人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カルデア・ケイローン教室にて

爽やかに極限を要求する先生「リッカの教育ですか?えぇ、勿論私が考案しています。『見た目を美少女として維持し』なおかつ『身体を実践的な筋肉に作り替える』特殊な鍛練法を実地しているので、皮膚の下には中間筋が敷き詰められていますよ。瞬発力と持久力を兼ね備えた肉体・・・まさに、ギリシャの彫刻のような仕上がりとなっております。あ、胸とお尻は、きちんと脂肪を。柔らかいはずですよ、えぇ」

「オルガマリーですか?彼女は肉体組成が異なるので、筋肉と言うわけではありませんが・・・その分、魔力と魔術を的確に運用する術を叩き込んでいるので、リッカとは違ったアプローチで、鍛え上げられていますよ。聖杯の融通の利き方、万能さには参りますね。鍛え甲斐が無いというか」

「もし戦ったら、どちらが勝つか、ですか?ふむ、そうですね・・・それぞれリッカにはヘラクレス、オルガマリーにはアキレウスが師匠として付いていますが、リッカはヘラクレスと、頼光殿の武術他多数の経験、何より人類悪の力が在ります。力押しなら当然リッカでしょう。ですがオルガマリーは神速の打撃、優秀なプランニング、何より神代の魔術を現代にて行使できる存在であり――リッカを見続けてきた理論があります。共に甲乙付けがたい難しい戦いとなるでしょうね」

「もし、決まり手があるのだとすれば――それはやはり、心の在り方。けして揺らがぬ、在り方を曲げぬどちらかが勝つのでしょう。・・・教師としては、あまりそんな状況にはなってほしくはないのですが」

にんじんくん「お前の投げ技なんか軽くかわすぜ?オルガマリー嘗めんなよ?俺直伝の神速の足技が唸るぜ!」

アルゴー号おいてけぼりはまじで許さん「だが、掴めば此方の勝ちだ。ナインライブズからは逃れられん。やはり凄まじいものだな、互いの弟子は」

「・・・さて、どうなることやら」





急転直下アドラー

「では、始めるとしようか。シャーロック・ホームズ」

 

 

言葉は不要、対話は不要。最早、それらでは決着は付かないことは互いに百も承知している

 

「単独行動、特異点を跨ぐ調査にて君の霊基は損傷、消耗してはいるが・・・まさかそれを敗北の言い訳にはするまいな?」

 

「無論だとも。確かにコンディションは好ましいとは言えないが・・・パイプの端をかじる程ではないさ」

 

お互いに対面した場合なぞ、こうなる事は解りきっている。其処に悪辣な策謀を張り巡らせる余地はなく、其処に冴え渡る推理を展開する余地はなく。互いに向かい合った事実そのものが答えであった

 

「では・・・」

 

「あぁ」

 

故に、それ以上の事実も、邪智も、推理も無用。必要なのは・・・たった一つのスマートな結論のみだ。たった一つの敵を見据え、たった一人の存在を、この上なく簡潔な帰結にて・・・

 

「――魔弾よ!!」

 

「――バリツ!!」

 

討ち果たす事象あるのみ――!モリアーティが棺桶を展開し、無数の魔弾を撃ち放つ。それらは全て『六発』の弾丸。持ち主の狙い通りに敵を穿つモリアーティ必殺の成果にして、アーチャーたる由縁の攻撃手段。それらは本来モリアーティの流儀ではないのだが、此処に至っては彼は手を下す、手を汚すことを躊躇いはしない。何故なら目の前にある存在、目の前にある宿敵はかの至高の名探偵、シャーロック・ホームズなのだから・・・!

 

『先行』を取った、モリアーティに対し、ホームズは『後攻』を取る。自らのバリツ、浮遊型ルーペユニットから蒼白の光線を無数に放ち弾丸を滞空迎撃にて抹消、無力化を果たす。眼前にて舞うはかつて法的な有罪、検挙、逮捕に持ち込むことの叶わなかった最悪の犯罪者。此処に至って彼はバリツを、スマートな護身術にて叩き潰すことを躊躇はしない。何故なら目の前にある存在は、ジェームズ・モリアーティなのだから・・・!

