クー・フーリン「うるせぇなぁ!!ナニやって・・・おぉ、シミュレーションか?」
(リッカと、メイヴか・・・あぁ、こいつぁまたはしゃいでんなーメイヴのヤツ。ま、いいようになるだろ。二人は色々アレだしな)
「ま、じゃれあいならいいだろ!ちっとつまみとケアグッズ持ってくっか!よーし、待っとけよフェルディア!」
「おう!サラミな!サラミ!!」
【うぉおぉおぉおぉおぁあぁあぁ!!!】
シミュレーションルーム、突き抜けるアメリカの大地の再現。眼前を埋め尽くすメイヴが産み出せし兵士達、彼女の兵隊の列。屈強な男達が徒党を成す風景に、白黒の鎧、龍を象徴した存在──人類最悪のマスターが咆哮を上げながら突撃していく。刀を携え、弓矢を放ち踏み砕き叩き潰し、メイヴの下へたどり着かんとするリッカを阻む兵隊達を容赦なく捻り潰して行きながら、戦慄を呼び起こし気を奮い起たせる雄々しき行軍を呈すリッカ
無造作に体の一部をつかみ、掴んだ部分から投げ、体の部位を粉砕し、また無造作に振るい、切り裂き、撃ち抜き、吹き飛ばす。それは一人や二人の存在では当たり前のように蹴散らされ吹き飛ばされるほどの災害がごとき暴威ではあるが・・・その比類なき質を、平均以上にて無限に思える量が産み出され、状況の拮抗、戦況の停滞を作り出している
(強い・・・!)
兵士の質を見、リッカはその強さを正しく認識する。ヘラクレスには遠く及ばなくとも、確実に並のサーヴァント、或いはやや下回る程度の実力を持つ兵士達が、犇めくように立ちはだかる。戦法を一々考え、戦い方を考案していては即座に押し込まれる程の質量を誇るケルトの精鋭が、見渡す限りに生産展開されている。それはメイヴの本気、全く油断の無い全力を示唆していることに他ならない
「どーぉ?フェルディアにフェルグスの情報から作られた私の特製の兵士達。オリジナルには及ばなくても、かなーり歯応えがあるでしょう?」
答える余裕は無い。目の前にある存在を片端から皆殺しにしていかなくては即座に取り押さえられ無力化される。駆動する身体を、集中を止めてはいけない、切らすわけにはいかないのだ
「質では勝てなくても数で補うのがメイヴ流・・・どう?リッカ?小賢しい女の振る舞いなんて介在する余地のない戦場。あなたはどう生き残るのかしら?」
優雅に鞭を振るい、兵士達を鼓舞し、強化し奮起させ戦いを進めていく。そんな扇動が瞬く間に伝播し、兵隊の力は無際限に上昇していきリッカを押し流さんと津波のように襲い掛かる。最早女子らしい振る舞い、自分自身の悩みなどは遥か彼方、今は此処を生き残る為に持てる力の全てを使い出しきるしかないのだ。
【何考えてるのさ、メイヴ・・・!】
「ふふっ、あなたのカウンセリングよカウンセリング!リッカのお悩み、私が徹底的に解決しちゃえるように一肌『脱ぐ』・・・それが私のやり方!さぁさぁ、お話の時間はないわ!戦って戦って戦い抜いて、この臨時のコノートを生き抜いて見せなさいリッカ!」
槍が、剣が、怒濤の勢いで雪崩れ込む。体面や見栄を考えていては即座に押し込まれる。それ故にリッカは常に武勇を示し、襲い来る兵士達を薙ぎ倒さなくてはならない局面に持ち込まれている。サーヴァントも呼び出せず、孤立無援ながらも・・・孤軍奮闘の決戦を、今まで培ってきた全てを以てリッカは実現させた
【おぉおぁあぁあぁあぁっ!!!】
敵に恐れず立ち向かう勇気、困難を捩じ伏せる武力、息切れひとつ起こさず奮い起つ肉体、けして揺らがず挫けることの無い精神。人理を巡る戦いの中で確かに身に付いたもの、確かに身に付けたものを以て兵隊に一騎当千を示し、少しずつ確かに前進していく一人の少女
その無双を演じているのが女性であるとは及びもつかぬ程の大立ち回り。小手先や聞き齧りにて身に付いたものが役に立たぬ極限の戦場。そしてその中心にて吠え猛る龍がごとき少女。その光景に、メイヴは胸を踊らせ楽しげに語りかける
「自分でも解るでしょう!今のあなた、とても輝いているわ!キラキラしてて、凄く素敵!」
【や、でもこれって!一般的な女子とは!かけ離れてるような!】
「何処にいるか、あるかも解らない物差しなんてどうだっていいのよ、リッカ!大事なのは【自分がどうやって、どこで輝くのか】!それだけが大事なのよ、女の子にはね!」
