人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「お待たせ!ハロウィンイベントよ。しっかり楽しんでね!」



「・・・イベントかぁ・・・最近暇だし、ちょっとくらい参加してもばれないわよね!うん、バレないバレない!じゃあそんな訳で、レッツゴー!」


ハロウィンイベント!第二第三のエリチャンに震えよ
ハロウィン・セレナーデ・招待状


夜も深まる、カルデアの一日。今日はいつもと違う夜。薄暗く照明が用意され、辺りは魔術師サーヴァント達の計らいにより浮遊するカボチャや霊が徘徊している

 

 

「はいはーい、仮装服はこちらよ。全員分、全員分あるから慌てないように!」

 

「小道具はこちらだ。あまり押し掛けるな。数には余裕をつけている」

 

サーヴァント、職員分け隔てなく、オーダーメイドにて配られる仮装の数々。それらに身を包み、人々は祭りの熱に身体を焼く

 

 

そう。秋も深まり、冬に移り行くこの時期に行う行事と言えば決まっている。ケルトの祭りに起源を興す、日本的には仮装して菓子をせびるお祭り・・・

 

 

「「「「トリックオアトリート!ハッピーハロウィン!」」」」

 

 

カボチャとお菓子のお祭り、ハロウィンである。子供サーヴァントを筆頭に、一同は数日に渡る催しを楽しみ、お菓子を巡りカルデアを周回しつづける

 

「フェルディアおじさん。おかしくれないと、かいたいするよ」

 

「うむうむ、持っていけ!君に言われると洒落にならないな!肛門は勘弁してほしい!」

 

「ロイグにいさま!お菓子がほしいのだわ!」

 

「・・・袋ごと持っていけ」

 

「ありが、とう」

 

「ババ様!お菓子下さい!」

 

「欲しくば奪うがよい。このスカサハ、容赦せん!」

 

「よっしゃ、行くぜコンラ!根こそぎ掻っ払ってやるぜ!」

 

「はい、お父様!」

 

「な、待て。ここはお前の出る幕では・・・!」

 

ケルトの面々が率先して行事を進行する。フェルディアはジャック相手に冷や汗をかき、ロイグはしっかり封を結び、クー・フーリン親子とスカサハはお菓子を巡り戦いを始める

 

「んん・・・祭りの騒ぎに乗れず、淋しい想いをしている女はおらんかな?この俺が、酒のひとつも合判してやるのだが・・・」

 

挙動不審げに辺りを眺め、警備と巡回を続けるフェルグス

 

そもそもこのハロウィンはケルトのものであり、れっきとしたお祭りなのだが。多様性と無信心さに定評のある日本の認識は大抵仮装パーティーしてお菓子をあげる催し以上は無いだろう。江戸っ子は楽しければそれでよいのだから

 

「まぁ、よく出来ておりますね。ふふっ」

 

「外国の祭り・・・ロックじゃねぇか・・・!」

 

オレンジ色の外灯が掲げられ、頭がカボチャな霊たちがふよふよ浮かぶ。そんな色んな浮かれた遊びに、我等がカルデアメンバーズも例外なくその熱狂を享受している。一同は今日も今日とて管制室に集められ、ブリーフィングを行っているのだ

 

 

 

「集まったわね。では、ブリーフィングを始めるわ」

 

オルガマリーが規律正しく会話の口火を切る。その格好は色々折衷案が見られ、スーツ姿に魔女のマントや帽子を被ると言う、紳士魔女といった風貌だ

 

「所長、実によくお似合いです!私は、こういった催しははじめてで・・・」

 

マシュは、『通常時は』正装のドレスだ。白さと花飾りが、清楚さと可憐さを表すよいアクセントとなり、マシュ自身の美しさとあどけなさを引き立たせ、見るものをぐっと引き付ける

 

「似合ってる似合ってる。やっぱり元がいいと素敵になるよねぇ。かくいう僕も頑張ってるんだけどさ!」

 

