人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ダユー「と言うわけで、イースを綺麗に華やかな水の都市に変えてしまいましょう。えぇ、奪われた幸福に献身を行う。そうでなくては奪う喜びを否定してしまう。徹底的に奪われた分だけ・・その全てを喜びましょう?」

ゲオルギウス「私達が皆様を監督しまた監視いたします。正しきミサ・・・いえ、復興が叶うように頑張りましょう」

モーセ「勿論、何か妙な事を考えたら拳骨だよ?大丈夫、馬から叩き落とされるよりかはましな筈だからさ?怖がらなくても大丈夫。痛みは一瞬だよ、多分ね」

「もう、念入りな事。分かっているわ。イースも私も沈まなかった。なら、一度くらいは誠実に生きてもバチが当たらないかしら?ふふ・・・今更かしら?」



ロマン『新しい特異点かぁ・・・ごめんよ、ギルも僕もモニタリング出来なくて。ちょっと準備にかかっていてさ。でも、サーヴァントにかけたロックは万全だろうからそこは安心してほしい。魔法を視野にいれたロックだからね。絶対に大丈夫な筈だよ。だから離れていられるんだからね』

ダ・ヴィンチ「あぁ、こちらは任せておくれロマニ。リッカ君達はきっちりやってくれる。ギル君によろしく言っておいてくれたまえよ」

『分かっているよ。大丈夫さ、任せておいてくれ。ギルも僕も、君達の無事を祈っているよ』

ギル『たわけ!祈るのは我の役目ではない、我が求むるのは常に結果よ!我等は其処にあらねど常に視ている。ゴージャスの父兄参観にてはらはら見守る両親がごとき眼差しを常に意識して進むがいい!ではな!マルドゥークに衛星、もしもの際の夢幻召喚カード製作に我は多忙を極めているのでな、聞いた端から笑顔を促進する報告を期待しているぞ!さて、カルデアの霊基から誰を選別するか──』

──祈りはワタシが。どうか皆様の旅路に、愉悦と希望に溢れておりますように──

ダ・ヴィンチ「ふふっ、あっちもこっちも大騒ぎじゃないか。これは負けられないな!よーし、やるぞー!天才もやる気を出すのさ、たまにはね!愛弟子にイタ電してやろー!」

ムニエル「やめて差し上げてください!あの人真面目に反応と対応してしまうんですから!」


諦めず、前へ

ダユーを倒し、そしてそのままイースを獲得しその全てを手に入れたリッカらカルデア一行。三つの国の内、一つを景気よく手に入れたカルデアの面々は意気揚々と桃源郷へと帰還し、獲得した財宝、そして酒や食べ物を堪能しつつ、勝利に沸き立つ。また一つ、勝利へと近付いたその前進を誰もが笑顔で迎え、無限に生え出る桃を食らい、勝利の美酒に酔いしれる。三つの国の勢力を乗り越え、乗り換えた人々の表情は明るかった。それぞれの過ごし方と笑顔が舞い飛び、うららかな陽気を彩り輝き、高い士気を維持しつつ次なる戦いを待ち構えている。

 

「で、だ!そんとき俺は言ってやった!カッコよく生きろ、それが本当に正しい生き方だって信じろ、ってな!」

 

「えー、大分脚色入ってない?シャルルはただ怒鳴り散らしていたようなイメージしかないんだけどなー」

 

「バッカお前、魂の叫びがそう言ってたんだよ!俺のカッコいい理論がそう告げてたんだ!間違いねぇ、俺の魂がそう告げてたんだ!」

 

樽に乗っかり、自分達の武勇伝を子供達へ聞かせているシャルルと其を呆れながら囃し立てているアストルフォ。マシュとデオンは、紛れ迷い込み桃源郷に空からやって来た・・・あるいは石に紛れ眠っていたモンスターの討伐へと繰り出している。寝床を護り、無限に湧き出す桃という食料を保護するための戦い、守護や警備を担当しているのだ。そして残るリッカやコロンブス、コンラはと言うと・・・

