人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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映像記録『ノットプリティーブラスターッ!!!』


ギルガメッシュ「・・・ぐだぐだ粒子の蔓延でも耳にしたが、まこと凄惨かつ自虐に過ぎる技名よな。いささか涙が出てきたぞ」

──変わる自分に勇気が持てない、受け入れてもらえるか自信がない・・・故にこその、こういった振る舞いに繋がってしまうのでしょうか。リッカちゃん・・・

ギルガメッシュ「一先ず、巨人殺しは一区切りしたと聞く。ならばこれよりは有給休暇の本領を発揮するときだ。──エア」

──はい!

「賢しき我に連絡を取れ。我が都市を、手間のかかる邪龍めに解放してやるとな」

──分かりました!お任せください!なら・・・フォウ!アルトリアに伝えなきゃね!

フォウ(アレだね!任せておくれよ!)

?「ふふふ、なら・・・私達姉妹も一肌脱がせてもらおうかしら」

ギルガメッシュ「む・・・?」

「そう。彼女に似たような女の子を知っているの。きっと、感じ入るものがあると思うわ」

──あなたは・・・


ウルク

賢王「エアが・・・ついでに愚かな我がウルクに来るだと!まことか、シドゥリ!」

シドゥリ「はい。先程マルドゥーク様から」

『IKIMASU』

「ふふはははははははは!!よし、仕事など半日で終わらせてくれるわ!シドゥリ!向こう三日の仕事を全て回せ!全て片付け、一日をエアの整体に費やしてくれるわ!!」

シドゥリ「・・・王よ、整体の前に死期が訪れるのでは・・・?」




デート・ア・ライブ・メンタル コードネーム『ゴルゴン』

「ふぃ~・・・今日も自分を磨く闘いが一段落した~・・・」

 

カルデアの一角、共同大図書館にて息を吐き、文字通り一息をつく人類悪のマスターたる藤丸リッカ。英霊の皆とコミュニケーションを兼ねた女子力アップのメニューをこなし終え、静かな空間たる図書館のクラシックBGMにて癒されながら、ファッションやコーディネートに必要な組み合わせや、自炊や家事に必要な心構えを編纂した特注のマル秘本に目を通している

 

「技名をアレンジして叫んだら偉く怒られた・・・ぐだぐだ世界以外では良くなかった技名だったんだねアレ・・・次からはカッコいい名前にしよっと!」

 

邪龍状態のフルパワーバースト、女子力無下限殲滅砲について、激しい抗議がメイヴと鈴鹿より呈され先程は正座にて説教三昧であったためリッカはいつもより疲弊を前面に現していた。イケイケの女子がノットプリティーとか有り得なさげ、名前は大事なファクターなんだから拘りなさい、コナハトハニービームとかどう?三千世界一掃砲(エモっとJKビーム)とかイケてない?などといった話題が盛り上がりに盛り上がり、解放される頃にはくたくたとなっていたのである。二三回シミュレーションルームにて再現したためだ

 

ちなみに本来の名前は【恐慌励起す殲滅の咆哮(アトロシアス・アヴェスター)】と言うらしい。頼むから叫んでて悲しくなる技名は止めてくれとアンリマユに頼み込まれ、皆の意向も相まってこちらを叫ぶことになるだろう。どうやら自らが思っている以上に、一般観念的な女子力、可愛らしさからは自分はかけ離れているらしい

 

「三歩進んで二歩下がる、かぁ・・・昔の人はいつだって真理を口にするなぁ、凄いや」

 

懸命に求め、いつか振るう日が来ることを信じる女子力。その積み重ねは、しっかりと自分の中で生きているのか、根づいているのだろうか。皆の期待を無下にはしていないだろうか。自分自身の心構えの不安定さに、静かな図書館の一室にて己と向かい合う

 

「高校の皆はどうしてるかな~。私が一生懸命女子力アップや花嫁修行してます、なんて伝えたらなんて顔するんだろ」

 

