ギルガメッシュ「ふはは、であろうよ。宣告承知の上だ。恐らく問題対処に向かっているのだろうよ。貴様は準備をしておけ。迎撃の準備をな」
『げ、迎撃なんて言われても・・・カルデアの何処にもいないし、持っていたプログラムにも異常はないし・・・』
「フッ、やはりそう見えたか。──何、直ぐに理解できようさ。慌てず騒がず、状況の変化に目を光らせて置くがいい」
『わ、分かったのだわ!とりあえず御母様に、詐欺に騙されないよう、御兄様と勉強させてくるのだわ!』
──所長ら皆様の問題解決、上手く行くでしょうか
《問題はあるまい。脇を固める輩はひとかどの知恵ものだ。出し抜かれることは無かろうよ。しかし──巧妙に作ったものよな?》
?『ふふふ、私は後輩イビりの為なら手段を選ばない。唐突に後輩の泣き顔を見たくなったという胸の高鳴りが抑えられなかった』
──あ、あなたは・・・!
《根本的にあのAIに完全犯罪などは不可能よ。確実にヤツは我等の愉悦に一役を買う。今は信じて待つがよい。我が右腕の奮闘、そして──小悪魔の道化ぶりをな》
『ザビビビ・・・』
フォウ(何それ笑い声!?)
「はーい!では改めましておはよう、こんにちは、こんばんはー!楽園カルデアを影に日向に支え、人類の皆さんを強力にバックアップする万能系後輩!あなたのBB、ムーンキャンサーBBちゃんです!はーい、拍手ー!」
電脳世界、マスター育成強化プログラムに起きた異常の原因。プログラムそのものに侵入し解決を計る為に精神を電脳体化したオルガマリー一行。その果てに辿り着き、襲い掛かる謎の魔獣、ビジュアル的に無理をさせられていた魔獣達を退けた次に待っていた元凶、そうと思わしき少女が朗らかに挨拶を交わす。黒いコートを白いレオタードの上より羽織し紫色の髪と瞳、人間を眺め弄び、積極的に害するかのような邪悪な笑みを浮かべし、月の癌・・・クラス・ムーンキャンサー。カルデア所属のサーヴァント、BBが変わらぬテンションで語りかける。一行の敵意と困惑を、さらりと流しながら
「やだ、こわーい!業務に励んでいただけのBBちゃんになんでそんなに敵意マシマシなんですかぁ?私、哀しいし傷ついちゃいます。しくしく」
「いやいや、無理は止めたまえよキャンサーくん。どんなに悪ぶろうとまたは虚勢を展開しようと、根にある人格は隠し通せはしないとも」
モリアーティの言は、BBの元になった感情に人格を考慮した物言いであったのだが、その言葉選びの妙にはBBは気付かなかった。ぷんすこと、目が全く笑っていないおどけた態度にて己の評価を抗議する
「むっかー!BBちゃんが性悪ビ○チと言いたいんですかぁ?私は常に真っ白。皆様の健康と幸福を第一に考える管理AIなのですけどぉ」
(根は優しいんだよネって言ったつもりだったんだけどナー)
「まぁ、それはともかく・・・BB、あなたは此処で何をしていたというのです?あの妙なメイクの魔獣はなんなのですか?BBファームとは一体?」
余計な対話は付け入る隙となる。リッカのように絆を結ぶ対話は苦手なため、オルガマリーにとっての対話は腹の探りあいだ。不可解な理念をもたらすBBに、銃を構えながら問い質す。
「・・・・・・」
『ホームズ?何か気になることでも?』
アイリーンの言葉にも答えず、先程からホームズは黙考に耽っている。ホームズはBBの第一声から、その会話の何処かに違和感を感じていた。彼だけの思慮、彼だけの判断。其処に、介在する余地はないのである。アイリーンは話しても無駄ね、とクールに流すのみである。『そういう人』と分かっているから、彼のやりたいようにやらせるのが一番なのだと理解しているが故に
「勿論、プログラムのメンテナンスですよ?新入りマスターの育成カリキュラム、ドロップするアイテム、ランダム設定が行われる際のルーチン構成。ちゃーんとギルガメさんから許可を取った活動ですよーだ」
その言葉と同時に見せるは許可証のデータ、フォウスタンプが押されている資料『マスタープログラムのメンテナンス改良担当許可』と書かれサインが記されている紙が、BBの手により開帳される。本物であり、彼女はしっかりと手順を踏んでいることは理解できた、が・・・
「・・・確かに本物なようですね。其処は理解できました。ギルの許可なら、それは全てにおいての太鼓判に他ならない」
「ですよね?だからその銃を下ろしてくださいよ~。か弱いBBちゃん、かたかた震えるくらい怖いで~す」
「では、切り口を変えましょう。ランダム設定などのメンテナンスはよろしい。問題なく更新されているのは見ればわかります。・・・気になるのは先程の魔獣、そしてBBファームと呼ばれる存在です。アレはどう言うことなのですか?」