虐殺、皆殺しと言ってもいい渦中のリッカを、メイヴは輝いているという、素敵だという。その真意を計れないままのリッカに、更に女王が鞭を振るう
「さぁ私の可愛い兵士達!今回だけは私のライバルの引き立て役になって頂戴!リッカが輝くことは私が輝くことに繋がるの!さぁ高らかに!メイヴちゃん!サイコー!」
「「「「メイヴちゃん!サイコー!!!」」」」」
更に勢いを増し、一丸となってリッカに襲い来る土砂崩れのような兵士の行軍。その士気は高く、女王の意志に従う巨大な一個の生物のように、リッカを呑み込まんと襲い来る
【埒が開かない!こうなったら・・・!】
素早く刀と弓をしまい、槍──混沌武槍アンリマユを展開し、泥の槍たる自らの半身を手に取り即座に──天へと投げつける
【
高らかに打ち上げられた槍、それに鎧の泥を纏わせ産み出せしはリッカの使い魔、化身とも言える巨大にして漆黒の龍。巨大な翼に二本の角、ファンタジーにイメージされる巨大なドラゴンそのものたる、彼女が思い描くドラゴンの理想、ゲームの黒龍の姿を疑似再現した龍を産み出し、兵士達に立ち向かわせる
【⬛⬛⬛⬛!!!!】
その者の叫びは耳をつんざき、目にしたものの心をへし折るおぞましき咆哮。群がり立ち塞がる兵士達を撃ち貫き凪ぎ払い、泥の身体によって取り込み浸食し喰らっていく。兵士達のパワーバランスを即座に押し返す数十メートルのドラゴンの登場に、戦場は大混乱に陥る。そんな中、鎧を一時的に解除したリッカは今のうちに本丸たるメイヴを打ち払わんと気合いを入れ直し辺りを見渡す。彼女はこの狂乱の中、何処に──その時だった
「『
唸りをあげる二頭の牛が率いる、恐怖と蹂躙の証、コノートの権威たる鉄戦車がリッカに一直線に駆け抜けてくる。大地を踏み鳴らし、丸腰のリッカに迫り来る大質量。避けることも防ぐこともままならない。クー・フーリンや鎧をつけた自分なら真正面から止められるが、今は鎧を作るには時間がいる。逃げ道を断たれたリッカは──あえて、別の手段を取った
「とぉりゃあぁっ!!」
戦車に向かって走りだし、跳躍する。そして牛の背中を転がり伝い、『自ら戦車の中へ潜り込む』。回避が叶わず死しか待たぬならば、僅かならでも活路がある場所へと向かう。その転がり込んだ先は──勇士が女王に貪られし宴の閨。其処には女王が認めし者しか入れぬ聖域ならぬ性域。其処に待つのはもちろん──
「メーイヴキーック!!」
女王の歓待にして盛大な飛び蹴りであった。日頃から鍛えに鍛え、そしてチーズを、リッカを倒すために磨き抜いた五体から繰り出されるキックがリッカを打ち据える。咄嗟にしたガードを崩される程の威力に、狭苦しい戦車の閨が激震する
「あぅ──ッ!!」
そのままもつれ込み、マウントのポジションにてリッカはメイヴに跨がられる。本来なら此処からがメイヴの真骨頂なのだが、今回ばかりは些か毛色が違う。その本心と激励は、行動に現れる
「この!この!この口かしら!いつまでも魅力がないなんて言ういけない口はこれかしら!」
マウントからの往復ビンタ。手打ちながらも魂の籠った鞭打は、リッカの顔面を的確に捉え腫れ上がらせ、そして容赦なくも魂の籠った一撃を叩きつける
「何が女子力が無いよ!女子としてまだまだ、魅力がないよ!私を惨めにさせるのも大概になさい!其処だけは赤点よ、留年よ、落第よ!」
「ナニを、っ、あうっ!うぐっ!」
「いい!?貴女が自分の魅力を認められない度に、認めない言葉を口にする度に惨めになる女がいると何故解らないのよ!」
ビンタは頭突きに、意地を込めた渾身の肉弾戦に発展する。リッカの剛体は半端ではなく、メイヴの手が傷み損傷する程であったが、女王はそんなものを気にも留めない。目の前にいる存在に、あらゆるものを吐き出していく
「いい!?女子として自分を磨くのはいい、魅力的になるのもオッケー!でもリッカ、あなたには致命的に足りないものがある!」
「足りないもの・・・!?」
「そうよ、それは何か?決まっているわ!──自信よ!!」
ビンタをする手を止め、密着したまま睨み合う二人。メイヴは告げる。彼女が足りないのは、自分への自信だと
