人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「アタランテ」


「!?」


「此処は、私に任せろ」

「ヘラクレス・・・!?」

「これ以上、ギリシャの風評を地に貶める訳にはいかん」

「大分手遅れじゃね?」

「黙れアキレウス!それでも、足掻かずにはいられぬのだ――ッ!!」


マイルーム

「あぁ、リッカ。今、母が行きますからね・・・!誅罰、執行の為に――!」


女神と友達

テクスチャ上書きにより、顕現したアルテミス神殿・・・

 

 

『そこに書き換えられた景色は偽物じゃない!アルテミスが魔力で編み出した、本物の神殿のものだ!』

 

 

ロマンの言う通り。この景色は、偽りなれど偽りにあらず。団子に込められた思いと願いが作り出した・・・アルテミスの、アルテミスによる、リッカとダーリンの為のお月見会場

 

 

そう、神殿で楽しく素敵にお月見しよう!と言うためだけに編み込まれた、アルテミス渾身の会場セッティングなのである・・・!

 

「月、おっきぃ・・・」

 

見上げる月など比べ物にならない。目の前に圧倒するかのように浮かび上がる、巨大にして壮麗な月。吹き抜けの神殿から直接垣間見える、幻想的にして華麗なその星の奇跡。自然では目の当たりにできない・・・神と、そのお気に入りにしか見せない女神とっておきの景色なのだ

 

「でしょでしょ!おっきいでしょ!綺麗でしょ!最高でしょ!?」

 

――灯りが無いのに、こんなに明るいなんて・・・!

 

(たまげたなぁ・・・これをするためだけに団子をかっぱらったのか・・・)

 

圧倒される二人。無理もない。ある意味これは現実すらねじ曲げた光景であり景色でもある。アルテミスがテクスチャをいじり、『とっても素敵なお月様』を見せるために作り上げたのだから

 

徹頭徹尾、これはリッカの為なのである。悪意など、敵意など微塵もない。大切にすべき友の為の、女神の願い

 

「どうどうリッカ!?『世界を救ったご褒美』には、まだまだ足りないけど、私なりに頑張ってみたの!見て!あんなに月が綺麗なの!まぁ月は私なんだけど!きゃー♥言っちゃった!ダーリン私言っちゃったー♥!」

 

「待て待て、しっかり説明しろ!何度も言っただろうが!自分のノリに周りを当たり前のように巻き込むなって!!」

 

ぷぎゅるるされながら弄られるオリオンに促され、我に返るアルテミス

 

「あ、そうだったそうだった!んーと、えーとね・・・」

 

思い返すアルテミス。その企みの全容とは・・・

 

 

 

えっとね、リッカは世界を救ったでしょ?私はそれがとっても嬉しかったの!

 

やったぁ!私とダーリンの星をリッカが救ってくれたわ!嬉しい!素敵!流石私の友達!大好き!リッカ大好き!

 

で、思い出したの。リッカははじめて、私が神として生きて、はじめて私の幸せを祈ってくれた人間で、私の友達だから、私もリッカに幸せをうんとうんとあげなきゃって!だからね、それでね

 

月見をしなきゃと思ったの!(?)

 

月見をしながら、私は勝利の女神になりたいと思ったの!リッカの!これからも、ずっとずっと!

 

その契りをするために、私は頑張ろうと決めて、リッカには試練を与えなきゃと思ったから、私はカルデアの食糧庫を襲撃したのでした!

 

でも、王様の防衛は完璧そのもので、ダーリンが100回も黒焦げになってしまって、上手くいかなくて・・・

 

どうしよ~!と思った私は、なんとか力を振り絞って、御団子をフランスにレイシフトさせたの!

 

本来月見は、私、アルテミスに捧げられる供物。神に捧げられる生け贄。その御団子に込められた思いと願いが強ければ強いほど凄いことができるの!

 

だからね、だからね。『お月見したい!』と言ったサーヴァントたちに、あえて御団子を渡したの!月の光で、ちょっぴり狂わせて!『憎悪』と『情熱』で作られた御団子を、皆の願いと想いで、『願い』とするために!

 

同時にこれは、『試練』でもあったの!私の神殿は、試練を乗り越えた人しか来れないから!団子を奪った悪い人達をやっつける、カッコいいリッカになってもらうために!私の神殿に招くために、頑張ってもらったの!リッカお疲れ様!カッコよかったよ!ダーリンと同じくらい!

