ドレイク「なんだいなんだい、顔が真っ青じゃないか。腹下しかい?漏らすんじゃないよ。そしたら撃ち殺すからね」
「い、いや有り得ないですし・・・何故か頭痛に吐き気に息切れに動機が酷いんですけど・・・」
「?風邪かい?あんたは絶対に風邪を引かないタチだと踏んでたんだけどねぇ?」
「それってつまり──い、いかんですぞ!退避!くろひートイレに退避ーっ!!!」
「・・・なんだいありゃあ?しかし、コロンブスが少年の姿ねぇ・・・」
(あの悪どい海賊の大先輩が少年化とはどういう事さね。まさかそんな純真さがあったとは驚きだ。目的の為なら外道になろうが構わないあのオヤジの変化。こりゃあ──)
「・・・まー考えても仕方ないね!リッカの事だ、後ろから刺されたぐらいじゃ死にそうにないさね!よーし、無事を祈って飲むとするかぁ!」
アン「コロンブスおじさま・・・」
メアリー「知ってるよ。尊敬してるからね」
「「海賊として!」」
「あっはっはっはっはっ!そうだよねぇ!やっぱコロンブスったら『そう』だよねぇ!気の毒な話さ、あのショタっ子はさぁ!あっはっはっはっはっ!」
(ショタなんて言葉知ってるんだ・・・)
(まさか、影響を受けたのではありませんの・・・?)
トイレ
ティーチ(うぅ、動機が止まんでござる・・・何やら生理的にNGなイベントが待ってる予感!助けて!リッカたん──!!!)
「おぉおぉおぉおっっ!!!!
気迫と気合いの雄叫びと共に、最も巨大にして華美なる館の最奥──主人が座す玉座を隔てる巨大な扉が拳によって叩きこじ開けられる。留め金と立て付けが無惨に弾け飛び、力の限りに叩き込まれた事により最早意味を成さぬ程に砕け壊れ部屋へと招き通す他ない状況を作り上げし、その訪問者が仲間達と共に、この背徳の街の首魁へと謁見と名乗りを上げ、この国がかかげる理念を果たさんとする
「人理保証機関、カルデア所属のマスター・・・藤丸リッカ。──ダユーって人、どれ?」
バキバキと拳を鳴らすリッカの周囲を、仲間達が即座にカバーし固め合う。広大な部屋に巨大な扉が閨・・・辺りには豪奢を尽くした調度品に、積み重なりし死体、そして、最早用を為さない手付かずの財宝が積み上げられている。それらはイースの規範と理念を示す光景に他ならぬ醜悪な裕福さと華美さ。退廃の部屋を彩り、それらを演出せし者こそが・・・──
「──あら、随分と過激で乱暴なのね。でもいいわ、好きよ。そんな野蛮さは、この都市を潤してくれる。・・・改めまして。私がこの自由と退廃の都を統べる公女にして女王、ダユーよ。よろしく御願いするわね」
「・・・!?ド、ドレイクさん・・・!?」
その紫と黒、紅き宝石に彩られた蒼白の美貌を示すダユーと名乗る女は──細かな装飾が違えど見間違えようが無いほどにフランシス・ドレイクに酷似している風貌を誇っていた。凄烈ながら淫靡、華美ながら邪悪さを感じさせる海賊の出で達を誇る絶世の美女に・・・一同は衝撃を受ける
『落ち着いて、皆。カルデアのサーヴァント、ドレイク卿とは無関係な存在だ。時間神殿と化しているカルデアからサーヴァントを盗み出せなど出来はしないよ、安心したまえ!』
『なんだいなんだい、世の中にはそっくりさんがたくさんいるとは聞いたが、まさかアタシがダユーなんてのとそっくりさんとは驚いたよ!根っからの海賊同士、ガワが似るのは当然なのかねぇ?』
ダ・ヴィンチちゃん、そしてドレイクの声音に平静を取り戻す一同。彼女はダユーであり、けしてドレイクではない。カルデアとは別口の召喚にて、儚き伝承を結実させた海賊公女・・・ダユーであることが確かに証明される。なお、ティーチは映像を見た瞬間嘔吐感に襲われトイレへ駆け込んでいったのは伏して語られぬ事象である
「えぇそうよ。私は私、イースを治める公女。改めてようこそ私の都市へ。楽しんでもらえているかしら?」
挑発とすら受け取れるその物言いに、グッと怒りを飲み込む一同が理性的に返す。街を目の当たりとし、その目で見てきたイースという都市の感慨を叩き返す
「ダセェ国だぜ。悪趣味に不法投棄に騒音に公害にその他諸々!俺がちゃらんぽらんに酔った統治でもこうまで酷くはならないってくらいにはな!」
「奴隷みたいな扱いをする女擬き、征服者紛いの振る舞い。まるで自分を見せられているような新鮮な気分だったよ。ヘドが出たけどね!」
その散々な物言いに怒るわけでも、激するわけでもなくダユーは微笑み、死体の山に腰を下ろす。その顔に、笑みをうかべ酒を飲み干しながら淫靡に視線を送り言葉を紡ぐ
「見たのなら分かるでしょう?愛。快楽。暴力。酒。享楽。金に銀、美しい織物。可愛い生き物。そして──その死。『誰もが一番欲しいものを奪い続けている』。ここはなんて幸福な都市なのだろうと──そう思ったのでは?」
