人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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人間が人間を憐れみ、失望するという驕り


人間が人間を知らず、愛そうとする未知


互いに悪であり、互いに人間が滅ぼす悪


至尊の答えは示された

奇跡の出会いにてその魂は救われた

虚無の希望を目指したもの

人理を臨むもの

互いに相容れず、互いに滅ぼすしか無いのならば


其処に、理想も、理性も、綺麗事もありはしない


あるのはただ――互いを喰らい合う共食いのみ


未来は一つしかないのならば

強きものが残るのならば


その行く末は、戦い勝ち取る他に道は無し

さぁ、開幕を告げよう


ビーストⅠ・ゲーティア

ビーストIF・藤丸リッカ

開幕の鐘を鳴らせ、高らかに互いを喰らい合え

未来を懸けた――互いを滅ぼす為の、原初の戦い――

此は、未来の為に、異なる未来を滅ぼす『悪』の戦いである――!


Fate/Grand Order~未来を臨む邪龍・希望を目指した人王~

レメゲトン・・・エアとの対話にて、ゲーティアは答えを示された

 

 

人生とは、尊き生命を謳う旅であると。死は、駆け抜けていくものであり、必ずや、何かが残るものであると

 

 

・・・その答えを以て、我等が偉業は終わりを告げる。三千年の研鑽は、我等の望みは霧散する

 

 

全ては空論と消える。我等の決議は全て

 

 

・・・だが、この胸を。暖かい思いが満たしている

 

 

我等の偉業を、決議を。忘れないと

 

我等に、ありがとうと伝えた、ただ一つの魂がある。

 

レメゲトン。無垢と憧憬を抱き、至尊に至った、ただ一人の人間にして、我等の希望

 

 

かの魂が、我等の存在を未来へと繋ぐ

 

かの魂が在る限り、我等の決意は決して無には至らぬ

 

 

・・・感謝とは、このようなものか

 

敵意ではなく、悪意ではなく

 

 

優しき敬愛に看取られるとは、これほど心穏やかなものか

 

 

これが――我が救いか。我等が偉業の報酬か

 

 

・・・だが、私は。この余韻に浸り消えることは許されない

 

【おぉおぉおぉおぉおぉお!!!!】

 

 

藤丸リッカが来る。迫り来る

 

 

我等が産み出した、人工的な人類悪。全ての悪を結集させた存在

 

私は、戦わなければならない。この生命を悪に落とし、この悪を産み出せし責任として

 

それが、獣の意地。それが、私の最期の決断

 

 

レメゲトン。我が至尊。我が希望、我が救済よ

 

 

私は今、人間の生命を理解した。限りある生命を得て、ようやく理解した

 

私は、私の業の為に彼女を止める

 

彼女は、彼女の意地の為に私を止める

 

 

私は今生まれ、滅びる。あなたの答えを、唯一つの報酬として、最期まで生き抜く

 

 

人の王としての答えと決意は、あなたに託す

 

今の私は魔神王として、最期の務めを今、果たす

 

この僅かな、されど、余りにもいとおしい時間が。ゲーティアと名乗ったものに与えられた、本当の人生だ

 

 

――始めよう。カルデアのマスター。お前の勝ちを、お前の悪を。私の手で焼却する――

 

人王としてではなく

 

魔神王、ゲーティアとして――!

 

そして、高らかに伝えよう

 

今滅ぶ、我等が名を――

 

 

 

 

ようやく此処まで来た

 

皆のお陰で、ようやく此処まで来れた

 

奪われたものを、滅ぼされたものを。全てを取り返す戦いが、今始まる

 

 

長かった。本当に長かった

 

毎日、毎日。奪われたものを思わない日は無かった

 

 

私はゲーティアを許す気はない

 

何をしようと、どんな立派な事を言おうと。私達の未来を焼き尽くし、未来を奪い、未来を消し去った

 

 

それは、誰にでもある明日であり、あるべき未来であり。そして――

 

 

ねぇ、グドーシ。見てる?

 

私、此処までやっと来れたよ。グドーシがくれたもの、教えてくれたこと、全部。無駄じゃなかった。意味があった

 

グドーシが愛した文化や、アニメ。それが今、私を助けてくれた

 

グドーシが愛したものを、一生懸命自分なりに伝えてきた

 

アニメや漫画の技をやたらめったら使って、世界を救った変なマスターって、皆の心に残ったかな

 

それが出来たなら、グドーシの愛したものが、文化が、世界を救えた事になるかな?

 

あなたが愛した全てに、私を救ってくれたものに、恩返しが出来たかな?