 

でもでも、アクシデントも生まれちゃって・・・なんと!文明の破壊者!一万年向こうの尖兵アルテラまで来ちゃったの!

 

聞いてなーい!知らなーい!呼んでなーい!でも、リッカが傍にいない私じゃ勝てるかどうか分からないから、うん!リッカに倒してもらおうって!

 

私の目論み通り、リッカは皆を倒して、アルテラまで辿り着いてくれたわ!そこで、私の企みのもう一つが為し遂げられるの!

 

ピンチのリッカに、力を授ける『勝利の女神』として、カッコいいリッカをもっとカッコよくするために、私の祝福の技を覚えてもらいました~!拍手~!

 

企みは大成功!リッカは私の祝福で、しっかり敵をやっつけて!私はリッカの勝利の女神になって!そしてリッカは『私が認める勇者』となったのでした~!

 

そんな勇者とその一行なら、私の神殿に足を踏み入れるに相応しいわ!ちょっと恥ずかしいけど・・・と・く・べ・つ・に♥

 

そんな訳で!御団子の力を、込められた願いを私は活用しました~!

 

美味しく作るべきという憎悪と、妥協を許さない情熱!神に捧げられるものとして、器として申し分ないその御団子!本当にありがとう!お陰で、こんな素敵な空間を作れました~!

 

ここでリッカは、今までの疲れを癒すの!旅路を振り返って私に言うの!

 

『ありがとうアルテミス。やっぱりあなたは私の勝利の女神だよ』って!ダーリン!私!リッカの三人の、素敵な素敵なお月見!名付けて!

 

『大勝利!トライスター・オツキミ作戦!』どう?どう!?解った!?解ってくれた!?私、リッカの為に色々やってみたの!

 

だって、そうしなきゃ嘘でしょう?世界を救ったのに、何の報奨も無いなんて、祝福もないなんて!神様的にありえなーい!

 

だから、私!私がリッカを幸せにするの!それが友達として当たり前よね?

 

だって、女の子は友達の為にいくらでも頑張れるものなんだもの!やってたわ!テレビで!

 

リッカ!本当にお疲れ様!人理修復おめでとー!お酒や御団子で、沢山沢山語り合おうね!

 

これが私の祝福よ!受け取ってくれた?抱きしめてくれた!?

 

リッカ大好き――――♥♥♥!!!

 

 

 

「はい!と言うわけなのでした!どうどう?皆、分かってくれた?」

 

笑顔なのは――アルテミス一人である。皆、呆然とアルテミスとオリオンを見上げているのだ

 

『だめだこいつ、早くなんとかしないと・・・』一同の心は、それのみで繋がっている。このぶっ飛んだ女神の心胆は理解できぬと、理屈であり本能で理解できたのだ

 

――あの、えっと、その・・・自分で御団子を作ってご招待する、とか、レイシフトの許可を取って御団子集めをイベントにする、とか、そもそも追加発注するとか、王に相談をする、とか・・・色々、略奪や強奪をする前に成せる手段は色々あったのでは・・・?

 

王の傍らにてふよふよ浮くエアも、今回は頭を抱えざるを得なかった。だって、これは、本当に・・・比喩や誇張抜きで『マスターと自分と、オリオン』の事しか考えられていない。配慮が足りないといったレベルではない。『眼中にすら入っていないのだ』

 

他の様々な要因、召喚されたサーヴァント、御団子、それらを心待ちにする者達を・・・微塵たりとも考慮していない。踏みにじる事を微塵も悪いと思っていない

 

突き抜けるような善意で、大騒動を巻き起こす。大切な人のために、それ以外の総てを利用する

 

『ダメよそんなの~!友情はドラマティックで、努力はストイックで、勝利はロマンティックでなきゃいけないの!皆で仲良くじゃ、神様的にありえなーい!』

 

当然のように応える。そしてエアは、理解する

 

自然の現象が人格を得た意味を。この理不尽は、この傍迷惑さ、この無遠慮はまさに自然に由来するものだ

 

――これがっ・・・神格の思考・・・!理解できないことが幸福です!ワタシの心は、キチンと人間でした!