髪をオールバックにし、豪奢にて風格あるスーツに身を纏い、伯爵然とした装いにて新生せしイケメンロマン。普段の彼とはかけ離れた魅力と風貌に、目にした者は口を揃えて「どちら様ですか?」と呟いたと言う

 

「そんなにイメージ違うかなぁ・・・僕、そんなにヘタレのイメージが強いのかなぁ・・・」

 

「愛らしいという事でーす♥がおー♥」

 

伯爵婦人としてロマンの傍に侍るはシバにゃん。これまた豪奢なるドレスに身を装い、伯爵の傍に侍る美しき褐色の婦人として注目を集める。ヒコヒコ動くケモミミも注目を集める

 

「うんうん。やはり皆極上の素材だからねぇ。だが、そんな中で輝いてしまうのもまた、天才と言うものなんだろう!」

 

大魔法使いとしてのコスチュームを着こなすダ・ヴィンチちゃん。月夜に飛び立つウイッチの元締め。偉大なる賢者としての側面を持つ魔法使いの中の魔法使い・・・といったコンセプトである。帽子もマントも、とても大きいのはその為だ

 

「・・・リッカはどうしたのかしら?」

 

外套がかけられ隠されている向こうにいるであろうギルはいるものとして・・・リッカの不在にいち早く気付くオルガマリー

 

「先輩はまだ着付け中なのでしょうか。入念な打ち合わせが予想されます。先輩ですから」

 

「何で来るんだろう?ある意味予測できないよねぇ・・・」

 

「案外度肝を抜く格好で来るかもだ。ああいうタイプは化けるんだぜ?」

 

そんな思い思いの所感を告げていくと・・・

 

「お待たせ~!いやぁ沢山あるなか今日は何を着ようか迷っちゃった!」

 

袖を掴みながら、リッカがエントリーする。その姿に、一同は目を見開く

 

「馬子にも衣装!どうどう?じゃんぬに着付けて貰ったんだけど!」

 

そのリッカの姿は、『格好よさ』と『美しさ』と『禍々しさ』が同居したバトルドレスであった。例えるなら悪の女幹部。例えるなら強敵なるライバルの黒騎士。例えるならおぞましき龍のヒトガタ

 

肩と胸元をざっくりと見せた上半身に、活動を阻害しない下半身のドレス。そこに、漆黒の龍の意匠を取り入れたアンクレットやブレスレット、胸当てやブラックチェーンなどを取り入れた威圧的かつ妖艶なその姿。鞭か剣が似合う戦闘衣装なのだが、リッカへの完璧な化粧と着立てにより、しっかりと高貴なイメージを、リッカのころころ変わる愛らしさと朗らかな表情により、絶妙にアクセントが添えられ、一秒前のリッカとは違う印象すら受ける多彩なる、まさに千変万化なイメージとなっているのだ

 

「エスカドラっぽくお願い!って頼んだらじゃんぬとカーミラさんとスズカとメディアさんとヴラドさんが一晩でやってくれました!」

 

姫を守護する漆黒の姫騎士なコンセプトを与えられ作り上げられた邪龍姫騎士リッカ。敵兵の恐怖の象徴になりそうな装いを手に入れやってきたその姿に、一同は目を見開く

 

「カッコいいです先輩!でもなんというか、どうしても美しさだけは追求できないんですね!」

 

「言うじゃんマシュ!そんな清楚ぶってないでそのマシュマロデンジャラスを解放しなさいよ!勿体ないでしょ!」

 

「いやぁカッコいい!僕たち伯爵一家を守護せし、代々受け継がれてきた騎士の家系みたいなカッコよさが抜群だ!」

 

「くっころしたいなーとか言ったら情け容赦なく殺す側だと言われて凹みました。ところでどちら様ですか?」

 

「ひ ど い !」

 

「うんうん。前線で私達を護っておくれよ~?まぁ君だけでなんとかなりそうだけどね!」

 

「任せて!瞬きの内に皆殺しだから!」

 

「うぅん、売れます!この美男美女の集い、是非とも写真に!」

 

「記念写真は後で。似合っているわリッカ。・・・お互い、真っ当な女子とは言えないわね」

 