 

「うん、よしよし!剣の振るい方は形になってきたね!いい感じいい感じ!そのまましっかりと身に付けた後は、『今僕が誉めた事は全て忘れる』様に!」

 

良く通る声にて、反抗と抵抗を選んだ人物、言うなればレジスタンス達をコロンブスは指示、指導していた。その肩を叩き、激励し、朗らかに笑いながら、彼なりの持論を展開しつつ人々を導いていく

 

「え?でも、それじゃあ・・・」

 

「剣の腕なんて自信を持たなくていいんだ。世の中にはどれだけ強くなろうと絶対に勝てない存在はいる。そんな相手に自信を振りかざして突撃したら確実に死ぬでしょ?それは哀しいし、無駄で勿体無い事に他ならない。大事で大切な人員は減らしたくないし、仲間はけして失っちゃぁいけない。だからそんな時は、迷わず逃げることさ!」

 

「・・・逃げても、いいのかい?」

 

勿論だとコロンブスは語る。大事なのは物事の大小ではない。肝心要、大切なのは『諦めない』事だと白髪の少年は語るのだ

 

「大事な事、肝心要なのは『諦めずに進んでいる』事さ。前に進んで、諦めなければ必ず辿り着く。負けても逃げても、進んでいけば必ず望みの未来へと辿り着くんだから。人が欲しいから集まるまで待てばいい、お金が必要なら貯まるまで待てばいい!決して諦めずに目的へ進む諦めの悪さをこそ、皆に大事にしてほしいものなんだ!」

 

朗らかに高らかに、コロンブスは自らの持論と矜持にて虐げられていたモノ達を鼓舞する。この地底にて、帰還を諦めない事。そして何より希望へと向かっていくことを告げ、人種も言葉も越えたポジティブシンキング、前進論にて桃源郷を纏め上げていく。その美貌に加え頼もしい言霊を発するコロンブスは、特訓以外にも数多の支持と相談を一手に担っている

 

「コロンブスさん!新しい土地を開拓しようとしたら大きな岩がゴロゴロと!」

 

「えぇ、ホントに!?しょうがないなぁ。その岩はスリングの岩に、弾にしよう!確保だよ確保!」

 

「コロンブスさん!新しい家が設計ミスで、屋根がありません!」

 

「えぇ、ホントに!?しょうがないなぁ。じゃあそれは酒場にしよう!天井が解放された花見酒!いいよね!何かを焼いても大丈夫さ!」

 

「コロンブスさん!男子の洗濯物が風にさらわれて泥水に!代えの着替えがありません!」

 

「えぇ、ホントに!?しょうがないなぁ。じゃあ男性の皆は筋肉祭り!自分の肉体美を見せつけ合おうよ!一番にはイースのお酒をたくさんあげちゃう!さぁ皆、目指せマスター並の筋肉!」

 

その手腕と会話で、鼓舞し纏め、問題をすがめる事なく肩を叩くように陽気に指示を飛ばしていく。肩を並べ、共に歩む者としての指導。そんなコロンブスに、吹き飛ばされた小さな影。それを受け止める少年が見たものは、同じく少年であったのだ。それは、イースにて出会った兄妹の兄・・・

 

「あわわ、大丈夫ですか!?ごめんなさい、コンラ、手加減がへたっぴで・・・!」

 

「だ、大丈夫・・・!僕もコンラや皆みたいに・・・諦めずに・・・!」

 

少年は無謀にもコンラに組手を挑んでおり、勝ち目のない戦いを繰り広げていた。当然のように敗北し、コンラには傷どころか汗の一つもかかせることができていない。戦闘どころか、特攻にすらなっていない戦いをせんとする少年を・・・

 

「こーら」

 

「あいたっ!」

 

