人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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・・・この世界の未来は、確かに続くものなのだと、信じても良いのだろうか


あらゆる困難を越え、あらゆる苦難を越え、発展するに足る未来と、信じても良いのだろうか

世界を見定める王、その王に寄り添う唯一無二の姫

人類悪に貶められながら、世界を救う決意を抱き続ける誇り高きマスター

カルデアの、善き人々達。そして--マシュ・キリエライト

・・・有り得ざる歴史、それを迎え討つ汎人類史との、起こるかも知れない戦い

・・・僕は、信じても良いのだろうか

僕たちの歴史が、未来へ続くものであると

であるならば、僕は--


新たなる力。雪花の自立--ただ一人の、新たなる盾として--

身体測定の名目を受け、呼び出されたマシュ。しかしその実態は英雄王による強化プラン。マシュ・フルアーマーユニット『オルテナウス』の製作とテストプレイのモニター、シミュレーションという内緒の会合でもあった。これより取り組まれるであろうロストベルト、イベント特異点に対し力不足を感じぬよう王の計らいにより計画された、マシュ本人のパワーアップイベントでもある

 

 

《いくら上手く回っているとはいえ、ヤツはデミ・サーヴァント。内部に宿るギャラハッドとやらがいつ抜け落ち、離脱を果たしても不思議ではない。その場合、ヤツの戦闘力は著しく落ちる。それを見越した強化でもある。まぁ、今はテストに過ぎんがな》

 

王はマシュの特異性を評価し、また危惧している。何者も前例がないその状態は、好転にも窮地にも発展しかねない。あやふやな状態にて問題を放置するという愚策を、英雄王はけして容認しない

 

《受注した原典、言うまでもなく選別していよう?お前に至って下手を打つことはあるまい》

 

王の確認に自信を以て頷く。マシュちゃんと王の期待を裏切るわけにはいかない。時間にして30分ほどかかったがしっかりと選別を果たした。彼女が纏うべき原典の宝具を射出可能とする

 

(さすエア!)

 

──ありがとう。これがワタシの誇りと役割だからね!

 

フォウをすりすりと撫で、胸を張る。王の宝物庫の管理には、誰にも負けない自信があるのだ!それはもう広くて眩しいけど!

 

「よし、では始めるとするか。マシュ、準備はいいな」

 

エアの髪を撫で上げながら、シミュレーションにて武装したマシュに号令をかける。気合いの入った表情を浮かべ、マシュが頷く

 

「いつでも行けます!英雄王!」

 

その号令に応え、王が指を鳴らし開幕を告げる。マシュの新武装、内緒のお披露目だ

 

「よし、では謳え!起動音声は伝えた通りよ!」

 

マシュは号令に応え、高らかに告げる。守護と雪花の意志を奮い起たせ、自らに宿る武装を呼び出すその起動キーを

 

来たれ、聖なる杯(サモン・ホーリーグレイル)。──雪花の鎧よ、我が身を纏え!(オルテナウス・プットオン!)

 

マシュの霊基の呼応に応え、王の宝物庫より『紫の聖杯』が一直線に飛来する。これは王が聖杯に細工し、マシュ専用に調整したアーマーユニットのコアとなる物質にして強大なる願望機だ。マシュの胸に埋め込まれ、霊基と同期しその霊基を極限まで強化する。続けて飛来する鎧の装着の為に

 

──続けて鎧を展開いたします。マシュちゃんの強化装甲、射出!

 

エアの号令に応え、身体の各部に紫色のフルアーマープレートの鎧の部品が装着される。肌の露出を抑え、ランスロットの鎧をイメージし改良した重鎧がマシュの身体を覆っていく

 

『これは──!』

 

身体能力を極限まで強化されたマシュの身体を護る、紫の鎧。完全に装着を果たしたマシュの右手に、巨大なりし円卓の盾が握られる。一回り大きく見えるほどに重武装となったマシュが、自らの変化に驚きの声を上げる

 

身体中にブースターの付いた鎧、装飾と一体化したシールドユニット。盾を強化する追加パーツを一体化させた、円卓のギャラハッドを強くイメージした鎧姿。メットはモードレッドの可変ユニットを参考にし変形収納式であり、胸には雪花の意匠がワンポイントにて付属されている。そう、鎧のコンセプトは各円卓のエッセンスである