誰もが欲望を叶えている、誰もが笑顔を浮かべている。誰もが楽しんでいる。だから、イースは幸福なのだと、理想の都市なのだとダユーは告げる。信じがたいことに、心からそうリッカ達に告げているのだ
「幸福ぅ?色んな意味でゴミだらけの街じゃん、馬鹿馬鹿しい。ボクみたいにキラキラ輝く宝物は二つくらいしかなかったよ。こんなにモノが溢れているのにね!」
「何故奪うのですか!皆で分けあって、必要なものだけを分かち合って、皆で笑顔になればいいとコンラは考えます!強奪や簒奪は、卑劣な夜盗がすることです!」
「・・・あぁ、なるほど。あなたたちはまだ、この街のルールを知らないのね?なら、教えて上げましょう」
「──・・・・・・」
リッカが無言で皆を制し、改めてダユーより規範を訪ねる。不意打ちや侵略ではない、国が定めたルールを遵守した上での戦いを繰り広げるためである。ダユーは語る。教えは、たったの、二つだと
「『欲するものは自ら奪え。──そして、自ら奪ったものは欲するな』。これがルールよ。戒律というべき不変の理。イースを形作る大切なルール・・・」
「──欲しいと思った気持ちを我慢するな。それ以外の全てを省みる事はない。・・・そんな感じなんでしょ、それ」
「御明察。欲しいものは何も考えず欲し、それ以外の事を考えてはならない。そして『それ以外』とは、『それを奪ったという事実すら含まれる』。惰性での保持など無意味。惜しみ無く手放しなさい。どうせ誰かがそれを欲するのだから。いつの瞬間も、その都度の『欲しい』を忘れる事なくその為に奪うべし。それが理由よ」
欲しがったなら迷わず奪え。そして奪ったなら欲することなく手放してしまえ。それを欲しがる誰かが必ずいるのだからと。それ故に物品が、ほぼ未使用のままに溢れていたのだと一同は察する。欲しいと思い奪い、奪ったのならそれを捨てるの繰り返しにて、流通と破棄を行った結果。奪うという行為を遵守し、保護に守護という概念が衰退したその原始的にて完成された社会制度。あらゆる資源や資産が絶え間無く流動している公正にして刹那的なシステム。それがイースの正体だというのだ
「際限ない欲求は欲望を呼び、欲望は下卑た自尊心を育てる。何故そのような真似をする?コンラが言うように、分け与え、分かち合えば皆が涙することなく幸福になれる筈だ。何故首魁たるものが、王たるものが率先して乱雑や歪な制度を推進する?」
デオンの問いに、ダユーは再び笑みを浮かべ告げる。そんな事は簡単だ、とばかりに問い返し、高らかに告げる。それこそが・・・
「分かりきっているじゃない。『それが皆が幸せになる方法だからよ』」
「・・・!?」
「この都市に、規範に集うもの達は皆捨てられず、所持した重さに閉塞感を懐いていた者達ばかり。家族、立場、体面、見栄。そういったものを疎んじ厭いしものが集い、このイースを作り上げた。純然たる刹那の快楽に織り出された都市。『奪う』事で、誰もが等しく『今一番やりたいことをやり、一番欲しいものを獲得しているのならば』、『その瞬間においては、全国民が幸せなのと同じでしょう?』」
奪い、奪い、奪い抜き、いま自らが欲したものを手にするならば、手にしたならば。それを全ての国民が行ったならば、それら全てが幸せなのだとダユーは語る。『奪う』者の幸福を、声高に語る。イースの在り方の、その根幹を成す女は告げるのだ
「そして私が変わらない以上、その瞬間は何処までも続く。ならばそれは、永遠に皆の最大幸福が続くのと同じ──あぁ、なんと理想的な都市なのでしょう。その証拠に・・・街の皆は誰もが笑っていたでしょう?この都市では誰もが『我慢』をしなくていい、欲しいものを欲しいとしていい。相手を気にして縛り付ける必要はない。これほど平等な国が何処にあるというの?」
その言葉は美しくあり、皆が笑っていたというのは強ち間違いではないだろう。奪う側、捨てる側は幸福を謳歌し、街には下卑た笑いが満ち溢れていた。──だが、それはあまりにも幸福を謳う笑いでは有り得ないものを、理想的な都市を名乗るには相応しくないものを産み出していたことを彼女らは見逃さなかった
「語り手だけが楽しい物語など、ただの自己満足。聴き手あればこその物語。──一人手前の猿芝居・・・その自己満足に、あなたの国は当てはまると私は感じます」
「・・・あら、なんですって?」
「奪う側はそりゃあ気持ちいいだろうさ。金に名声、奴隷に男に女。それはそれは大儲けで笑いは止まらないだろうね。──でもさ、それは奪われた側の哀しみや涙の上にしか成り立たない空しいモノだと分からないのかな?」
シェヘラザード、そしてコロンブスは反抗する。その快楽と幸福は、穴だらけな論理である、詭弁であるという事を確かに告げる
