「(彼等の旅路がどうなるのか、どんな結末になるか、どうか見守ってほしい)」
「(ここまで共に歩んできてくれたハーメルンの皆様に深い感謝を。マーリンざまぁという精神と死すべしという美しき殺意を、どうか忘れないでほしい)」
「(それでは、また。オルレアンが終わったら、また会おう。ボクは女性の皆に包まれて眠るとしよう。――皆も、ボクくらい美しくなって、美しいたわわに出逢えますように――)」
「――ワイバーンが集まっているな。奴等も我等の決戦の雰囲気を察したと見える」
深夜、拠点にてワイングラスを揺らしながら、オルレアンの城を見やるギルガメッシュ
――今は、自分の魂を半分眠らせ制御を手放し、器のままに任せている。明日は決戦なのだから、万全の態勢を整えるに越したことはない。
英雄王には、思うままに振る舞い休んでいてもらいたいのだ。せめてもの、感謝として
「フン、精々退屈させるなよ?窮鼠猫を噛む、という諺を知っているかは知らぬがな。いや、知らぬか。無学な田舎娘ごときには知るよしもないか、ふはは」
愉快そうに笑う器。本当に、舌戦をさせたら天下一品だ。自分はとても思い付かないレパートリーに感嘆する
――そんな穏やかな時間に、聞きなれた声がひとつ
「ご機嫌ですね英雄王。お時間、よろしいですか?」
ジャンヌの透き通った声に、面倒そうに振り返る
「なんだ田舎娘、夜更かしか?感心せぬぞ。祈りを済ませ疾く床につくがいい」
「それは解っています。……ですが、どうしても今話したくて」
ジャンヌの、話?
「……マリーの次は貴様が夜枷の相手か。藁臭い貧相な娘だが、まぁいないかはマシ、か」
「はいはい、私はどうせ無学ですよーだ。ふんっ」
ぷいっとむくれながら近場に座るジャンヌ
「なんだ、自覚したのかつまらぬ。玩具としての期限切れは近いようだな」
「反応するとあなたが喜んでしまうと気付きましたから」
「ハッ、よくぞ気付いた。爪の先程賢くなったな。その媚薬臭い肉付きのだらしない身体の脂肪がようやく頭に回ったようだな」
「――も、もう……――!ギルガメッシュ、貴方は……!」
「我を出し抜こうなぞ4000年早い。神代に生まれ変わって出直すのだな」
ははは、とグラスを煽り酒を飲む。――この味は、ちょっと苦手だ。でもくらくらする感じは心地いい
「……あなたたちと出逢ったのが、もう昔のようです。色々なことがありましたね……」
「我としては物足りぬがな。まぁ、始めとしては及第点よ。小娘が率いる相手など雑魚も良いところだ。奴等に、我を敵に回す資格は無かったな」
「……物言いは辛辣ですが、貴方のその自信に溢れた言動は、確かに私たちに力を与えてくれていました」
にっこりと、胸に手を当ててジャンヌが微笑む
「ありがとう、英雄王ギルガメッシュ。貴方と肩を並べて戦えたことは、私の誇りです」
――その煌めくような眩しい笑顔は、きっと忘れることはないだろう。ずっと
たとえ、このジャンヌが消えたとしてもだ
「学はないが礼節は身に付けていたか。弾圧と圧政が取り柄とばかり思ってはいたが、貴様らの主とやらはそれなりに教養はあったようだな」
「はい。主は、いつも我等を見守ってくれています」
「フン。精々怠惰な主とやらのご機嫌をとるのだな。己を崇めねば罰を下す狭量な神など、我は願い下げだ」
「――貴方が信じているのは、己のみですものね」
「当然だ。我はそういう生き様を選んだのだからな」
ごくり、と、ワインを飲み干す
「……私達は、勝てますでしょうか」
ぽつり、とジャンヌが呟く
「なんだ、脳筋の癖に今更自分の進路に悩むのか?遅かろうがバカめ」
「そ、そうではありません。……この戦いには、人類の未来がかかっている」
人理を巡る戦い。特異点の修復
負ければ人類は滅亡が確定する。破滅と共に、歴史は燃え尽きる
「生前でも、人類の未来をかけた戦いなど未経験です。……怖い、のかもしれません」
ぎゅっ、と拳を握るジャンヌ
……城塞だなんて言われていても、確かな心はそこにあるのだ。頑強だから、気付きにくい、理解されないだけで