高校生の当たり前の日々を過ごすクラスメイト達。彼等、彼女等は普通に生きているだけで自らの何倍も早く可愛らしく美しくなっていくのだろうか。日常では育たない武力や胆力はメキメキ育ったが、穏やかな日常で育つ女性らしさには未だ縁がないですよ~、などといったらどんな顔をされるだろうか

 

「許せ、クラスメイトの皆・・・学校の皆・・・性別が女子になるのはまだまだかかりそう。でも絶対諦めないからね・・・!」

 

リッカは自身が背負った期待に応えるために、へこたれた体と心に渇を入れ、がばりと身体を起こしマル秘ブックを読み更ける。その目には、諦感は微塵も宿らぬ強い輝きが灯り続けており消えることはない

 

自らの為に残ってくれた英霊達のために、時間を割いてくれた皆のために。即座に気持ちを入れ換えてリッカは奮い起つ。まだ見ぬお婿さんに嫁入りするために、より良き自分を目指すために。一ヶ月でダメなら一年、それでダメなら一生涯。いつか自分と添い遂げてくれる伴侶を失望させないため、懸命に自分の戦いを全うせんと決意するのだ

 

「よーし、やるぞー!目指せ性別女子、デキる女!えーと何々、出来る女性は常に匂いやワンポイントに・・・」

 

黒曜石メンタルのリッカはへこたれや脱力から即座に脱却し本を順調に読み進めていく。そんな意気軒昂なリッカではあったが・・・

 

「・・・はぁ・・・」

 

静かで、アンニュイな溜め息が大図書館の入り口から響いてくる。その声音の持ち主を、離れた席に座るリッカの耳と記憶は逃さなかった

 

「あ、メドゥーサじゃん。やっほー!」

 

メドゥーサ、ライダーであり大図書館や形の無い島を行き来するクールビューティー。170を越える長身、美しい薄紫の長髪にグラマーな肢体、サイズが合わぬ姉妹のお古を改造した服を着用する妖艶な美女で、冷静かつ無感動、冷淡な物言いにて人を遠ざける孤高の美女・・・というのが外界に与える印象ではあるが、実際のところは意外と親しみやすいお姉さんな事を、リッカは知っている

 

「あぁ、リッカ。いつもお疲れ様です。ギリシャの同郷があなたを魔改造してしまい申し訳ありません・・・」

 

170を越える長身は小さく美の具現たる姉を見てきた彼女にはコンプレックスであり、姉のお古は着るものが無かったから、妖艶なのはそういった戦闘スタイルなだけ、冷静かつ無感動なのはものぐさで面倒くさがり、冷淡な物言いなのは人に好かれる気がないから・・・という、言ってしまえば残念な美女であり、日がな一日図書館で本に埋もれていたりするストイック内向的美女なのである。リッカにはちょくちょく眼鏡を勧め、怪物であれどなんの区別もしない彼女と仲良くなるのにそう時間はかからなかった。まぁ楽園にてリッカと険悪な存在など居はしないのが真実ではあるのだが

 

「ギリシャで常識人だと大変だよね~・・・オリオンも大変そうだし。どったの溜め息なんかついて。・・・エウリュアレの無茶ぶり?」

 

適当に考え付く要因がドンピシャだったらしく、リッカの隣に座り肩にもたれかかるメドゥーサ。人として感性がまともな存在は貴重なので、彼女は人格も嗜好的にもリッカを好ましく思っている。もっと触れ合いたいとも思いはするが、如何せん姉の無茶ぶりは女神のそれ、他者に巻き添えが行かないよう制止するのが難題な為時間がとれないのである

 

「はい、そうなのです・・・裸ぞ、こほん。王の制裁により漂白された上姉様はともかく、何時にもまして下姉様の無茶ぶりが・・・はぁ・・・」

 

その溜め息は重々しい企業戦士にも通ずるそれである。尋常じゃない疲労困憊ぶりを察したリッカがポンポンと膝を叩き、メドゥーサを招く。それにやや申し訳なさそうに、嬉しそうにするりと身体を預け、メドゥーサが見上げリッカが見下ろす形の膝枕スタイルが完成し、会話が紡がれる