「奪われる側がいなきゃ何もできない癖に理想的だなんて笑わせるよ。尊厳や命はどうしたって有限さ。それを無限で沢山あるなんて勘違いは確実に滅びをもたらすよ。欲を掻いて即物的な儲けに走って大失敗した何処かの馬鹿みたいにね」
「コロンブスくん・・・?」
「あら、おかしなことを言うのね。奪われた側の気持ち?そんなものはただ一つ。『幸福』以外に何があるというのかしら」
グラドロン王の娘、ダユー。奪うことを欲し、ただそれを行った女。それはイースの在り方の中核を成す思案と思考。そして、倫理の中心。なればこそ、彼女はそれを告げる。当然の真理だと告げるのである
「私は誰よりも美しく高貴であり、私はそうでないものから奪う権利がある。そして奪われたものは、それを幸福に想う義務があるわ。そうでなくては『私に家族や家宝に命、それら全てを捧げ奪われた殿方が』、涙を流して喜ぶ姿など見せはしないでしょう?」
「──」
「そしてその真理は私に従う市民も同じ。イース全てが私の名代。イースに奪われたものは皆幸福を感じているのでしょう?」
その倫理に──真っ先に言い返したものがいた。誰よりも先に、その倫理を否定した者がいた
「いいえ、ダユーさん。あなたのいう幸福は、幸せは、一理はあれどけして真理ではない。私達は、それを知っています。本当の幸福の在り方を、私達は既に知っているのです」
それは、マシュであった。彼女の目には、心には。『何も奪われず、誰もが笑顔を浮かべる楽園』が既に在るが故に
「真に豊かで、幸福な在り方を謳うのなら。私達はそれを知っています。誰かからなにかを奪う事はなく、ありとあらゆる全てを、自らの在るがままに笑顔にしてきた王がいることを私達は知っています」
「マシュ・・・」
「その王は何一つ妥協せず、投げ棄てず、放置せず、自らの最善と愉悦を追い求め、その過程で全てを幸福にしてみせました。『奪う事もなく、奪われる事もなく』です。奪われるものという弱者、奪うものという強者の枠組みを作り上げたあなたの都市より何倍も輝き、眩しく煌めく在り方を知っています」
惜しみ無く分け与え、他者を区別することなく己の愉悦のみをひたすらに追求した上で全てを幸福にしてきた王の在り方。並々ならぬ困難と徒労を行いながら、ただの一度も徴収や税なる略奪を行わなかった在り方。それを知る者が突き付ける。ダユーの在り方が、断じて理想の都市では無いことを示すが故に
「だからこそ──あなたは間違っています。理論や、理屈ではありません。・・・先輩!」
「良く言った、なすび!──分かっていないようだから教えて上げるよ。どんなに理屈を並べようと・・・!」
びしりと指を突き付ける。笑顔に、醜悪な幸福に想う踏みにじられた、大切な宝が溢した涙の在処を心に懐き、公女に宣告が突き付けられる
「『子供の血と涙の上に成り立つ幸福』なんて間違ってるに決まってる!あなたがどんな人で此処がどんな場所かは改めてよーくわかった!なら私達はそのルールに則って、貴女から奪う!」
「──あら。流転の女。何かを欲し何かを捨て続けている私から、あなたは何を奪うというの?」
「この都市そのもの!!貴女をまずはブッ飛ばして、女海賊やヒャッハー連中に略奪のツケを払わせる!そして背徳と欲望の水の都を──子供達が喜ぶテーマパーク!『うきうきりっからんど』に生まれ変わらせる!!」
盛大なる国獲り宣告を行い、一同が戦闘準備に入る。ダユーを下し、この『イース』を奪い取る為に。その堕落なる流転を、終わらせる為に──
【最後にこの国のルールに乗ってあげる!奪うことを我慢するなっていうなら・・・邪龍らしく!いただいていく!行くよ皆!!】
「「「「「おうっ!!!」」」」」
【新たな国の礎になれ!!ダユー!!】
「──野蛮で情熱的なのね。・・・いいわ。欲望を奪い合いましょう・・・?情熱的に、互いの血を流しながら・・・!」
ダユー、そしてリッカ。淫靡と勇壮。捨てる者と積み重ねる者の戦いが幕を開ける──!
屋敷通路
シェヘラザード「・・・宜しいのですか?コロンブス」
コロンブス「うんうん、今がチャンスさ。一番の御宝と、最高のタイミングでの交渉材料。頼もしい仲間がいるなら、わざわざ僕らが前線にいかなくてもいいのは明白なのさ」
「・・・分かりました。では、私に付いてきてください。ご案内致します」
「フフッ。──僕を見た人間は皆こういって恐れるか石を投げる。『征服者』『悪鬼外道』なんて言ってね。・・・なら、僕のやることは一つさ。誰もが考える事をやり、そして──」
シェヘラザード「・・・ともかく、私はあなたを支援します。それが、我が王への献身と信じて」
「それでいいよ。僕は僕の戦いと前進を行うだけさ。──例え、誰にも評価されなくてもね!」
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