 

二人の戦いの応酬は辺りに無差別無闇な破壊をもたらすものでは無く、ともすれば地味かつ、淡々としたものであった。魔弾が飛び交い、光線が飛び交い、互いが必殺の間合いを計り、それでいてそれらを出し抜き合う。その様子は静かで有りながら激しく、ストイックながらスマートな戦いと呼ぶに相応しいものでもあったのかもしれない

 

互いに互いを観察し尽くす。呼吸、所作、体幹、歩法、手段、攻勢、守勢、魔力、弾薬数・・・一の会話よりも、一つの観察にて相手の行う事、相手の目論むこと、互いを出し抜く事を考えに考え抜いた知恵比べと情報戦。彼等より強い英雄は星の数程あれど、如何なる賢者や神なれど、この二人の間に生まれる情報の錯綜と交錯、二人が行っている戦闘と言う名の推察とプランニングの果てを読み取れる者はいはしないだろう・・・!

 

 

「なんか面白味のない戦いね。あれがこうしたらこれがこうする、みたいな型嵌めの極致ってやつ?」

 

無論、そんな領域や境地は当人だけのものだ。それを拝見したところで、理解や把握が叶わぬ者は存在する。高尚かつ至高の計画書や論文を、何も知らぬ一般人が把握できぬように。・・・語弊を恐れ補足をさせてもらえば、彼等の至高のルーチンを読みきれる者など智恵の覇者か初めから森羅万象を目の当たりにしている者しか有り得ぬわけなので退屈げにあくびを漏らしたじゃんぬの知識や知能を貶した訳では無いことを了承していただきたい

 

『達人同士の戦いは逆に地味になる、という極致だろう。一挙一動のアドバンテージが突破口になり、逆に一挙一動のミスが敗因に繋がる。君達の大破壊の戦いの後、最終決戦にしては地味と言えばあまりにも地味ではあるかもしれない。だが・・・其処にあるのは紛れもない、人類最高峰の対局だよ』

 

ダ・ヴィンチ。万能の人は理解する。其処にある戦いがどれほど価値があるものなのかを。数多のミステリファンが渇望し、数多のシャーロキアンが考案し、考察し、そして答えを導き出せなかったバリツの真髄、そして数多の人間が夢想した、ジェームズ・モリアーティとシャーロック・ホームズの直接対決の三次元への実現。人類が目の当たりにする至高の頭脳戦の戦いを、正しく理解し、称賛する

 

『ああっ!魔弾を弾かせホームズさんの頭部を!それをただ一歩進むだけでかわしステッキにて殴りかかるホームズさん!モリアーティはそれをライヘンバッハで受け!あぁ!ああっ!』

 

マシュはそんな読者にしてファンの視線と目線にてこの対決を興奮と歓喜の声音で彩る。小説作品のヒーローが、目の前で奮闘している。小説作品のヴィランが、目の前で輝いている。それはさながら物語の世界へと没入した幼児のように。興奮の極致にてオペレーションを忘れ、実況を行っているマシュ。むしろ意味のある言葉を話し、状況説明が出来ていることを褒め称えるべきであろう。目の前で、届かなかった夢想が実現したものの歓喜と喜びはけして言葉で言い表せるものではないからだ

 

「・・・どちらが勝つ?モリアーティ」

 

アルトリアに、特に感慨はない。ホームズは探偵、モリアーティは悪役。それ以上の情報は無用と考えており、同時に関心も持ちはしない。懸念すべきは勝算、情報の変化、そして次に自分達がどう動くかの合理的な判断のみだ。勝利するならばそれで良し、敗北するならば、ホームズごと聖剣にてモリアーティを焼き払うことも検討しなくてはならないがために、冷静に、冷徹に状況を俯瞰する

 

「ふむ、そうだネ・・・腹立たしい、誠に腹立たしいが・・・勝つのは・・・まぁ、ホームズ君だろうな」

 

「ほう?身内びいきならぬ自分贔屓も無しか?」

 

「私は『先行』、あちらは『後攻』だからネ。どう足掻いても、逆立ちしたってそれは覆らないのサ」

 

自嘲げに、計算ができてしまうが故に。善のモリアーティは息を吐く。彼には解っていた。彼には理解できていた。この世の仕組み、この世の摂理、この世の真理が、正しく把握できていた。それらはけして覆ることのない真理。それ故に【自らが自らである限り、けして勝つことはない】その事実が・・・分かってしまう。把握できてしまうのだ

 

【・・・ホームズさん、頑張って!】

 

