「メシ食ってただけじゃろお前」
「素晴らしき戦いでした。これからの未来に、幸が在らんことを――」
「メシ食ってただけじゃろお前」
『・・・アルトリア、その・・・』
『・・・・・・・・・・・・』
『気を、落とさずに・・・』
織田信長の悪い心と、その怨念に誘われた無数の創作怨念を解放し、聖杯を受け取りし一行
【うむ!労いも渡した、共に戦場を駆け抜けた。思い残すことは粗方無くなったのぅ!ならば・・・】
リッカが確かに受け取った事を確認すると同時に、魔神セイバーの身体から黄金の粒子が立ち上る
――役目を終え、消え去る予兆。退去の時間がやって来たのだ
【うむ!後はfateの恒例コンセプト!別れの物語の様式に則って消え去る他ないよネ!】
「ノッブ・・・貴女・・・消えちゃうの?」
【是非もなし。その聖杯で召喚されていたからのぅ。ま、一旦消えねばならんじゃろ、英雄的に考えて】
「・・・そっかぁ。・・・ノッブ、ありがとね」
別れを告げながらも、リッカ達の顔に不満は無い。・・・無念の別れではなく、互いに生きて、笑顔で別れる
その喜びと幸運を、何よりも知っているからこそ。その別れは、決して悲しく辛いものでは無いからだ
「楽しかったよ。ぐだぐだだったけど、本当に楽しかった。・・・こんな肩の力が抜けた戦い、初めてだったよ」
【そうじゃろそうじゃろ?人間はなるようにしかならん。明日には明日の風が吹く。どんな人生だろうと、楽しみを忘れてはいかんのだ。忘れるでないぞ藤丸リッカ】
愉快げに、楽しげに。最後まで、ノッブはリッカを気にかける
【何でも試しにやってみるのじゃ!そうすれば何かしら得にもなるし、世の中の事は大抵刺激的になるようできておるからのぅ!そなたはそなたの道を行くのじゃ!それがそなたの天下布武!己だけの乱世を、生きて生きて生き抜くのじゃぞ!】
「うん!ありがとうノッブ!」
【マシュマロサーヴァント!けして挫けるでないぞ!例え新たに産み出されたバトルスタイルが、いっさいシールダーのコンセプトに合ってなかったとしても!正式な強化を信じ堪え忍ぶのじゃ!】
マシュにも、ノッブなりの激励を贈る
【そなたのストーカーにもめげずに頑張ってほしい!善を、己の願いを貫きたかったなら強くなる事じゃ!力なき志は折られ、挫かれるが世の常じゃからのぅ!ま、是非もないよネ!】
「は、はい!ストーカーなどは良く分かりませんが・・・、このマシュ・キリエライト、何があろうともカルデアの守護する盾は手放しません!」
【それでよい。揺るぎなく進むのじゃ、止まるでないぞ・・・】
揺るぎなく頷くその決意を見届ける。なんだかんだでノッブは面倒見がよいのだ
「力なき志は挫かれる。中々に真理を衝いた言葉よ。天下人まであと一歩とした人間は言うことが違うな?」
愉しげに笑うもう一人の存在、英雄王もノッブの別れに声をかける
【んー、まぁ強いだけでもダメだとわしは思うのぅ。強さに終わりはなく、覇道に終わりはない。泰平の世に強さは留まらず、野心は常に野望を求むる。サルとか大分やらかしたらしいしの。マジ諸行無常】
「――ふむ。ならば戦国の風雲児よ、一つ問おう」
【ん?】
覇道を歩み、乱世を駆け抜けた武将たる信長に、ソレを問う
「『残るべきは、強き世界か?』」
と。その問いを投げ掛ける。キョトンとした後、さらに高らかに笑う
【うははははは!そんなわけなかろう!強さは更なる強さに踏みにじられる!この世に永劫残る強さは無し!サルも狸も昨今にまで治世を残せなんだ事より分かるじゃろ?『強いだけの世界なんぞに、先は無いのじゃ』!】
「であれば、残るべき世界とは如何なるものか?」
【フッ、自明の理にして単純明快!この世に残るべきはただ一つ!】
退去が始まるなか、虚無感や喪失感を消し飛ばすように信長は謳う
【『己が生きたい世界』に決まっていよう!誰に何を言われようが、どんなやっかみを受けようが!うるせぇ死ね!我等は生きるぞこの野郎と開き直って笑ってやるのじゃ!例えソレが、誰かの屍を踏み越える事になろうとも!】
是非も無し!と信長は断言する
【そなたの道筋に勝る正道無し!自分の進む道を後悔無く進むことこそが!悔いない人生を贈るに不可欠な志なのじゃ!努忘れるな!皆のもの!辛くなったなら、思い出せ!何度でも立ち上がるのじゃ!