コロンブスが静かに拳骨を下ろす。その勘違いは危険なものであり、そして間違えた前進である事をしっかりと指導し告げる。彼は言う。それは諦めていないだけだと

 

「コンラちゃんはケルトの大英雄の息子・・・娘・・・息子?なんだ。人間が敵う相手じゃない。力も技も実力も場数もまるで相手にならない程の英雄・・・勝てると思うかい?」

 

「・・・」

 

「絶対に勝てない相手に諦めずに立ち向かうのは馬鹿のやることだよ。大事なのは負けそうな時に負けないこと。勝てそうな時に勝つこと!さぁ、それなら今はなんて言えばいいかな?」

 

「・・・『今日は疲れたから、また明日!明日は必ず勝つ』!」

 

「ははっ!その通り!明日も負けそうになったら言おうね!コンラちゃんもめげずに付き合ってあげてね!」

 

「──はいっ!ケルトの勇士として、いつでも受けて立ちます!これからもよろしくお願いいたします!」

 

禍根を残す事なく、そして明日もまた特訓の約束を取り付ける強かさと万事を纏める手際の良さを存分に見せ付け丸く納める。その統率力と、あまりにも効率的な人員の活かし方は、まさに新天地を目指し辿り着いた傑物に相応しきもの。その鮮やかさに、リッカは感銘を受けながらコロンブスに差し入れを贈り声をかける

 

「凄いね!流石コロンブス!船員を動かすのはお手の物って感じ!凄いリーダーシップだね!私も見習わなきゃなぁ・・・!」

 

リッカの裏表の無い称賛にやや照れを見せながら、それでも何処か複雑そうな表情を見せるコロンブス。自分の名前を聞いた途端、僅かにその笑顔が曇った事をリッカは見逃さなかった

 

「・・・コロンブス?どうしたの?大丈夫?」

 

「──あ、ごめんごめん。『流石コロンブス』なんて聞き慣れない単語を聞いたものだからついね!ありがとう、光栄だよ!」

 

コロンブスという存在を知るものならば、コロンブスの偉業を知らぬはずが無い。当然、称賛や感嘆は数知れない筈だとリッカは感じていたのだが・・・どうやらこのコロンブスはそうは思っていないような素振り、印象を受ける

 

「・・・世間や歴史家で、コロンブスの名前を聞いた人間。反応は大体一緒さ。知れば知るほどね。だから素直に誉められるなんて思ってないからさ。新鮮な体験だよ」

 

その顔は物憂げであり、そして同時に自らの在り方とスタンスを再定義をするように顔を上げる

 

「マスター。僕はね。必ず天の宮殿に・・・新天地に皆と一緒にたどり着きたいんだ。なんとしても、どんな手段を使ってでもだよ。その気持ちは、紛れもない僕のものだ」

 

「──」

 

「だからさ、僕を信じてほしいんだ。必ず、君のサーヴァントとしての役目を果たして見せるよ。それだけ・・・知ってもらえたら嬉しいな!」

 

その言葉には、『何をしようと信じてもらえない』という悲哀を含めたものであることを、漠然とリッカは感じ取る。どのような事をしようと、どのような一面を見せようと。人は辿り着く場所にしか辿り着かない。それを誰よりも理解しているような・・・けして諦めない事を謳う彼が、声音に含んでいるものが、けしてポジティブではないことを、リッカはマスターとして、人間としてぼんやりと受け止めた。──故にこそ、彼女は告げた。まだ見えぬ苦悩を、せめて・・・軽やかに出来るような一言を

 

「解った、最後まで信じるよ。コロンブスも、シェヘラザードの事も。なんたって、サーヴァントを大事にしないマスターは必ず破滅するし、私はサーヴァントの事を相棒だと思ってるからね!」

 

その言葉を受けたコロンブスの表情は、一口にて表せるものではなく。笑顔のような、悲哀のような。その複雑さと喜びを見せる彼は、そっとリッカにとあるものを手渡す

 

