人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

492 / 2547
山道

アイリスフィール「楽しいわねー!このオモチャ!いえ、車だったかしら!最高!」

セイバー「た、達者な運転ですね・・・」

「でしょう!?このまま峠を攻めるわよ、セイバー・・・ッ!?」

瞬間、爆走するアイリスフィールの車、その真横にぴったりとくっつき並走する黄金のバイクが現れる。ライダースーツに身を包み、フルフェイスヘルメットを被った何者かが、アイリスフィール達に指示を送る

「・・・山頂にて待つ、ですって?」

瞬間、光輝く道を展開し夜空を駆け抜け山頂へと去るバイク。アイリスフィールはそれを受け、更にアクセルを踏み込む

「あ、アイリスフィール!あれは一体・・・」

「敵じゃないわ、そんな意志は感じなかった。──きっと、お話しするつもりよ!」

「そん──」

「いいわ、行ってあげる──スピードの向こう側へ!!」

・・・道路交通法を完全に無視した疾走を見せ、山岳地帯を疾走するアイリスフィールのワンオフカー。そして頂上に到達し、二人を待っていたのは・・・

「──不躾な邂逅と対面、どうか御許しください。どうしても、此処に来て欲しかったのです」

「どう見ても・・・山頂でしかないわよね此処?」

セイバー「何者か。何故私達を此処に招いた?」

「それは決まっています」

「?」

「──運転しながら余所見や会話は、事故に繋がりますから」

セイバー「──確かに」

アイリスフィール「確かに!?納得してはダメよセイバー!?」

「それは兎も角。その秩序と道徳を重んじる物言い・・・理性ありし善なるものとお見受けする。対話を望むと言うのなら・・・素性と素顔、名を明かしていただきたい」

「はい。そのつもりです。ワタシ達の目的、所属を貴女達にお話しします。その為にワタシは、貴女達と対面を果たしたのですから」

フルフェイスヘルメットを外し、ゆっくりと黄金の髪を解放する。ピッチリとしたライダースーツの胸元には不思議な生き物が在り、ゆっくりとバイクを停車させ降り立つ。比類なき黄金律の肉体に、白金のライダースーツ、虹色のマフラー。決意と慈愛を称えた穏やかな表情に、優しい暖炉のような輝きを放つ真紅の瞳、女性としては長身なる絶世の美女──

「ワタシは英雄姫、ギルガシャナ=ギルガメシア。未来より来たりし、英雄王の財なる者の一人です」

二人の陣営に、英雄姫が真相を告げる──


ACT―6『停戦和睦・共闘開始』

「サークル、設置いたしました!これでカルデアのサポートをバッチリ受けることが可能になりましたよ、先輩!」

 

カルデアの活動は引き続き続く。深夜──魔術の秘匿を鑑みた魔術師達が活動を起こすための時間。それは等しくリッカらカルデア陣営の活動の時間となる。今回はカルデアの陣地、魔術師なアジトにして中継ポイントたるサークルを設置する作業を協力してこなし、カルデアの介入とサポートを磐石とするための陣地作成がメインミッションである。ラインを確保するための陣取り。魔術王たるロマンの手助けを存分に受けるための下準備を行っていたのだった。無事、滞りなく完了したと言うことは──この土地の魔術的優位をカルデアが・・・ロマンが完全に掌握した事となる

 

『各地への転移魔術、カルデアの帰還、霊脈からの魔力供給・・・まぁ、魔術で出来ることの全ては出来るようになったと思ってくれて構わない。ファストトラベルやセーブポイントを手にいれたと認識してほしいな』

 

ロマンが得意気に頷く。その手に収まる十の指輪。それは人類が手にした魔術の全てを配下にし、納めた証しに他ならない。かのメディアが敗北を認めた程の魔術の祖、グランドキャスターたる実力の底知れなさを微笑ましげに示している

 

『お疲れさま、ロマン。でもサーヴァントの自害、魔術師の令呪剥奪は禁止よ。きっちり正攻法でサポートを行うこと。反則は封印よ、いいわね?』

 