 

あまりにもあんまりな思考、他者を無自覚に踏みにじるその行為に、言い様のない頭痛すら覚える

 

(回想が怪文書過ぎる・・・)

 

《うむ、やはり神は致命的にロクでもないな。ヘラクレスめが復讐に堕ちるも道理よ》

 

三人が閉口する中、オリオンが弁明を開始する

 

「ごめんなさいすみません本当にすみません。何がすみませんって善意で誰かの為に働いただけギリシャ時代とは比べ物にならないくらいマトモなところと、こんなふざけた物言いでもギリシャ連中じゃ大分ましな分類なところだよ!!ゼウスじゃ世界を救った女傑は私に相応しいとか言って無理矢理リッカちゃん○○○とか普通にヤるし、ポセイドンじゃ邪魔した時点でカルデア半壊とか普通にあるし、アテナやヘラやアプロディーテじゃ『アルテミスとは友達になるくせに私達の力はいらないというのか』とかいって呪ってくるからね!こんなんでも、リッカちゃんのためだけに頑張ったのは事実だから!そこだけは、そこだけはお願いいたします!あと、俺だけは助けてください!!ホントお願いいたします!!」

 

全身全霊で土下座するオリオン。女神に愛されてしまった男の熱い命乞いが熱く響き渡る

 

「ダーリン?なんで謝ってるの?私達、月見がしたいだけよ?熱いダーリンとリッカの視線が、私を射抜くの!きゃー♥!!」

 

「こいつ、私の団子を供物に使ったわけ・・・!?神ってホントクソね!!」

 

吐き捨てるじゃんぬを制止し、リッカが声をかける

 

「――アルテミス。まずは、ありがとうね。こんな綺麗なお月様、はじめて見たよ。色々、私の為に・・・」

 

まずは、お礼を。頭を下げる

 

「アルテミスを信仰して、良かった。神様と友達になれて、本当に嬉しかった。だって、それが私の生き方だから」

 

意思があれば、神様とだって仲良くなれる。それの理想の体現が、アルテミスなのだ。リッカにとって、それは永遠に変わらない

 

「何があっても、私の大切な友達なのは変わらない。本当にありがとう、アルテミス。とっても嬉しい。祝福も、この景色も。私は、絶対忘れないから」

 

必殺技で殺されかけた事も、謂れのない試練を受けた事も。何よりも、まずは、感謝を

 

・・・ゲーティアにすら、感謝を告げた・・・とある、『姫』のように

 

――リッカちゃん・・・

 

「ありがとうね、アルテミス!私も、アルテミスの事大好きだよ!」

 

「リッカ――――♥♥♥!!!」

 

文字通り飛び上がるアルテミス。喜んでもらえたことに大喜びする。そのために色々考えていたのだから。すべては、リッカの為に

 

 

・・・けれど

 

 

「――だからこそ」

 

スラリ、と『月女神の弓矢』を掲げ

 

「友達だからこそ、キチンと言わなきゃ。友達だからこそ、きっちり言ってあげなきゃ」

 

静かに、荘厳に。天空に向けて――

 

「すうっ――」

 

漆黒の弓矢を撃ち放ち、自らに落とす。装着されしは、邪悪なる龍の鎧。その形態は、決意の証

 

 

その姿こそ――人類悪の証。故に――神すらも堕ちる、堕とされし姿が故に。本物の神すら恐れず、リッカは告げる!

 

 

 

【それはそれとして御説教の御時間だよアルテミス!!人類最後のマスター権限において!!お仕置きを行使するからね!!】

 

 

友達とは、間違っていたらぶん殴ってでも教えてあげるというリッカマニュアル、リッカ思考に基づく決心が、アルテミス神殿に響き渡る――!

 

「ええ、それでこそですリッカ!甘やかすのと、歩み寄るのは違います!」

 

待っていたぜ!ダークリッカ!と言わんばかりにじゃんぬがリッカの隣に並び立つ

 

「流石は我がマスターよ。神であろうが友であろうが、過ちは糺してやらねばならぬのだからな」

 

「え!?なんで!?なんで私、怒られてるの!?」

 

本気で理解できなーいといった様子で困惑するアルテミス。そのあまりにもあんまりな混乱を王達が鋭く糾弾する

 

「横領と強奪は紛れもなき罪状であろうがたわけめ!我等の討伐すべき相手には、貴様も含まれているというだけの話よ!」

 

「そうなの!?」

 

――少なくとも、レイシフト無断使用、食糧強奪、強盗は揺るぎなく。この騒動を看過してしまえば、第二、第三の事件の再発となってしまいます。それに何よりも――王の庭にて行われた狼藉は、ワタシ達が必ず解決しなくては王の威光が翳ってしまうのです!故に、カルデアを治める王のためにも、皆が幸せそうに団欒する姿を見たいというワタシ自身の愉悦の為にも!ワタシ達は、あなた達を罰しなくてはならないのです!

