人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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投稿時間安定しなくてすみません、明日からまた安定する?と思います


「プリンセスは楽しそうですね・・・この獅子の意匠を気に入ってくださったのは、嬉しいことです。獅子王も、喜んでいることでしょう」

『獅子の仮面』

「・・・らまっすー、仮面(ビシッ)」

(・・・な、中々に気恥ずかしい。やはり無垢さと思いきりが無くてはこなせませんね)

「ラマッスゴールド、ラマッスプラチナ・・・ならば私はラマッスブルーでしょうか・・・レッド、イエロー、ホワイト、グリーン、ピンクは一体誰に・・・」

「アルトリア、いるかい?ハロウィンのお菓子の事なん」

「はいっ!?――あ」

「ど、どうしたんだい?獅子の仮面を被って」

「あ、その・・・これは・・・」

「・・・あぁ、そう言うことか。心配しないでいい。誰にも言わないよ。ラマッス仮面の事はね」

「ち、違うのです。べ、別にプリンセスに影響されたわけでは・・・」

「うんうん、そうだね。わかっているさ」

「ほ、本当に理解しているのですか・・・!」


「万年仮装男は楽でいいな凡骨ゥ!!」

「黙れ似非紳士め!フラン君を起動したならさっさと感電死してくたばってしまえ!!」

「おぉっと電気が滑ったぁ!!ははは!すまないその見せかけの筋肉も仮装だから聞いてしまったかな!?」

「おっと手が滑ったぁ!!やはりスーツなんぞ着こなし粋がるクソ交流の腹筋はやわやわだな!カボチャ以下とは恐れ入る!」


「凡骨ゥウ!!」

「ほざくかテスラァアァァア!!!」

「あーもう、こういうときくらい仲良くしなさーい!!」

「アルジュナ、見ろ。この日だけは、皆授かりの英雄になるのだ」

「その大量の菓子!さては貴様、楽しんでいるな!」

「お前はもらっていないのか。残念だ。お裾分けしよう」

「止めろ!ポケットに飴を詰め込むな――!」


「フケイ、フケイ、フケイデアルゾ」

(この日の為に頑張って編み込んだメジェド様コスプレ!エジプトの威光にて、皆をひれ伏させましょう!)

「フケイ、フケイ。オカシヲ」

「ハハッ、余に敬を問うか。不遜なり!そして、豪胆なりニトクリス!」

「御許しください!御許しくださいファラオ!!ファラオ・オジマンディアス!!」

「ニトクリス様も楽しんでおられるご様子。ラーメス、寛大なお処置を」

「赦す!!全て赦す!」

「あぁ・・・ありがとうございます!ネフェルタリ様!」

「ネフェルタリはハトホルの化身、余と同じか、それ以上に敬えよ、ニトクリス」

「ははあっ!」


「クーちゃん!お菓子!お菓子ちょうだい!私に!いっぱい!いっぱいちょうだい!!」 

「くんじゃねぇ!!嬢ちゃんに軽い男に見られんだろが!!」

「クーちゃんを奪うときは正式に決闘するからいいのよ!ねぇねぇちょーうーだーいー!」

「はははは!仲睦まじく羨ましいなぁクー・フーリン!ところでメイヴちゃん!夜のケルトを兼ねて!一発どうか!!」

「あら、肛門開発が御好み?いいわ、付き合ってあげる!」

「・・・お前たちはあまり口を開くな」

「こーもんかいはつ、とはなんですか?」

「知らなくてよいぞ、コンラ。無垢なままであるのだ・・・うむ」

「フェルディアブッ飛ばすぞテメェ!!」

「時にコンラよ、大人の姿にて、俺と一晩・・・」

「伯父貴も人の息子口説いてんじゃねぇ!!」


「騒がしい、愉しい・・・これがお祭りなんだね、ギル」

「エルキドゥー。一緒にお菓子をくばるのだわー」

「いいよ。ふふ・・・じゃあ、やろうか」


『はい、エレシュキガル。よく噛んでね』

『ありがとうございます!お母様!』

『HEIWA』

『全くですね・・・』


「まぁ・・・シャナは演技がよろしくないのね?私と一緒に勉強するのはどうかしら?」

『私も、極道者とか・・・楽しそうね・・・』





エピローグ~再会を望む血の姉妹~

「ふん。どこぞで拾った聖杯を利用していたか。我が財を容易く拾い上げるその嗅覚、流石は竜・・・財宝を守護する幻想種と言ったところか」

 

