人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

543 / 2547
ダユー「あら、随分手酷くやられたみたいね。酷い顔よ」

武則天「・・・最早護る国もない。最早維持する国もない。最早全てが水泡に帰した。召喚されている理由もない・・・」

「そうね。矜持も取り柄も捨てて、何も残っていない。でも、だからこそ・・・あなたにはやるべき事があるんじゃないかしら」

「・・・仕置きか?最早好きにするがよい。妾の身など、国がなければただの小娘よ。もうよい、早急に・・・」

「敗残の将は、勝者に力を貸さなくちゃ。──でしょう?それが、奪われたものの義務よ。奪われたものの幸福よ」

「・・・責務、か」

「まぁ呼び方はあなた次第よ。散々好きに振る舞ったのだから、最後くらいは、義理を通したら新鮮なんじゃないかしら?」

「・・・」


不屈の意志、揺らがぬ決意

命からがら、とばかりにかの暴虐の英雄、巨大なりしヘラクレスから逃げ仰せアジトへと帰還せしめた一行。不夜城の攻略を完遂した喜びは霧散せしめ、巨大にておおいなる問題が巻き起こった事実をこそ重く受け止めた一同の空気は重い。正真正銘の最難関にしてオケアノス以来最強の難敵・・・ギリシャの大英雄、ヘラクレスが再び一行の旅へと立ち塞がったのだ。軽く考えていても、その対応の難解さ、難儀さにおいては理不尽とも言うべき程の難易度を誇る。それに立ち向かわなければならないリッカら一行の表情は、やはり快活とは言えないものであった

 

「ヘラクレス・・・まぁアレがヘラクレスと言えるのかはちょっとグレーな部分はあるけど。だからって強さが劣るなんて事は有り得ないよね。だからヘラクレスとして想定するとして・・・まず間違いなく、あれと戦うのには総力戦が必要だと思う。全てを懸けた総力戦。楽園のトップサーヴァントの力を借りるような総力戦が」

 

リッカはヘラクレスを師匠としているが故に、その強さと攻略の難解さを誰よりも痛感している。強く、優しく。自らにパンクラチオンを教え導いてくれた敬愛する師匠。だからこそ、彼の偉大さを知っているがゆえに、あのような暴走を目の当たりにし続けるのは忍びない。確実に攻略し、制止してやらねばひたすらに暴虐を重ねるかの大英雄が報われぬだろう。バーサーカーとしてならば理屈は通るが、あのような暴走状態はとても真っ当な状態とは思えない

 

『うむ・・・申し訳無いな。我が事ながらあれほど狂乱の様が似合うとは。かの自身、やはりどうしようもなく狂った姿が、立ちはだかる姿が本来の在り方なのやもしれん。甚だ遺憾に過ぎるが・・・』

 

ヘラクレスの謝罪を一同は責める気にはなれない。サーヴァントとはそういうものだからだ。側面を切り取り召喚するもの。問題があるとするならば、それは召喚したモノにある

 

『あまり慰めにはならないだろうが・・・狂乱した私は染み付いた武芸と祝福を頼みにした無秩序な存在であり、そこに戦闘以外の倫理は働かん。武術や技術の細かき手法は取らず、命を削るには辛うじて可能だろう。12度殺すにはどのみち、多大なる労力が必要であるが・・・』

 

ヘラクレスをバーサーカーで呼び出すこと。それはメリットばかりではなくむしろデメリットの方が数多くあることを彼は告げる。様々な宝具、細かい思考や技術が封印され、少なくとも手のつけられない存在ではないというのだ。だが、それはあくまで平時よりマシというだけであり、かのヘラクレスが与しやすい、対処しやすいといった事では全く無い。ヘラクレスという英雄は、それほどまでに絶対的な暴威であるのだ。和平も命乞いも効きはしないだろう。それを聞き届ける理性は喪失しているのだから

 

『うーん。此方のヘラクレスに配慮し、あちらはヘラクレスではなく、巨大なる英雄・・・そしてシェヘラザードの呼称を合わせ【メガロス・シャフリヤール】と名称しよう。あまりにも仰々しい名前だけどね』

 

「おう・・・さて、とりあえずあのヘラクレスもどきをどうするか、だな・・・俺らの力を合わせるのは当然として・・・それだけじゃどうしても足りないって感じがするぜ。形振り構わずってんなら、楽園の皆を全部差し向けるって手段もあるけどな」

 