「ノッブ・・・」
――己が、生きたい世界・・・
《何れ向き合う難題、その指標となろう。・・・お前の愉悦を支える言葉だ。忘れるなよ、エア》
――はい!ありがとうございます、信長様!
退去が完遂する。ひとつの別れが、ここに執り行われる
【むぅ、潮時か。是非も無し!わしの褒美、大事にするんじゃぞ!】
「ありがとうノッブ!フォーエバーノッブ!CD出たら買うね!」
「ありがとうございます、信長さん!是非また、カルデアに遊びに来てくださいね!」
「此度の頭の緩さ、けして悪いものではなかったぞ。酒に酔って見る白昼夢がごとき騒動、まこと小気味よきものであった」
思い思いに別れを告げ――
「沖田は置いてけよ。――じゃあな。第六天魔王」
【うむ!あらゆるものへのリスペクトを忘れるでないぞ!ではさらば!人間五十年、下天の内をくらぶれば――イベ幻の如くなり!!うははははははははぁ――!!!】
戦国の魔王、織田信長は・・・此処に消滅と相成ったのであった――
「へぶ!!」
信長が退去した事により、魔神セイバーの融合が解け、沖田が一人残される
「うぅ・・・身体を使うだけ使って捨てていくなんて・・・酷すぎますよノッブ・・・!この人でなしぃ!」
「そら、帰るぞ」
土方が踵を返し、カルデアのレイシフトへと移る
「え、ちょっと待ってください!まだ体がはんどうで うごけない のですが!?」
「気合いで何とかしろ」
「土方さーん!!マスター!肩貸してくださーい!まーすーたーぁー!」
「沖田さんは病弱だから、是非もないよネ!」
「護衛はお任せください!マシュっと御守りいたします!」
気の抜けたゆるいやりとりが、何時ものように行われる
『お疲れ様。ぐだぐだして肩の力も抜けただろうし、帰っておいで。僕たちのカルデアへ!』
『鈴鹿サーキット・・・一人だけのレジャーランドに価値はあるのかしら・・・』
『所長?』
『あ、ごめんなさい何でもないの。お疲れ様。最後まで気を抜かずに帰ってきなさい。暖かい平穏が待っているわよ』
後方待機のサポーターも、しっかりと役目を果たし迎え入れる
(ボクたちも帰ろう。メリハリをつけなきゃ、やってられないからね)
――うん!・・・ちびノブ、カルデアにまた来てくれるかな・・・
《縁があれば容易かろう。――フッ、己が生きるべき世界とは良く言ったもの。それならば、けして道半ばは赦されぬ。全ての剪定を終えるまで、な》
王が空を見上げ、どこか真剣に目を細める
――ギル?
《忘れるな、エア。――お前の、お前達の為し遂げた偉業と成果は、何者にも汚されぬ、お前達以外の何者にも到達できぬ結末だ》
心配げに覗き込むエアの頭を、優しく撫でる
《故に。雑多の非難や雑種の雑音も我が祓おう。お前の辿り着いた研鑽の果て。それもまた、我が庇護すべき宝に他ならぬ。――負け犬どもには辿り着けるべくもなき、完全無欠の紋様が紡がれた織物としての価値が、お前達の旅路に確かに示されている》
――・・・
王は、遠くを見ている。何者にも届かぬ高みを。何者にも見据えられぬソラの果てを
《我は人間の、人間どもの紡ぐ紋様と発明に価値を見出だしている。その価値を怠惰極まる人間どもが示すその日まで、人間どもの人類史に付き合ってやろうではないか》
その彼方より来る何かを・・・見つめるかのように
(回りくどいやつめ。今を生きている人間が好きだから護ってやるよって言えばいいだろ)
ピョンコ、と人類愛となったフォウが王をからかう
(いいかい、エア。君達の旅路は尊いものだった。だからボクはこんな素敵な姿になれた。其処にいる皆がいたから、ボクはこうなれたんだ)
フォウもまた、言葉を紡ぐ
(惑わされないでほしい。君達の戦いはけして間違いじゃなかった。そしてこれからも、君達の戦いは正しい。『正しさで、他の正しさに打ち克つんだ』。・・・それが、ボクたちの誇りなのだから)
――ギルもフォウも、なんだかとても真剣ですね。――大丈夫です。ワタシは、皆は、その時に必ず、かけがえのない選択を掴みとれます
そんな二人を、自分なりに励ます。不安や不穏を、吹き飛ばすように
――王とフォウが認めた善き人々、かけがえの無い財。その皆が、どんな事になっても未来を投げ出すなんて有り得ません!未来を取り戻すために、ワタシ達は歩んできたのですから!だから・・・大丈夫ですよ!
