ヘラクレス「渾身の蹴りを会得していたか・・・七度この身を滅ぼされやも知れぬ迫力を感じる。実際リッカにアレを決められた日は敗北が確定したものだからな・・・」
アキレウス「勝敗は5分!掴むか意識を刈るかの戦いだからな、いつかあいつらが本気で戦える日が来てほしいもんだなぁ!」
ケイローン(師が弟子を育て、また弟子が弟子を育てる・・・こうして歴史は紡がれていくのですね。お見事でした。アキレウス、オルガマリー・・・)
「よーし祝いだ祝いだ!いっちょうまい料理をたらふく──ん?」
ヘラクレス「・・・モニター?何かの放送か?」
ケイローン「・・・成る程。なぁなぁでは済ませないと言う事ですか」
『うぇーい、フランシスコー。寒風しか吹き荒ばないこの南極の楽園にて、皆様如何御過ごしでしょうか』
その日・・・楽園の片隅、電脳世界にての騒動をオルガマリー達が解決した数時間後。カルデア放送機関の総てが、その突然の放送にて染め上げられる。強制による映像オンエア。その行為の是非を問う前に・・・楽園の皆は、その放映の奇妙さと異質さに目を見開くこととなる
『私の名は岸波白野。かつてというか基本的にフランシスコ=ザビエルと名乗っている・・・御覧の通り、月の新王です。今日は皆様に謝罪を含めた御伝えしたいことをこの場を借りて御報告に月より参りました。今の私はとあるスタジオを使い、皆様に放送をお送りしております。うぇーい』
月の新王、岸波白野と名乗る少女が無表情にてピースサインを贈る。バラを左胸に挿した赤いノースリーブにサングラスといった珍妙な格好を惜し気もなく晒しており、真面目なのかそうでないのか掴みかねる印象を無差別にばら蒔いている。ロマンが口をあんぐりと開け、ダ・ヴィンチちゃんが腹を抱えて笑っているのは当然の反応であろう。ギルガメッシュの同盟者が、なんかみょうちきりんな格好かつ御忍びで遊びにきているのだから。何故こんなところに・・・その疑問は、画面の向こうのザビエルが知らしめることとなる
『この度は、月の預かりであり、派遣社員でもある此方の陣営のAI・・・彼女が楽園への利敵行為を働き、同盟の基盤、友好的な関係を崩そうと画策した事に対する謝罪、そして補填を申し上げるために参りました次第です。はい、そして件の彼女の現在が此方となります』
パチリ、と指を鳴らし、天井部分が開いて一人の少女が降りてくる。同時に月の新王の指に嵌められている王権、レガリアが輝きを放ち、支配下と統治下にいる事を如実に示されたその姿は・・・俗に言って、屈辱きわまりない姿と言っていいものであった
「んんー、んんー・・・!んーっ!」
目隠しをされ、口を塞ぐギャグボールを嵌め込まれ、身体を逆海老反り固めにされ天井からつり下げられている。背中に『私はイキりまくり多方面に迷惑をかけ、楽園への背信行為を行いました』との石板を三枚ほど重ね乗せられている。力を行使し他者を見下し調子に乗った者への報いとしての姿を、楽園全放送ネットで晒されているのだ。王二人にて結託した、BB拘束状態である
『このように制裁と反省の意図を示す形をもって、今回の罪状・・・神々への詐欺、英雄王への人材への害意、不許可なるプログラムの違法製作、そして様々なイラッとする言動への謝罪と致します所存です。常日頃からBBにイラッとしている皆様への心ばかりの醜態の提供、溜飲を下げていただく王からの制裁。そしてこれからもよき関係を築くためのケジメとしての処置とさせていただきます』
サングラスを取り、深々と頭を下げるザビエル。ついでにBBの拘束から微弱の電撃を放ち、くすぐったく悶絶させたあとぐったりとさせ、謝罪のように頭を下げさせる。ノリノリなザビエルに翻弄されているBBの様子が、丁寧に楽園へと放送されているのだ
『勿論、謝罪だけではなく被害への補填をも考案しております。まずは人的に被害を与えるBBの思想と思考を懸念し、真っ当な社会性と協調性を育むための処置──』
