「今はスパルタなんて流行らねぇぞ多分。今の時代は出来ることをしっかりやらせるほうが大事なんだとさ」
「むぅ、時代の移り変わりか・・・ケルトの方針は古臭いのだろうか」
「ババ様!コンラはババ様の特訓好きですよババ様!武芸百般、片寄らず何事も極みまで!徹底的です!でも、マスターには優しくしてあげてください!」
「う、うむ。程ほどに、な」
「槍、ですか・・・アキレウスに授けた頃を思い出しますね、懐かしい。基礎ならば、しっかり教えられるとは思います。これはマスターにお呼びがかかる時が楽しみですね」
「アキレウス、何故魔術の才能を注ぎ込んで完成させたのがあのような分かりきった空間なのだ。お前は絶妙にズレている所があるが、輪をかけてアレの存在は良く解らん」
「神の加護を受けて逃げ回るヒゲオヤジが鬱陶しかったもんでよ、編み出したんだ。まぁ、何にも考えないで殴れる空間なんて作る辺り、やっぱり俺にはセンスがねぇわな」
「だがしかし、十二の試練を忘れ生命の危機を体感しながら戦うのは悪くないな。どうだアキレウス、私に使ってみるか」
「御所望なら構わねぇぜ。ギリシャ最強・・・此処で決めようじゃねぇか。なぁ?」
「ははは、二人とも盛んでよろしい。ではその前に、私と肩慣らしをしましょうか?」
「よし、またの機会にしようアキレウス。仲良しが一番だ」
「だよなぁヘラクレス!仲良く円盤投げでもやろうぜははははは」
「さて、マスターは槍をどう扱うつもりなのか。お教えできればよいのですが・・・」
『よし、一通り土地の地形と分布は把握した。取りあえず、君達にはその島の天辺を目指してもらうよ。進むにしても帰るにしても、行き先は同じと言うのは都合がよくて助かった!』
迷い込んだその離れ島。その人ならざるものが集い、犇めく謎に満ちた鬼が在りし島の解析を一人で行い調べあげ、ルートを確保した影の苦労人ロマニ・アーキマンが手応えを感じ声を上げる。後方支援と言えど楽はできない。存在証明はリッカの身を確保するために必要不可欠だ。だがその作業は事象変換の魔術にて意味消失の意味合いをゼロに出来るため、片手が空いていれば今のロマンには余裕である。全ての魔術を配下に修めると言う事はそういう事だ。英雄王とは違う意味で、ロマンは総てを手にしているに等しい
「お疲れ様ですお医者さん!労いに御団子を手渡せれば良いのですが、そこはレイシフトの残念なところねー」
『気持ちだけでもありがたいよ。と言うわけで、君達は休息をとった後その島の頂上、神気漂う天辺へと向かってもらいたい。其処に行けば、君達はこちらへ帰ってこられるはずさ』
ロマンの言葉は、修復前と変わったことがある。なんというか、断言が多くなり白々しさが無くなったというか。『言っては見たけど、どうせうまくいかないんだろうな』といった根底の諦感といったものが無くなった感じがある。悲観的な物言いが好転した、といった所だろうか。リッカにはそういった微妙なニュアンスの違いも敏感に感じ取れる。対話を旨とする以上気付けて当然であるがゆえに
「ポジティブになったね、ロマン」
『不安なんて何もないからね!』
そんな短いやりとりにてロマンの歓喜が伝わり、やっぱり顔が緩んでしまう。それでは会話が進まないため、改めて問い直す。その頂上には何があるのか?とロマンの言葉を促す
『その頂上にはね、牛頭天王と思わしき神気が満ちているのさ。日本の神様の社なら丁度いい。君たちをたちどころに弾いてくれるとも。君達はその世界における異物だからね』
(牛頭天王?)