リッカは、細かいことは考えない。願うのはただ、仲間の無事と生還のみだ。討ち果たし、打ち倒し、ただ皆で勝ち名乗りをあげること。考えるのは、ただそれのみだ。それのみでいいのだ。信じ、待ち、願い、祈ること。それが、サーヴァントにマスターが行える大切にして大事なこと。サーヴァントを道具、使い魔のように扱うマスターに、真なる勝利や結末は訪れない。彼等は剣であり、盾であり、戦友であり、仲間であり、友であり、半身であり、共に未来を掴む、人生の先輩であるのだとリッカは考えている。死後の存在や影法師だという理屈は抜きに、リッカの観点はそうなのだ。故にこそ彼女は絆を紡ぎ、縁を結び、皆と共に戦って・・・世界を救えた。誰かを信じる事に、理由は必要ない。それがリッカのひたむきさにて純真さ。悪でありながら外道に墜ちず、人を救うもので在り続けられるリッカの心の『善』であるのだと。数多の英雄、そして王は、姫は見抜いているのだ

 

そしてその信頼は、やがて形となる。あまりにも噛み合った戦い、あまりにも完璧に構築された倫理戦闘によるマスターの介入・・・ガンドや魔術、令呪すらも放てぬ究極合理的戦線。それらにも、やがて変調と情勢の変化が訪れる

 

【――!】

 

リッカの金色の瞳、獣の紋様が映し取るその変化。やがて訪れるその終局と決着――それは、あまりにも・・・単調で静かなるものだ。それでいて楽曲に終極が充たされるような、厳かなものだ

 

一同は、目の当たりにする。その終わり、その新宿幻影事件の終焉を。星を破壊する計画、そして首謀者の潰える瞬間を

 

――そして、真なる始まりを。全ての瞬間は、計算は、あらゆるものはこの場に集う――

 

 

あらゆる推理、観察、推論を以て。ホームズは決議した。この者は、モリアーティを騙る何者かの可能性は極めて低い。あるいは、有り得ないと断言するべきなのかもしれない

 

(私は、彼に完璧に対応できている。一分の狂い無く、ミス無く、完璧に。この弱体化した存在でも、それは働いている)

 

それはロボと同じく『概念伝承』とも呼ぶべきものだ。自分はモリアーティには決して負けない。ライヘンバッハにて生還した伝承、そして謎を解く名探偵としての『役割』。それらは概念となり自らを後押しする。故にこそ、故にこそ自らはこうして戦っているのだ

 

だからこそ、確信を持つべきなのだろう。彼はモリアーティだ。彼は悪のカリスマにして、犯罪界のナポレオンなのだ。倒すべき事に異論はなく、彼を倒さなければならない確信と決断がある

 

しかし――

 

(確証が持てない。疑問は尽きない。『何故、倒されると解っていながら彼は私達を招いたのだ』?)

 

ホームズが、自分がいる限りけしてモリアーティは勝利できない。何が起ころうとも、必ずや自分は彼に勝利する。ならば何故?星もろとも、死を選んだ?私に勝つということは、無理心中という事なのか?ライヘンバッハを、星単位で再現することなのか?

 

あるいは――『彼に勝った先にこそ、何か致命的な失策があるのではないのだろうか?』。その考えに考えを巡らせようとしたとき――

 

「・・・仮説推論を組み立てている時の君は面白いように分かりやすい。このように容易く接近を許すとは『らしくない』のではないかな?」

 

瞬間、背後から突きつけられる銃口。突きつけられる死の気配。瞬間のやりとりの空白を突きつけられ・・・その瞬間

 

「さて、引き金を引けば終幕な訳だが・・・呆気ないものだ。星を砕くまでもないとはな」

 

脳細胞がフル回転し、導き出されるその結論。不確定要素を排除し、当て嵌め、そして導かれるラストワード『フリージア』・・・

 

「では、さようならだ。ホームズ」

 

その結論。その推論、その決断が放たれた瞬間・・・ホームズの頭脳、そしてバリツは最高級に高まり、宝具解放クラスの絶技として一瞬にて情勢を覆す決定打と成りうる――!