パチリと指を鳴らしてモニターを起動させ、ずらずらと贖罪の項目を上げていく。其処にはBBが行うべき、BBに行わせるべき数々の手段──王らが考えていた方法が考案され呈示されていたのだ。どれもが──非常に難題なものである事が一目で見てとれるものだ。容易ではないメニューなのは明白である
『BBの全能力を健全なボランティアなんでもAIとして楽園の皆様へと提供することを誓います。ありとあらゆる苦難や困難、日常のアレコレを無償で解決してくれる皆に愛されるBBちゃんを目指してもらいましょう。同時に銅素材1000個、銀素材500個、金素材を300個貯蓄するまでの周回を単騎で行うことを誓います。暇を持て余すから悪事を為す。一から十まで汗水垂らし働き戦う。そうすることで、心身ともに優良かつ健全な領域を目指してもらうのです。勿論、獲得した素材は楽園カルデアへと還元していただく心積もりであります』
語り続けていくザビエル。心なしか青ざめているBB。無償のボランティアにて徹底した奉仕活動と言う名の極限労働を単騎で行わせる無茶ぶり。だが、それはBBにとってほんの序の口である事を即座に理解させられることとなる
『上記が終わるまで、シミュレーションによるBBダメージコンテストの開催。ムーンキャンサーの相性を活かした腕試しに活用ください。ルーラーの皆様は高火力を出す今がチャンスです。そして同じ痛みを共有するために、私とBBで二人羽織にてカルデア名物、ルチサタ麻婆とヒュドラ麻婆を完食する事。それらをはじめとした思い付く限りの罰則を与えていきたいと考えております。楽園への敵対心はあらず、同時にBBのイメージ回復の一環としての処理。何とぞ御理解頂くと同時に、BBを今後ともよろしく御願いいただく事を心より願い、同盟者たる皆様へよろしく御願いしていただく所存です』
そうしてBBに歩みより、ギャグボールを外しつつ言葉を促す。彼女自身の所感を告げさせ、心持ちを知らしめるために
『さぁBB。今の御気持ちを正直に伝えてごらん。BBちゃんは今後、どんな気持ちでお仕置きに挑むのかを皆に伝えよう』
それを外されたBB。ぐったりして息も荒く吐いていた状態を即座に取り繕い、精一杯の気丈を以て振る舞い・・・
『こ、今回は相手を侮った私の敗北です・・・ですが、どんなお仕置きをされたってBBちゃんは負けません・・・!いつか這い上がって、皆さんをグレートでデビルな困難と試練に叩き落としてあげますから・・・!』
めげず挫けないのは誰に似たのやら。これだけ辱しめられていても涙目でお茶の間とその向こうにいるギルガメッシュへの不屈を宣言するBB。・・・その反応は、ザビエルらの望むところであったと知らずに
『良く言った後輩。まだそれだけの口が利けるタフネスさは流石。私は嬉しいよ先輩として』
『え・・・せ、先輩・・・?こ、これは精一杯の虚勢と言うわけでタフなわけでは・・・』
『心が折れないということはまだ余裕があるということに他ならない。ならば知ってもらいましょう。何故BBちゃんがそうなったのか。彼女が抱えている乙女の秘密とはなんなのか。──寸劇や語りを含めた大長編、月の裏で起きた例外処理。人の心を暴き立てるその道のプロのザビエルが織り成す、BBちゃん赤裸々スペシャル☆ブロッサム~イキりまくり後輩は何故小悪魔になる道を選んだのか~を、8章の大長編で御送りいたします。Blu-rayBOXも提供いたしますので、録画や見返したいあなたにもご安心を』
パチリと巨大モニターからサクラな迷宮のオープニングが流れだし、そしてBBとザビエルの馴れ初めが放映され始める。BBだけではなくザビエルにもダメージが行くような蜜月の時間ではあるが、心臓に毛が生えた不撓不屈の新王にはなんの効果ももたらさない。総てが胸を張り伝えられる自らの軌跡であるからだ
「ん~っ!!んんーっ!ん~!!」