【リッカ、気にしてはいけませんよ】
母上との共通点を訪ねてみたが、どうやらあまり触れてほしくなさそうなので追求は止めておく。根掘り葉掘り聞くだけが親しき仲と言う訳でもなし、話したくない事があるなら別にそれでも良いのだ
「そっかぁ・・・神様と私たち、何か関係があるの?」
リッカの疑問にロマンが付け加える。東洋の神は、西洋の神とはニュアンスと敬い方が違うものだと
『西洋の信仰と帰依を是とする神様と違ってね、東洋の神様はおしなべて『恐ろしいもの』なんだ。荒ぶるもの、祟るもの、禍々しきもの。それらを日本では神と呼ぶ。日本の神様を崇めるのは基本的に、『悪いことをしないように鎮まってもらおう』っていう意味合いなわけ。畏怖っていうのはそう言うことさ。だから、君達みたいな異世界の来客には特別厳しく当たるよ。異物なんて社に紛れ込んだらすぐに元の場所に弾き飛ばしてくれるはずさ。日本の神様は基本無慈悲だからね』
だからこそ、祟りと加護は紙一重でありどちらも人に何かをもたらすものだとロマンは言う。ようは付き合い方なのだと
「そうねぇ。観音様もあっちやこっちや飛ばしてはくれるけど、私の思い通りに飛ばしてもらえたことはあんまりないし。御釈迦様の掌の上なんて言葉もありますし?やっぱり神仏は人を見守り振り回すのがお好きなのねー」
武蔵ちゃんも御団子を頬張りながらしたり顔で頷いている。本来の歴史の宮本武蔵は信心篤いブディストであったと伝わっている。自ら残した神号の名も残っていて、相当に神仏を大事にしていたようだが・・・武蔵ちゃんは気負わず、過度に崇めぬ自然体である
「そうかなぁ・・・神様ってそんなに怖いものかなぁ?」
リッカの中には、神様が恐ろしいものというイメージはイマイチ結び付かない。玉藻は甲斐甲斐しいしキャットは女子力の理想の一つだし、牛頭天王に限りなく近い母上は言わずもがな、雷神家系の金時兄ぃも同じく。そして・・・
~
・・・――健やかに生きるべし。我、健勝と息災を何よりも祈る者也
~
・・・偉大なる神様というものに助けられ抜いた今では、神様を敬うことに異論なく。畏れるなどピンと来ないと言うのが現状であった。アルテミス、エレちゃんとか愉快で可愛い神様もいるし
「ねぇねぇリッカさん。リッカさんは日本で敬ってる神様とかいらっしゃる?私の不動明王みたいな感じで!」
「天照は距離が近いから・・・平将門公かなぁ」
「まさかの神田明神のビッグネームと来ましたかぁ・・・!私みたいな罰当たりは口にするのも畏れ多いお方、祟られ一直線ね・・・あ、じゃあその勾玉は将門公由来のもの?」
武蔵がリッカの首飾りに触れる。それはまさに将門公由来のものであり宝物だ
「うん。将門公から貰ったの。大事な宝物だよ」
「ほうほう貰った・・・直接!?またまたぁ~!」
武蔵ちゃんが朗らかに笑う。いまいちピンと来ないらしい。・・・無理もないと思う。あの一連の出来事はまさに、夢のような一幕であったから
けれど、彼処で紡がれた絆と時間は嘘じゃない。確かに私は彼と過ごして、おぬいちゃんや田助くんを助け。村正じいちゃまから剣を受け取った。そんな思いを抱くと、ふと想い出に所感が飛び立つ
「皆、元気かなぁ・・・」
いつか、また向こうに行きたい。今度は本当のおさむらいさまを、おぬいちゃんや田助君に見せてあげたい。そして・・・あの明神切村正を扱えるのは、きっと・・・
「な、何々?そんなに熱っぽく見つめて?や、やだなー!リッカさん自分のかっこよさをもっと自覚してください、私、剣に生きる者としてはその視線で射抜かれるのはたまりません!色々と!」
きっと、彼女なんだろうと。胸のどこかにて確信があった。・・・あの不穏なる日ノ本に、泰平をもたらすのはきっと、武蔵ちゃんなんだと。確かに思えるものが彼女にはあった
・・・もしかしたら、彼女が求むる空位もきっと、あの世界にもあるのかもしれない。ならば・・・
「よーし!休憩終わり!頂上目指して進もっか!」
立ち止まっている暇はない。日ノ本にいるならば、前に向かって進み、歩み、真っ直ぐ生きなくては。あの方が信じてくれた未来に生きるものとして、恥ずかしくない人生を送らなくちゃ
その為にも、まずは山や島を踏破するくらいやって見せなくちゃ。日本女子たるもの、立ち塞がる困難は脚と力で乗り越えるものだと信じている!