 

強化外郭ならぬ、強化装甲雪花ギャラハッド(オルテナウス)。ギャラハッドに認められし清らかなる騎士としてのマシュをイメージした、マシュの新たなる姿である

 

「ふむ、呼応に合体は滞りなく成功したようだな。どうだ?その鎧の着心地は」

 

『スゴいです!こんなに立派な鎧なのに、まるで重さを感じません!それに、力が、力がみなぎるようです・・・!』

 

マシュのみなぎる力は、聖杯のバックアップによるものだ。オルガマリーの聖杯のデータを取り、身体に聖杯を同期させるノウハウをダ・ヴィンチと煮詰め、実用化にこぎ着けたものである。つまりこれは、カルデアの新たなる集大成。最新にして守護たる騎士の姿に他ならない

 

──手頃な聖杯がこうも役に立つとは嬉しい誤算ですね。良かったね、マシュちゃん・・・

 

上手くいった事を確認し、穏やかに微笑むエア。しかし、これはあくまで装着だ。まだまだ隠された・・・備わった機能は一つも発揮されていない

 

「よし、では武装の概要を説明する。情報を聖杯に伝える故、順次展開してみよ」

 

『はい!では!──『来たれ(インストール)炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)』!』

 

マシュの呼応に反応し、腰部分の鎧がマウントオフされ宙に浮く。分離、拡散による総勢三十機の展開を可能とする自律起動可能な自律軌道ユニット『スパルタ』である

 

突撃や対軍宝具、大量に飛来する物体などに力を発揮するユニットで、自らだけでなく仲間やパーティにも設置護衛が可能なシールドユニット、アニメ的に言えばサイコミュ・ファンネル。あるいはビットである。仲間を遠距離攻撃からリアルタイムで護るサブユニットだ。全体の防御力を引き上げる装備である

 

(パーティー全体に無敵三回付与)

 

──レオニダスさん率いるスパルタの皆さんをイメージした装備ですね。上手く使いこなしてくれるでしょう!

 

《ふっ、見よ。あの締まりのない顔を》

 

『レオニダスさん・・・!光栄です・・・!』

 

尊敬する英雄の名を冠した武装に喜色満面の笑みとなるマシュ。レオニダスは、マシュにとって特別な英雄であるが故思い入れもひとしおだ

 

『ほ、他にも、他にもあるのですか!?まさか、これ以上・・・!?』

 

「無論、それはまだ序の口よ。次の武装を呼び出せ、マシュ」

 

王の号令に鼻息荒く構え、魔力を練り上げ武装をコールする。

 

『はい!駆けろ、彗星の如く!(トロメウス・コメーテース)!』

 

同時に、身体の各部位に備えられたブースターが展開起動。頭部に兜が装着され、紫の騎士となり、そして── 

 

『ひゃ──きゃあぁあぁぁ!?』

 

凄まじい勢いで重力をものともしない加速にて縦横無尽に空中を飛び回るマシュ。身体中よりエーテル推進材を燃焼させ、自在に加速し機動力を確保しているのだ

 

(三回回避付与、デメリット体力低下だね)

 

これこそ、戦術機動ブースター『アキレウス』。身体中の装甲にて損なわれた機動性をブースターで補うという力づくで合理的な手段にて解決した個人の加速装置。Gや空気抵抗は鎧が防いでくれる自己完結ぶりである。コンセプトの妙を感じるよい補足装置だと頷く英雄王 

 

「戦術機動の名に恥じず、制動と加速に特化した装置だ。盾を構え、蹴散らすも高速機動で回避するも自由自在よ」

 

『ななな、成る程!アキレウスさんの名を冠するだけあって殺人的な加速です──!!!』

 

「笑顔で耐えよ」

 

ニッコリと課題を任せる英雄王。マシュならば必ずや使いこなせると信じたゆえの丸投げである。多分。これより訓練にて馴染ませるのだ、心配はないだろう

 

「さて、次は・・・これにするか」

 

『はうっ!?』

 

ブースターの機動を強制的に切り、落下させる。同時にシミュレーションルームに降り立ち、マシュに相対する

 

「次なる武装を即座に展開せよ。武装の採点をしてやる」

 

同時にエアが材を選別し、Bランクの宝具、射出十門を展開しマシュに狙いを定める

 

「は、はい!──『来たれ!(サモン!)』」

 

──装填、発射!

