人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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――ありがとう。皆大好き。ヴィヴ・ラ・フランス!


光速

「来たのね、サンソン」

 

 

 

「――あぁ、来たとも、マリー」

 

 

 

対峙する、王妃と処刑人。かつての奪われたものと奪うものが、時を越えて対峙する

 

 

「処刑には資格がある。する方も、される方もだ。君を処刑できるのは僕だけだ。君も実感しているだろう?マリー」

 

 

しゃらり。と剣を抜く。罪人を断ち、また救うその刃をマリーに抜き放つ

 

 

「――貴方は私を、ただ殺すためだけに……竜の魔女についたのね?」

 

 

「そうとも。僕は君を待っていた。君が来ることを信じて待っていた。もっと巧くなるように。もっともっと上手くなるように。フランスの者たちを殺して殺して殺して殺し続けた」

 

にっこりと笑うサンソン。手に持つ刃は血にまみれ、赤く艶やかにきらめいている

 

 

「僕は処刑人として総てを教えられてきた。心構えだけじゃない。その総てを。――そしてその先を目指したんだ」

 

ゆっくりと構え、狙いを定める処刑人

 

「その極致――快楽だ。首を落とされる瞬間、まさに『死ぬほど気持ちいい』。僕はそれを、それだけを目指したんだよ、マリー」

 

うっとりと、陶酔しながら彼はいう

 

「――どうしても、聞きたかったんだよ。マリー」

 

ゆっくりと、サンソンは告げる

 

「僕の刃はどうだった?――君は、絶頂してくれたかい?」

 

「それは答えられないわ。サンソン。言うことではないし、言いたくないことだもの。倒錯主義者はもういるから……二人と私は迎えられない」

 

毅然と応えるマリー。華やかに、死臭を晴らす華のように

 

「うん、知ってる。だから、次はもっと上手くやるよ。練習したんだ。たくさん首を落としたんだ。君にもっともっと素敵な時間をあげたくて。殺して、殺して、殺して、殺して、殺して……」

 

あくまでも、君のために。サンソンの言葉はそういうものであった

 

「――僕に機会をおくれ、マリー。次は、次はもっと上手くやって見せるから」

 

「――えぇ、どうぞ。サンソン」

 

――首を縦に振るマリー。そっと首筋を見せる

 

 

「貴方が本当に『上手くなった』なら――私の首を落とせる筈よ。さぁ――試してみて。アナタがフランスで積み重ねたものが、どんなものなのか。――それが、正しいものであったのか」

 

恐怖も畏怖も感じさせない声音で、サンソンに言葉を投げ掛けるマリー

 

 

サンソンの身体が、震えていた

 

 

「――ありがとう。ありがとう、マリー。やっぱり君は素敵だ」

 

ゆっくりと刃を振り上げる

 

 

「任せてほしい――必ず君を」

 

駆ける。その刃を――

 

「――気持ちよくしてあげるよ――」

 

首に――落とす――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ば、かな……そんな――」

 

刃は、届いていなかった

 

振り下ろされた刃を、『王紋を戴いた硝子』が、しっかりと阻んでいたのだ

 

 

「ね?――貴方の刃では、私に届かなかったでしょう?」

 

ピシリ、とサンソンの刃にヒビがはいる。ヒビは瞬く間に広がり、こなごなに砕け散る

 

 

それは、サンソンの心をも表しているようで――

 

 

「う、そだ。こんな、こんな筈は……!」

 

動揺、いや、狼狽するサンソン。誇りと共に、紛れもなく……心も、砕けたのだ

 

「残念ね、サンソン。はじめてあったときに言ってあげれば良かった。貴方と私の関係は、終わっているって」

 

マリーが、告げる。別れを、告げる

 

「貴方は沢山の人を殺した。殺人者という刃を磨きあげてきた」

 

悲しげに、詠うように

 

「でも、殺人をうまくすればするほど……罪人を救うという、貴方の刃は錆びていく。竜の魔女についた時点で、貴方は私の知っているサンソンではなくなっていたのね」

 

がくり、と膝をつくサンソン

 

「嘘だ、僕は……もっともっと上手くなって!もっともっと君を気持ちよくさせてあげられたらと!それだけを考えていたのに!」

 

胸をかきむしるような独白が、響き渡る

 

「もう一度、君を絶頂させてあげられたら――!僕は、君に、許してもらえると思ったのに――!」

 

「――もう、憐れで可愛い人なんだから」

 

そっ、と。手を取り、サンソンを見つめ返す

 

「――貴方が私に赦される事なんて。何もないっていうのにね――?」

 

「あ、ぁ……あ……マリー……――」

 

スッ、と。サンソンのカタチが消え去っていった。支えを喪った柱のように。蜃気楼のように

 

「さよなら、サンソン。――また、どこかで」

 

 

 

地響きをあげ、邪竜が街を踏み鳴らす

 

そこに乗りしは。竜の魔女

 

「こんばんは、竜の魔女。遅いご到着なのね?」

 

「……サンソンも消えましたか。期待していたものから消えていくのは皮肉なものね」

 

「えぇ、本当に。意外と残るのは、貴方の嫌いな吸血鬼なのかも知れないわね?」

 

 

火を纏う魔女、華を掲げる王妃が睨みあう

 

「私は逃げたのですか。下らない、情けない」

 

「いいえ、彼女は希望をもっていったの。貴方を倒す最後のピースを、貴方を討ち果たす最後の詰めを」

 

「……下らないというならあなたもよ、王妃。バカじゃないの?何故そんなにも民を守るの?使命感に酔いたいからですか?」

 

極炎の嘲りを放つ魔女

 