 

「――バリツ!!!!」

 

その行動はまさに神業だった。突きつけられた銃口、接地面やかかる力から確かにライヘンバッハの全長を計算し、予測し、絶妙な体捌きで射撃を回避する。具体的には体とライヘンバッハを平行にし、銃口から素早く逃れたのだ。銃の恐怖を捩じ伏せし英国紳士精神。そして其所からがさらなる驚嘆すべきバリツムーブなのだ

 

「――!」

 

腰の入らぬ、すらりと直立したキック。しかし其処に込められた威力は如何なる理屈か、はたまた奥義か。三発繰り出されたそれはライヘンバッハに叩き込まれ・・・棺桶を軋ませ、凹ませ、吹き飛ばす。天井に穴をあけ吹き飛ぶライヘンバッハ。丸腰となるモリアーティ。導きだされる答えに迷わず、ホームズは手を伸ばす。そして――

 

「・・・・・・――――敗北か」

 

ホームズは、モリアーティを再び打倒した。その掌底は、モリアーティの胸板を貫通していたのだ。かのバリツは全距離対応護身術。如何なる攻撃や手段であろうと、悪意があるならば自らが必ず生き残り、悪意ある他者を必ず無力化する一撃を放てる。そしてそれらは、モリアーティのみに――悪の首領たるモリアーティに本気で振るった時にのみ。彼の存在を、抹殺する事が可能となるのだ。故に――

 

「敗北とはそういう事だ、モリアーティ。――私は『後攻』だからね。君にだけは、負けられないのさ」

 

「・・・・・・――」

 

それだけを告げ、消滅を果たすモリアーティ。彼は笑っていた。それは満足げなのか、嘲笑なのか。悪辣なる笑みなのかは預かり知れぬ所ではあったが・・・

 

此処に、確かに――ジェームズ・モリアーティは討ち果たされ。――新宿幻影事件の結末は、定まったのである――

 




じゃんぬ「なんだ、勝ったのね。いつライヘンバッハるか楽しみだったのに」

リッカ【やったぁ!ホームズさんバリツすごーい!!】

モリアーティ「いやぁははははは!君が憎いな!此処まで無味乾燥に蹴散らされるとそんな感想しか湧いてこない!うん!お見事だった!」

ホームズ「・・・」

マシュ『やりましたね!ホームズさん!シャーロキアン見習いの私も、この結末にはニッコリです!』

「・・・いや・・・」

ダ・ヴィンチ『ん?どうかしたかい?まだ何か、気になることでも?』

「・・・『聖杯がない』・・・やはり、これは・・・!」

瞬間――長らく続いていた・・・計算が終わる。解が、導き出される

『!更なる魔力反応!・・・え、――嘘。・・・そんな・・・えっ――?』

【!?マシュ!?どうし――】

???「――あぁ、ようやく思い出したわ。私が誰なのか。何故此処にいるのか。そして――私が、何をすべきなのか」

消えていった『モリアーティ』の霊子が、構成される。再び、形を作る。それは、カルデアの一員を戦慄、動揺の淵に叩き落とすには十分すぎるものであった

『――そんな、そんな馬鹿な。有り得ない、天地が引っくり返っても、『君』だけは有り得ない!』

其処にいたのは、オレンジ色の魔術礼装インナー、そして、漆黒のロングコート。銀髪にオレンジ色の瞳。カルデアにて知らない者はない、楽園の管理者にして守護者にして・・・現所長。天才が、悲鳴のような声を上げる。手塩にかけた『愛弟子』の姿を認めたダ・ヴィンチが、弾劾を果たす

『何故なんだ・・・!『オルガマリー・アニムスフィア』・・・!!』

其処にいたのは、カルデアス所長。レイシフトの適性が無く、レイシフトが叶わぬ筈の・・・魔術協会に在った筈の。オルガマリー・アニムスフィアであった。有り得ぬ存在に、在ってはならぬ勢力図に。カルデアの指揮系統は、麻痺と混乱に陥る

オルガマリー「・・・」

【・・・マリー・・・・・・どうして・・・!?】

「・・・真相には辿り着けたかしら、Mrホームズ」

「・・・初めまして、ミス・オルガマリー。いや・・・『フリージア』と呼んだ方がいいかな?」

ホームズは揺るがない。その事実を受け止め、冷静に言葉を紡ぐ。じゃんぬは思考が完全に停止しており、アルトリアは油断なく剣を構えて、反撃に備えている

「・・・まさか、土壇場になって思い至るとは思わなかった。君はフリージアとしてリッカ君達を導き、手助けし、そしてやがて此処に至るように仕向けた。モリアーティに扮した君を倒させるために。――『レディ・リッカに、親友を手にかけた絶望』を与えるために・・・!」

「ふふっ、流石。土壇場の瀬戸際になってそれを食い止めるとは。流石は『あの御方』に追従する洞察力ですね」

【――・・・あの御方・・・?】

「君は、先程までの君は紛れもなくモリアーティだった。君は本気で自らをモリアーティと信じ、私と戦った。モリアーティとして、確実に存在していた。それは変装ではなく、完全に『モリアーティ』として振る舞っていたのだ」