「え?あもう出立!?リッカさん忙しないのね意外と!勿論お付き合い致しますとも!じゃあお会計を済ませて旅の続きと参りましょうか!」
武蔵も同じく刀を引っ付かみ、団子を食らい茶を一気飲む。腹を満たして意気充実となり、華のごとき笑みを浮かべ立ち上がったリッカと肩を並べる
「何処までも行ってみましょう!旅とは険しく楽しいものなのです!じゃあお会計!此処は私にお任せを!奢っちゃうから!一城の主として!」
「太っ腹~!ちゃんと持ってたんだねお金!」
「もっちろん!先立つもの無くば良質な旅など望むべくもなく、転ばぬ先のものとして常に懐に・・・」
そして財布を揚々と開けた武蔵の笑顔が、即座に固まる。その姿勢のまま硬直する武蔵の財布を何事かと覗き込むと・・・
「・・・すっからかんじゃないこれ」
「・・・うどん食堂で食べ過ぎていました・・・その、エミヤうどんがあまりにも美味しくて、つい・・・」
そんな武蔵ちゃんの醜態に、リッカは思わず笑ってしまう
「武蔵ちゃんは浪人気質が何時まで経っても抜けないね!端的に言って、自由人でダメ人間?」
「なぁっ――!そ、そりゃあ確かに勝つためなら何でもやる下衆ですし!地位と名誉に目がない俗物ですけれど!其処まではっきり仰らなくても良いじゃない!人間駄目でだらしないくらいが丁度いいのですっ!」
「そだね、そうだよね!あははっ、どうする?身ぐるみ置いて、下着で登山でもする?」
そんなリッカの言葉に反応したのか――首にかけた勾玉が、変化を起こす
「おおっ――?」
将門勾玉が輝き、光を放ったのち・・・リッカの左手に、金の大判が修められていたのだ。飲食の代金としては有り余るほどに価値のある金子である。それを将門勾玉は生み出したのだ
『ちょ、いきなりお金を生み出すってどういう魔術だい!?将門さまって大黒天と同一視されてたっけ!?』
恐らくこれは心配してくれたんだろうな、という将門公の配慮を即座に読み取れた。あの思慮深く慈悲深い彼なら、きっとそうだと確信が持てる
かつて・・・母との団欒を何も言わず見守ってくれた時のように。あのとき、助けてくれた時のように
「太っ腹なのねぇ将門公って!私も神田明神にお参りしてみようかしら!御利益は今目にしたばっかりだし!」
「はいはい、観音様がへそを曲げちゃうから敬虔深く生きようね武蔵ちゃん」
「ぐぬぬ、剣の切れ味を落としかねない神罰を下らされるのも嫌だし・・・わたしにも小判くらいはくれても良いのではないでしょうか、観音様・・・」
無念げに呟く武蔵ちゃんを起き、パパっと会計を済ませる。店番のお姉さんが驚いていたが、お釣りはいらないと伝えておく
「じゃあ行こっか!気ままな二人旅!この島の天辺目指すぶらり旅!」
なんだかんだで世話になりっぱなしの武蔵ちゃん、リッカに頭を下げきっちりと詫びをいれ気合いを入れ直す
「無様な醜態、まことに面目次第もございません・・・これはツケ!ツケにしておいて!いつか極みに達した際、価千金の一刀で返しますから!」
「ふふん、じゃあお互い頑張ろっか!お互い自分に無いものを目指して!せーの!」
「「えい!えい!おーっ!!」」
二人の朗かな鬨の声が空にこだまする。互いに道を歩く戦友であり、いつか戦うライバルでもあるけれど。今このときは紛れもない仲間であり友である。ならば其処に気負ったものはいらないのだ。だからこそ、笑って苦難に挑む事が出来る
・・・互いに伝えぬ事ではあったが。こうして女二人で旅をし、肩を並べて食事をするという事象は・・・カルデアに至る前には一度もない初めての経験だったのだ。そんな、一期一会の経験を共にした二人が笑顔になるのは無理からぬ話だろう
これより二人は、鬼ヶ島踏破の旅に出る・・・その時だった
「その旅路、水先案内として手を挙げさせてはくれまいか。無粋ではあるがどうしても、そなたら
二人が気になってな」