 

放たれる秒に数十発のガトリングめいた宝具の嵐。それと同時にマシュが新たなる武装を展開する

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!』

 

同時にマシュのシールドに七つの紫色の花弁が張られ、ギルの宝具ガトリングを完膚なきまでに防ぎきり、無力化する防御を展開する

 

《──むぅ。マシュやエアが悪いわけではないが、この構図は何処と無く不愉快よ》

 

苦々しく呟く王を心配しながら、いそいそと回収宝具を展開し防がれた宝具を回収する

 

──無事に作動しているようですね、何よりです!

 

かの防御は、多段前面展開遮断防壁『アイアス』。大英雄の投擲を防ぎきったとされる誉れも高き前面装甲。アーチャーエミヤも多用せし防御宝具だ。その由来から、前面からの攻撃・・・特に投擲宝具に絶対的なボーナスを付与する強力なものである。アーチャー・ランサーの宝具に対応を主とした防御機構なのだ

 

「す、凄い!王の財宝を、こんなにも容易く・・・」

 

「次に行くぞ」

 

即座に剣を抜き放ち、ビームをチャージし即座にマシュに放つ。これに対するコメントは特に無いようである

 

(ダメージカット三ターン・・・止めろよ煮え湯飲まされたからってそういう露骨なスルー!)

 

《仕方あるまい。アレにはよい思い出がないのだ》

 

──射出宝具に対する防御ですか。背後から首を狙うか全方位から襲い掛かり射出するかですね、対処法は

 

放たれたビームに対し、マシュは更なる防壁を展開する

 

来たれ(サモン)女神の盾よ(アイギス・パラディオン)!』

 

マシュの盾の鏡面が光輝き、剣から放たれし光線を魔力変換し吸収し、盾へと取り込む。そして吸収し終わった即座に

 

「はっ!」

 

盾から発射する。聖剣や魔剣に良く見られる光線や熱線を分解吸収し、自らの盾に取り込みそのまま発射し跳ね返す光学鏡面展開シールド、アイギス・パラディオン。セイバーの対峙を主とした武装であり、ビーム対抗宝具でもある

 

「フッ、これは我ながらよく拵えたものよ。攻防一体。何事も効率良くなくてはな」

 

光学遮断宝具によって攻撃を遮り無力化する。指ひとつ動かさず防ぐ英雄王も英雄王だが、突っ込んでいてはキリがないので王の威光をただ受け止める事にするエア

 

『凄い・・・!こんなにも、こんなにも多彩な防御の形態を取れるなんて・・・!』

 

(バスター耐性アップからの宝具威力ダウンかな?中々に豪華なシールダーになったなぁ)

 

マシュの感激に、こちらも頷く。喜んでもらえたようで、何よりだ

 

「あと一つは離脱の用途に使うものだ。そのシールドを投げ、上に乗り離脱する宝具であるな。プリドゥエンといったか。騎士王やアルトリアめの持ち物ゆえ、詳しくは奴等に聞くがいい」

 

最後の装備は離脱用装置、プリドゥエン。負傷者を抱え、離脱する際に活用すべきシールドボード。アキレウスより速度は劣るが、防御力場と長距離を飛行できる点で差別化を図っている

 

(クイック・アーツアップ、ターゲット集中にNP獲得量アップと言った所かな。うんうん、万全だね)

 

フォウの評価に、同じく頷く。これだけあれば、防御力に不安はないだろう。後は、マシュちゃんが上手く使いこなせるかどうかにかかっている

 

・・・そして、この防御装備には宝具展開モードもついている。それらは鎧の力を最大限引き出し、『対界宝具』を防御するというコンセプトの下に発動される--『内部の英霊に頼らぬ防御』を発揮するものであるが・・・

 

《今はこんなもので良かろう。最奥は、戦いの中で開帳してやるのが見栄えが良くなると言うものだ》

 

──分かりました。その時を、ワタシ達も楽しみにいたしましょう

 

王の言葉に、同意を示し頷く。必ず来るであろう戦いの中で、その真価を発揮する瞬間を心待ちにし、財宝を収める

 

「使用感、装着の際の所感はどうだ?違和感、不備、不満があるなら聞き届けるが?」

 