 

魂の叫びが、対立を宣言する。誅罰、罪罰の在処を、此処に示す為に

 

「そんなー!姫様たちの分もあるのにー!」

 

「いいぞもっと言ってや・・・――ウワーソンナバカナー」

 

「ダーリン!?なんか棒読みなの気のせい!?」

 

 

【行くよ!!皆!!】

 

この時の為に、この瞬間の為に――今こそ、リッカは英雄達を召喚する!

 

「此度の騒動、えぇ。ほほえましきものと見守ってはおりましたが・・・リッカが苦しむのなら話は別です」

 

現れし母性の化身。娘のピンチに現れし、平安最強の神秘殺し

 

 

「誅罰、執行。大切な娘の為に、母は鬼となりましょう――!!」

 

リッカの母となるために、座にすら記憶を焼き付けたハイパーママン、源頼光が顕現する――!

 

【母上!お仕置きの仕方、教えてください!】

 

「はい、リッカ。相手を想って、心を鬼にして、しっかり折檻するのです。手心を加えてはダメですよ。お仕置きとは互いに辛いものと、刻み込むためのものなのですから」

 

 

母の暖かい言葉に、したりと頷き、引き続き召喚する

 

【続けて――来て!!】

 

更に全身が真紅に輝き――

 

「己の故郷ながら、誠に申し訳ない――この弓で、我が神々の不始末を贖おう・・・!」

 

現れしはヘラクレス。ギリシャ無双の大英雄。クラス・アーチャー。紳士にして凄烈なる子供たちの味方だ!

 

「ヘラクレス――!?待って待って、そんなに!?そんなになの――!?」

 

「述語を述べなければ伝わらんのですよアルテミス様。――神に弓引く大罪、今この時は躊躇わぬ・・・!」

 

理性と立腹にて、弓をつがえるヘラクレス。神々の復讐の為になら子供にすら弓を引く

 

逆も、また然り。子供たちの笑顔の為になら――彼は、神にすら弓を放つ事を躊躇わぬ

 

「マスターの身体的被害、魔力消費をも気にかけぬ必殺技など鬼畜の所業。カルデアで待ちわびし子供達、アタランテに――そして、あなたの友にも謝罪をさせねば収まらぬ――!!」

 

マスターのリッカへの気配りも込めて、今、ヘラクレスは奥義を放つ――!

 

【行くよ!!母上!ヘラクレス、じゃんぬ!!】

 

「えぇ、リッカ!」

 

背中合わせにて魔力を練り上げる二人。憎悪と憤怒が立ち上ぼり――

 

【うぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお――――!!!!!!】

 

身体中から魔力を引きずり出し、あえて、あえてアルテミスから授かった技を選び取り、友に向けて放つ。身を削って、身を呈して友の間違いを今糺す

 

【最後に確認!アルテミス!御団子が食べられなくて泣いてた皆の事、考えてた!?】

 

そのリッカの問い。皆が嘆き、涙していたこと

 

【一生懸命じゃんぬが作った御団子が利用された時の悲しみ、考えてた!?】

 

じゃんぬが憎悪と憤怒を込めて作った御団子を、利用された時の怒りと悲しみ

 

【何より・・・自分だけじゃなくて、皆でお月見したいと考えてた私の気持ち、考えてくれてた!?】

 

何よりも――自分だけでなく、カルデアの皆でお月見を、イベントをしたいと考えていた自分の想いを、アルテミスに問う

 

「そ、それは・・・!サーヴァントは、リッカのだし・・・!リッカが笑顔なら、皆笑顔なのかなって――」

 

【私の幸せと皆の幸せは別のものなの!!マスターと一緒に反省しようね!!行くよアルテミス!!必殺――!!!】

 

末端壊死すら厭わぬ程の魔力を引きずり出し、アルテミスに与える痛みと同じくらいの苦痛と喪失感に堪えながら、アルテミスが自分にくれた祝福を、あえて叩きつけながら――

 

「ダーリン!どうしよう!私、リッカの幸せが皆の幸せだと思ってたのに~!」

 

「あぁ・・・叱ってもらえるなんて本当幸せもんだよ、お前は」

 

半泣きのアルテミス、悟ってアルテミスから離れないオリオンに――

 

 

「『射殺す百頭(ナインライブズ)』――⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!