「・・・手日記?」

 

其処にある手日記は、何も書かれていない白紙であった。それを渡したコロンブスは微笑み、リッカの肩を叩く

 

「僕は嫌いなんだ、手日記。だから信頼の証として預けるよ!好きなように使ってほしいな!さぁ、もう陽も暮れる。地下に陽なんておかしい話だけどね!さぁお風呂を沸かそう!明日を頑張るために早く寝よう!」

 

その真意を告げる事なく、コロンブスは走り出す。手渡された手日記は、何処までも真っ白だ。まるで『何かが書き込まれる事を嫌がっている』かのように。ミステリアスにて、同時に何かを抱え込んでいるコロンブス。それらが全て明かされる日が来ることが、この冒険にて想いを馳せながら・・・

 

「──よーし!皆集まれー!おもいっきり歌って踊って気持ちよく寝よー!明日も頑張っていこー!!」

 

一同は新たなる戦いに想いを馳せ、そして戦いに備えた宴を執り行い、地底の桃源郷にて突き抜けるような喧騒と宴の時間が過ぎていく

 

「よーし!酒瓶にジュースは持ったな!じゃあいくぜー!!かんぱーい!!」

 

「「「「「かんぱーい!!!」」」」」

 

次なる場所は、『眠らない国』とされる不夜城。その次なる舞台を示すかのように──勝利の美酒に酔い、喧騒にて夜を過ごしていく

 

「明日も諦めず!前に進もう!僕らならやれる!前へ、前へ!皆で行こう!新天地!天の宮殿へ!!」

 

「「「「「おーっ!!!」」」」」

 

士気は高く、声は朗らかに。幼き冒険者とその仲間達は、次なる冒険への鋭気を養う──




夜・寝室

シェヘラザード「コロンブスとお話をしたのですね、我が王。彼はこの冒険の要となる者。どうか揺らがず、信じて差し上げてください。私からも、この通りお願いいたします」

リッカ「ど、土下座・・・!?そこまでしないでいいよ大丈夫だよ!?一緒に戦う以上、信じるのは当たり前だからさ!」

シェヘラザード「あぁ、良かった。・・・彼は誰よりも前を向きながら、その前進に傾倒しているきらいがあります。どうか、かの存在が無謀に絶えることなきよう、お願いいたします。我が王」

「勿論!・・・ねぇ、シェヘラザード。我が王ってなぁに?私は王じゃないし、王の器でもないよ?」

シェヘラザード「あぁ・・・すみません。私は仕える者を見出だしたとき、その方を見定め決めるのです。良き王か、悪しき王かと。良き王であるならば、この身を全て捧げ尽くし、悪しき王であるならば、私が殺されないように努めます・・・」

リッカ「ほへー、シェヘラザードなりの判断上」ってことだね。私は良い王なの?」

「はい。誰よりも快活にて、そして力強く誰よりも先を駆ける王・・・力を添えたいと願う程の良き王と感じました。ですからこのように・・・」

「お話をしに来てくれたってこと?ありがとう!じゃあじゃあ、すぐに眠れるようなお話をお願いしていい?」

「お任せを。私は物語るもの。戦いは出来ずとも、こうやって王の安らぎの助けになりたいと思います。それでは、如何なるお話を致しましょう。楽しいお話、眠りを誘うお話・・・勿論、眠ってしまっても、構いませんよ」

リッカ「えーっと、そうだなぁ・・・それじゃあ・・・」




リッカ「ぐぅ・・・すぅ・・・」

シェヘラザード「ふふ・・・次なる物語は、眠らぬ街。そして、自らを出す事が赦されぬ街。如何なる活躍を見せてくださるのか、心から楽しみにしております。我が王」

「むにゃむにゃ・・・」

「おやすみなさい・・・私は、心から応援と献身にて貴女を支えます。誇り高き物語の紡ぎ手。私を大切にすると仰ってくださった、我が王──」

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