姫の、無垢にして揺るがぬ決心を聞き、王もまた満足げに笑う
《――そうだな。あぁ、下らぬ問いだった》
力強く歩み出す。遥か神代から、神と訣別し、人類がそうしてきたように
《では、来るべき戦いに備え日々を過ごすとするか。まずは・・・そうさな、酩酊の味でも覚えるか?》
――めいてい?お酒の銘柄ですか?
(許すのはほろ酔いまでだからな!泥酔とかダメだからなギル!)
《分かっているとも。酔い潰れた反応も見物と言うものだがな》
(ダメダメ!酒は節度を守るべし!)
「ギル~!行くよ~!」
「む。・・・無論帰還するとも。見るべきものは見たからな。宴の一つも用意していような!」
『もちろん!和菓子や洋菓子パーティーと行こう!』
「ふははは!甘ったるい宴よな!」
ぐだぐだのイベントは、此処に幕を下ろす
けして揺らがぬ、大切なものの価値を、日常を噛み締めながら・・・
ぐだぐだイベントを終えて、変わった事はいくつかある
まず一つ
――皆、カルデアの警備と巡回、よろしくね!
『『『『『『ノッブぅ!』』』』』』
(期待してるよ、後輩!)
『『『『『ノーッブ!!』』』』』
姫についてきた大量のちびノブが、カルデアの使い魔として雇用されることになった事
そして二つ
「謎の粒子による感染症の疑い・・・事後予防になってしまうのは残念ですが、徹底しなくては」
「うむ。防備も見返すとするか」
衛生、防衛の更なる見直しが入った事
そして・・・三つ
「沖田さんって男性だったっけ?」
「へぇ、羽織って意外と評判悪かったのね・・・」
「財政難!わかりみ!わかりますその辛さ!お金が無いのは首が無いのと同じですからねぇ~・・・」
新撰組ブームが、ちょっと起きたこと
ぐだぐだしつつも、変わらぬ日常が其処にある
そんなこんなで数日後
「ぐだぐだだったねー」
「ぐだぐだでしたねー。初のイベントがこんなんで本当に申し訳ありませんマスター」
「頭ゆるゆるで楽しかったよ!うん!今度はコハエースに殴り込もう!」
「小説台本形式とかそういう風にして違いを出すのもいいかも知れませんね~」
「もっと目の保養になる催しをしてもらいたいもんだ」
「水着イベですねわかります!」
「今度皆で水着見に行こうかなぁ・・・」
そんなぐだぐだを過ごしているリッカ
すると――
『話の途中だが異常事態だ!』
「ファッ!?」
『うはははははは!久しぶりじゃのう貴様ら!』
「ノッブ!?どうして此処に!?」
『たった今召喚されたからに決まっとるじゃろが!それより事態は風雲急を告げるぞ!』
「またイベント!?」
『そうじゃ!サルとミッチーが出番が欲しいと結託し黄金都市ZIPANGを建国しおった!一戦闘で500万QP落とす神イベらしいからさっさと攻め落としに出掛けるぞ!わしらのぐだぐだは不滅じゃ!!』
「また面倒な事を――!!」
「フッ、新撰組の動乱は終わらねぇって事か。・・・行くんだろ、マスター」
「もちろん!私が!私達が!」
「新撰組だァ!!!さっさと支度しろ!出動だ!!」
「もー!!またこうなるんですか!今度の魔神セイバーは私がなりますからね!!絶対ですよ!!」
『ま、是非もないよネ!!』
・・・マスターの皆様、いかがお過ごしですか
このカルデアは、今日も元気です――
つづく?
どのキャラのイラストを見たい?
-
コンラ
-
桃太郎(髀)
-
温羅(異聞帯)
-
坂上田村麻呂
-
オーディン
-
アマノザコ
-
ビリィ・ヘリント
-
ルゥ・アンセス
-
アイリーン・アドラー
-
崇徳上皇(和御魂)
-
平将門公
-
シモ・ヘイヘ
-
ロジェロ
-
パパポポ
-
リリス(汎人類史)