――霊脈を設置した地点にて、ヴィマーナを着陸させる
「フォウ!(足元にお気をつけて、王妃さま)」
「ありがとう、素敵なお方。ふふっ、綺麗な毛並みね?あなた!」
マリーと呼ばれる方は、所作がひとつひとつ可憐で、気品に溢れている。やんごとなき身分な方なのは見てとれた
「どこの英霊かは見えたが……ややこしくなるな、マリー」
『お、オルガという方で呼んでくれればいいわ』
「うむ、白き華にカルデアの希望の華――彩り深くなってきたな、我の旅路も」
『希望の華―』
「間違いではあるまい。カルデアを細身で支える女、大なり小なりに貴様を励みにしている者達がいる。希望の天文台にて衆目を集め輝く在り方――紛れもなく華であろう?ま、我の好みとはちと外れるがな」
希望の華……うん。自分もぴったりだと思う。けして散ることのない華、所長とカルデアに相応しい
『あ、ありがとうございます……』
声音に嫌悪は見られない。どうやら気に入ってくれたみたいだ
「ま、我には迎えを待つ后がいる。うつつを抜かすわけにはいくまい。ははは」
――最後の言葉がなければ、素敵な話だったのになぁ
これは、召喚に挑むのも遠くはなさそうだ
「あるいは英雄である方のマリーとそうではないマリーでよいか?」
『め、面倒ですのでオルガでお願いします』
「……散るなよ?」
『散りません!』
~
「では、改めまして――私はサーヴァント、真名はマリー・アントワネット。マスターのいないふらふらサーヴァントです。どんな人間かは、あなた方の目と耳でしっかり吟味していただければ幸いです」
「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。僕も右に同じ。召喚された自覚も、自分が英雄である自覚も薄い。そりゃあ学校の音楽室に肖像画があるのが当たり前くらいな偉大な人だとは思うが、それでも数多いる芸術家の一人にすぎないというのに」
『マリー・アントワネットにモーツァルト……!凄い!!フランスに咲いた可憐な華、栄光と悲運に彩られた王家の象徴と世界有数の天才作家にして演奏家!フランスにこの人ありと謳われる時代の象徴と会えるなんて!』
マリー・アントワネット。民を愛し、祝福と安寧を願った高貴なりし王妃
民を愛しながらも、時代の激動に翻弄され、革命の後ギロチンへと送られた悲運と悲劇の華
「あぁ、それなら我も知っているぞ。パンがなければおやつを食べればいいじゃない――は有名よな。全く同感だからな」
『当時の栄華と贅沢を極めた文化と人柄を表した名言と名高いよね!僕も好きさ!』
「ごめんなさい、それは私が言った言葉ではないの。どうしてもそんな覚えはなくて――」
『うそ!?』
「真かッ!?おのれ歴史家め!赤っ恥ではないか!」
「キュー、フォウ!(千里眼バカは放っておいて……マリー・アントワネットといえばバストサイズだね。見つかったドレスから計算したらなんと109センチもあったらしいんだ!凄いよね、その時代のマリーにも是非会いたかったな)」
――天真爛漫で、素敵な雰囲気だ。こういった快活な子は、一緒にいて楽しい
「音楽家ってキャスターなんだ?」
「僕は魔術を嗜んでいてね。ま、悪魔を信奉したわけではなくて、奏でる音に興味があっただけだけど」
『嘘でしょう……?そんな理由で悪魔と?』
「芸術家とはそんなものだ。己の才を満たすためにおおよそ考えられぬ事を為す」
『早い話が変人なんだね、知ってる』
「うーん!マリーとはうってかわった野郎共のこの歯に衣着せぬ物言い大好きだ!一曲プレゼントしよう、下痢がとまらなくなるヤツを!」
『止めてくれ!存在証明ができなくなったら大変だ!』
「これだから技術に傾倒した連中は……どこぞの童話作家も反骨心に溢れていたな。フッ、語り終われば首をもっていけとは気骨に溢れていたな。話はそれなりだったか」