 

エリザベートへの褒美も下賜し終え、プットオンした英雄王が回収した聖杯を検分し見定める。形は同じだが、これは聖杯の欠片のようなものだ。時代改編、因果を曲げる等の芸当はできない・・・少女の夢見る幻想をカタチにする程度の片落ち品だ

 

――収納しますか?欠片と言えど財は財。英雄王の所有物であることに変わりはないのですから、蔵に納められてしかる物品だと思われますが

 

其処らに転がっている聖杯、というのも宜しくないので。エアは一通り拾い上げ聖杯保管部屋を作り上げている。必要となるならば直ぐにでも収納が叶うスペースを確保している為、後は回収するだけだ

 

「・・・」

 

王の目線は手にした聖杯に暫く注がれていたが、やがて小さく鼻を鳴らす。そしてそのまま・・・

 

「よい、駄賃がわりにくれてやる。元より欠片、我が蔵には相応しからぬ余り物よ」

 

あっさりとリッカに投げ渡し、自らの部屋に歩を進める英雄王

 

「え、いいの!?」

 

「完走には報酬が与えられるのが道理だ。些か不釣り合いではあるが、とっておくがいい。どのように使うかは勝手だが、節度と責任は持つのだぞ?」

 

それを告げ、もう英雄王は追求はしなかった。ギルがそう定めたならば、それが絶対の裁定であるがゆえに

 

――お疲れ様でした、ギル。今日はお部屋で休みましょう

 

(そうだぞ。慣れない自己犠牲なんてやったんだ、不調が起きたらエアだって道連れなんだからな。ちゃんと身体を大切にしろ。毎秒休憩しろ)

 

《フン、回りくどい心配と配慮よな。貴様ももう少しエアのように真っ直ぐな物言いは叶わぬのか?》

 

(なんでオマエに優しい言葉なんかかけなくちゃいけないんだよ気持ち悪い。勘違いするな、エアの大切な器で王様だから心配してるだけなんだからな)

 

――フォウは優しいね。ほんとに、いつもありがとうね

 

(あぁ、エア――)

 

フォウはエアの労いと感謝に、プレシャスキャンディーとなってポケットに収まる

 

――フォウ!?

 

久し振りのフォウのフォームチェンジに面食らうエア。最近めっきりプレシャスチェンジが果たされていないため、完全に油断の上の不意討ちである

 

《久方ぶりの死亡芸か。よい、赦す。その身を振るい我等を何時何刻も楽しませるがよい》

 

変わらぬ獣の在り方、傍らで千変万化の表情を浮かべる姫に囲まれ、今日も御機嫌王は笑顔にてカルデアの王室へと帰還するのだった――

 

 

『聖杯をポンっと上げちゃうんだもんなぁ。魔術師の立場がないよ。まぁそれが英雄王の決定なら仕方ない。三人ともお疲れ様。一通り汗を流したら就寝に入って大丈夫だよ』

 

『もう夜も深いわ。しっかり休憩しなさい。曲がりなりにもサーヴァントとしのぎを削ったのだから、疲労は溜まっている筈よ』

 

マリーとロマンも、作戦終了のアナウンスを告げ通信を終える。解散を受け、三人が残された形になる

 

「先輩、私はエリザベートさんをラボに運んできますね。なんというか、刺激が強すぎたと思うので」

 

倒れて痙攣しているエリザベートを抱えて、部屋を出ていくマシュ。その表情は、そこはかとない疲労を湛えている

 

「お疲れ様。楽しかった?マシュ」

 