逆に可哀想な程にあわてふためいてるのはBBである。彼女からしてみれば自分のパーソナリティーの暴露は死活問題に他ならない。種の割れたマジックが湧かないのと同じように、小悪魔として振る舞っている状態である自分の成り立ちを知られてしまえば、自分へ向けられる視線が生暖かくなるのは自明の理だ。最早人前に顔すら出せなくなるような所業に、此処に来て本気で許しの懇願を示したBB。──そっとザビエルは、BBの目隠しを取り、天使のような微笑みを彼女に向けて見せる
「やっと素直になってくれたね、サクラ」
「んんーっ!、んんーっ!(せ、先輩!ど、どうかそれだけは・・・!BBちゃんのアイディンティティの暴露と剥奪だけは!黒コート、着れなくなっちゃう・・・!)」
「──その顔が見たかった。可愛いよ。私の後輩」
「~~~~~!!!!」
天使のように可憐に微笑みながら、そっと耳許で囁くザビエル。言外には当然のように『止める気などない』と死刑宣告を行っている。罪には罰を。肉体的制裁は徹底的に受けていたため、此処では行わない。楽園へ反逆し、ザビエルを敵に回したらどうなるか──彼女は教えるのだ。小悪魔後輩を通じて
『さぁお待たせいたしました。BBちゃんと私の月における奮闘。例外処理──CCC上映会。パニッシュもアルヨ。開幕の御時間です。BBとか微塵も興味ないよ、という方の為に裏番組で私の月の表での奮闘も上映いたします。私と言う最弱の存在が、どうやって最強の・・・熾天の座へと至れたのか。親愛なる隣人たる皆さんに知っていただけたなら幸いです。あ、Blu-rayBOXも当然ありますので、良かったら手元に置いてね』
スタジオの電気が暗くなっていく。いよいよ以てBBのお仕置き、そして生き地獄が始まるのである。小悪魔な振る舞いを滑稽な道化に変える王直々のお仕置きタイム。最早二度とイキる事は無いだろうほどの全容である黒歴史暴露。──儚く現実に破れた恋の話、そしてその少女の行き着いた先を
『あ、言い忘れていました。これから運動会や大会をするときは連絡入れてね、ギル。土地を用意するから。ネロもお祭りには乗り気だし丁度良いや』
「んん!んんーっ!!んんーっ!!んんん~!!」
『それでは皆様、此度は本当に申し訳ありませんでした。ザビエル・ケジメとして、存分にお楽しみください。これからも、月にいる仲間として仲良くしてくれたなら嬉しいです。ばいびー、フランシスコー』
ぱたぱたと手を振るザビエル。じたばたと海老のように拙く暴れまわるBB。上映される映像、暗く消灯されるスタジオ
「・・・先輩。世の中には、色んな関係があるのですね・・・」
「成る程ぉ・・・はくのんは後輩のつきあい方で私の遥か先を行っている・・・!なんていうフレンドリーシップ!私もマシュを可愛い涙目に出来るように頑張らなくちゃ!」
「先輩!?」
ザビエルのオーディオ・コメンタリーを告げつつ放映されるネロとザビエルの奮闘記、そしてBBの、月に挑んだ戦いの記録
決定的な印象、名誉毀損を配慮し、放映では全カットされた魔性菩薩の存在に、とある童話作家は心の底から胸を撫で下ろした。そしてBBは贖罪の最初にて心身ともに満身創痍であるが──
「これからやること一杯あるよ。頑張れ、私の後輩」
「・・・・・・・・・・・・」
最早返事をする事もできないほどに疲弊しきったBBを見て、ザビエルは満足げに麻婆を頬張り続けるのであった──
翌日
ギルガメッシュ「ふははははははははははは!!よくぞ彼処まで徹底的に辱しめたものよ!あの無駄に自信に満ちた面構えが病死一歩手前の相となっておったわ!まぁ仕方あるまい。己の起源が淡い恋心と知られればそうなろうよ!くっ──ふははははははははははは!」
ザビエル「久々に見た。駆け抜けたなぁ・・・」
──やはり、尊い奇跡や事象を産み出すのは心。何処にあるか、実在するかも定かではない在り方が織り成す物語。・・・白野さんもBBちゃんもまた、かけがえのない魂を獲得したのですね・・・
(アバズレ全カットはナイスぅ!ナイスぅ!テラニーはちょっとアレだからね!いやかなりアレだからね!)
──てら、にぃ?
(あぁあぁあなんでもないなんでもない!!テラ・ニーはね・・・地球の膝なんだよエア)
──地球に膝が!?丸いのに!?
