人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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黒曜石は砕けない「潜入?」

たくらんじゃうおじさん「そう!パーティーに潜入し!マスターとしての洞察力に優れた君に識別を頼むというわけだ!そしてその周りを着飾ったオルタズが護る!なんと羨ましい!東方の諺で言えば・・・そう!!馬子にも衣装!!

二人はオルキュア「「・・・・・・――――」」


~~~Nice boat~~

「褒め称えたのに・・・(ガクッ)」

安楽椅子が恋しい探偵「君は時々、清々しい程馬鹿になるな」

「ドレス、ドレスか・・・!この瞬間を待っていたんだ!!ドレスだ社交だわーい!」

「あ、レディ・リッカ。君はこちらだ」

「えっ――えっ・・・?」


潜入ダンス

退廃の最中であろうとも、其処に確かに序列は生まれ、貧富の差は生まれ、優劣の差は生まれる。誰かを蹴落とし、誰かを食らい、誰かより上を目指すことにより、序列と優劣は確かな階級として形を成す。強者と弱者の枠組みは無くなる事なく。其処にあるのは甘露か、苦汁を舐めるかといった差がある。それを表すものが、今宵行われる

 

セレブ、ブルジョア、スポンサーという富を持った者。富を稼いだもの、栄華と繁栄を手にしたもの。滅び行く世界にて、まもなく無くなる虚栄を愛でるものの集いが行われる。それは魔人同盟のスポンサーと、甘い汁を吸おうと集まった連中。自らを勝者として定義し、快楽に溺れ耽り、貪るばかりの連中

 

馬鹿馬鹿しい、とこの場を取り仕切る『彼』はせせら笑う。何れ果て、間もなく死に絶える連中が暢気なものだ。お前らに未来は無いというのに。・・・いや、無いというなら自分も同じか

 

化けて、化けて、欺いて。それはもう、沢山の奴に化け続けて。何処からが自分なのか、何処までが自分なのか、もう分からないくらいに変化し続けた。だからこそ・・・もう自分ですら、どれが本当の自分なのか、抜け落ち始めている

 

おまけに、変化したやつのも、人生も残りやがる。下らない人生も、どうしようもない人生も、世界を救ったあいつを誇りに思う人生も・・・

 

考えるのを打ち切る。そんなもの、知ったことじゃない。自分はただ、楽しむのみだ。飲んで、騒いで、歌って。栄華を極め尽くす。かつての主が出来なかったような繁栄を、極め尽くすのだ

 

それが相応しい。世界をもろともに巻き込んで死ぬ。そんな派手な末路こそが、主を止められなかった愚かな自分への、無様で、相応しい、最低の――

 

なんてこと せいべつかわり けものかな

 

 

「招待状を確認いたしました。どうぞ」

 

ボディーガードが確認し、道を開け、ビルの中へと突入していく。この、招待状はホームズ、モリアーティが製作したものだ。経緯は聞かなくていいだろう。よい子が知っていいものではないだろうから

 

ビルの高さは二十階程。ブルジョア、セレブが居を構えるに相応しい虚栄を誇り、その最上階にてそれは行われていた。魔人同盟のパーティー、選ばれた者であると自認している者達が行う、虚栄の宴が始まっていたのだ。誰も彼もが豪奢な服装に身を包み、食事とダンスに興じている。魔人同盟の真なる企みに気付かず、破滅に金を注ぎ込む滑稽な連中。アルトリアとじゃんぬは共に所感を懐く。現実から目を背け栄華を望んだ愚か者らに混ざる不快感を、抑えながら目を光らせていく

 

「さて、どんな姿に化けているのやら。見落とすなよ突撃女。うっかり貴様を斬ってはリッカが悲しむ」

 

セイバーオルタは黒きドレスに身を包む。肩と鎖骨、胸元を見せる高貴ながら大胆なデザイン。金色の瞳、度を過ぎた白い肌のコントラストが悩ましい。それはまるで、極めて精巧な人形を思わせる美しさですらある。衆目を惹くに相違ない眉目秀麗さに、視線が注がれている

 