「そだね!あ、マリーは魔法教授?」

 

「そんなところよ」

 

仮装の出来映えに互いに意見交換が弾む一同。そんな中・・・

 

「集まったようだな。ならば良い!この愉快にて下らぬ催しにほだされた馬鹿めの誅罰に向かおうではないか!」

 

一同の目線が玉座に注がれる。高らかに幕が上がる。そこにいたのは黄金の鎧、漆黒のマント。そして、獅子の仮面にカボチャクッション

 

 

「我こそは、ウルクに伝わりし獅子の英雄!ラマッス仮面よ!ふはははは!これ程我に相応しき仮装もあるまい!」

 

王がマントを翻し現れる。その偉容と風格は紛れもなくギルガメッシュそのものだ。男性用としてのラマッス仮面である

 

「ラマッス仮面!まさかカルデアにまで現れるなんて!」

 

「ギルも、お祭りには白熱するタイプだものね・・・」

 

テンションが上がるリッカ、苦笑いするマリー

 

――似合っています!ゴージャスです!さいっこうです!一度着て貰いたかったのです!英雄王のラマッス仮面っ!

 

傍で漂い、力の限り拍手するはエア。実はこれはオーダーメイドなのだ。騎士王とフォウ、友人メンバーに声をかけ、徹夜で尺寸と小道具を作り上げた、ギルガメッシュ専用ラマッス仮面である

 

(まさかまじに着るとは。あえて聞こう、感想は?)

 

フォウの笑いに、また笑いにて返す

 

《存外に悪くない。身分を隠すにはうってつけよ。ラマッスゴージャスとして振る舞うもまた一興。一夜の夢としては上等だ》

 

――気に入っていただけて、何よりです!あぁ・・・写真!写真を撮らせていただいて構いませんか!

 

《許す。あらゆる角度から撮るが良い!》

 

――わっふぅ!フォウ!肩に乗って!はい、チーズ!

 

夢中になって写真を撮りまくるエアを、微笑ましく見守るフォウ

 

(ラマッス仮面、本当に好きなんだねぇ・・・)

 

――大好き!ウルクを駆け抜けたはじめての衣装だから!

 

《そうはしゃがれるのなら、我も似合わぬ仮装などした甲斐があったというもの。エアやマリアの献上を無下にするわけにはいかぬからな》

 

一同がいよいよ集まり、仮装戦隊カルデアーズが始動する。その真意は、一枚の招待状にあった

 

「枕元に一枚の招待状が置いてあった。我は察し開けすらしなかったが・・・マスター、貴様の名が書き記されていた」

 

二本指でつまみ、投げ渡すラマッス仮面。邪姫騎士リッカが開き、中を確認する

 

「私にも、私にも見せてください先輩」

 

ひょこひょことリッカに近付き覗き込む。そこには――

 

 

『ハロウィンのお誘い この度監獄城チェイテがリニューアル!金星の恵みをたっぷり受けたカボチャと料理が貴女を歓待!愉快で素敵で痛快な一時を、一緒に過ごしませんか?クライマックスには歌姫によるとびきりのセレナーデ。感動と喝采を呼ぶ感動的なセレナーデ。見るもの全てを感動に叩き込む興奮のセレナーデが貴女を待っています!大切なお祭りに、力を抜いてデラックス!トリックオアトーチャーな一時を、アナタに!――来てね?』

 

と言ったいじらしく、古風で丁寧な字体で、招待の旨が書き上げられている

 

「チェイテ城・・・セレナーデ・・・一体、何ザベート・バートリーなんだ・・・」

 

「我は帰るぞ」

 

「あっ!ギルが逃げる!マシュ確保!!」

 

「気持ちは解ります!解りますが後退は王の矜持に反しますよね!?そうですよね!?」

 

「えぇい離せ!離さぬか!オチなど読むまでもない!あのデミドラゴンのなす事など理路整然の欠片もないと月の頃より決まっているのだ!レガリアを食らうなど阿呆にも程があるわたわけめ!」

 