――下痢が止まらなくなる曲とは一体……聞いては見たいが、トイレにこもる英雄王に幻滅したくないのでリクエストはやめておく
「私はマシュ・キリエライト、デミ・サーヴァントです。マスターはこちら、藤丸リッカです」
「マスター、藤丸リッカです!チーッス!」
――物凄い砕けた挨拶をするマスター。フレンドリーだな……自分と器にはできない気安さだ
「まぁ!素敵な挨拶ねチーッス!シクヨロ!……うぅん、違うかしら?」
「もっと媚びよ」
「甘えるのね!アマデウス、チーッス!」
「チーッス!いいねマリー、最高だ!これからもそれで頼む!百年の恋も一気に醒めそうだ!」
「ギル、チーッス!」
「ははは、品格を下げるぞ。その挨拶は禁止だ」
「そんなー」
『マリー、いやオルガもこんなに素直なら苦労しなかっただろうなぁ』
『何か言った?』
『いや何も』
「そら、田舎娘も挨拶せぬか」
「……ジャンヌ・ダルクです。よろしくおねがいします」
どこか、ジャンヌの口調は暗い。どうしたのだろうか
「えぇ、聞き及んでいます。ジャンヌ・ダルク、オルレアンを救い戦った旗の聖女」
「私は、聖女ではありません。――己の道に積み上げられた犠牲を省みなかった、……恋も知らず、旗を振って筋力をつけただけの田舎娘です」
ちらり、とジャンヌがこちらを見やる
「――ん?何か我に言いたいことがあるのか?」
「なんでもありません!」
「何だ、煮えきらぬ女よ。即決と突撃が貴様の美徳であろう?途中停止などらしくもない。それだから魔女めに学で先を越されるのだ」
「もう、あなたと言う人は――!」
「ははは、貴様は弄り甲斐がある。よいオーディエンスだ」
「知りません!」
「ふふふ、仲良しなのね。……ねぇ、貴方が聖女でないのなら、私はあなたをジャンヌと呼んでいいかしら?」
「え?」
「あなたがただのジャンヌであるのなら、私もただのマリーとして振る舞いたいの!私のことも、マリーと呼んでくださらない?……あ、オルガマリーちゃん、紛らわしくてごめんなさいね?」
『いいえ、貴方は英雄、私達人間に気を使う必要はありません、マリーさん』
「マリーさんですって!」
『す、すみません!』
「いいえ、いいえ!マリーさん……!なんて素敵な響き!是非そう呼んでいただきたいわ!マリーは貴方、マリーさんは私!解りやすいと思わない?」
喜びを露に跳び跳ねるマリー。なるほど、これは確かに民の華たるのも納得だ
「君は人を褒める事しかしないな。悪い癖だ、人に勘違いされてばかりだろう?」
「む、解ってます!欠点を上げればよいのでしょう!?下ネタ好き!人間のクズ!一次元倒錯者!そんなに音楽が好きなら楽譜になったらどう!?」
「……うーん。君に言われると込み上げるものがあるなぁ」
『王妃!そのまま王様にも言ってやってください!』
「豪華、浪費家、人でなし!その紅い瞳に睨まれたら震え上がってしまいそう!あなた、友達が少ないのではなくて!?」
「ふははは!良いぞ、許す!事実であるからな!だがロマン貴様には後で話がある」
『ひぃ!?リッカ君、令呪は残っているかい!?止めてね!?』
「あははは」
『目が笑ってない――!!くそぅ、僕もここまでか!』
「さて、改めて我の名乗りに預かる栄誉をやろう!我の名は英雄王ギルガメッシュ!始まりにして絶対の王!クラスはゴージャスな至高の王よ!」
「まぁ、ゴージャス――!」
――初めての死線を潜り抜けた一行、その気の緩みもあるのか、弾み続ける会話
――真面目な話はおいておこう。辛いばかりが旅ではない
――人とふれあうのも、旅の醍醐味なのだから
辛いばかりが、旅ではないのです
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