 

 

ギリシャ大英雄、必殺の流派が炸裂する。ドラゴンホーミングレーザー九つが飛来し、襲い来る――

 

「神を滅するもまた神。――愛娘の為に、私の神を御覧に入れましょう!」

 

剣も弓も抜かず、降臨させしは、巨大なる黄金の槍。神々しくも雄々しき、その由来を語る

 

 

「牛頭天王、東方神、帝釈天の金剛杵。すなわち聖仙骨より作られし神の槍。今こそ来たりて、あらゆる敵を撃滅せん――」

 

それを掌で制御、コントロールし、美しいアンダースローにて放つ――!

 

「『釈提垣因・金剛杵(しゃくだいかんいん・こんごうしょ)』!!!」

 

娘を害した相手には、例え味方であろうと無かろうと容赦しない。クラスの壁すら乗り越えし頼光が、今、一直線に槍を穿つ――!

 

「『吼えたてよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』――!!」

背中合わせにて、左手の剣から剣を放ち――

 

【うぉおぉおぉおぉおぉおぁああぁあぁ!!!!『爆発しちゃう!!私の想い(ディアナ・セレーネ・ノヴァ)』ァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア――――――――ッッッッッッ!!!!!!】

 

声優顔負け、ドラゴンの咆哮にすら匹敵する雄叫びと共に、全ての魔力を叩き込む、アルテミスの必殺技をアルテミスに放つ――!

 

 

「きゃ――――!?私の祝福すご――――い~~~!!!??」

 

ギリシャ最強の弓技、黄金に輝く神の槍、憤怒と怒りの炎、そして、アルテミスが授けた必殺技。炎を纏った巨大な邪龍型のエネルギー、九つのドラゴンホーミングレーザー。合計10の龍に呑み込まれていくアルテミス

 

「(悟った顔)」

 

オリオンもまた、アルテミスと運命を共にするのだった――

 

 

その驚天動地の衝撃と破壊力は、神殿を抉り飛ばし、テクスチャであった月に叩き込まれる

 

その勢いは、世界を砕く衝撃となり・・・

 

「我欲を極めるのは至極真っ当であったが・・・些か、貴様のマスターの善性を侮りすぎたな」

 

――ガッツはつけておきました。王、・・・裁定を、如何様にも

 

《うむ、でかしたぞエア。では――〆とするか》

 

四人の全力の合体技にて吹き飛び、崩壊していくテクスチャを・・・王はただ、眺め続けた・・・――




数十分後


「ひんひん・・・――はっ!?」

「あ、目が覚めた?」

吹き飛ばされ、吹っ飛んだアルテミスの傍に寄り添うリッカ

「リッカ・・・あ、私・・・」

「うん、大丈夫。私はもう、怒ってないよ」

ニカッと笑うリッカ。その笑顔に、偽りはない

「マシュマロ、そっち持ちなさい。往復で持ち帰るわよ」

「はい、じゃんぬさん!」

「まぁ・・・力持ちなのですね。私も、負けてはいられません!」

せっせと御団子を運ぶ三人のサーヴァント

そして――


「ダーリン!?ダーリンは!?」

見当たらないオリオンはと言うと・・・



「え、なんなのこの布陣。怖い!怖い!どうなっちゃうの俺ぇ!?」

天の鎖にて拘束され、回転式杭に釘付けにされるオリオン

「ハハッ!貴様に!女神を止め続けた理性ある貴様に我が褒美をやろう!!」

「おぉう!ギリシャの狩人、見事な理性であったぞ!その孤独な戦いには報わねばな!」

「――始めるか、ギルガメッシュ」

四方向に配置される太陽王、征服王、大英雄、そして――

「うむ。この褒美、貴様の理性と英断に免じて配する事を赦す!!――では行くぞ!!」


――(失神)

『エア――!!?』

「え、うそまじでそんないやははははそんな俺にはもったいな」


「T・Y・O――!!!!」

マントに手をかけ

「S・F・O――――!!!!」

腰に手を当て

「DAU――」

腰巻きに手をかけ

「AェエUゥウゥOォオォオォオ――!!!」

上半身は常に裸身な英雄王の脱いでない方――下半身が今、弾け飛ぶ――!!