「貴方を裏切った国を……!貴方を嘲笑い、蔑み、ギロチンへ送ったこの民たちを!この国を!!護って何になるというのです!!」

 

吐き出す憤怒に、誇りをもって相対する

 

「あぁ、幻滅です。魔女というのはそんなことも解らないの?」

 

「何――?」

 

「確かに私は処刑されたわ。嘲りもあった。嘲笑もあったでしょう。――でも、だからと言って『殺し返す理由』にはならない」

 

「――」

 

「王妃は民が王妃と呼ばねば成り立たない。王妃は民を無くして王妃とは呼ばれない」

 

「民が望まぬならば――望まずとも退場する。それが、王妃というものです」

 

王妃は紡ぐ。その愛を。憎しみを越えるその愛を

 

 

「いつだって『フランス万歳』!星は輝き、光を与え、皆を輝かせればそれでよい!――私の処刑は――未来の笑顔に繋がったと信じている!」

 

(愛はけして、憎しみには負けない――ですわよね、ゴージャス様――)

 

 

「……なによ、それ」

 

「私もあなたが解りませんわ。その物言いで確信しました。あなたはジャンヌではない。――本当の貴方は、いったい何者なの?」

 

「――だまれっ!!」

 

ファヴニールが、炎を吐く。

 

 

(――さようなら。アマデウス。さようなら、ジャンヌ。さようなら――ギルガメッシュ様)

 

思い浮かぶ、初恋の人。

 

思い浮かぶ、無二の友

 

思い浮かぶ――高らかに笑う、愉快ながらも輝く王

 

(これが、マリー・アントワネットの生き方だから――!)

 

――宝具を解放する。己を楯にして、民を守るために

 

 

「宝具解放!『愛すべき』――!」

 

だが、それは叶わなかった

 

 

「――たわけ!命の使いどころを見誤るなと、我は確かに伝えたはずだ――!」

 

 

「えっ――!?」

「ひっ……!?」

 

――華の散り様に、待ったをかける!

 

 

「我に不敬を働くつもりか!マリー・アントワネット――!」

 

「ゴージャス様――!?」

 

マリーを抱き抱え、素早く宝具を展開しファヴニールを撃ち据える

 

 

「ジークフリート!出番だぞ!職務を果たせ!」

「任せてくれ――!」

 

カプセルから飛びかかり、ファヴニールに切り込むジークフリート

 

「な、何故、何故あんたたちがここに!?離れた街にいて、脚もなかったはずでは――!」

 

「ハッ、我の脚が、バイクやヴィマーナなだけなわけが無かろうが小娘!我が財には、それらを上回る財などいくらでもある!ヴィマーナやバイクが使えぬならば、それを上回る財を用意するだけのこと!」

 

そう、マリーを助けるために、軽く――『光の速さ』で飛来したのだ

 

「かつての召喚の折、我は月の底にて次元の果てに飛ばされたことがあってな!帰還するために見繕った遥か最新の光の船を使用したまでよ!我は最古を好むが、最新にも理解があるのでな!」

 

選別には苦労した。何せ最先端の宝具だ、文明見識が大変だったから

 

――だが、かつて器が言っていた。時は、金で買えと。拙速を尊べと

 

――マリーは、助けたかった。どうしても。

 

だって、彼女には彼女を愛する人がいるから。アマデウスという、彼女を愛する人が

 

気持ちが繋がっているのなら、最後まで一緒にいてほしい。悲しい別離なんて好まない。そんなもの、願い下げだ

 

犠牲の上に成り立つ勝利なんて、当たり前な結末は――自分と器が打ち砕いて見せると誓ったのだから!

 

「ゴージャス様……どうして……」

 

「――貴様は我の夜枷の相手を申し出た、気概溢れる女よ。こんな路傍で散らすには惜しい華だ」

 

「――!」

 

――うん。それもある

 

マリーは、自分を恐れずに、朗らかに接してくれた

 

器たる英雄王に敬意を払い、振る舞ってくれた

 

そんな在り方が、自分は好きだと感じたのだ。――消えてほしくないと、自分が思ったからだ

 

「貴様の願いは民草の守護であろう。ならばこのような町で果てるのではなく、特異点の修復を完遂せよ。それまで死ぬことは赦さん」

 

――そう。見つけたのだ。自分の願いを

 

皆で歌を詠うこと。アマデウスのピアノを聞くこと

 

特異点を――出逢った皆で修復する事だ!

 

「――歌の一つでも歌ってやれ。詳しくは言わんが、あの音楽家は今、大層傷心気味でな。貴様の声が聞きたかろうよ」

 

 

――果たしてほしい

 

――二人だけの、尊い約束を。そのために自分は、光を越えてここまできたのだから

 

 

「――はい!ゴージャス様――!!」

 

 

「……さて、ファヴニール。俺と決着をつけるか?」

 

 

「に、逃げなさいファヴニール!今は逃げるの、逃げるのよ!」

 

「骨がなくなったな、田舎娘。いつもの威勢はどうした?品切か?」

 

「うるさい、うるさい!必ず――必ずお前たちを倒す――!」

 

ファヴニールが飛び去る

 

「ありがとう……!素敵な素敵な王様!」

 

「ふはは、賛美せよ、特に許す!我に不可能はない!光を抜き去るなど容易き事よ!ははははは!」

 

「――フッ。これで、役者は揃ったな」

 

――無銘の選択は確かに

 

細やかな約束と護り、かつてのすれ違いを是正したのだ




「うんうん。やっぱり笑顔で終わる結末が一番だね!さて、マギ☆マリは・・・」

「「「「「「「マーリンざまぁwwwww」」」」」」」
「――大炎上してるじゃないか・・・!」

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