 

「愛されているのは解ります。構われるのは嬉しいです。ですがこう、手心をですね・・・アステリオスの前で三人に増えろとか、売店をペガサスで脅かしてこいとか・・・姉様は女神です」

 

「んー、女神はわがまま。エレちゃんは甲斐甲斐しい私の目標の一人でマルニキは僕らの英雄神、ケツ姉はムーチョなのに何故こうなのだろう」

 

「ぶっちゃけ性悪はステータスですから・・・自然の擬人化や偶像は残酷でなくては、何故災厄を巻き起こすのか説明がつきませんから・・・」

 

そんなのんびりな会話をしたあと、ポツリとマスターたるリッカにメドゥーサが告げる

 

「・・・実は、お見合いのお話が来ておりまして」

 

「ふぁっ?──はっけよい?」

 

「それはスモウです。あのお見合いですよ。結婚と言う呪縛に繋がる、アレです」

 

お見合い・・・外宇宙概念の言葉には疎くてのーとボケようとしたがそこは割愛する。メドゥーサの美貌、麗しさなら十分に有り得る話だと確信しいるからだ。しかし、お見合い・・・

 

「ギリシャ男性?断ろう?ほら、誰か忘れたけどレイーポして御詫びに願い叶えるから許して♪とかいう神様いたじゃん」

 

「カイニス、ポセイドンですね。ギリシャ男性の危険度はソマリアかヨハネスブルク並・・・あぁ、安心してください。本気のお見合いを進めようというわけではないのでしょう。私の反応を見て、楽しもうといったその辺りだとは思いますが・・・」

 

断るにしても・・・と疲れはてた様子で、何処か切なげに身体を仰向けにしながらリッカを見つめるメドゥーサ。どうかしたのだろうか、自分が出来ることなら手助けをしてあげたいのだがと考えるリッカに・・・

 

「その、断るなら・・・勇者を遥かに上回るものを恋人になさい、と言う条件を課されまして。・・・その、申し上げにくいのですが・・・」

 

「うんうん、・・・うん?」

 

「・・・申し訳ありません、リッカ。そう扱われるのは屈辱以外の何者でもなく、私のような大女では食指が進まないのも承知の上ではありますが・・・貴女しか頼れる者がいないのです」

 

その提案は、やはりそう来ると言う納得と確信に溢れたものであった。確実に、妹は声をかけるだろうと見越した上での難題であり、妹からしてもリッカを巻き込むのは・・・とそれとなく抗議したかったが勝てなかった故の申し出だ

 

「リッカ、一日でいいので・・・その、私の恋人になってくれませんか?」

 

「──────────────────────」

 

「その、断れば主に私がどうなるか・・・、・・・リッカ?」

 

無言で天井を見上げるリッカに、メドゥーサは目をぱちくりさせる。注釈をすれば、彼女は魔眼を封じている眼鏡をかけているため石化は起こらぬようになっている。リッカが固まっているのは別の理由だ

 

「いよいよ・・・殿方ポジションでカップルのオファーが来るまでに至ったか、私は・・・」

 

「り、リッカ?も、申し訳ありません。他意はないのです。その、つがいという関係上あなたが殿方でなくば成り立たないといい・・・」

 

瞬間、メドゥーサは毒の匂いに蛇が這いずる音、狐の鳴く音や熊が締め上げられる音やうどんを啜る音が聴こえてきたような感覚を味わう。誰もいないのに何故・・・そんな災いの兆しは、焔や太陽の暖かさや死の気配、威風堂々とした神気を感じた頃には吹き散らされ霧散していたのだが。首をかしげる彼女とは対照的に、リッカは嬉しそうに頷く

 

「なんにせよデートは大歓迎!そういう体験あんまり無いから楽しそう!任せてよメドゥーサ、しっかりお相手を勤めさせてもらうから!」

 

快諾を示すリッカに微笑みながら礼を告げるメドゥーサ。話は決まり、リッカに無用な試練や根回しがされないことに胸を撫で下ろす。

 