「「「「キャスト・オフ――――!!!!!!」」」」


四方向から、女神を止め続けた理性の狩人(笑)に、王と大英雄の玉体拝謁の栄誉が与えられる――!


「うぎゃあァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア――――!!!!!!」

くるくる回る杭に縛られたオリオンに逃げ場はない。目が閉じられない術もかけられ、四方向から玉体が視界を蹂躙する――!


「地上にあって!!ファラオに不可能なし!!」

「これが!!我が覇道♂である!!」

「ヒッポメネスには申し訳ない事をした・・・ヘラマジふざけるな」

「とくと見よ!!これが!!カルデアの至宝の輝きである!!!」

――(失神)

『エア――!!』

「タスケテ――――ッッッッッッ!!!!!!」


全力でご褒美を堪能するオリオン。君がいなかったらアルテミスはもっと暴走していた!ありがとう!僕らのオリオン!


「ダーリン・・・楽しそう・・・」

「ね?皆といる方が、何倍も楽しいんだよ!」

リッカが御団子を取り、アルテミスの口に食べさせる

「むぐ・・・」

「だから、カルデアで皆で一緒に食べよう?皆で、一緒に。アルテミスも、オリオンも、皆で!」

「リッカ・・・」

差し出された手を見て、アルテミスは驚愕する

「手が・・・!」

リッカの手先は、壊死しかけ、炭化していた。アルテミスの技を無理して使用したため、魔力が生成に追い付かないレベルで、底をついたためだ

「どうして無理なんかしたの!こんな・・・!」

本当なら、連続して撃たなくてもよかった。アルテラを倒すために使ってくれれば、それでよかったのに、と

「だって、当たり前じゃない。自分のサーヴァントを傷付けるんだもん、自分も同じくらい傷付かなきゃ。それがマスターってものでしょ?」

それに、きっちりとこの技で。アルテミスに伝える必要があったからだ

「この技、くれた祝福・・・本当に嬉しかったから。ちょっと無理してでも、伝えたいなぁって」

「リッカ・・・!」

「ありがとう。ちょっと間違えちゃったかもだけど、アルテミスの気持ち、嬉しかった!」

泥が精製できるようになるまで、しばらくはこのままだろう。でも、リッカはそれでも笑う

「帰ろう!カルデアに!皆に謝ったあと、美味しい御団子食べようね!アルテミス!」

壊死しかけていても、押し付けの善意でも。受け入れ、感謝し、笑いながら手を差しのべる

だって、アルテミスは――友達なのだから

「リッカぁ・・・うぅ、うわぁあ~ん!!」

そんな暖かい肯定に、アルテミスは泣き出してしまう


「ごめんなさいリッカ~!そんな、そんなつもりじゃなかったの!そんなボロボロになってもらいたいなんて、月に誓って思ってないの!そんなつもりじゃなかったの~!うわぁあ~ん!」

「よしよし、大丈夫大丈夫・・・オリオンぐらい大丈夫・・・」

「大丈夫じゃね――――――!!!!!!」

「ごめんなさい、ごめんなさいリッカ!私が悪かったの~!傷つけてごめんなさい!ボロボロにしちゃって、ごめんなさいぃ~!うわぁあ~ん!」

心の底から悔やみ、涙を流すアルテミス。良くも悪くもリッカの為に動いていたため、リッカが傷付くことなど微塵も望んでいないがために

「よしよし・・・頑張ったね、よく頑張ったね・・・おっぱいすっごいおっきいね・・・」

抱きしめあいながら、ひんひん泣きわめくアルテミスを優しく撫でるリッカ

「じゃ、帰ろっか。お仕置きは終わったから、後はしっかり謝りにいこう?」

「はい・・・リッカの言うこと、ちゃんと聞きます・・・」

「よろしい!じゃあ行こう!いつだって友達は、傍にいるものだから!」

「うん!やっぱり私、ダーリンについてきてよかった~!私、リッカのことぜーったい忘れないからね!ぜーったい!!」

手を繋いで立ち上がる二人

そんな皆を、月が、優しく照らす――

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