ロマンがいる状況で霊脈を確保する。──その時点で聖杯戦争の勝者は決まったようなものなのだが、あえて封印禁止の指令を所長が下す。勝つだけなら後はロマンに任せるのみだが、これは王の遊興であり軍師の奮闘でありマスターの研鑽でもある。無粋な反則は愉悦が宿らぬゆえ不興となるのだ。それを理解したオルガマリーは最高峰のキャスターに釘を刺す

 

『解っていますよ、ギルにどやされたくないからね。しかし、サークルの設置も助けてくれるなんて本当に影に日向に働くなぁ、彼等・・・』

 

本来ならば他の魔術師の管理地に介入しサークルを設置するなど容易に果たせるものではない。幾重の魔術的防衛手段、障害、罠が仕掛けられている。一流の魔術師であり、始まりの御三家たる遠坂が所持している霊脈に割り込み展開など本来望むべくも無いのだが・・・

 

「ズッタズタに寸断されていたな。十中八九御機嫌王の仕業だろう。・・・自らを使役していたマスターへの御礼参りと言ったところか」

 

入念かつ無慈悲に、しかしほぼゼロから始めるしかないが再整備の余地があるような破壊の跡を一同は目撃した。そのツン5デレ5の割合の工作の当事者を見抜いたエルメロイは、上機嫌に葉巻を吹かし空を眺める

 

「再整備には余程の手腕と才覚が必要になるはずだ。はっはっは、いい実習課題だ」

 

「遠坂の娘さんだっけ?未来への負債背負いすぎてるよ~。そしてエルメロイ教室スパルタ過ぎィ!」

 

「何を言う。子を愛する母も父もいるのだ、出来んとは言わせんさ。手取り足取り家族で再出発すればいい。弱音は甘え、心の贅肉だ。それに私はあくまで弟子の能力と根性に合わせた指導を行っているだけだとも」

 

才覚にあるものには苦難を、恵まれしものには試練を。なればこそ此処は非情に徹する。出来ぬことをやれとは言わない。それは教師ならではの信頼であるのだ。──実現への困難はそれはそれは大変だろうが、致し方ない問題である

 

「頑張れ、未来の娘さん!お父さんとお母さんと仲良くね!」

 

父と母に愛されるどころか憎まれ抜いた自分と比べ、あまりに恵まれた娘に自分なりのエールを送る。絶対大丈夫。親子で力を合わせられるならと、頼光やアマテラスに愛された自分の在り方を鑑みた保証と確信は、リッカから負の感情を微塵も現出させないのである

 

「では此処でココアでも如何でしょう?星がとてもよく見えますし、リラックスは大事ですからね」

 

『あ、じゃあ夜食でも送るわ。のんびりしましょう。安眠の結界でも張るわよ。一時間の睡眠を八時間効率に出来るやつをね』

 

「うーんのんびり!よーし、じゃあ優雅に過ごそっか!」

 

寝巻きと寝袋を用意し、仮眠を行わんとする一行。──だが、月夜の下にて平穏を過ごすことを許さぬ来客が現れる

 

『ひわわぁ~・・・のんびりは出来ないみたいですよぉ~?千客万来ならぬ忌客来訪でーす。クラスは・・・セイバーさんみたいですよー』

 

シバにゃんの発言に飛び起きるリッカ、マシュは盾を構え孔明が陣を展開する。セイバーとなると、答えは一つ

 

「波止場で戦った、アルトリア・ペンドラゴンでしょうか?」

 

「恐らくそうだろう。こちらも堂々と姿を晒しすぎたか。あれだけ明確に敵対行動を取った以上、御礼参りは当然のなり行きか・・・」

 

ぼやきは空の闇に消え、そして青き剣のサーヴァントが再び現れる。その気迫は、揺るぎなき剣士のもの。清澄なる覇気と敵意が三人を射抜く──

とも思われたが、口を開いた言葉は一行の予想を覆すものであった

 

「待ってほしい、未来の介入者達。我等アインツベルン陣営に再戦の意志はない」

 

「──何?」

 

「貴公らの目的、そして所属は『英雄姫』を名乗る姫君に説明を賜った。あなたたちは敵ではなく、また手を取るに値する者であると決断した故に此処に参上した。貴女達の目的に、力を貸したいと思う。和睦、休戦協定にして──同盟を申し込ませていただきたい」