そう。純粋な力業なら楽園カルデアにおいて、かのメガロスは打倒できない理由はない。数多の英雄英傑が極限まで鍛え上げられ、同時に聖杯の力にて限界を越えた存在も散見され、頂点には魔術の王ソロモンの力を持つロマニ、そして我等が最大にして無敵の存在御機嫌王ギルガメッシュも君臨している。その気になればかのメガロスであろうとギルガメッシュ一人で容易く処理、撃破が叶うだろう。だが──おそらくそれではギルガメッシュが提唱する愉悦の戦いでは無いだろうとリッカは思う。手詰まりであるから英雄王に頼る。自分達ではどうしようもないから、打倒の可能性を散策せずに楽園の力で力押しをする──そのような平凡な倒し方、試練の越え方では。奮闘と踏破を、自らの戦いを愉悦とする英雄王の満足と称賛を勝ち取ることはけして出来ないだろう。だからこそ・・・だからこそ。この特異点にてまずは全ての可能性を試し、ギリギリまで頑張らなくてはならないといけないとリッカは思い直す。この場にいる彼等の、皆の力を否定するような選択はとりたくないという想いが、マスターとしての決断へと表れる

 

「──まずは、今此処にある全てで戦おう。皆の力を合わせて戦って、全力で挑もう。此処にいる、皆の力で」

 

此処にいる皆、そして自分自身の力を信じること。だからこそ・・・この場で英雄王やロマンらに助けを求めはしないことを選ぶ。これは、かつてのように自分達の力で挑むべきだと皆に告げた。その意見に、一同は安堵したように頷く

 

「うんうん!ボク達じゃ無理!って言われるかと思ったけど、リッカならそういうこと言うよね!」

 

「ヘラクレスが相手とは、地底の特異点とは考えられない大舞台だよな!やってやるさ!神話に──皆で挑んで乗り越えようぜ!」

 

シャルルマーニュ十二勇士の二人は、その勇気ある判断に奮い起つ。自分達もまた覚悟と決意を以てマスターに招かれたサーヴァント。どんな相手であろうと、最後までどんな相手であろうと戦う決意を見せる。それは、仲間達も同じであった

 

「はい!コンラも精一杯頑張ります!大丈夫です、ゲイ・ボルク以外は怖くありません!なんとかなります!」

 

「はい!先輩。私達はオケアノスより遥かに成長しています。英雄王の助力を請わずとも出来るということを、見せ付けてやりましょう!」

 

「──力業、力押しというだけではどうにもならないだろう。だからこそ、勇気と叡知を奮わなければならない。楽園の強きサーヴァント達を頼るのも勿論一手だ。だが私達は、この特異点を攻略するために選ばれたサーヴァントという自負があるからね。その名誉は、容易く返上するわけにはいかないのさ」

 

その一同の返答を以て、方針を定める。この特異点の全てをまずは結集すること。その全てをぶつけてあのメガロスを打倒するといった戦いを行うことを決定する。だからこそ、今自分達に出来ることの全てを考えるといった段階へと移るべきと一同は思案するのだ。思い思いの意見を、皆で出し合い会合を行う

 

「まず、レジスタンスの皆は待機してもらうべきだろう。人間ではまず殺されるだけだ。私達サーヴァント、そしてマスターだけに戦う相手は限定しよう」

 

デオンが言う通り、それは無謀だ。人間が台風に挑むようなものだ。今回は人間が介入できる場面ではない。だからこそ、帰る場所のある者達は不参加を厳令した。勝てない相手に戦力として注ぎ込むのは無謀、愚かなる特攻に他ならない

 

「だな。んで、真っ正面からごり押しはとてもじゃないが無理だ。確実に誰かが死ぬ。いや、リッカは死なせないけどよ。俺らサーヴァントは数人逝くだろうしな」

 

なんの無策もなしに突撃は愚策とシャルルマーニュは伝える。確実にサーヴァントの誰かが滅びる上での最終手段である。かのヘラクレスは12回殺さなくては滅びない。それを加味し、無策で彼の前に立つことは、確約された死を意味するが故に。忌避すべき策であると認めざるを得ないと冷静に判断するのだ

 

「・・・はい。ヘラクレスさんに挑むとはそういう事です。ですから私達だけではなく、もっと大規模な戦力と、迎え撃つ為の土台や人員が必要であると進言します」

 