「ほざきなさいよ蝋人形みたいな姿の癖に。いるってわかれば充分よ。こんなビルごと燃やしてやるわ」

 

ジャンヌオルタもまたドレス・・・濃紺のドレスを身に纏う。高貴さと優雅さを求めたアルトリアとは対称的に、ロングにて象どられた露出度の高いものだ。いつものドレスアーマーから装飾を払った形であり、頭に花飾りを着けているのがチャームポイントである。一応、立ち振舞いは勉強はしたがこんな有象無象ばかりの場所で取り繕う必要はないとばかりにドレスの裾をぱたぱたとしている。はしたない

 

「ふっ、美麗なるオルタ二人をサーヴァントにするとは『男』冥利に尽きるな、マスター?」

 

「・・・どうしてこうなった・・・」

 

がっくりと肩を落とすはリッカである。漆黒のタキシードに、白い手袋。髪はオールバックにルーペを着け、ステッキを所持した紳士スタイルに身を包んでいる。パイプも所持して何処から見ても紳士な姿にてふたりと共に潜入を果たしているのだ。何処から見ても紳士である。胸はブラジャーではなく、サラシで押さえつけているので問題ない

 

「私はこうっ・・・!美しいドレスで三人娘としてパーティーの華になる事を夢見ていたのに・・・!」

 

「諦めろリッカ。男装をしなければ変装にならん。顔も割れているしな。しかし・・・似合っているぞ?まるで在るべき所に在るような感覚を覚える」

 

これらはホームズとモリアーティの目論見である。顔が割れてるんだから、別にいいんじゃないかな?男装で。という企みにてリッカはあえなく男爵の姿にさせられてしまったのである。これは割りとショックなリッカ。二人もの絶世の美女に囲まれた自分が、男装にて自分を欺かなければならないとは・・・!パーティーこそは思いきりおめかしして、煌めく舞台に私も立ちたい!としていたリッカの期待は脆くも消し飛んだのである

 

『そんなに気を落とさないでくれたまえリッカ君!いや、凄い似合っているとも!やはり我々の目に狂いはなかった!』

 

「覚えといてよね・・・!私の淡いシンデレラ願望を消し飛ばした恨みは忘れないから・・・!」

 

『ははは、それはこんな汚い社交界で発揮されるものではないよ。王妃や陛下のパーティーに取っておきたまえ。今の君はとても・・・格好いい!』

 

「別に嬉しくないやい!かっこよく振る舞ったかっこよさなんて私には不要なんだからね!うぅ・・・ドレス・・・貴族、社交界の華・・・」

 

せめて、せめて形くらいは女子でありたかったと涙を流し、それでも我が儘を言っている場合ではないと気持ちを切り替える。もうこうなったらパーティーを御破算にしてやるくらいの気合いを込め、自らの拳をバキバキと鳴らし会場を睨む。・・・図らずとも、じゃんぬとアルトリアに声をかけようとした命知らずはリッカの覇気と殺気に当てられそそくさと引っ込んでいく。その様が愉快だとアルトリアは笑い、じゃんぬはリッカにとあることを提案する・・・が

 

「・・・ねぇリッカ、そんな顔をしないで、良かったら一緒に・・・」

 

そう口に告げて、じゃんぬは思い返す。ダ・ヴィンチが言っていた、この戦いに、報酬は無いという言葉。この新宿に、救う価値はあるのかという言葉を。これから先は、ただ自らの威信と意地、楽園の矜持のための戦い

 

「・・・・・・」

 

・・・口にしかけた言葉を閉じる。・・・もし、自分のしようと思う事が、いくばくかのリッカの御褒美になってくれるのだとしたら。それは、今ではなく、きっと・・・

 

「・・・ほら、リッカ。其処の死体女と踊ってあげなさい。直感とかでいい感じに踊るでしょ」

 

袖をちょいちょいとし、ついでに頬っぺたをぷに、としながら、じゃんぬはひたすらに食事をガン見しているアルトリアを指差す

 

「えっ?・・・じゃんぬ?」

 

「『私は後でいいわ』。・・・だから、これからも頑張りましょう」

 

踊れるかな・・・と考えていたリッカの思考を汲み取る簡潔な、その言葉。其処に込められた意味を読み取り、リッカは頷く。じゃんぬの切なげな顔にて真意を計り、この新宿を必ず攻略すると誓い、アルトリアの手を握る

 