「私は自分の在り方に誇りを持っているわ!私が世界で一番綺麗で美しいと心から信じているの!私にかしずかない男はいないと自負しているわ!だからこそ自分に出来る努力は惜しまないし、自分がサイコーである努力は惜しまない!私に相応しい私をいつまでも追い求める!──その点からしてみれば!あなたはまるで分かってないわ!」
「分かってないって、何が・・・!」
「あなたはもう魅力的って事よ!何度も言われているんじゃないのこのニブチン!」
渾身のアームハンマーが振るわれる。下から受け止めるリッカ。メイヴは言う。リッカは間違えている。魅力は既に持っていると
「私を真正面から倒せる勇猛さ!、誰だろうと仲良くなる社交性!面倒や試練から逃げない諦めの悪さ!それに何より──、私のクーちゃんを射止めた在り方!それがあなたの魅力じゃない!いつになったらそれに気付くのかずっと見ているのよ、私は!」
「メイヴ・・・!」
「いい!?自分を信じない努力や自分磨きなんて意味無いわ!あんたは勘違いしているようだから言ってあげる・・・!本当に魅力がない女って言うのは、自分を磨く事を止めた、忘れた女の事を言うのよ!」
女王として、一日たりとも自分を磨かない日はない女王は叫ぶ。貴女は努力しながら、それを蔑ろにしているおバカさんであると物理で告げる
「貴女が毎日をどう過ごしているかは一目瞭然!自分を高めるために頑張っているじゃない!メイヴ的にも、他の子達にもそう映っているわ!それなのに貴女は女子力がない、女子力がないなんて・・・!自分を卑下する度に悲しくなる誰かが、力を貸している連中が哀しくなると思わないのかしら!」
「!」
「魅力がない女の下に人が集まるわけないでしょう!魅力がない女に私のクーちゃんが惚れ込む筈はないでしょう!?魅力がない女に──私がライバル意識を持つ筈が無いわよね!?気付かないのこのニブチン!ニブチン!」
自分を鮮やかに倒した彼女が魅力がない筈がない。もし魅力がないならば、自分は尚更惨めになってしまう。そんなのは許さない、許されない。なればこそ告げるのだ。己のプライドのために。これまでの戦いを、絆を無為にしないために
「いい!?『魅力的な自分を目指す』んじゃない、『魅力的な自分を磨く』という事が大事なの!あんたの意識はそうじゃなきゃずっとモヤモヤしっぱなしよ!ガサツ?武力?いいじゃない!こちとらビッチよ!!いいかしら、リッカ、よく聞きなさい!あんたを形容する女子の形が無いのなら──」
力の限りに額を押し付け、視線をぶつけ合う。その答えを、リッカに・・・宿命のライバルに叩きつける
「新境地を開拓すれば良いのよ!!スーパーケルトビッチな私みたいにね!ドラゴンガールでもリッカ系女子でもなんでもいい、『私だけの女子』を目指して日々を生きなさい!!」
「!!」
「そうじゃなきゃ許さないわ!絶対に許さない!クーちゃんの心をあっさり奪った、憎くて憎くて、それでいて、初めて認められた女が、みっともなく腐っていくなんて許さないわ!もっと、もっと!自分を好きになりなさい!自分だけの自分を磨きなさい!それが女子力!『女子になる』ってことよ!女王のアドバイス──絶対に身に付けなきゃ赦さないんだから!!」
その言葉に、リッカはハンマーで殴られたような感覚に陥る。──あぁ、自分はとんでもない思い違いをしていた
「──ありがとう、メイヴ。やっと・・・吹っ切れた気がする」
今まで自分は、女子として逸脱した事ばかりをしていたと痛感していた、思い込んでいた。武力や、真っ先に戦うような女はアニメだけで、現実では有り得ないと。おしとやかで華やかで、それだけが女子だと思っていた
「魅力的じゃないなんて悩む必要はない。私はもう、悩まなくてもいい、むしろ・・・悩むことが間違いだった」
そう、数多の英雄が、沢山の人が自分を作ってくれた。メイヴや皆が、自分を磨きに磨いてくれた。そして──最初に自分を変えてくれた人。自分を素敵な女の子と言ってくれた人から答えは貰っていた
「何故なら、私は──!」
力を込めてメイヴを掴む、そのまま、振り切った悩みごと──
【────すでに魅力的だからだぁあぁあぁあぁっ!!!】
渾身の力を込めて、女王を戦車から吹き飛ばす──!