 

あまりに急転直下ながら、その申し出に目を剥く一同。彼女らを説き伏せた王もさながら、『至宝』たる彼女を躊躇い無く矢面に出し、対話に万全の説得力を持たせる。偽りのない事はカルデアにいるものなら即座に理解が叶う。王の万全にして油断なきスムーズなサポートに、笑顔で顔を見合わせる

 

「オモ・・・車を運転していたら私の運転にバイクで付いてきたのが彼女なの。そして──私達に自らの身分と素性を包み隠さず教えてくれた。その上で言ったのよ」

 

 

──ワタシ達は手を取り合える。未来の破滅を防ぐため、完全無欠の結末のために・・・貴女達の力を貸して頂きたいのです

 

 

誉れも高き騎士の王。そして、その傍に在るに相応しき高貴なるマスター。どうかこの手を取り、どうか共に戦ってはいただけないでしょうか。貴女達の力が、ワタシ達には必要なのです

 

 

どうか、信じてください。ワタシ達は、悲劇や嘆きを越え、誰もが笑顔となれる未来を手にするために戦っているのです──

 

 

「なんて。キラキラしながら言われたら、ね?」

 

その言葉に偽り無く、その言葉に虚意はなく。揺るぎなき自我と意志、清廉なる敬愛と尊重に満ちていた。まるで──聞き届けぬ事そのものが人道と騎士道に反するかのような、揺るぎなき人の善性と美しさ、輝きに満ち溢れていたと二人は語る

 

「はい。アイリスフィール、ギネヴィア王妃に勝るとも劣らぬ清廉さと、嘘偽りなき輝きを見ました。かの姫がそう告げるならば──それは、剣を預けるに相応しき者達であるに違いないと私達は決断しました。緒戦の禍根は水に流し、未来の破滅を未然に防ぐため──我々は貴女達に協力します」

 

「ありがとう!二人とも!私は勿論オッケーだよ!二人はどう?」

 

リッカは即座に了承を示す。その物言いは願ったりかなったりだ。何故ならば、彼女らの陣営を保護するために奮闘してきたのであり、拒む理由が何処にもない。ランサー陣営、それに続いてセイバー陣営とも同盟を組めるならまさに理想的な流れだろう。エルメロイ、マシュ、後衛二人も同じ意見なようだ

 

「──これが王の本気か。障害と懸念が次々と除去されスムーズに事が運ぶ・・・スムーズ過ぎだろう普通に考えて・・・」

 

『まぁまぁ、穏便に済むならそれが一番だよ。セイバー陣営は保護対象だし、手間を省いてくれたって事で!』

 

『姫を前面に出した要請よ。違えられる筈はないわ。・・・ギルは本当に大盤振る舞いね・・・』

 

「はい!英雄王は凄いのです!」

 

沸き立つ一同。その状況の好調さに笑顔を浮かべ隠せぬ程に士気が上がり、同盟の成立を祝い、王の歓喜へと繋がる歓声を上げる

 

「よろしくお願いいたします、セイバーさん!私も同じ、サーヴァントなので!」

 

「えぇ、勿論です。・・・一つ訪ねますが、貴女のその盾、それはもしや・・・」

 

そう、それはセイバーが気にかけていた事。彼女らを信頼するに相応しいかどうか。それを『是』の方向へと運び、姫の言葉と共に信頼へと昇華させた事実

 

「はい!これは円卓の盾、ギャラハッドさんの力を託されたものです!」

 

「──やはり。あぁ、やはり最初から、私達は共に戦うことに禍根など介入する余地など無かったと言うことですね」

 

共に戦いし騎士が認めた乙女。その有り様に安堵と信頼を示す騎士王。共に頷き合い、固い握手を交わす

 

「よろしくね、可愛いマスターさん?短い間かもしれないけど、一緒に頑張りましょう?お名前、聞かせて貰えるかしら?」

 

「藤丸リッカ!好きなものはサブカルチャーとコミュニケーション全般、嫌いなものは先入観!座右の銘は、意思があるなら神様とだって仲良くなる、です!」

 

「ふふふっ、元気なのね!貴女から感じた禍々しい感じ・・・気のせいだったのかしら?」

 

