人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「ブラックバレルの改良の草案はこんなところかしら・・・」

「アタッシュケース、デリンジャー・・・なんとも奇抜でキテレツな発想だなぁ愛弟子!」

「魔術弾も自由自在なんて、随分と贅沢ね?後は、使いこなせるか・・・」

「人的要因でカバーできる問題は、障害とはなり得ませんから・・・」


『メッセージ』

「?ギル?」

『浴場を貸し切ることを許す。ロマンを始めた職員共と活用するがよい』

「・・・あら・・・」

シミュレーションルーム

「今日はここまで!お疲れ様でした、マシュ殿」

「はい、ありがとうございました!・・・キメラ、五頭抜きは・・・疲れましたね・・・」

「疲れた分だけあなたは強く!硬く!逞しくなるのです!よろしいですかマシュ殿、この後は何もせず、休息と快復に勤めてください。これ以上、身体を痛め付けるには至りません。よろしいですね」

「はい!ありがとうございます!」

「マシュ」

「所長?お疲れ様です!」

「お疲れ様。行きましょうマシュ。リッカは特訓中みたいだから、あなたが先に入っていいわよ」

「入っていい、とは?」

「大浴場。貸しきりみたいよ?」

「え!?」

「ロマン様ー♥貸し切りですよー♥一緒に入りましょうー?♥」

「待って!まだ、まだモニターが残ってるからー!」

「?誰のモニターなのです?」

「あ、それは・・・内緒だよ!」

(リッカ君と武蔵君の、内緒の特訓だしね・・・!)



鬼ヶ島三番勝負--轟力の巻・剛雉剣

「さて、いよいよ次なる鬼が最後の難関。この珍妙な鬼退治一行の旅も終わりが見えてきたというわけだ」

 

助六がそう口にする通り、風越、技喰丸を倒し。残る鬼はただ一人。それを下すことができれば山頂への道は開かれ、無事に帰る事ができるようになる道筋が見える。この変則的な旅路も、閉幕の時が近いことになる

 

「本物の鬼と剣を合わせることになるとは予想外だったけれど、それもまた一興ね!冥界で斬った神様よりかは、肉がある分手応えを感じることができて中々ですし?」

 

「冥界・・・黄泉比良坂にも足を運んだことがあるというのか?」

 

「ううん。ウルクの冥界だよ。寒くて暗くて、でも治めてる神様は可愛い。そんなところ!」

 

リッカと武蔵の旅路は最早日本に留まるところでは無く、日本から出たことのない助六にはもはや想像すら叶わぬ大立回りとなっていた。助六はそんな二人の歩んできた旅路を聞き、尋常ならぬ旅路ということだけを感じ取り

 

「そうか。誠に天晴れだ、両人」

 

口にしたのは素朴な称賛であった。その何気ない言葉に、二人は顔を見合わせ笑う

 

「まぁ皆様在っての事ですし!私達だけでは成し遂げられぬ旅路であったのは確かです!」

 

「そだね!でも、この戦いもその旅路の一幕だよ。私達の旅の、大切な一幕。私はそう思う!」

 

「――そうか。考えても見れば・・・こんな小鬼たるオレが、頼光の生き写しと肩を並べ。宮本武蔵と共に鬼を退治する。下っ端の身には余りある奇想天外な廻り合わせだ」

 

何もかも忘れ、流れ着いた小鬼風情には勿体無い体験だと。助六は自嘲し、尚笑う。豆を投げた事も、頬を張られたことも。短いながら・・・得難い一幕であったと。名も無き小鬼は満足げに笑う

 

「楽しい一時だったよ。あぁ、よい思い出だ。実に良き体験をさせてもらった」

 

そんな気の早い謝礼を、武蔵とリッカは笑い飛ばす

 

「何言ってるの!頂上にたどり着くまでが鬼退治でしょ!」

 

「最後まで見届けてくださらないと困りますよー?宮本藤丸伝説は語り部のあなたにかかっているのですから!」

 

「オレが語り部だと・・・!?なんなのだ宮本藤丸伝説とは・・・!」

 

「それは勿論!見目麗しくか弱い乙女二人が立ち寄った茶屋にて、鬼に頼まれ群がる鬼をバッタバッタと薙ぎ倒し天辺を目指す・・・」

 

「童話なのか戦の兵法書なのか・・・絵巻の種類をせめて統一してはくれまいか・・・」

 

「日本昔話とかダメ?」

 