 

――行ってきます、グドーシ。皆

 

 

【オォオオォオオォオオォオオォオ!!】

 

 

皆の未来を、取り戻しに

 

私の未来を、進むために

 

 

崩れ行こうとも、死にかけであろうとも。ゲーティアを嗤わない。蔑まない

 

ただ、全身全霊で立ち向かい、叩き潰す!

 

それが、私が出来る誠意

 

私が出来る、精いっぱい

 

それが――私なりの慈悲!

 

誰も死なせない。誰も欠けさせない、未来の為に――!!

 

だから――見ていて!

 

あなたの親友が、決着をつけるところを!

 

・・・二つの想いは、今、ぶつかる

 

 

互いに譲れぬ想いのために

 

 

――グランドオーダー、最後の結末

 

 

その戦いが、今此処に・・・!

 

 

 

 

 

【我が偉業!!】

 

ゲーティアの拳が、リッカの鎧に叩きつけられる

 

【がっ――!】

 

意志と意地を込めた力強い拳を、避けずに直撃するリッカ

 

【我が理想!!】

 

力の限りリッカを蹴り飛ばす。草原に投げ出され、吹き飛ばされる

 

【我が誕生の真意を知れ!!】

 

瞬時に追い付き、リッカの頭を掴み、大地に幾度も叩き付ける

 

大地が激震し、大気が震え、空間が軋んでいく

 

【ッッ――!!】

 

力づくで引き剥がし、蹴り飛ばすリッカ

 

【この星は新生する!!あらゆる生命は過去になる!!】

 

身体中から魔神の眼を展開させ、輝く光線をリッカに叩き付ける

 

泥を総展開させ、防御する。その気迫は凄まじくダメージを無効にすることが叶わない

 

【っぐ・・・!】

 

【讃えるがいい!!我が名はゲーティア!!】

 

そのまま間合いを詰め、拳の乱打にてリッカを徹底的に打ちのめす――!

 

【っあぁあぁあっ!!】

 

ひしゃげ、凹み、軋んでいく鎧

 

【人理焼却式!!魔神王!!ゲーティアである――!!!】

 

全魔力を込めた殴打が、リッカの顔面に叩きつけられる

 

【――――っ】

 

左上半分の邪龍の兜が割れ、リッカの瞳・・・縦の瞳孔、白い部分が黒く、黒い部分が紅い瞳が露になる

 

【そんなものか!人類最後のマスター!お前の答えはそんなものか!!】

 

吹き飛ばされながら耳に響く、ゲーティアの叱咤の声

 

【お前の人生は――そんなものか!我等が疎み、我等が産み出した過ちよ!悪に染まらなかった魂に、その身体は追従せぬのか!】

 

 

・・・ここまでか?

 

 

【来るがいい!!貴様が倒すべき悪は――】

 

 

・・・いや!

 

【今、貴様の目の前に立っているぞ――!!】

 

 

ここからだ――!!

 

 

【――偉業?理想?真意?】

 

 

リッカの身体に、邪龍の鎧に、紅き紋様が走る

 

 

【そんなの、そんなもの・・・――】

 

それは、令呪の輝き。自らに掛けし、全身全霊の証明

 

今、限界を越え――

 

 

【――――知ったことかぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!】

 

リッカが、有り得ざる人類悪が吠え猛る――!

 

翼を羽ばたかせ、リッカはゲーティアに猛襲し、渾身の飛び蹴りを浴びせる

 

【ぐぉおっ!!】

 

腹に凄まじい蹴りを浴びながら、吹き飛んでいく

 

【絶対に赦さない!!私が悪に堕ちた事じゃない!私の事なんてどうでもいい!!】

 

吠えながら、吹き飛ぶ早さより尚速く、ゲーティアに追い付き

 

【世界は滅んだ!!お前が滅ぼしたんだ!!】

 

力の限り、頭を掴み――

 

【私達から、最後の希望まで奪う気か!!】

 

紅葉下ろしにかけ、徹底的に痛め付ける――!

 

【グォ、ォオォオォオォオォオ・・・!!】

 

【私はお前と世間話や、与太話をしに此処に来たんじゃない!!】

 

 

角を無理矢理掴んで叩き起こし、童子切安綱を抜き放ち――

 

 

【私はお前を、ぶっ潰しに来たんだ!!】

 

二本の角を、一閃にて両断する――!!

 

【ぐぁあぁあぁっ!!】

 

血が吹き出、斬り飛ばされし角。リッカは、尚吠える

 

【お前が無価値と断じ、焼き捨てた明日は!!】

 

安綱を納刀し、拳と身体を使い――

 

【世界の皆が――そして!!】

 

今、怒濤のラッシュが叩きつけられる!