マスターとして、一人の存在として打ち解け合う二人。それは姿から見れば、姉妹か親子かと映る光景と言っても良いだろう。問題なく組まれる同盟。そして──

 

(・・・おかしい。同盟を組むのに異論はないが、かのホムンクルスはあくまで偽装であり、そして本来のマスターたる存在がいる筈だが・・・かの姫に伝えられたのなら虚意を示すなどとは考えにくい。・・・)

 

「では、私達は一先ずこれにて。共に戦う事あらば、声をお掛けください」

 

「またね、可愛らしいマスターさん。次は貴女の事も聞かせてね?」

 

問い質す前に、セイバーとアイリスフィールは離脱し、去ってしまう。黙考が仇となり期を逸する失態に頭を掻くが、今は知るべき事ではないのだろうと平静を現すエルメロイ。そして──

 

『順風満帆ね、ロマン。早く決着が済みそう。ギルも少しは休んでもらえればいいのだけど・・・』

 

『・・・アイリスフィール・・・アインツベルン・・・彼女がマスター・・・あぁ、そう言う事か。あー。裏目や貧乏くじばかり引いてる陣営が正攻法に頼ったら抑止案件だなんてそれはおかしいよなぁ、ギル・・・』

 

『ロマニ?』

 

『え?あぁいや、何でもないよ。ただ、大体読めただけだからさ』

 

そんな中、英雄王と同格の眼を持つソロモンの力を持つロマンは知る。この特異点の成り立ちを、英雄王が腹を抱えて笑い転げた、その理由を──

 

 

 

 

 




牛丼屋

エルメロイ「少し気にかかる部分はあるが、セイバーとは上手く話をつけられたな」

ロマン『事実上の和議、やったね!でも、ランサー陣営はどうしよっか』

オルガマリー『セイバー陣営と私達は友達、ランサー陣営とも同じだけど・・・セイバー陣営、ランサー陣営はそうじゃないものね』

リッカ「これは俗に言う蝙蝠的な立ち回りなのでは?リッカはいぶかしんだ」

「そこが問題だな。──ふむ、此処はまた一つ一計を巡らす必要がありそうだ」

マシュ「何かいい考えがあるのですか?」

「誰かを納得させるためにはな、その人物にとって一番都合のいい虚構を用意してやるのが早道だ。その点、彼は『世界が自分を中心に回っている』という前提に基づいた話であれば・・・」

「あっさり信じてくれる?リッカマニュアルにもあるよ。嘘を信じさせるにはホントを混ぜて迫真と臨場感をスパイスに、ってね」

「その通り。それを以てケイネス卿を信じこませよう。これ何もかも人の心を流し動かす策士の技なり」

オルガマリー『それは策士ではなく詐欺師と言うのよ、エルメロイ二世』

「ははは、嘘も方便。兵は脆道なのだよ、オルガマリー君」

アキレウス『おう、良く言った。なんなら俺の一番弟子を泣かせた落とし前は付けてもらおうか?』

メディア『あまりからかいは良くなくてよ?魔術師としては平凡な坊や』

ダ・ヴィンチ『え?御礼参りの流れかい?よーし、レオナルドパンチしちゃうぞー』

「オルガマリー、本当に申し訳無い。秘蔵のゲームを献上するので許してほしい」

「お、落ち着いてください皆さん、あくまで策、策ですから!」

リッカ「オルガマリーのバックはとてもおっかないのであった。まる」

アマテラス『ワフ!』

リッカ「え?貴女だってそうですよ?・・・ありがと、あまこー!」


~都内

──とっても楽しかったです!ね!フォウ!

(あぁ!ほんの慣らしだったけど、ツーリングの夢が叶ったね!)

《そうかそうか。満足であったか!ならば我も振る舞った甲斐があったというものだ。だがこれは大願成就とはノーカンとせよ。次は更なるサーキット、ギルガメカップを企画するのだからな!心待にするがよい!》

──はいっ!本当に本当に、ありがとうございます!ギル!今度は、ギルの運転も御見せくださいね!

《ふははははは!!よかろう!ならば夜明けの折、アルトリアも誘ってやるとするか!!愉快よな!人生とはこうでなくてはな──!!》

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。