「はい、とっても。御休みなさい、アルクェイドさん、先輩」 

 

「お疲れ様~。また会いましょう?それがいつかは解らないけど!」

 

笑顔の一礼を残して、マシュもまた自分の役割を全うするために部屋を後にするのだった。静かになったステージ会場に、二人だけが残される

 

「楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうものね。こんなに愉快な夜、いつぶりかしら?」

 

「楽しかったね、アルク姉さん」

 

「えぇ。思いきり笑う事も、誰かを護って戦うことも、皆で冒険することも。全部新鮮で、とっても楽しい体験だったわ」

 

言葉を交わし、笑顔を交わし、過ぎ去る時間を思う二人。一夜の夢でも、紡ぎ上げたものは・・・築いた時間は濃厚で大切なものだ

 

「・・・ねぇ、リッカちゃん」

 

そんな中、リッカにアルクェイドが告げる

 

「契約、してみる?私と。サーヴァント見習いだから主従はイマイチだけど・・・あなたになら、背中を安心して預けられるわ」

 

この時間を経て、アルクェイドはリッカを、カルデアの在り方を深く気に入った。真祖、人間、英霊の分け隔てなく。力を合わせ前に進むその在り方に、僅かならずも感銘を受けていたのだ

 

何より・・・魔術師とか、そういった枠組みからしてみれば異端だと言うのが凄く良い。自分がやりたいようにやり、それが世界を救う力になる。それはなんて素敵な組織なのだろうか。

 

それに、何よりも・・・

 

「女性のマスター、って私初めてだし。私の初めての人になってみない?なんて!」

 

こんな真っ直ぐで、一緒にいて楽しい人間の価値を知っている。自分を大切にしてくれる人間の素晴らしさを知っている。自分の強さではなく、一人の存在として尊重してもらえる素晴らしさを知っている

 

だから――一夜の夢が終わった後も、もう少し一緒にいたいと思うのだ。愉快な出会い、素敵な夢をもう少し、このままで。夢で終わらせず、現実を楽しいものに

 

「どうかな?私じゃ力不足かしら?」

 

リッカはすぐに首を振る。そんな事はない、大歓迎だと

 

「願ったり叶ったり!私もアルク姉さんともっと一緒にいたいもん!楽しかったし、優しいし強いし!」

 

リッカとしても同じ気持ちだった。母や兄はいる、友も王もいる。後輩もいる、神も翁もいる、姉御もいる

 

けれど・・・自分と近しい『姉さん』の感覚は、初めて体感する心の距離だったから。願わくば、このまま一緒にいたいと思う。契約をして、一緒に戦いたいとも思う

 

――・・・でも

 

「でも、条件付きで。『キチンと大切な人達に許可を取ってから、正式に契約すること』」

 

リッカは、アルクェイドにそう告げる。マスターとしての、そのお願いを告げる

 

「アルク姉さんにはちゃんと帰る場所があるんだから、此処に住む前にちゃんとお話しして、キチンと許可を貰ってからここで一緒に暮らすこと。それが、契約をする条件」

 

そう。アルクェイドはサーヴァントとは違う。キチンと帰る場所があり、待っている大切な人がいて、過ごすべき日常がある。その大切な日常を、こちらの都合でねじ曲げるわけにはいかない

 

「これからこの聖杯を使ってあなたがいるべき時空に繋げるから、一回キチンと里帰りする事。あーぱーでも、筋と仁義は通さなくちゃ。あなたは、生きているんだから」

 

・・・勿論、此処で別れたらまた再び会える保証は無いだろう。サーヴァント召喚ではないのだから、別世界に繋がるかどうか、同じ存在に会えるかどうかも曖昧だ。きっと、大切な人たちもアルクェイドと離れるのを良しとしないだろう

 

けれど、確実にアルクェイドは自分の世界に帰れる。それは絶対だ。聖杯の奇跡があるならば、それは保証される。ならばまた会う事を願えば、とも思うが、それは違う

 