屈強なる土台、そして彼を留められるような戦力が必要なことをマシュは告げる。要因がある以上、其処には打破する突破口がある筈なのだ。だからこそ、それを見つけ出すことが必要で大事である。その意見を受け止め、リッカは考える

 

「まず、正面突破では無理。・・・なら何処かにあのメガロスを弱体化させられる手段があるんじゃないかな。メガロスっていうか、ヘラクレスの弱点・・・それはやっぱり・・・」 

 

『ヒュドラの毒、でしょうね。えぇ、あれほどの強力な存在である以上、必ずや何処かに彼へのカウンターたる要素はあるでしょう』

 

その献策を行いしはケイローン。大賢者たるケイローンであった。彼は言う。かのメガロスが聖杯の導きで招かれたモノであると言うのなら、確実にかのカウンターとなりうる要素があると

 

『それはかのアマゾネス、そしてかの女王であるのかもしれません。そして更に私が思うに・・・更に直接的なものが何処かにあると私は考えます。そう、ヒュドラの毒を生成する要因が何処かに』

 

『──要因さえ、それさえあるならば助力をしてやっても良い。長らく玉座に座っていては鈍るのでな』

 

それを告げしは、アッシリア最古の女帝にして毒殺の名手、セミラミスである。自らではなく、仕入れたモノを使うのならば方針には抵触しないと言ったような物言いで、リッカらに提案を行う

 

「そういう事なら、いよいよアマゾネスの国に告げるべきじゃないかな?力を貸してほしいってさ!皆で戦って倒すなら、絶対に必要な戦力だと思うな!」

 

「・・・ヒュドラの毒・・・確か、ダユーがそのような事を口にしていた気がします。海の都を手にした際、海の底に誰のものでは無い空間があり。其処に何かがあると。・・・話を、聞いてみます・・・」

 

次々と方針が定まり、情報が集っていく。そして、それらを決断として下すのはリッカの役目だ。そう──立ち向かう決断を下す

 

「よし!じゃあまずは行こうか!──アマゾネスの国に!あのメガロスを、倒すために!」

 

「「「「「「おーっっ!!!」」」」」」

 

現れた暴虐の大英雄・・・メガロスを討ち果たすために。天の宮殿へと至るための戦いへと身を投じる。その健闘を──王への愉悦へと捧げ、そして自らの戦いを全うするために

 

「よーし皆!船に乗って!皆で行くよ!水路を辿って──エルドラド!黄金郷へ!!」

 

希望を持ち、絶望に挑む。それこそが、新天地へ至る道であると信じて──




黄金郷・エルドラド

ペンテシレイア「来たか、ヒッポリュテに仲間達。先は不夜城の攻略、御苦労だった」

リッカ「うん。──伝えたいことは、分かってくれてるよね?」

ペンテシレイア「無論だ。二つの国が滅んだ今、我等の雌雄を決する瞬間が訪れたと言うことだ。・・・だが、その前に。命を懸けて仕留めなくてはならん者がいる」

リッカ「・・・その事なんだけど。私達も、彼を倒さなくちゃ私達は前に進めない。だからこそ、私達はこうして頼みに来た」

「?」

「私達といっしょに、あの英雄を倒そう。だからこそ、手を組んでまずは共通の敵を倒そうよ」

ペンテシレイア「・・・ヒッポリュテ、貴女は我等と共にあのアキレウスを倒さんとするのか。我等と共に」

リッカ「うん。私達の決着はそのあと。そのあとに──『あなたの全てに決着をつける』」

ペンテシレイア「・・・全てを・・・」



アキレウス『なんとか約束は取り付けたな。・・・あぁ、感謝するぜ。お前さんが女で助かった。だからすんなり、話が通ったって所もある』

リッカ「・・・いいの?」

『あぁ。逃げ回るわけにはいかねぇ。全部終わったら、俺が顔を出すさ。心配すんな』

「・・・殺し合いは、避けられないよね」

『まぁな。だが・・・まぁいいんだ。恨まれる自分を、選んだつもりだからな』

「・・・」

シェヘラザード「我が王」

「!シェヘラザード!」

「どうやら、ダユーの告げた事は真実であったようです。この地底には、まだ隠された土地がある。彼女が興味を見せず捨て去った土地があると。その場所に──我等の求めるものがあると」

リッカ「それは・・・?」

「──竜宮城。海の底に在りし、もう一つの海の都である場所。其処に──求める存在があるはずです。参りましょう、我が王」

「──うん!まずは、ヒュドラの毒を手にいれよう!」

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。