「そう、それよ!それ!元気に快活に、野蛮に雄々しく!そのリッカを待っていたのよ!」
くるりと降り立つメイヴ。戦車をついでに粉々に吹き飛ばし、リッカが降り立つ。鎧を纏い、弾んだ声音を響かせ、晴れやかに声をあげるその姿に、迷いは見られない
【ありがと、メイヴ!そうだった・・・自分を信じない奴に努力する価値はない!その名言、忘れてた!】
「全く、気付くのが遅いわリッカ!女王の私がここまでしてやっとなんて、牛みたいな鈍感さね!」
【ごめんごめん!──私を好きと言ってくれる人達に、力を貸してくれる人達に、私を大切にしてくれる人達に誓う!私はもう女子力を求めたりしない!──今の私を磨きあげる!そして、リッカ系女子の設立を目指すよ!】
その誓いは、リッカの悩みを晴らすもの。瞳に曇りはなく。体捌きは淀みない。それを教えてくれた女王・・・そして、ライバルたる友達に向かい合う
【というわけで・・・!私の女子磨きの礎になって!メイヴ!!】
「・・・上等じゃない!そうこなくちゃ!私が認めた唯一の女──行くわよ!リッカ!!」
兵士と龍、女王と女子。その激闘は加速していく。精魂を費やし抜く戦いが、夕日が沈む中行われる
メイヴが馬乗りになればリッカが力付くで振りほどき、リッカがマウントをとり平手打ちで叩き続ける。もみ合い、取っ組みあい、叩き潰しあいの熾烈な女子の意地の張り合い
ノーガードの殴り合い、弱点の蹴り合い、徹底的に高め合う戦い。なんの飾り気のないありのままのそれらは──互いの最高の笑顔と共に──
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
泥を総て費やし、兵士の種を総て注ぎ込み、丸腰となった二人がにらみ合い、同時に肩で息をする
「──あー、もー!くやしーい!!」
そしてその終わりに、メイヴが倒れ込む。兵士を総て倒された裸の女王は、それをもって敗北を甘んじる
「こんなに御膳立てしたのに!今度は油断しなかったのに!またリッカに負けちゃうなんてーーっ!」
「引き分けにしとこうよ・・・さすがに、私もヘトヘト・・・」
同時に倒れ込む二人。肩で息をし、夕陽に照らされ汗をそのままに大の字になる。どちらからともなく、笑いが響き渡る
「・・・私、今の時代じゃビッチ、悪い女なんて言われてるわ。ケルトの女王は、今じゃそういう価値観みたい」
「・・・でも、メイヴは素敵な女の子だよ」
「知ってるわ。私は変える気なんてないし、私をこれからも誇り続ける。──あなたもそうありなさい、リッカ。リッカ系女子を開拓するんでしょ?譲らないで──頑張ることね」
リッカ「ん!一杯食べて、一杯動いて、私だけの女子を目指す!こっからが、私のステージだよ!」
「ふふっ──あははっ!じゃ・・・帰りましょうか!」
「んっ!なんか奢るよメイヴ!いこいこ!ステーキハウスステーキハウス!」
シミュレーションルーム
クー・フーリン「よっ、御疲れさん!リッカにメイヴか、ハハッ、いい汗かいたな!」
リッカ「兄貴!」
「ほれ、バスタオルだ。風邪引くなよ?──いい顔になったな!ますます惚れ直すってもんだ!」
リッカ「うん!もっともっと私に惚れて!後悔させないからさ!ね、メイ──」
クー・フーリン「・・・行っちまいやがった。なんだ、あいつ?」
フェルグス「いいのか、メイヴ?」
「いいのよ。あのクーちゃんはリッカのクーちゃん。お情けのおこぼしはいらないわ。だから・・・」
「だから?」
「フェルディアとフェルグス!そしてトゲトゲクーちゃんと一緒に騒ぐのよ!」
フェルディア「おう!待っていたぞその誘い!!」
「よし、クーちゃん!クーちゃーん!!リッカたちに負けないくらい、素敵なカップルになりましょうか!」
クー・フーリンの部屋
タニキ「留守だ、他を当たれ」
メイヴ「留守じゃないじゃない!クーちゃーん!!あーけーてー!!」
「はぁ、やれやれ・・・」
「ははは、羨ましいな!どちらのクー・フーリンもなぁ!!」
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