これは・・・リッカの遠回しの別れのメッセージなのだ。『過ごすべき日常があるならば、それが一番の幸せだから』と、戦いへの参列を良しとしない願いでもある

 

別れを告げるのは・・・あちらもこちらも一緒にいる事を望んでいるのに、別れを告げるのは辛いから。こんな言い方で、お茶を濁すしかないのだと、リッカは自嘲する

 

「行って、アルク姉さん。あなたの日常に。・・・大丈夫。私たちは皆、待ってるから」

 

「――そうよね。大切な人への許可は、大事よね」

 

アルクェイドもまた、その想いを受け止め、汲み取り、了承を返す。戦力としてではなく、生まれた絆よりも、アルクェイド自身の幸福を願った一人の少女を、優しく抱擁する

 

「志貴や皆に伝えてくるわ。素敵なマスター友達見つけたから、力を貸してくるって、ね」

 

「・・・うん」

 

「・・・だから、今はお別れ。ちょっとの間だけど、離ればなれ」

 

「うん」

 

「・・・寂しい?リッカちゃん」

 

「・・・寂しいけど、嬉しい。ちゃんとただいまって言ってね、アルク姉さん」

 

「ん。・・・ありがと」

 

最後になるかも知れない、リッカとアルクェイドの会話は、物静かなステージのみが受け止める

 

繋いだ縁と絆を懐いて、今はお別れを告げる。幸せな日常を、互いに尊重するが故に

 

それもまた・・・サーヴァントとマスターの在り方だと。リッカとアルクェイドは思うことにしたのだ

 

・・・そして、聖杯が掲げられ。アルクェイドの本来居るべき空間に繋がる。向こうに、アルクェイドが見慣れた風景が見える

 

「じゃ、またね。私達の縁が、再会を手繰り寄せてくれると信じましょう?」

 

ふりふりと手を振るアルクェイドに、サムズアップで答えるリッカ

 

「またね!アルク姉さん!・・・あ」

 

「ん?なぁに?」

 

「・・・お土産くらい無いと締まらないよね!あ、でも何にもない!聖杯いる?」

 

くすっ、と苦笑するアルクェイド。此処に来てまでお土産の心配なんて、とことん魔術師らしからぬ女の子だと。そんな気持ちが去来する

 

「ふふっ、聖杯なんていりませーん。シエルとか秋葉に怒られまーす」

 

「だよね・・・聖杯ってそんなちょろいアイテムじゃないよね・・・」

 

「――じゃあ、これを貰おっかな」

 

あたふたするリッカにするりと近付き、しゅるり、と

 

「あ・・・」

 

「ふふっ、素敵な髪。・・・大切にしてね。ロングヘアーも似合うわよ、きっと」

 

リッカの髪留めを手にする。髪がほどかれ、下ろされた頭髪が肩にかかる

 

「アルク姉さん・・・そ、そんなのでいいの?あの、良かったら血とか・・・」

 

リッカの提案に、笑いながら首を振り、朗らかに返す

 

「好きになった人の血は吸わないのよ、私。ずっと一緒にいれないけど、そのままのあなたがそこにいてくれることが嬉しいから」

 

「・・・そう、なんだ」

 

「そうなのよ。・・・じゃあ、お別れね、マスター」

 

空間を背にし、最後まで笑みを絶やさず朗らかに告げる

 

「私を楽しませてくれたお礼は、いつかキチンとしてあげる。忘れないわ・・・あなたという素敵な人をね」

 

「私も、忘れないよアルク姉さん!」

 

「ふふっ、ありがと!――必ずまた会いましょう!リッカ!」

 

その言葉を最後に、アルクェイドは裂け目へと踏み出す。笑顔を絶やさぬまま、天衣無縫に、天真爛漫に

 

 

 

「私をその気にさせた責任、取ってもらうんだからね――!」

 

 

一人の愉快な真祖、アルクェイドは・・・自分の世界へと帰っていった。朗らかな反響と、素敵な残り香を名残として

 

「・・・バイバイ。アルク姉さん、また会えたら、カルデア案内したげるね」

 