 

 

【グドーシが、私の親友が――死ぬほど生きたかった未来なんだ――!!!】

 

一発が、凄まじい勢いでゲーティアを崩壊させる拳。徹底的なラッシュとなり、魔神王を打ちのめす

 

【ォオ、ォオォオォオォオ――!!】

 

【殺してやる!殺してやる!!殺してやるっ!!】

 

顔をひっつかんで地面に叩き付け

 

【ガハッ――!!】

 

【絶対に――絶対に!!殺してやる――!!】

 

雄叫びを上げながら、今、リッカは奥義に至る!

 

 

 

【『地獄の九所封じ』!!その一!!】

 

 

力の限りアッパーで殴り飛ばし、遥か彼方へ吹き飛んでいくゲーティアより速く飛来し、頭を手で掴み、胴体に全体重を乗せ、背中を地面に叩きつける――!

 

【大雪山落とし――ッッ!!】

 

 

【グオォオォオ!!】

 

崩壊が加速度的に進み始めるゲーティア。力づくで引き起こし、腕をロックし、回転する

 

【その二と三!!】

 

回転を加え、力の限り腕にだけダメージを与える――

 

【『スピンアーム・ソルト』――ッッッ!!!】

 

【がぁああっ!!】

 

背中に加え、両腕にまでも致命的なダメージを食らうゲーティア

 

・・・まだ、憤怒は尽きまじ

 

ゲーティアを蹴り飛ばし、脚を折りたたみ、片膝立ちとなり、力を込め――

 

【その四と、五!!】

 

電光石火の勢いで、膝を膝に叩きつける――!

 

 

【ダブルニー・クラッシャー!!!】

 

粉々に砕かれるゲーティアの両足。崩壊は、不可逆にまで進む

 

【これが、お前の力・・・!お前の、憤怒――!】

 

ゲーティアの正面に回り、力の限り抱えあげ

 

【その六――!】

 

後方に、頭を大地に杭打つ――!

 

【兜割り!!】

 

 

びきり、と。ゲーティアの頭に亀裂が入る

 

【旅路の果てに、悪を為した――力・・・!】

 

ゲーティアの言葉に耳を貸さず、空へ飛び

 

【うぉおぉお!!その七!!】

 

ゲーティアの腹めがけ――

 

 

【『ストマック・クラッシュ!!』】

 

ライダーキックをかまし、腹を粉砕する――!

 

【これが、生命――!!】

 

【立てぇ!!】

 

握手にて無理矢理ゲーティアを引き起こし

 

【――『ガンド』!!】

 

身体中に、スタンさせる呪い――ガンドを叩き込む!

 

【これが、これが――!いや、最後は・・・貴様の口から――!】

 

ゲーティアの腕をロックし、回転し、回転し。勢いと速度を増し――

 

 

【うぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぁあぁあぁあぁあ!!!!】

 

黒き竜巻すら起こしながら、有り得ざる人類悪が吼え猛る――!

 

【逝けぇえぇえぇえぇえぇえ!!!】

 

力の限り投げ飛ばし、その首に、ニードロップをロックし

 

【『地獄の九所封じ(ナインライブズ・ラストワン)』!!!】

 

左足のニードロップに脚を叩きつけ、その上に右腕の肘をも叩きつけ

 

完全ロックと化し、リッカ最後の、渾身にして全身全霊の一撃が放たれる――!!

 

【藤丸リッカ!!】

 

【!?】

 

名を呼ばれ、反応するリッカ。技の勢いは微塵も収まらないが、憤怒の中にあるリッカの理性が呼び覚まされる

 

【何故――貴様は戦う!!】

 

落下が開始される。重力と慣性に従い、最後のフィニッシュが迫る

 

【何故、『(われわれ)』に屈しない!!何故――悪に貶められながら――】

 

迫る、決着と終焉。その刹那に――

 

【何故――ここまで、戦えたのだ――!!】 

 

解答が、交わされる――!!

 

【知りたいなら教えてあげるよ!!決まってる――】

 

【――!!】

 

【私が――生きるためだ――!!!!】

 

高らかに、謳い、告げ――

 

 

【『憐憫の断頭台(ゲーティア・ギロチンライブズ)』――――――ッ!!!!!!!!】

 

今、人類を救う秘奥義が炸裂し、放たれる――!