「ありがとうございます。付き合いのよいマスターは素敵ですね。海産物は出禁でお願いいたします」

 

それならば後は、デートする為の場所であり日時だとリッカは頭を捻るが・・・カルデア内だとあまりデートという感じはしない。むしろ目立ちに目立ちデートどころではないだろう。確実なストーキング三昧である

 

「レイシフト許可もらって特異点にいこう!どうせやるなら、楽しく思い出に残るのにしようよ!」

 

想像以上に沸き立つ自分がいることにリッカは内心驚いていた。面と向かって告白された事が予想以上に嬉しかったみたいだと自己分析し、苦労人なメドゥーサを励ましてあげたいと提起しただろうか。いつもよりやる気に満ちている事が一目でわかる程にテンションが高まっている

 

「本格的ですね・・・場所は何処が良いでしょうか?」

 

「んー、そだなー。やっぱり近場でオルレアン・・・新宿はちょっとヒャッハーすぎるから・・・」

 

うんうんと顔を見合わせ、唸りを上げている二人の悩みを切り裂くものが現れる

 

「悩みに悩む少女に淑女。そんな迷いを断ち切る手助けにやってきた(小声)弱きを助け強きを諭す愉悦のヒーロー(小声)」

 

「!?この、図書館だから配慮した小さい名乗り、まさか・・・!」

 

リッカが振り向く先には、獅子の仮面に黒い獅子王ボディスーツ、黄金のマントにて席に座りながら『ウルク観光案内』を読むウルク不滅のヒーローが其処にいた。ウルクの細やかな困難を救うためにやってきた等身大尊重美徳愉悦ヒーロー・・・

 

「ラマッス・・・仮面(小声)」

 

ラマッス仮面が、二つの小さな手帳をリッカ達に渡す。うんうんと頷き、そっと手渡したそれは・・・

 

「レイシフト許可証に・・・ウルク観光チケット!いいの、ラマッス仮面!?」

 

「ラマッス仮面はウルク活性促進のゆるキャラとしての一面もあります。素敵な女の子二人の一味違ったデートにもばっちり対応。そう、ウルクならね」

 

(初耳です・・・)

 

「アジダハリッカ。互いに相容れぬは戦いの舞台のみ。こうして人間、個人の触れ合いならば・・・助け合い、手を取り合えるとワタシは信じている」

 

「ラマッス仮面・・・!!ふ、ふん。勘違いしないでね、これはあなたではなくウルクの為に・・・」

 

「それでは。良き時間を過ごせますように。さよなラマッス」

 

スタリと立ち上がり、ウルク名鑑とギルガメシュ叙事詩をピッと借りていき静かに扉を開き、ぺこりと一礼して礼儀正しく去っていくラマッス仮面の後ろ姿を感激と困惑の視線が見送り、やがて二人は動き出す

 

「よし、じゃあ行こっかメドゥーサ!ウルクへ!私達のデートを、始めよう!」

 

「は、はい。・・・その、よろしくお願いいたします」

 

メドゥーサをお姫様だっこにて抱え、リッカのデート・ア・レクリエーション作戦が幕を開ける──




ウルク門前

オルガマリー『それで、メドゥーサの恋人のふりをリッカが・・・なんというか、来るところまで来たわね』

マシュ(むすー・・・)

ロマン『はいはい、先を越されたからってマシュも拗ねない。幼馴染みや距離が近いヒロインは負けやすいけれどチャンスはあるさ!』

「ドクター、後でお話があります」

オルガマリー『腕を組むかキスをするかはお任せするわ。証拠画像はこちらで。リッカ、自由にやりなさい』

「オッケー!今日はよろしくね、メドゥーサ!」

「えぇ、こちらこそ。リッカ」

(ぷくぅー・・・)

『雪華の盾が曇るわよ、マシュ』

「羨ましくなんて、無いですよーだ」


門番「おぉ、よくぞいらっしゃいました!マンゴーをどうぞ。ウルクは此処に健在ですよ」

リッカ「やほー!」

メドゥーサ「・・・頑強な都市ですね、本当に・・・」

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