鎧の展開を解き、聖杯と鎧が蔵に帰還する。興奮に顔を上気させたマシュが英雄王の手を握り振り回す

 

「ありがとうございます!英雄王!私、とても・・・とても誇らしいです!本当に!本当に・・・!」

 

「フッ、そうか。これはあくまで試着のようなものだ。これより訓練にて適合率と精度を上げていくぞ。よもや異論などあるまい?」

 

「はい!このマシュ・キリエライト!全身全霊でオルテナウスの装着に尽力いたします!」

 

鼻息荒く決意を露にするマシュ。どうやら新しい武装は気に入ってもらえたようだ。・・・これは、マシュに贈る新たなる武装にして、マシュ個人の力と絆である

 

ギャラハッドに頼らない、自らの判断と装備にて戦うマシュの新境地。ギャラハッドと別れようとも、今まで以上の力と守護で奮い起つためのマシュの決意を後押しするもの

 

マシュの中にいる英雄が、いつ抜け出すか解らない。もしかしたら、役目を終えたと出ていくかもわからない中、ギャラハッドに頼りきるのは危険な判断だ

 

それに、王の見立てではマシュはもう、自らの足で立ち、自らの想いに気がついている。誰かの庇護なくば戦えぬその期間からは、もう脱却しているのだ

 

これから先の未来は、マシュに委ねられている。新たな装備と力を使いこなせるか、マシュ自身が装備に振り回されるか。それらは全て、彼女自身が選び、行う戦いなのだ

 

「見ていてください、先輩!じゃんぬさんのように、私も先輩の唯一無二の相棒目指して、頑張ります!」

 

──頑張って、マシュちゃん。リッカちゃんは、必ずあなたを必要とするはずだから、挫けないでね

 

そう。これから先、何が起ころうとも。何と戦う事になろうとも

 

走り続けるリッカに、必死に食らい付いていくだろう。・・・互いに背中を預け、全力疾走し、輝かしい明日へ向かって進む、人理の守護者達

 

《フッ、我が財が何処まで至るか──見物よな。我を愉しませ、存分に励めよ》

 

王の期待、姫の応援と尊重を背に受け──

 

「早速!訓練を始めます!一日でも早く、この力を身に付けたいですから!」

 

少女たちは、未来を目指す──




「先輩!せんぱーい!」

「?どしたのマシュ。嬉しそうだね随分」

「頼ってください!私を!」

「?」

「私、もっともっと頑張ります!頑張って、頑張って、先輩を支えられるサーヴァントになってみせますから!」

「--うん!信じてるよ、でも一歩も待たないから、置いていかれたくなかったら、止まっちゃダメだよ?」

「望むところです!先輩こそ、うかうかしていたら私が追い抜いてしまいますからね!覚悟していてくださいよ!」

「言ったなこいつぅ!」

「では、私はシミュレーションをこなしてきます!また、後で会いましょうね!」

走り去っていくマシュの後ろ姿を、手を振りながら見送る

「張り切っていますね、彼女。何かあったのでしょうか」

じゃんぬがリッカの口にケーキを食べさせながら不思議そうに呟く

「むぐむぐ。ごっくん。ま、悪いことじゃないのは確かだよ。マシュけべが悪いことするハズないし」

「ふふっ、信頼しているのですね。もし内緒で悪巧みしていたらどうします?」

「徹底的にお仕置き折檻からのお尻ペンペン100叩き。愛あれば、愛あればこその仕打ち」

「それは恐ろしいですね。見てみたいですが。・・・さて、では行きましょうか、リッカ」

「オッケー!今日の女子力アップはお裁縫だ!おじさまメディアさん!待っててね!」


・・・少なくとも、今ここにある希望と未来は本物だ。彼等には、掴みとった未来を護る希望と力がある

・・・なら僕は人類史ではなく、彼と、彼の財達を信じてみよう

完全無欠の結末を掴みとった、尊き彼女と、同じ様に。--それが、彼女達を生かした僕の責務だ


「私はやってみせます!見ていてください、ギャラハッドさん!」

--頑張ってくれ。雪花の騎士。いつまで一緒にいられるかは解らないが、僕は、君を応援している

君の行く先に、雪花の祝福が在らん事を。人類悪を守護する、優しき乙女よ

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