「血腥すぎる・・・!子供の枕元にて聞かせるならば、せめて夢のある物語でなくてはだな・・・」

 

有り得ぬ道筋、交わった縁。それにより導かれた三人。軽快かつ自然体なままで。その軽やかな足取りは紡がれていったとさ――

 

・・・そして至る。最後の関門にして、猛りし鬼に三人は相対する

 

「グォオォオ!!!」

 

額に生やす二本の角。赤き身体に突き出た腹。巨大な棍棒に白い体毛。日本で親しまれし『赤鬼』に相違ないその見た目の化生が吠え猛り立ち塞がる

 

その名『轟力丸』。あらゆる力をはね除け跳ね返す鬼らしき鬼。単純にして明快な力自慢の鬼である。その取り巻きもまた、屈強にして頑強な体つきにて一行の前にて立ち塞がる

 

「・・・同じ鬼として自信を無くす体型格差だ・・・」

 

一般の鬼としても小さい助六の溜め息が重い。取り巻きすらも二メートルはありそうな恵体に対し、こちらは150㎝が精々である。然もありなん、嘆息は仕方無き事であろう

 

『個体差って残酷だなぁ・・・まぁそれはともかく。さっきまでと戦法は同じだ。皆、準備はいいかい?』

 

「「おうとも!!」」

 

ロマンの掛け声に鋭く呼応し武蔵が轟力丸に剣を抜き飛び掛かる。刀と棍棒、甲高い音が一帯に涼やかに響き渡る

 

(――!)

 

即座に手応えにて、力押しは不可能だと悟る。試しに力の限り振るった渾身のニ刀が、轟力丸の軽い一払いにて押し返されたのである。木っ端のように弾き飛ばされ宙を舞う武蔵。しかしニの手は用意されている

 

「ふっ!」

 

納刀されし刀を放り投げ牽制する。その動作の間隙を縫って投げられた刀には反応が遅れ、肩に突き刺さる。かすかによろめく隙を突き、武蔵は一直線に駆け抜ける――!

 

武蔵の立ち合いと同時に、リッカもまた他者の鬼の排除を決意する。彼等を一掃しなくては豆が届かず決定的な決まり手は届かない。その為の人選なのだが・・・

 

(師匠は万能さ、書文さんは槍の極み。なら次は――)

 

思い至る。次はあえて『出鱈目さ』に着目してみよう。技の極みに至れないのは明白なので、とんでも槍の出鱈目槍術をこの目で見てみたいと思う。槍でありながらすさまじい迄に出鱈目な人、それは・・・

 

「来て!『カルナさん』!」

 

右手を光らせ召喚する。身体中を黄金の鎧で覆い、右手に神殺しの槍を持つカルナであってカルナで無きもの。誰もが夢想した『万全なるカルナ』を聖杯にて再現した、カルナ・オリジンが召喚される

 

「良いのか、マスター。オレの槍は些か派手かつ、参考にはしにくいと思うのだが・・・」

 

「カルナさんのカッコいい槍が見たい!」

 

「――そうか。オレにしか出来ないならば、それがマスターの望みならば応えよう」

 

単純なる言葉を交わし全容を把握する。カルナの身体から炎が噴出し始める。・・・只でさえカルナは魔力を消費する極悪燃費のサーヴァントだ。聖杯にてそのリミッターを解除されたためその燃費はさらに劣悪となり、並の英霊十騎分にも相当する魔力を喰らう。改装する前のカルデアならば即座にカルデアスの火が消えるほどの燃費。たゆまぬ改装の楽園カルデアの一割の電力を使うと言えばその凄まじさが伝わると言うものである

 

――故にこそ、全力にて活動するカルナのその凄まじさに、一同は目を見開く事となる

 

「え?ちょ、カルナさん?」

 

リッカの目の前で、カルナは頭上高く槍を回し始める。これから槍を振るうと言った矢先のその行動に困惑するマスター

 

「アルジュナの真似事では無いがな。――『凡天よ(ブラフマーストラ)

 

そして右腕に槍を持ち天を睨む。身体中から炎として魔力放出を行い、その魔力を神殺しの槍に乗せ

 

我を呪え(クンダーラ)』――!」

 

力の限り、槍を天空に放り投げる――!猛烈な速度にて大気と空気を焼き尽くし、曇天の空に神殺しの槍が一直線に加速し煌めいて彼方へ飛来していく・・・その一投にて・・・

 

「は、晴れた――!?」

 

