「『免許のない海賊行為は犯罪です』!コロンブスは今の選択を重んじるサーヴァント、海賊と自分を定めて海賊会に入っちゃまた外道コロンブスといっしょくたにされちゃうかもしれない。だから交流はともかく、所属はきっちり御断りしておきたいってことだと思うな」
リッカの言葉に頷くドレイク。真意はどうあれ、それは確かに理に叶っているといった態度を示す。コロンブスもそれに重なり同意を示す
「生前散々やらかして鎖に繋がれた僕だからこそ、僕が海賊だなんて開き直るわけにはいかないんだ。悪いことは悪いこと、きっちり分けて考えて新天地に行きたい。それに何より・・・海軍や政府に追われながら向かう船旅なんて、騒々しくてたまらないと思うんだ。僕は僕として、僕だけの道を行きたい。だから──海賊を名乗るわけにはいかないんだ。・・・それが、断る理由だよ」
コロンブスは言う。自分はせめて違う未来を、誰も踏みつけにしない船旅を選びたい。夢物語で幻想でも、それが自分に与えられた核であるのだと信じ歩みたい。だからこそ、海賊といった自分の行動へのある意味では免罪符を、受け取るわけにはいかないのだと告げたのだ。リッカの助け船に乗る形で。そして──
「ふっ──あっはっはっはっ!そうかいそうかい、それが答えかい!『やっぱり』ねぇ!賭けはアタシの勝ちだね二人とも?」
ドレイクが腹を抱えて笑い、メアリーが肩を竦めアンも息を吐く。そう言う答えは分かっていたと言うように
「うん。リッちゃんと決めた答えでそれならしょうがないね。しっかり交流と信念が両立できてるようで何よりだよ」
その対応はあっさり、そして望んでいたとばかりに気軽であった。その選択を選んだことこそが、大事なのだと告げるように
「えっ?それは・・・」
「私達なりに、あなたを気にかけておりましたのよ?リリィだなんて不思議な召喚、足下が定まらずふらふらしてしまうのではないかと思い、ともすればサーヴァントに声をかけて西へ行こうなんて無軌道な事をしかねませんし?もしそうなら監視も兼ねて目の届く場所で、と思い声をかけてみましたが、マスターに頼れるならば杞憂でしたわね」
「確りと自分が見えてるならそれが一番さ。マスターっていう頼りになる副船長もいるんだ。自分の行き先を見失うんじゃないよ?」
リリィ・サーヴァントであるコロンブス。未知数であるがゆえに彼女らは危惧したのだ。かつての自分に引かれる可能性、カルデアに仇なす可能性を。その牽制を込めた誘いであり、むしろ乗ったら警戒していたとすら告げる三人。そこでマスターを頼ったその判断をもって、彼は彼であり、違う道を選んだのだと確信を持ったのであった
「やっぱりね。『操船』を教えてやるなんておかしいと思った。海賊って言い回ししなかったって事は、そういう事だったんだね姉御!」
「おやおやお見通しと来た。ホントに交渉の才能があるねぇウチの妹分は。なら構わない、有言実行!手頃な島にレイシフトと行こうじゃないか!」
僅かな言い回しにて、彼女らの真意が入会とは別の場所にあることを理解したリッカを褒め称えながら、二人の肩を抱きドレイクが口笛を吹き鳴らし行だす
「アタシの操舵、見せてやるよ。せっかくだ、同じ船で間近で見ていきな!」
「え、でも僕らは海賊会のメンバーじゃ無いのに、そんな・・・?」
「何言ってるのさ。会の仲間だ仲間じゃない時点の前に、アタシらはカルデアって船に乗る仲間じゃないか。仲間に大盤振る舞いして何が悪いってのさ?」
「・・・!」
別に肩書きなどはどうでもいい。何をしてもいいのだ。何故なら自分達はとっくに、『世界を滅亡から取り返した仲間』なのだからと、ドレイクは気さくに笑い肩を叩く
「ケツの小さいことを気にしてちゃ、自分を越えるなんて無理な話さ。前を見て、使えるものは全部利用してやんな!アタシの腕前や二人の度胸、盗んで使うにゃうってつけだよ!だろ?未来の冒険者にマスターさん?アタシは商人、先行投資は御手の物ってね!」
「姉御・・・!」
「そういうわけ。まぁなんだかんだ言ってるけどさ。僕らも・・・」
「マスターとはしゃぎたかった、というのも本音ですのよ?ギリシャばかりではなく、たまには私達にも構ってくださいな。ふふっ♪」
「三人とも・・・!」
「──うん!ありがとう!じゃあ遠慮なく、皆の厚意と技術を頂いていこうかな!『海賊らしく』ね!」
そんな粋な計らいにて、穏便に海賊会に断りを入れることができた二人。たっぷりと操縦と海賊行為を堪能し、土産に銀貨を貰う待遇すら与え、海賊会は二人を送り出した
「またおいでー。いつでも待ってるよー」
「リッカさんも、いつかお酒を飲みましょうね?」
「ラム酒持ってくるんだよー!」
「「はーい!」」
海賊会としては入会せずとも、はっきりと紡いだ、そして確かな絆は結ばれていた。その事実を示すかのように、見送るものも旅立つものも、笑顔で別れ次の場へと向かっていった──
コロンブス「世界に名だたる海賊はなんて器と懐が大きいんだ!自分のみみっちさがイヤになるよね!格が違うね!」
リッカ「爽やか・・・爽やかだった・・・ありがとう三人とも・・・」
コロンブス「うん、本当に良かった。ありがとうマスター!次も一筋縄じゃ無いけど、きっと大丈夫!さぁ、行ってみようか!またよろしくね!」
~
シバにゃん「お金、お好きですよねぇ~?」
コロンブス「あ、うん・・・あはは、まぁね・・・」
カエサル「ハハハ、問うまでも無かろうが、富むことも好きと見たが?」
コロンブス「そ、そうだね・・・食い物黄金男に女とか・・・はぁあぁぁ・・・」
リッカ(生前のカルマが・・・コロンブス君を襲うっ・・・!!)
次なる場所は物欲的な流通を重んじる誘い。コロンブスに渡された招待状の真意は、はたして・・・?
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