人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ギルガトリング以外の戦い方を模索する話です。王は如何にして近接戦闘の拙さをカバーするのか


思案

「た、助けてくれたことには感謝します。藤丸、マシュ。そして、英雄王ギルガメッシュ……で、いいのよね」

 

 

「……我に礼を尽くすなら、己の職務を果たせ。その功績のみを我への返礼とする」

 

「わ、解り、ました」

 

「プークスクス。見てよマシュ、偉そうな所長がギルにへーこらしてる」

 

「き、聞こえますよ先輩」

 

「というか貴方!そう貴方よ藤丸リッカ!何故あなたがマスターとなってここにいるわけ!?レイシフトしてきたのは解るけど!何故マシュがサーヴァントになっているの!?説明してちょうだい!!」

 

「ダメです」

 

「ダメぇ!?」

 

「藤丸君、所長で遊ばないでほしい。彼女はほら、気難しくて対人関係が苦手だから……」

 

「どういう意味!?私の交友関係なんて関係ないでしょう!?あぁ、もう嫌!なんで私は一人なの!?レフ!レフは何処なのよ!?」

 

「まぁまぁ所長、カッカしてたら美人が台無しですよ?ガム食べます?……あ、すみません私ので最後でした」

 

「~~~~なんであんたはそんなに能天気なのよ!?バカにしてるのっ!?」

 

リッカが笑い、オルガマリーが怒り、マシュが慌てる。

 

「こんな状況でなければ、年の近いいい友人達の交友だなぁと微笑ましい気持ちになれるんだけどねぇ」

 

「仕方あるまい。戦士の心構えなぞ、あの小娘達に望むは酷であろうよ。死地にあれば自ずと死生の勘は磨かれようさ」

 

 

「……君は随分と寛容だね。随分と機嫌がいいのか、はたまた彼女に何かを見出だしているのか?」

 

「見出だす、か。そうさな」

 

 

見所、という点ではマスターを名乗る少女、藤丸リッカは充分に見所があるといっていい。

 

 

死地にありながら笑い、見えぬ未来を見据え、横たわる絶望を踏み越えんとするその気概。

 

安寧を享受していた自分とは正反対のその精神の頑強さ、図太さには素直に脱帽だ。まぁ褒めると図に乗るので口には出さないことにしているが。

 

それに、傍らに寄り添う少女、マシュもまた、見所は存分にあるといっていい。

 

彼女は常に自分を奮い立たせている。挫けそうな心を、身体を。勇気を以て戦いに赴かせている。

 

心に巣食う恐怖を認め、たどたどしくも前に進まんと足掻いている。

 

現状においては肉体の強さなど些末なこと、困難に立ち向かう心こそが未来を切り開く道標となることを確かに知覚しているのだ。それに気付いているかは怪しいが。

 

「少なくとも、雛鳥の面倒を見るのも悪くはない。至らぬ契約者を守り立てるのも、仕事の内だ」

 

 

「……正直、君みたいな強大なサーヴァントを彼女が制御できるのかどうか気が気でなかったけれど。杞憂だったみたいだね」

 

ロマンの声が柔らかくなるのを感じる。どうやらこちらの警戒の度合いを下げ、少しは信頼を寄せたようだ。

 

 

「今の君に暴君の気質は感じられない。これは千年に一度あるかないかの幸運だ。その幸運が、少しでも長く続くことを願うよ」

 

「フン。……貴様も倒れる事は許さんぞ、医師。あのような小娘どもを前線に立たせるのだ。年長の貴様は相応の労働と献身で奴等に対価を払え。怠慢は許さん。油断と慢心は容認するがな」

 

念のため、釘を刺しておく。…どうもこの軽薄な男は今一信用ならない。なんというか、何処と無く発言に熱が見られない気がするのだ。

 

 

「痛いところを突いてくるなぁ、この王様は。もちろんだとも。僕の使命、というかやるべきことはきっちりとやるつもりさ。それが僕なりの戦いだからね」

 

……… だが、同時に揺らがぬ誠実さも伝わってくる。信用はできないが、信頼はできる。真意は計れないが背中を預けるには問題ない、といったところが落とし所だろうか。

 

「励めよ……」

 

 

となると。問題となるのはサーヴァントである自分の方だ。

 

 

先程の戦闘、どうにもまとわりつく違和感を払拭することがついぞ叶わなかった。なんというか、致命的に戦い方を勘違いしているような感覚が離れなかった。

 

 

「…医師。我のクラスはアーチャーであったな」

 

「うん?そうだね。今の君の霊基はアーチャーとして登録されている。それがどうかしたかい?」

 

「アーチャーとは弓を使うクラスであったな」

 

「う、うん。だからアーチャーなんだよ?」

 

「そうか。……弓、か」

 

弓、弓か。確かにあのとき、自分は弓を取らず肉弾戦と適当な剣を振り抜き雑魚を一掃した。

 

 

違和感はこれか?アーチャーなのに弓を使わなかった。帰結する結論と言えばこれがしっくり来る。

 

何しろ前世は少なくとも戦場に立つことなぞなかった凡人だ。戦の心得などあろうはずもない。

 

「よし、次はこの手に弓をつがえて戦いに赴くとしよう。アーチャーとはそういうものであろうからな」

 

「……縛りプレイだなんて余裕だね、英雄王様は。それもまた暇潰しかな?」

 

「たわけ。思慮の結果だ。何事もチャレンジ精神の心構えこそが肝要だぞ」

 

「ポジティブな英雄王だなぁ!?」

 

一々反応が大袈裟な奴だ。

 

……そうとも。研鑽を怠っては意味がない。

 

この自分は、英雄王ギルガメッシュの器に注がれた無味乾燥の魂なのだから、せめて器に相応しい程の格を目指さなくては。

 

 

「おーい!ギルー!そろそろ出発するよー!」

 

気付けば歓談も一段落ついたようだ。離れた場所でリッカが手を振っている。

 

「ほら、お呼びみたいだよ。王様?」

 

「快活な娘よな。どれ、腰を上げるか……」

 

 

―――刹那

 

 

「!!」

 

突き抜けるような殺意を感じ取るのと

 

 

「リッカ!!伏せろ!!」

 

「ぇ……」

 

「――先輩ッ!」

ギルガメッシュが声を荒げ、リッカに向けて凄まじい勢いで弓矢が放たれるのは同時だった。




弓を使うアーチャーなんて邪道なんだよなぁ(呆れ)

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