「私は――勝てますでしょうか」
「知らぬ」
バッサリと切り捨てる器
「明日に判る事に何を悩む。骨の髄まで馬鹿な女よな、旗持ち」
「なっ!」
英雄王は笑う。愉快そうに、酷薄に笑みを浮かべる
「全ては明日、裁定が下ろう。貴様らが歩み、積み重ねが正しければ勝ち、足らねば負ける。それだけの事だ。気楽に戦え、負けても高々人間が滅びるのみだ」
「そんな、簡単には」
「簡単だとも。滅びを厭うならば抗え、そして勝て。それだけの話よ――うむ」
ごくり、と酒を更に煽る
「であればこう考えよ。明日の戦いには我等だけではない。全人類の命がかかっていると」
王は語る
「そうなれば気は楽だぞ?我等が敗北した瞬間、我等の生命だけではなく、全人類の生命が消え去るのだ」
――その矜持を、その在り方を
「悩むことはない。この世総ての命に対して、総ての悪になればよいのだ。この世の総てを背負うということは、自らのみで世界と相対する事」
グラスをジャンヌに向ける。中身の酒が地面を打つ
「――負けた瞬間、総ての命は露と消える。お前の敗北の責を裁くのは――お前のみだ」
それが――誰にも責められぬ高みに立つ、王の視点なのだと、魂に刻まれた気がした
「……あなたは、総てを背負っているのですね」
「当然だ。よいかルーラー。英雄とは、自らの視界総てに有るモノを背負うもの」
「――この世の総てなど。とうの昔に背負っている」
――魂に、震えが走る
この王の偉大さに、気高さに……心から感服したのだ
――今は、本当に嬉しく思う
これほど偉大な王に、転生できた事に。これほど偉大な王の見る世界を、臨める事に
いつのまにか、心から、感謝を顕していた
「……私は、そんな高みには上れませんね」
「であろうな。貴様には旗持ちなどという、多くに問われる低さがお似合いだ」
ふははは、と笑う器
――世界を背負う、ということは。己のみで世界と相対すること。それは、自分で総てを決めるということ
――王の言葉を魂に刻む。
ならば。後悔はすまい。自分の選択を、決断を。思うままに感じ、思うままに見て、思うままに決めよう
その生き方が――いつか。自分の『銘』になると信じて。
――王の矜持が、無銘なる魂をまた一つ、磨きあげた
「そら、夜も更けた。さっさと寝るがいい。過労で倒れたなどという下らん言い訳は聞かんぞ。それが許されるのはカルデアの連中のみだ」
「……はい。ありがとうございます。私は――けして、後悔しません」
「それでよい。凡俗は凡俗らしく励め。――あぁ、それなら餞別をくれてやろう」
スッ、とジャンヌを指差す
「せめて衣服は整えるのだな。我の旗持ちを名乗るならばな」
「ぁ――っ?」
ジャンヌの衣服が変わっていく
紫から白の服に、纏めていた髪はほどかれ、なすがままに
純白の聖女が、そこに顕れていた
「この姿は――」
「貴様はルーラーであったな。そら、奪われたものを補填してやろう」
ピッ、と指を指す
「あぅっ――!背に、何か……――これは――!」
ジャンヌが驚きの声をあげる
「『令呪』――!英雄王、なぜ貴方が――!」
「貴様な、我を何様だと心得るのだ」
フン、と鼻をならす
「我はゴージャス、英雄王。令呪の一つや二つや八つ、ストックがあって当然であろう」
「――貴方が敵でなくて……心底よかったと思います」
「味方でも本来ならばこのような真似はせん。此度の我は特例中の特例だ。――どこからか、邪念の無い敬意と尊敬を感じるのでな」
ふはは、と笑う英雄王
――敵わないな。この王様には
「奪われたものだ。補填するに不備はなかろう。――励めよルーラー。明日の進退は、貴様次第だぞ」
「――はい。ありがとうございます、英雄王。……どうぞ、御休みください」
「ではな。……さて、我も寝るか……」
――微睡みに眼を閉じる英雄王
――自分も、この器に恥じない決断を下していこうと
意識を手放すまで――反芻し続けた
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