聞き覚えのある、冷静な声音。無意識で右腕が童子切に伸びるリッカとは対照的に、武蔵があっけらかんと声をかける
「あら、あなたが案内してくれるの?それは助かります。私は宮本武蔵、こちらが私の朋友藤丸リッカさん。そちらは?」
「来田助六という。この管理者のいなくなった場所で鬼となり迷い込んだ。・・・見たところ、武者修行の為にこの場へ来たとお見受けする。勇ましくあらあらし」
「――はい?」
武蔵の凄みに慌てて言葉尻を取り繕い会話を続ける
「かよわい女身二人でよくやるものだ。その性別を違えた仏の過ちにめげず歩むお前たちに、絶好の腕試しを提供させてもらおう」
助六の言葉にリッカは頭に?マークを浮かべ、武蔵ちゃんは不適に笑う
『鬼の君が人間に与するのかい?随分と変わり者なんだね、君。あれかい?好きな女の子のタイプは巴御前かい?』
「かつて剣に総てを捧げたこの身としては・・・源頼光の生き写しに宮本武蔵。一度の縁で捨ててしまうにはあまりに惜しい。オレもその技を間近で目の当たりにしたいと思っただけだ。あと首をネジ切られるのが怖いので巴御前はタイプじゃない」
「これには義仲さまも大笑い。ウルク運搬大臣の名前は伊達ではなかった」
【空気の読めない虫ですね。あのとき潰しておけば・・・】
自然体のリッカ、殺気みなぎる丑御前とは異なり、武蔵ちゃんは手合わせの内容に興味を持つ
「強い相手と戦えるの?それは願ったり。それで内容は?」
獰猛に食いつく武蔵の気迫に若干気圧されつつ、助六はその全容を明かす
「赤、緑、青の三匹の鬼。鬼退治にて免れたこやつら三匹の退治を、そなたらに頼みたい。ただでとは言わぬ。頂上へと続く、緩やかな道を案内しよう」
同時に助六は、大量に積み上げられた【何か】を台車にて運んでくる
「かつてこの島を食い荒らしたそちらの女武者と似た雰囲気の人間が投げ散らかしていった鬼退治豆だ。オレもこれで、助力しよう」
「・・・鬼が鬼を退治させるなんて、世知辛いのね。そちらの事情は」
「上が潰れたほうがチャンスが増える。それだけの事だ。それに、お前達の剣技が見れるならば仲間の首など惜しくはない」
この助六と名乗る鬼が、望むところとは何なのか?三匹の鬼とは?この島の全容とは?旅の行き先は何処なのか?
(・・・今日は槍を使うよって言い出しにくい・・・!)
全ては、天辺に至る旅路にて明かされる・・・?
カルデア
「あれ、そう言えば随分ギルが静かだなぁ・・・おーい、どうかしたかーい?」
『何、気にするな。我は我なりに奴等を見ている。貴様は引き続き身を粉にして働くがいい』
「え?君はいまどこに・・・あれっ!?」
鬼ヶ島、中腹高層温泉郷
「銭湯といったか?日本の風呂も趣があってよい。眼科に広がる下界を見下ろし飲む酒は格別よ。曇天であるのが珠に瑕だがな」
『君、いつの間にレイシフトを!?そうか単独権限か!ズルいぞ温泉堪能なんて!』
「そう言うな。温泉卵を土産にしてやろう。我が眼は何処であろうが奴等を見失うことはない。ようは何処にいようが我の仕事に影響は無いということだな」
『むむむ・・・ま、まぁお土産があるならいいかな・・・』
--ワタシは脚湯だけで。のぼせてしまうとオペレートができなくなってしまうので
(いぬかき!ならぬフォウかき!)
--あぁ、やっぱりフォウかわいい・・・
《よし、後々エアの知己も招くとするか。ふはは、必然的に男女比率が偏るのは仕方あるまい!太陽のめも呼んでやらねば釣り合わぬか?エア!酌を持てぃ!》
--よ、酔ってはいけませんからね!王!・・・あ、でもマリーは喜びそう・・・ネフェルと太陽王やアルク、騎士王も、馴染みは無さそうだし・・・うん、いい機会かも!仕事を終えたら皆で・・・
(フォウバタフライ!)
--どうやってやるのそれ!?
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