 

 

大地が余すことなく亀裂を穿たれ、空に浮かぶ雲が全て消し飛ぶ

 

「っあぁあぁあっ――!」

 

マシュがすんでのところで踏ん張り、余波から身を守る

 

激震。そして、静寂

 

 

【――・・・・・・】

 

【――・・・・・・・・・】

 

技をかけられ、技をかけたまま。全ての時間が停滞したかのように静まり返る

 

 

【――生きるため、・・・ただ、自分が、生きるため、だと・・・?】

 

【そう。だから・・・あなたに恨みや憎しみは無い。ただ――『私が生きるために、邪魔だった』。それだけの話】

 

はっきりと、リッカが告げる

 

恨みは無い。憎しみもない

 

ただ――邪魔だったから、蹴散らしたと

 

【――確かに、我々の勘違いだ。過大評価にも程があった】

 

ゲーティアは、静かに納得する

 

【生存を願いながら、死を恐れ、死を恐れながら、永遠を目指した我々を打倒した――】

 

【――これからも、私の在り方は変わらない。誰が相手で、どんな相手で、どんな理由があろうと、言い分があろうとも。私の生きる邪魔をするなら、生きる邪魔なら、ぶっ潰して、ぶっ飛ばして、滅ぼして、殺す。私が生きたい未来の為に、私自身の願いのために】

 

 

それが、あの日の出逢いの決意

 

あの日、救ってもらった命の生き方

 

そして――満足に生きる未来を与えられずとも、私を導き、救ってくれた・・・かけがえのない親友への誓い――

 

そして――

 

【『生きるために、滅ぼすことを躊躇わない』――それが、私の【悪】だ!ゲーティア!!】

 

それこそが、龍の答え

 

私が生きたい未来は此処にある

 

私が生きたい明日は今にある

 

それを邪魔するもの、全てを滅ぼす

 

そして――その果てに、何度でも世界を救う

 

それが――藤丸リッカの、人生の答え――

 

【――なんという、救いようのない愚かさ。救う必要のない頑なさだろう】

 

笑いながら、ゲーティアは告げる

 

【手に負えぬ、とはまさにこの事だ。は――はは――ははははははははははははははははははははは!!!】

 

その答えを、噛み締めながら――

 

 

 

 

【アンドロマリウス、活動を停止】

 

 

【フラウロス、活動を停止】

 

 

【――全御遣い、沈黙を確認】

 

 

【・・・――いや、まったく】

 

誰とも告げず、ゲーティアは謳う

 

【不自然な程短く・・・不思議な程に面白く――】

 

消え去る瞬間、魔神王から、人の姿となりて

 

【――輝かんばかりに尊いな――人の、人生と言うやつは――】

 

黄金の粒子に還元し、静かに消え去っていった――

 

「――――、・・・――」

 

そして、それに殉じるように・・・

 

「・・・やっ、たよ。みんな・・・グドー、シ・・・」

 

全精力を使い果たし、リッカが気を失い、倒れ込んだ――

 

「先輩――っ!!!」




『――レメゲトン、いや。英雄姫エア。その在り方に、敬意と感謝を』


――!

『あなたが私にくれたように、私もあなたに返礼を託す。――受け取ってほしい。そして、忘れないでほしい』

――ゲーティア・・・

『私の、生きた証。――虚無の希望を目指した我々の、決議の証を、その意味を――』

――はい。・・・本当に、本当に・・・お疲れ様でした・・・

『彼岸にて、その人生を見させてもらう。この戦いは――あなたの――勝ちだ――』

「――」

英雄王の手に、『ソレ』が収まる

「――フン。縁の環にしては気が多すぎるわ、たわけめ」

それは・・・『一つのレプリカの指輪と、九つのソロモンの指輪』・・・

――英雄王。その、レプリカの指輪は・・・私にくださいますか?

・・・それは、はじめて

はじめて・・・エアが何かを『欲した』瞬間であった

《許す。・・・指に嵌めるか?》

王はレプリカの指輪を手に取り、エアに渡す

――嵌めて、くださいますか?