「貴女の美しさに惚れ込んだ。共に踊っていただきたい、騎士王」

 

「む、っ――・・・い、良いだろう。・・・しかし・・・」

 

その言葉に頬を赤らめながらも了承し手を取る。やけにおとなしいじゃんぬの想いを汲み取らんとするが、笑いながらじゃんぬはそれを流し、けらけらと眺めている

 

「田舎娘に気なんか使わなくたって良いっての。リッカの申し出はありがたく受けなさいよ」

 

「・・・ふん。後悔するなよ。貴様のダンスでは満足できんようにしてやろう」

 

その真意を読み取り、この場でリッカを預けられる唯一の存在にじゃんぬはパートナーを託し、机に腰掛ける。リッカとアルトリアが踊り出すのを、じっと見ている

 

「踊ったこと無い?大丈夫、私に任せて」

 

リッカは華麗な手つきで相手をエスコートする。手を絡ませ、歩幅を合わせ、腰に手を回し、素人とは思えぬ流麗さにて会場を舞い踊っていく。アルトリアは直感でそれに身を任せているが、その華麗さに舌を巻く

 

「て、手慣れているな。嗜んでいるのか?」

 

「女子力修行の一環でね。よくオルガマリーと一緒にやったんだ」

 

「・・・随分と、エスコートに馴れているな・・・」

 

「私が男側だからねー。まさか、男装するとは思わなかったけどさ」

 

右へ、左へ。緩やかに、穏やかに、激しく。華麗にダンスのステップを刻み、回っていく。傍目からみれば絶世の美女と紳士が踊っているかのようにしか見えない光景に、視線が集まっていく

 

「・・・」 

 

「?どうしたの?」

 

「貴様、瞳の中に紋様があるな。それは・・・獣の紋章か?」

 

「えっ。――気付かなかった・・・」

 

「人類悪の証か?・・・いかんな、からかってやるつもりが言葉が出ん。見事な手前だ、マスター」

 

「えへへ、マスターだから多少はね?無理しないでいいよ、私に任せてね?アルトリア」

 

「~・・・」

 

その堂の入りぶりに、少なからず照れを浮かべながら踊る姿を、楽しげに見つめるはもう一人のオルタ

 

「くすくす、ドギマギしちゃって面白いったら無いわ」

 

足を組み、顎杖を突きながらけらけらとじゃんぬは笑う。リッカとアルトリアのダンスを見て堪能しながら、グラスのジュースを飲んでいる

 

「さてと、私もイマイチ見る目は無いんだけど、目星ぐらいは付けられるでしょう。この中で、新宿のアサシンになりそうなのは・・・」

 

じゃんぬが穏やかな表情を見せるのはリッカと、店長として振る舞うときのみ。睨み殺すような視線を撒き散らしながら、パーティー会場を俯瞰していく

 

「ひいっ・・・!し、失礼しました!」

 

「あは、あはは・・・な、なんでも無いです・・・!」

 

「・・・(そそくさ)」

 

「いないわね・・・誰に化けてるのかしら・・・」

 

『いいや、ミス・ジャンヌ。頭を捻る必要はない。識別は難しいが、特定は容易いよ』

 

無線から、ホームズが声を出す。それは魔力を探知されない用途の、モリアーティが用意したものだ

 

「どういう意味?」

 

『新宿のアサシンは其処を取り仕切ると聞いている。ならば一番目立つ・・・スピーチをするような人物だろう。好きに踊っていることを赦されている今、その人物はいないと推測が可能だ。それに此方の潜入は招待状制からして対処はしていないと考えてもいい筈だ。其処らの観客に変化する要因は極めて薄い。つまり――』

 

「これから出てくるってことね。はいはい、名探偵さまは頭がよろしいのねー」

 

『初歩さ、レディ』

 

『んー!この鼻につく振る舞い!どうかナじゃんぬ君、やはりフレンドリーなアラフィフモリアーティの方がシンパシー感じない?』

 

「次顔を見たら焼き尽くしたくなるので黙ってください」

 