『空の雲が吹き晴らされる』。天を穿った槍にて雲が蒸発し太陽が顔を出し、曇天が快晴となる。その槍の真意の前兆、現れし効力の付与として輝き空を照らす

 

「「「「「!?」」」」」

 

その奇怪な行動と突如晴らされし空に困惑を表す鬼達とリッカ。そしてそれは――即座に来る

 

「頭上注意だ。――悪く思え」

 

輝く天から飛来してくる物が数多あり、カルナは天を指差す。――槍を投げ、快晴となりし空より飛来せしは――

 

「い――」

 

『隕石』であった。灼熱と火炎を纏った魔力の塊たる隕石が、敵方の鬼めがけて流星群のように飛来し、辺り一帯に降り注ぐ。巨大な隕石の突如とした飛来に困惑する暇すらなく、成す術なく蹂躙され押し潰されていく鬼の群れ達

 

「や・・・槍・・・!?」

 

私の知ってる槍と違う・・・!リッカの思考はフリーズ寸前であった。一体どう言う理屈と原理で、投げた槍で空を晴らし隕石を落とせると言うのか・・・!?いや、モンハンで似たような事やるモンスターはいるけど・・・!それにしても・・・!

 

「マスター、お前に伝えるべき事はもう1つある」

 

隕石降り注ぐ地獄絵図と化した戦場にて涼やかにカルナはリッカに告げる。一言を告げる事を望みとし聖杯に願ったカルナはきっちりと意思疏通を果たす

 

「もう1つ・・・!?」

 

「あぁ。これはオレの持論なのだが」

 

そう言葉にし、再び魔力が莫大に高まる。そして構えに入ったカルナの『右目』に凝縮され、圧縮され、そして――

 

「真の英雄は、眼で殺す」

 

放たれる。オケアノスにて放たれた眼力ビーム・・・に見える魔力照射。異なる世界でビームの英霊、ランチャーと名付けられた由縁の一撃が、カルナの視界180度全てを等しく薙ぎ払う。そう、全てだ

 

直撃した鬼は身体を両断され、そのまま刹那の大爆発に巻き込まれ敢えなく蒸発する。核爆発もかくやといった規模と超絶な程の熱量の光束は凄まじい切れ味を誇る切断光線効果を発揮し、自らの眼前に広がる門を、端から端まで真っ二つに両断してしまうほどの熱量を発揮する

 

「――――ほわぁあ・・・」

 

相次いで立ち上る火柱。生き残りの鬼ごと辺り一帯を全て焼き尽くす業火と降り注ぐ隕石、燃え盛る炎、炎上する山門。鬼は残らず焼け焦げ、地形が変わる程の凄まじいまでの地獄絵図。生き残る者は武蔵と交戦せし鬼、背後にいたリッカと助六のみ

 

最早真紅一色となったその戦場にてカルナは問い掛ける。自らの武勇は、僅かながらも参考になったかどうか、と

 

「期待には応えられたか、マスター。そうであるならばオレも鼻が高い」

 

「あっ、はい・・・凄く、凄いです・・・」

 

カルナさんは手を抜くような人じゃない。これは自分に出来ることを最大限やった結果なのだ。宝具を解放しなかったのは指示が無かったがゆえに控えただけで、自らが出来る全てを解放し開帳した。文字通り、自分の全てを見せてくれたのだろう。だからこそ、リッカは嬉しくもあり、凄まじく痛感するのであった

 

インド、マジ半端ない。自分がこれをやるには、辺り一帯を不毛の大地にするレベルで泥を酷使しないとならないだろうと言う確信がある。それに加え・・・

 

「・・・槍とは・・・」

 

助六の呟きの通り、槍と言う武器に対する先入観が綺麗さっぱり燃え尽きた。槍とは自由な武器なのだろう。隕石も落とせるし、前座でもあり、そして太陽が登る。凄まじい武器なんだと

 

「そうか。・・・では、決めるがいい。あちらも正気を決する頃合いだ」

 

カルナの言う通りに、決着が付かんとする武蔵と轟力丸の立ち合いに、二人は目を向ける――

 

『リッカ君、インドのスケールを改めて痛感したね?人間のままでいたいなら真似しすぎちゃダメだよ?』

 

「はい・・・」

 

助六の補助をしながら、インドのすさまじさを痛感するリッカであった――

 

 

そして、此方もまた刹那にて決着が見える

 

「南無、天満大自在天神――」

 

燃え盛る業火、辺り一面に感じる熱気。陽炎に揺らめきながら武蔵は刀を納め不動明王に誓願を成す

 