エアの細やかな要望に、愉快げに笑いながら是を示す

《――フッ。お前の魂に免じて、特別だぞ?》

王はエアの手を取り、ゆっくりと・・・『左手の薬指』に、指輪が嵌める

その薬指に嵌められた意味を、王は語らずとも、姫は理解する

互いに、何も言葉にすることなく・・・ただ、見つめ合い。頷きあう二人

――ありがとうございます。・・・一生、手放しません。ゲーティアが遺し、王が嵌めてくださったこの指輪を

《それでよい。些か安物ではあるが・・・唯一無二という点では、確かにそれはお前に相応しかろうよ》

その言葉に、確かに肯定の意思を示し

エアは静かに、・・・一つの指輪を、見つめ続けた――

その指輪は、レプリカでありながらも・・・確かなる決議と、盟約の証

愛を示す、誓いの指輪

――そして、ゲーティアに託されし九つの指輪は、在るべき場所へと

《うむ。あのおおばかものには、土産物としては上出来であろうよ》

英雄王の手の中で、九つの指輪は確かに輝きを放っていた――


「神殿が・・・最後のマスターがやりましたか」

崩れ行く神殿を、ただ見つめるアルトリア

「皆さん、お疲れ様でした。貴方達の一人も欠けていれば、この結末は違うものに――」

・・・その労いを受け取るものは、もういない

英霊達は、余すことなく退去し

部員の皆も、輝きを残し元の次元へと立ち去って
いく

「――感謝を。力尽きようとも、次元が異なろうとも。活路を切り拓き、未来へと繋いでくださって。私も・・・理想郷へと還ります」

「当然よな。単独顕現なぞエアを抱く我とビーストのみが持つ特性。真っ当な英霊なぞ、この宙域に現れた時点で崩壊が始まる。――それを押して、魔神柱どもを抑え続けたのだ」

――ありがとう。この地に集いし全ての生命たち。貴方達の存在こそが、人間の歴史、その輝きの証明です

『・・・ありがとうね。悪友の皆。ボクは、君達とも出逢えたことにも感謝するよ』

「我が召喚に応えし部員ども、凡百の英霊ども。――此度の戦い、高く評価してやらねばなるまいよ」

天空神の酒を飲み、財が回収されていく粒子が立ち込める光景を肴に、酒を飲む英雄王

「――・・・」

アルトリアもまた、退去が始まる。交わす言葉は、最早多くはない

「――ではな、騎士王。此度もまた、中々に楽しかったぞ」

エアの髪を撫でながら、王は騎士王に――届かぬ星に別れを告げる

「――行くのですね」

「当然だ。我はこの戦い、この物語の主役。我等が織り成す叙事詩の当事者。我等がおらずしてなんとするのだ」

「・・・有り得ぬ歴史とは言え、貴方と共に戦った事は、けして悪い気持ちではありませんでした。――姫ともども、どうか、良き旅路を」

「貴様もな。天にも、地にも、人の手にも収まらぬ輝きよ。貴様のみの価値。努、違えぬ事だ」

フォウが騎乗に備え、伏せる

「・・・自らが生きるために、自らが愛するもの達の未来の為に他の全ての未来を滅ぼすリッカ、嘆きのみを食み、無を目指したゲーティア。皮肉なものよ。人類悪とは即ち、人類愛そのもの」

――人間を滅ぼすのは悪意に非ず。悪意は必ず薄れ、満たされ、霧散するもの。けして、全てを滅ぼすには至らない

『あぁ。――人理を脅かすものは、人理を守ろうとする願いそのものなんだ。もっと善くしたい、よりよい未來が欲しい。だから――今の平穏を脅かす。より良い未来を手にするために』

「・・・獣は、連鎖的に現れるとマーリンは言っていました。人類悪の現れた世界は、『終局の悪』に向けて、更なる災厄に見舞われると」

「Ⅰが現れた時点で、終局のⅦはこの世界のどこかに出現しているのだろうよ。――だが、それが何であろうと、どのような災厄であろうと知ったことか」

――はい!ワタシ達は必ず、全ての悪を乗り越えます!生命を謳う旅は、けして終わらず。王の裁定の日まで――必ず続いていくのですから!

『ボクもいる。リッカちゃんもいる。――大丈夫さ。なんたって、ボクを人類愛にしてくれた姫に、慢心してない王様だっているんだから!』

「フッ、ようやく陥落したか。――そういう事だ。我がいる限り、当たり前の結末など消し飛ばしてくれる。あらゆる悲劇と苦痛を蹴散らす英雄譚。それこそが――我が最新の叙事詩なのだからな」

「――心配はしていません。では・・・さようなら、英雄王、英雄姫。そして、フォウ。――貴方達の行く先に、華の祝福が、在らんことを――」

アルトリアも、役目を終え、退去する。此処に残りしは、単独顕現を所持せし魂を宿す英雄王と、至尊たる獣のみ――


――行きましょう、英雄王、フォウ!ワタシ達の、旅の終わりへ!

『あぁ!しっかり掴まって!』

「よし――目の当たりにしようではないか!我等のみが抱く、完全無欠の結末をな――!」

フォウと王、姫は駆ける

最後の結末を、完全無欠とする為に――!

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