彼女の日常が、再び非日常に繋がる日が来たのなら。また、必ず

 

そんな再会を夢見ながら、リッカもまた、全てが終わったステージを後にする

 

一夜の夢はこれで終わりを告げ、カルデアの面々もまた、それぞれの日常へと戻って行くのだった・・・




そして、祭りの喧騒は過ぎ去り。冷え込む冬へ向けての準備とハロウィンの後片付けをカルデア一行で取り組んでいる。祭りの喧騒は、日常への平穏へと様変わりしていく


「ハロウィンも終わり、これから冷え込んできますね先輩」

「此処雪山だし、今更じゃない?というかこのカルデアで不備不満を感じたことが無いんだけど」

「ですね。ですが先輩は大丈夫だと思います。乾布摩擦、筋肉の鎧、シバリング、新陳代謝。寒気には滅法強い人類悪ですから!」

「あはは、そんなに私を人間ヒーターみたいに言ってはいけないよ後輩。ウおォン」

飾り付けがついた段ボール一つを持ち運ぶマシュ、両手に三つずつ持ち運ぶリッカが廊下にて歓談する

「アルクェイドさん、帰ってしまいましたね・・・ちょっと寂しいです。カルデアにいてくれるかなと思ったのですが・・・」

「まぁ、帰る場所があるからね、アルク姉さんも。ならそっちを大事にしなきゃ」

「・・・ここも」

「ん?」

マシュの言葉に段ボール越しに立ち止まる


「ここも・・・このカルデアも、先輩の帰る場所です。みんな、みんなそう感じているはずです。私も・・・!」

そんな真摯な訴えを聞き、やっぱり笑うリッカ

「――ありがと。じゃんぬも母上も忙しいし、これ終わったら部屋でゴロゴロしよ~」

「咎めませんが、体脂肪率が上がらないようにお願いします。ゴジラからぶたさんになった先輩は、愛くるしくも明日の食卓に並んでしまう運命です」

「私の扱いシビアすぎぃ!!」

軽口を叩き合いながら、リッカは業務を終わらせマイルームへと戻り、惰眠を貪らんと扉を開く

「ふわぁ~。じゃんぬ~、早く私を甘やかして~、ははう・・・ん?」

ふと、目の前にある巨大な物体に目を奪われる。赤と、白の包装が施された、人一人分が入れそうな・・・

「・・・プレゼントボックス?」

口にした途端、ガタガタと揺れ始める。そんな不明な状況に驚嘆しながらも、リッカは恐る恐るそれを紐解いていく。すると――

「――ハッピーハロウィ――ン!!久し振りねリッカ!一日ぶり!二日ぶり!?」

中から出てきたのは・・裸体に赤いリボンを施し、朗らかに笑うあーぱー吸血鬼・・・

「あ・・・アルク姉さん!?ちょ、早くない!?」

「早いでしょー?言った筈よ。私を楽しませてくれたお礼は、いつかキチンとしてあげるって!それがこれ!私をあなたにプレゼント!いいわよね、同姓だもん!」

魅力的な肉体をきつめに包装したかなり際どい格好を惜し気もなく晒すアルクェイドに、リッカは興奮と平静を保ちつつ真意を質す

「え、あの・・・家族の皆は!?」

「それがねー、志貴に『迷惑ばっかりかけてないで、たまには報いることを覚えてこい』って言われてー、党首と使用人からは『どうせリメイクなんてずっと後だからプロバガンダになってこい』って言われてー、シエルからは『志貴の面倒は私がしっかり見ていてあげます』って言ったから、殺すのは最後ね!って言ってきたからこっちに来ちゃった!ほら、許可はちゃんと降りたでしょう?」