力にて妥当敵わぬならば、積み重ねた技量にて打倒する。リッカさんや助六殿の手前にて告げはしたが・・・自らの技量、甘く見ているつもりはなし

 

燃え盛る一帯の空間をも気迫にて支配し、燃え盛る火の粉をも気に掛けず鬼を睨み付ける

 

「――!!」

 

燃えたぎる焔の中に鎮座せし不動明王を垣間見、気圧される轟力丸。その偉容の凄まじさと、四本の腕を持ち鬼を睨み付ける鬼神がごとき剣気を阻まんと鬼が叫び走り出す――が

 

「今だ!!」

 

「ぶん投げろ――!」

 

力の限り豆が投げ付けられる。手を離れれば凄まじい質量にてたたき込まれる『剛雉豆』が、助六とリッカの手により放たれ、大鬼に叩き付けられる。豆でありながら鉄球や砲丸並みの質量で放たれる凄まじい重さの豆が、轟力丸の頭に直撃し、ぐらりとよろめく

 

「好機!――轟力丸、破れたり!」

 

二人の援護を合図に目を見開き、四つの腕より不動明王の剣技が放たれる。火、水、土、風――それらの力に頼らぬ生涯の研鑽を、突き、薙ぎ、払い、斬り裂き、鬼を滅多斬りにする

 

鬼も苦し紛れに金棒を投げ捨て武蔵に投げつける。――が、そんな起死回生の攻撃を意に介する必要もなく、僅かに首を動かし回避する。刀を以て切り裂き、真っ二つに分ける

 

「鬼退治、この一刀にてつかまつる!!――伊舎那!」

 

不動明王の剣鬼を空とし、巨大なる刀を振り上げ、噛みつかんと飛び掛かる鬼へと目掛け――

 

「大!天!象!!」

 

辺りに漂う火焔と炎熱諸共に、鬼を一閃する――!辺りを吹き散らす風圧と剣轟抜刀が吹き飛ばし、静寂をもたらす

 

――赤鬼、一刀両断にて絶命。刀を払い、ゆっくりと収め一息つく武蔵ちゃん

 

「――鬼退治!これにて完了!」

 

「やったね!武蔵ちゃん!」

 

これにて、全ての鬼は討ち果たされ、山頂への道が開かれる

 

「・・・これで、ようやく終わりか・・・」

 

破壊し尽くされた一帯を眺めながら、助六が息を吐く

 

・・・阻むものは何も無し。後は、ただ進むのみ

 

その山頂。山の天辺にて待ち受けるものとは、一体なんなのか・・・?




--無事に討伐が完了したようですね!良かった・・・!これで帰還ができますね!


(うん!あっという間だったなぁ。バカンスも終わりかぁ)

《解らぬぞ?家に帰るまでが、とも言うではないか。もう一波乱あるやも知れぬ。気を抜くには些か早かろう》

--門番が更にいる、と言うことでしょうか?ならば、先んじて・・・

《いや、よい。この鬼退治なる旅路の果て、引き続き酒の肴に楽しもうではないか》

--しかし皆様、リッカちゃんを信頼しきっているのか、変わらずリラックスしていますね・・・

《この程度、危機などではない。乗り越えて当然の準備運動なものだ。マスターにとっても、あの剣士にとってもな》

--準備運動・・・凄くハードですね・・・

(並みの人間だと死ぬだけなんだよなぁ・・・やはり逸般人か・・・)

--彼女には、女子力をしっかり身に付けてほしいですね。戦いに心が染まりきらないように、平穏な日々をしっかり過ごせるように。非日常に慣れ親しんでしまっては、平和が遠く感じてしまうかも知れません。・・・日常に戻ったとき、回りから軋轢や疎外感を感じては・・・辛い想いをしてしまいますから

《そうさな。その為に英霊どもは残り、ヤツを魔道に引き込まぬ役割を担ったのだ。真っ当に生きる術を身に付ける。それがヤツの行うべき戦いよ》

--はい!リッカちゃんを、これからも支えていきましょう!

(・・・思えば、獣をありのまま受け入れてくれる場所はここだけだろう。・・・成る程、そういう事か。彼女にとってもボクにとっても・・・)

--フォウ?

(・・・やっぱり、此処は楽園だね!エア!)

--うん!

《何を当たり前な事を。さて・・・この顛末、そしてこの先は、何処へと繋がっているか・・・愉しみ、見定めてやろうではないか》

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