「いや、でもそれがファインプレーになったりするわけだし・・・これは気付きたくなかった真実だなぁ・・・」

 

「霊子は招待状に付与されているから、行くつもりなら即座にレイシフトできるけれど・・・マシュ、リッカ。どうするのかしら?私的には・・・行ってあげてほしいのだけど」

 

「所長!?」

 

「解る解る。パーティーやって誰も来ないで、片付けしてると死にたくなるからねぇ・・・」

 

「またリッカ様がとおーくを見ておられますぅ・・・心の傷は、たまに疼き出すのですねぇ・・・」

 

――王!行きましょう!ワタシ、王とフォウとのイベント、全力で楽しみたいです!

 

《ぬ、ぐっ――!外堀どころか本丸を落とされるとは・・・!――チィ、せめて耳栓は二つほど見繕わねばならんか・・・》

 

思い思いの所感を告げる。エアの『ギルとフォウ、皆のイベントは楽しみたい』というリクエストという名の死刑宣告に、王として覚悟を決め、受けて立つ

 

(ボクも同じ気持ちさ。・・・せめてサマービーチが良かったけれど・・・)

 

――フォウも後で仮装しようね!ウーフォ、とっても可愛いから!

 

(そ、そうかい?いやぁ、嬉しいなぁ!エアの隣に立てるくらいのデザインはしたけどね!)

 

「解った解った・・・ではレイシフト許可を出す。チェイテ城とやらに顔を出してやろうではないか」

 

悲痛な面持ちで指示を促す英雄王。マリー、ロマン、ダ・ヴィンチ、シバにゃんが位置につく

 

「ハロウィンですね、先輩!いっぱいお菓子食べましょうね!」

 

「そだねマシュ。お腹に脂肪が付きすぎないようにね。大きくするならお胸にしてね?」

 

「せ、先輩に言われなくても大丈夫です!先輩だって、何をしても極熱筋肉じゃないですか!女の子は筋肉はつけないものなのですよ!」

 

「私は女の子じゃないと言ったか!ほざいたななすびぃ!こうしてやる!口の悪い後輩はこうしてやる!」

 

「いふぁいいふぁいれふふぇんふぁい!ほーりょふふぁんふぁいれふ!」

 

「そんな事言って身体は喜んでるんじゃないのぉ?おぉ、すけべなすびぃ・・・」

 

「早く行きなさい」

 

後ろから蹴り出し、マシュとリッカをコフィンに押し込む

 

「「わぁ~!?」」

 

「我は単独顕現にて先行する。後からついてくるがよい」

 

「御愁傷様、ギル」

 

「・・・レイシフトできる事をこれほど恨めしく思った日はないな・・・」

 

――さぁ!チェイテ、ハロウィンの旅へ!ごー!ラマッス仮面!

 

一同は挑む。確実に波乱の予感が巻きおこる、チェイテの城へ――

 

其処には、何が待ち受けているのだろうか――?




チェイテ領土、森


「ふむ。見るからに陰鬱・・・でもないな」

カボチャ霊が浮き上がり、ふよふよと漂う

――わぁ!ふよふよしています!ワタシみたいに!

ふよふよに定評のあるエアが、声を上げる。ふよふよには一家言あるのだ。雲や風船とか大好きである

「先行したのだ、地理の把握でも・・・」

「あ、いたいた!はぁい、こんばんはー!」

・・・そこに、似つかわしくない(ふさわしい)ものがいた

「――む?」

「あなたがギルガメッシュよね?サーヴァントの!お会いできちゃって感激!あのお城に行きたいの?私も行きたいの!一緒に行かない?」

朗らかに、元気よく、飴を舐める20歳程の女性。白の上着、紫のタイトスカート、クリーム色の髪、真紅の瞳

――あなたは・・・?

「あ、自己紹介がまだでした~。私ってばそそっかし~!」

けらけらと笑うその女性は、その名を告げる

「私、アルクェイドって言うの。月夜の美味しい匂いに釣られてやって来ちゃいました!一時の晩の間、よろしくね~!」

「――星の触角、真祖の類いか」 

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