「えぇ。その通り。私は少し事情が違って、その手の認識や変化はお手の物なの」

「君の目的は・・・カルデアのマスターに『自分を殺させる』事。カルデアの所長、そしてマスター、共に心身共に抹殺し、カルデアを倒壊させる事が目的だった。故にこそ、フリージアと名乗り、自らを信頼させ、バレルに導き、戦いを挑んだ・・・」

「えぇ、そしてそれは・・・――此方の目的の達成に繋がる」

「君達の目的とはなんだ?星を破壊し、自らを殺させ、マスターを抹殺せんと目論み・・・――何を企んでいる!君とモリアーティは、何処まで関わっているんだ!」

そう、ホームズの推理と推察を静かに聞いていたオルガマリーは、こう口にした

「――『おやすみなさい、ホームズ』。貴方は間違えたわ。【初めから】ね」

それは、シャーロック・ホームズを生涯唯一出し抜いた女性の、彼に贈った勝利宣言(クリティカルワード)――

「――『全て』、だとも。・・・どうかな、ホームズ君。私の生涯最高の教え子『アイリーン・アドラー』の仕込みぶりは」

瞬間、貫かれていた。その胸を、その隙を、その空白を。確かに彼は――『モリアーティ』に貫かれていたのだ

『え、あ――』

『なん、だ・・・?』

「なに――っ・・・」

カルデアは麻痺しており、アルトリアは衝撃に動揺する。じゃんぬとリッカは【それ】が思いもよらなかった

「――ようやく手がとどいたな、ホームズ君。いや、実に・・・呆気ないものだ」

その一瞬の空白を衝かれ――勝敗は・・・決した

「モリアーティ・・・アイリーン・・・そうか、君は!まさか、そうか!逆!逆だったのか!」

思い至る。だが――全てが遅かった

「惜しかったわね、ホームズ。・・・私に至った時点で、リッカにその違和感を告げていれば。敗北になど至らなかったのに」

オルガマリー・・・いや、『アイリーン』は告げる。ホームズの失策を、稚拙さを

「しまった、まさか君が其処まで・・・『助手』まで用意してまで、一か八かの賭けに打って出るとは!確実性を捨て去ってでも、勝利を望んだとは・・・!」

「私の勝利だ、ホームズ。今度こそは、な」

「・・・敗北とは、そういうものだからね・・・遺憾ながら、モリアーティ。そして『アイリーン』。君達の勝利だ」

【ぁ・・・え・・・ぁっ・・・】

「そして、・・レディ・リッカ。心から詫びよう。私は、推理を・・・【間違えた】」

【――!?】

『そん、な・・・!!』

「っ――リッカ!私を斬れ!そうすればまだチャンスは――――!」

「流石だな、我が怨敵。だが不可能だ。仲間を衝動的に斬る。彼女がそれができないことは『私がとてもよく知っている』――!」

ホームズが、形を失っていく。消え去り、溶けるように。モリアーティが貫通した腕からも消えていく

「さらば!さらばだ同類(ホームズ)よ!同じ視座を持ちながら、同じ位置に立つことのなかった至上最高の名探偵よ!お前の力を以て――私は真の勝利を得よう!!」

全てが反転し、善悪が流転し、状況が悪化する。勝利の余韻は、敗北の王手に変わる

【――ホームズさん、消えていない!?】

「――流石だ、黒曜の龍。彼は殺していない。取り込んでいる。――そうでなくては、ダメなのだ」

スーツを纏い、マントを羽織り・・・『それ』は現れる。オルガマリー・・・アイリーンの傍に立ち、静かに、告げる

「『初めまして、皆の衆』。私はジェームズ・モリアーティ。此方は私の教え子・・・『アイリーン・アドラー』――この惑星を、打ち砕くものである」

【アイリーン・アドラー・・・モリアーティ・・・!】

「茶番を長引かせるのも興醒めよね。だけど大丈夫よ、リッカ。――脚本は在り来たりでも、この歌劇は役者、俳優が最上級。至高と断じてもいいものだったわ」

アイリーンが引き抜く。『フリージア』『アニムスフィア』の両銃を

「故にこそ・・・もっと面白くなるわ。此処から先のクライマックスはね。さぁ始めましょうかリッカ。『人生最高の五分間』を」

それらは全て――在るべき所に運命を運ぶ――

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