化粧された魔獣、首輪がかけられた防性プログラム。本来ならば反撃以外には機能しないものであり、ティアマトの手によりウィルスや性質の変化を区分されているものだ。だが先程のプログラムは度を越した攻撃性と狂暴性を発揮し襲い掛かってきた事をBBに伝える。そもそもランダムプログラムやエネミーなどはプログラムそのものに組み込まれている。態々カルデアの防衛プログラム、世界に拡散すれば即座にネットワーク掌握が叶うレベルの存在を単純な育成プログラムに差し込むのは動作不良にしかならない筈だが・・・
「よくぞ聞いてくれました~!アレこそは楽園カルデアの防衛を攻撃に転じさせる為に、私がティアマトさんから借り受け調教した攻性プログラム、BBファームにいる豚の皆さんでーす!可愛かったでしょう?」
「アレは君が手掛けた攻めの術式だと?ペンタゴンのハッキングやスパコンの乗っ取りでも目指しているのかな、君は」
一目見れば解る。強化に強化を繰り返されたあの魔獣らは、通常の機器やデスクなど完膚無きまでに破壊できるウィルスに変化している。過剰防衛にして破壊を目的した、防衛とは似て非なるプログラムに変化したその真意を、BBは問い返す。AIは嘘を告げることができないからだ
「はぁ、だから誰にも会いたくなかったんですよねー。BBちゃんお手製の攻撃ウィルス、その生成システム『BBファーム』は内緒の筈だったんです。隠蔽はしていたのですけど、何処から漏れたんでしょう・・・」
「──・・・」
「ご察し、ご存じの通り。アレは私が無害なティアマトさんの子供たちに攻撃性を付与した特注ウィルス『BB豚さん』です。カルデアからボタン一つでどこでも送り込める・・・素敵な素敵なプログラムに調教していたんです♪そしてこのプログラムの一部を使って増やす、BBファームを生成していました~♪」
「──そうか、そう言うことね。『許可』を『拡大解釈』し自らの一存にて、『改良』をプログラム改良以上、私兵生成に着手した・・・!」
にたりと笑うBB。一を聞いて、十にいたるその優秀さをBBは態度にて褒め称える。其処には、一を聞いて十の余計な事を行う小悪魔故の共感と察しの良さが現れている、一種のシンパシーが発生しているのだ
「だいせいかーい!私はマスター育成プログラムに使われるエネミーのリソースを使い、カルデアから自主的に送れるとびきりの尖兵、攻勢プログラムを製作したのでーす!何故か?それは勿論楽園の為、やられる前にやるための最大の防衛手段の構築なためです!」
「・・・カルデアのプログラム内でそういった行為をすれば、即座に察知される。ティアマトさんの目を欺ける筈はない。・・・だけど、まだカルデアにインストールされていない状態のプログラム内なら絶好の隠れ家となり製作に、専念できる」
「話が早くて助かります♪そう、私は許可を得てマスタープログラムのメンテナンス、改良を行った。『ついで』に、一環として他者を害する攻勢プログラムを組み上げたに過ぎません。改良の副産物であるなら、文句を言われる筋合いはないでしょう?それに、センパイや先輩以外のマスターなんて目障りです。万が一にも契約権を移されたりされては叶いません。私はこう見えて一途な後輩。誰にでも尻尾を振るわけではありませーん」
つまり、それは・・・マスタープログラムの内部にてウィルスを作り上げた理由に帰結する。彼女が考えたこと、それは──改良と同時に、排斥と排除を画策したものだと思い至る
「リッカ専用のマスター育成プログラムを構築し、アイリスフィールさんを排除、あるいは楽園マスターとしての資格がないように見せるためにふるい落とす。・・・強化に強化を重ねたプログラムにて、アイリスフィールさんの脳を焼ききるのも考慮にいれて」
「だいせいかーい!そしてもう一つ。月の彼方で忙しくしている先輩へ、オチャメなプレゼントを贈ろうと思ったのです!ほら、私の先輩は忙しいですし、たまには息抜き、刺激が無いとダメだと思いません?」
その判断は過分ではあるが、何処までも善意に基づくものであった。彼女はマスター育成プログラムをアイリスフィールではなくリッカの為に改良し、万が一にもリッカを上回る分子の排除の手段、反乱の可能性を摘み取る準備、そして月へのプレゼントを作り上げていたということになる。・・・その過程でのアイリスフィールの安全、月への被害、ウィルスがもたらす危険性はスルーされている事に目をつぶれば、充分に仕事は果たしていると言えるだろう
「私は無実無根、真面目に働いただけなのですよー?よってたかって苛めるなんて酷いと思いません?今なら穏便に済ませてあげますから、Uターンして帰ってもらえると嬉しいんですけどね?私は真面目に仕事していた、と所長が伝えてくれればギルガメさんもにっこり、センパイも鍛えられてにっこりですよ?」