「あれぇ?意外と家庭の事情複雑?」

あっさり三行は・・・了承が出てきてびっくりなリッカ。その様子を見てアルクェイドはわざとらしくしなびる

「もしかして・・・嬉しくない?せっかく来たのに~、リッカちゃんの為に仕掛けを考えたのに~、このリボンとか・・・」

その言葉に首を振るリッカ。嬉しくないわけがない。まだ出会ったばかりで、色んな事を聞ける機会に恵まれる。何より、再会を望んでくれたのが嬉しい

「嬉しくないわけないよ!だから――その、これからよろしくね!アルク姉さん!」

握手として右手を差し出す。その反応を待ってましたとばかりに、手を握り返す

「こちらこそ!誰もが敵になったり、誰もが信じられないとか、孤独なとき。私を呼んでね。いつでも何処でも、私個人の力を貸してあげるから!」

朗らかに笑い、握手を強く握りかえす

「だから・・・楽しく素敵な時を送りましょう、マスター!いつでも、いつまでもね!」

「うん!――よろしく!アルクェイド!」

共に笑う二人。・・・また一つ、カルデアの絆が紡がれ、より人理の観測は強固となるのであった・・・


・・・そして、誰にも知覚されぬ邂逅が、人知れず遂げられる


[ふむ、格式高き者が居を構えるに相応しき間よ。我が身を目の当たりにする栄誉に預かるには誂え向きな場所よな]

王の部屋の中央にて佇みし、雑じり気のない純度の宝石のような風格を漂わせる、長髪に白と青のドレスを身に纏う、その存在


「あ、あなたは・・・?」

[人は我を朱き月と呼ぶ。アレの意識の空白、異なる指針、姉妹のようなものだ。人類最新の英雄姫、エア。今後ともよろしく・・・とでも告げた方が良いか?]

ぽかんとするエアを目の当たりにし上機嫌となる、朱き月

[そら、手土産だ。その魂に相応しき装いを整えよ。その姿ならば、豪奢の装いをせねば品格が疑われよう]

そういって、朱き月はエアに服を手渡す。白と金で編み込まれた、自らの色違いのドレスを

《ほう、わざわざ貢ぎ物とは気が利いている。余程こやつが気に入ったか?真祖》

[気に入るも何も、見てきたのだからな。厄介になるなら礼は尽くす。当然の摂理であり礼儀であろう]

「ありがとうございます!えっと・・・姫アルクェイドさん!」

[ふはは、英雄姫にそう呼んでもらえるとは光栄よな。我の威風も捨てたものではないらしい。・・・どれ、姫よ。言の葉を交わすとするか。何分誰かと触れ合うのは久方ぶりでな。そなたが主導で我の無聊を慰めるがよい]

(つまり、お話聞かせてくれって事だよエア!ドレスのお礼だ、旅路やキミの答えを聞かせてあげるといい!)

「はい!喜んで!姫アルクェイドさん、旅路のお話5時間、英雄王の物語5時間、頂いてよろしいですね!」

[・・・ではその前に、身体を預けられるものと飲食物を用意せよ。立ち話ではすまなさそうな密度であるのだろう?]

「はい!今夜は、寝かせませんよ!」

そうして始まった、エアによるカルデアの旅路の軌跡と、英雄王ギルガメッシュの辿りし一生

《態々顔を見せ、対話を望むとは。千年城の監禁に飽いたか?》

[そのようなものだ。・・・後にしろ。・・・ふふ、しかし・・・]

身ぶり手振りを加え、目を輝かせながら、如何にカルデアの皆が頑張ったか、素晴らしい人々かを語り続けるエア。フォウを撫で、愛でながら。退屈させまいと話続ける

[我を前にしてこの余裕・・・こやつもまた、只者では無いか。ふふっ・・・よい。我も暫し、こやつにて楽しませてもらうとしよう]

《たわけめ。元よりそのつもりであろうが》

[無粋な輩め、こやつの無垢さと純真さを分けてもらってはどうだ?]

《ハッ、エアが我の模倣ができぬように、我がエアの模倣などできるものか。こやつの在り方は、こやつだけのものよ》

[・・・交わらぬ個が、調和する一となるか。・・・ふふ、退屈はせぬようで、何よりであるな――]

二人の姫は互いの会話を楽しみ、互いの立場の違いを楽しみ、団欒を共に過ごし続けた――

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