《苦しすぎるわ!もそっとましな弁明を告げぬか!何よりも月のアレはあまり口に出すでないわ!》
(ゴメン!こればかりはボクが悪かった!)
──地球の膝・・・何処かの地名、パワースポットなのかな・・・いつか行ってみたいね、フォウ!
(君が純粋でよかった──)
──フォウ!?
「泣いたのはBBだけ。皆ハッピーを確認したよ、はい、報告書」
~アイリ
「素材や経験が落とせて、色んな相手と戦えるなんて腕がなるわね!行くわよ、せいばーらいおん!」
「がおーん!」
「作ってもらったシミュレーション、かけてもらった期待・・・無駄にはしないわ!じゃあ早速ドラゴンから行きましょうか!」
「がおっ!?」
~実はプログラムのアレ、月から・・・つまり私からの提供だからさ。隠してたようにしてもこっちの操作でバラせる二段構えなんだよね
「フッ、とことんまでアレを害するに長けた女よな」
~それほどでも。それに──
エレシュキガル『え、えっと・・・こんにちは、なのだわ。オルガマリー』
「あなたね。励ましたり、あのとき助けてくれたエレシュキガルは。まさか、AIサーヴァントとしてもいたなんて・・・」
『か、隠れていたつもりではなくて、タイミングが中々・・・そ、その。あの・・・』
「・・・あなたのお陰で助かりました。良かったら・・・お友達になってくれないかしら?」
『ほ、本当!?う、嬉しいのだわ、やったのだわー!その、今まで送った手紙は嫌がらせではなくて──』
アイリーン『ふふ、楽しかったわね。また四人で何かが出来たら良いのだけど』
ホームズ「そのような事象も、起こりうるだろう。楽園に・・・カルデアに有る限りね」
モリアーティ「全く不届きだね!はじめからモリアーティの仕業などと!名誉毀損もいいところだ!娘と生徒、マイガールを抱える優しいパパだと言うのにネ全く!」
「・・・念のため聞くが、君はBBウィルスを持っていないだろうね」
「明日への希望!!」
「バリツ!!」
「アウチッ!!!!」
『うふふ、こうでなくちゃ』
~なんだかんだで皆無事。あ、ティアマトママンからメッセージを預かってるよ
「ほう?」
~『BBさんを責める気はありません。これからは、少し落ち着いて皆と触れあってくれるようになってくださいますように』・・・だって
(原初のママは懐がふかぁい)
~マルドゥークは『WAKAREBA EENYADE』だって
──マルドゥーク様のフランクさが留まることを知りません!
「これでこそメソポタミアよな。──さて、戻るのか?」
~うん。後は──
BB「うぅうぅ・・・ちょっとえげつないくらいのダメージが響いています・・・どうして、どうしてこうなったのか・・・グレートデビルからボランティア天使に・・・黒なのか白なのか・・・」
リッカ「あ、きたきた!おーい、早く早く~!」
BB「センパ・・・マスターさん?どうして・・・」
「便所掃除でしょ?私もやるから待ってたの!ほら、行こうよ!」
「な、何故ですかぁ?BBちゃんの贖罪とお仕置きに、マスターさんは関係・・・」
「あるよ。マスターだもん」
「!」
「サーヴァントの不始末はマスターの不始末。サーヴァントの責任はマスターの責任!そんなわけで、私が手伝う理由にはなってるでしょ?ばっちりしっかり終わらせて、ギルとはくのんに許してもらおうよ!」
「・・・センパイ・・・」
「ほらほら、やることいっぱいなんだから止まってる場合じゃないよ!なんだかんだでお話できなかった分、ボランティアしながらいっぱい教えてもらうからね!ほらハリーハリー!小悪魔後輩として返り咲くまで、私も付き合うから、ほら!」
「・・・ふーんだ!どんなに優しくしてもらったって、本当の意味ででれたりなんかしませんよーだ。リッカさんみたいな筋肉女さん、いつかハワイに連れていってビーチの晒し者にしてやるんですから!」
「ふふふ、マッチョ女好きがいることにかける!あと見た目はそんなに変わってないからね!史上最強の弟子の秋雨先生みたいな感じだからってそれ一番──」
~もう一人のセンパイに、お任せしよっかなって
「ふはは、間違いは──無いであろうな」
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