「はははは、契約の文書を巧妙に自己解釈した質の悪いビジネスウーマンといったところかな?何が巧妙って許可を取ってから行うところがネ!絶妙な上手さで腹が立つ!」
その言葉を受け、オルガマリーは──銃を突き付ける。その行為は、見逃せるものではないからだ
「あれ?善良なAIの言い分、理解してもらえませんでしたか?私は楽園の発展を目指して、一生懸命に頑張っていて・・・」
「語るに落ちているわ。ギルは貴方に『アイリスフィールが使う育成プログラムの改良』を命じた。そして、副産物なんて名目で過剰なウィルスプログラム生成なんて許される筈もなく、ましてや同盟関係にある月へ送り付けるだなんて。これは月への攻撃、同盟を決裂させる口実にして敵対を幇助する行為と受け取られても仕方がない行為です。──磐石を是とし、ギルが運営する楽園に、不穏な分子を認めるわけにはいかない」
その行動を看過など出来ない。それらは放置を行っていれば、確実にアイリスフィールに危害が及ぼされ、月の新王に楽園の責任追求が行われるだろう。──自分の気に入った存在以外への被害をまるで考慮していないその手段を、認めるわけにはいかないのである
『自分はそんなつもりは無かった、なんて幼稚な言い訳は世間では通用しないのよ。一人前なら、自分の作ったものが他人にどんな影響をもたらすのかを考えなくてはダメなのよ、BBちゃん』
アイリーンもまた同じく。モリアーティも拍手を贈りながらも、その手段の拙さを糾弾する
「いやはや、君は逆手に取る事に長けているようだネ。素晴らしいとも。ただ──ちょーっと隠蔽工作が甘かったかナ~?というか!悪巧みなら私に一声かけてほしい!『またアラフィフか』何て言われるのが目に見えるのだから!」
「はい。私もそのつもりでした。『アラフィフさんの仕業です!BBちゃんはこんな事になるなんて考えもつきませんでした、しくしく』と濡れ衣を着せる気まんまんだったのに・・・何処から漏れたんでしょうか。先輩が送ってくれた改良しやすいムーンセルプログラムに、漏洩なんて・・・」
「よーし決めた!君は一度リッカ君やギルガメ君、ザビ君にお仕置きされるといい!最初から私をでっち上げるとか名誉毀損行為で起訴案件だとも!」
「それは日頃の行いかと・・・」
ホームズは静かに考案を続け、注意深く観察を行う。──また一つ、違和感を察知した。BBの発言には何か──彼女自身すら考慮していない介入があると推察を行う
「ムーンセル派遣サーヴァント、クラス・ムーンキャンサーBB。貴方を不穏行動の名目で王の下へと連行、然るべき裁定を受けていただきます。逆らうのならば──」
「逆らうのなら、なんですかぁ?」
「カルデア所長の権限において、実力を行使──力尽くで、貴方を拘束します!」
その判断の下、全員は戦闘体勢を取る。行きすぎた処置と処理への始末を、王へと伝えるために。万が一にも、王の財を傷付けないために。その為に──
「みんな、力を貸して。彼女を戦意喪失させ、身柄を抑えるわ!」
所長権限にて、毅然と告げる。──やり過ぎた後輩サーヴァントを、停止し静止させるために。所長業務の一環が、幕を開ける──
BB「実力行使、ですか・・・はぁ。私も侮られたものです。不撓不屈の人間力の化身たるあの人、何故人類側にいるのかまるで解らない規格外の邪龍、戦うとかそういう場所にいないゴージャストリオも用意せず、たかだか近代の創作連中をかき集めただけの有り合わせにBBちゃんを止められると思っているんですかぁ?」
ホームズ「確かに、モリアーティは些か頼りない。的確だ」
「君は新宿で奮闘に奮闘を重ねた私の何を見てきたのだネ!?」
「私に落ち度があったのか、それともオルガマリーさんが図抜けて優秀だったのか・・・それはもうどちらでもいいです。良いでしょう。私の仕事に不満があるというのなら、力でかかってくればいいのです」
瞬間、辺りの様相が変化する。桜の並木、黒い星空に彩られた夜の風景。BBが浮かび上がり、その機能を励起させ一同を見下ろす
「丁度此処にいるのはカルデアの頭脳達。無力化して思考をちょっと弄り、BBちゃんの認識を変革してしまえばどんな業務もフリーパス。公にグレートデビル出来ちゃいますからね♪というわけで・・・」
巨大なスロットを召喚し、教鞭に変化させた全能行使権を振るい、淫らにして悪辣な笑みを浮かべる
「さぁ、喜びなさい?私への肯定、私への賛美しか行えないように調教してあげる。私の免罪符として、存分に身の程を弁えさせますね♪所長さん♪」
「良いでしょう。──お仕置きは尋常ではないことを覚悟しておくように!」
回り始めるスロット。放たれる莫大なガンド。此処に、小悪魔を調伏させる戦いが始まる!
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