『ひぇえ・・・あ、ほ、ほら!いよいよ偉い人が来るみたいだよ!あれがアサシンの可能性大だヨ!』

 

あわてて話題をそらすアラフィフ。その姿、扉から辺りに兵を侍らせやって来るその相手を把握する

 

「さて、どんな格好で来るのかしら・・・」

 

ぼんやりしながらジュースを飲み、一同に紛れ姿を見据えたじゃんぬは、やがて盛大にジュースを咳き込む事となる

 

「ようこそいらっしゃった!この魔人同盟の土台を支えてくださる皆さんに感謝を込め、今日は存分に騒いでほしい!」

 

そう高らかに告げる新宿のアサシン・・・その姿は少女であった。金髪にて、黄土色の瞳、死人のような肌の色。漆黒のホットパンツにブーツ、ジャケットを着た見目麗しい少女。・・・と、言うよりは・・・

 

「・・・・・・・・・・・・おい、リッカ」

 

「はい」

 

「とても 見覚えのある 顔なのだが」

 

「はい」

 

「うげぇっほ!げほっ!げほっ!」

 

死んだ目になるリッカ、噎せ返るじゃんぬ。無言で・・・聖剣を構えるアルトリア

 

「ファッ!?」

 

『待った待った落ち着きたまえ!マスター!彼女を止めるんだ!』

 

無言で下段構えに入り魔力を高めるアルトリアを、必死に抑えるリッカ。いけない!ビルが!ビルそのものが!

 

「待って!アルトリア待って!!巻き込まれちゃう!吹っ飛んじゃうからぁ!!」

 

「私は許そう。だが、この聖剣が許さん」

 

「もうダメだー!!」

 

『諦めるの早すぎィ!?』

 

 

「『 卑王鉄槌(ヴォーディガーン)』――――!!!!」

 

悲喜こもごも、怒号と嘆きと諦めの混ざった境地の一切合切を蹴散らす王の怒りの輝きにて、パーティー会場は大破壊と大混乱に陥ったのであった――




深刻な報連相不足「ははははは!テンパっているな!」

深刻な描写不足「笑っている場合かネ!突入して援護しなくては!」

「あ、それは君に任せよう。私は色々やらなければならないことがあるからね。じゃあ、皆によろしく」

「ちょっ!?この状況で他があるのかネ!?」



千影「ちっ・・・!まさか潜入してやがったとは!雀蜂で取り囲め!ロミオとジュリエットも出せ!!」

無間婚活地獄「ロミオとジュリエット・・・!?」

ロミジュリ『いとしいあなた!いとしいあなた!私達と共に、とろけて共に過ごしましょう!』

世界はモブに厳しい「うわ、うわ、うわぁあぁあぁあ溶けるぅうぅうぅう!」

(シェイクスピアの創作・・・!)

「まさかわざわざサーヴァント二人で侵入とは驚いた!だが残念だったな、この数はくつがえせないだろう?」

ジャンク愛好家「フッ――」

「?」

すいーつ愛好家「そう見える?私達が二人だけって?」

「・・・何?」

「この中の誰かがアサシンならば丁度いい。――やれ!!」

「あいよっ!――ほいっ!!」

変装を脱ぎ捨て、高らかに姿を表す。白いコートに身を包んだ、リッカ本来の姿を。そして、図らずとも言ってしまう

「なっ――!『カルデアの』藤丸リッカ――!」

リーダー故の状況把握。その無意識ゆえの反応を突き――

【そこだあっ――――!!!!】

「がふぁっ――!!!」

【アンリマユ】にて、心臓を貫き致命傷を与える――!

【じゃんぬはロミジュリ!セイバーは雀蜂を!私は彼に、止めを刺す!!】

「解ったわ!任せなさい!」

「致命傷を与えたとはいえ、油断するなよリッカ!」

【うん!】

「あー・・・いつかこんな日が来るとは思ったが、呆気ないもんだぜ。まぁいいや、侠客の最期なんてこんなもんだろ。だがまぁ・・・」

震脚にて発破を返し、血塗れのその身体をリッカに向ける

「借りたツケは返してから消えようか!来いよ嬢ちゃん、梁山泊、天巧星が狼士、燕青!推して参る――!!」

【――!!!】

その最後の意地を、リッカは受け止める・・・!

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