最後まで、お楽しみください
それぞれの未来
・・・気が付くと、そこは暗き場所であった
星の輝きはなく、明かりは無く。灯す火はない
ただ、暗い闇が広がる場所
・・・知っている
自分は、ここを知っている――
「やぁ。随分と久しぶりだね」
問い掛けられる、冷厳にして無気力な声。どこまでも響く、高次な言葉
「――あなたは・・・」
「随分と美しくなった。よき旅をしてきたんだね、君は」
少しばかりの驚きを含み、告げる声音。姿は見えない。――いや、無いのかもしれない
「・・・もうすぐ、旅の終わりが来る。君の研鑽の答えが、此処に結実する」
言葉が、告げる
「悔いや、後悔はないかい?転生に、自らの運命に・・・嘆きは無かったかい?」
その言葉は、冷たく、だが・・・楽しげだった
君の旅路は幸福だったか?と。自らが切っ掛けを与えた者としての、確認
「――はい!とても!」
楽しかった。幸福だった。幸せだった
敬愛する王に姿と名前を賜り、頼もしい仲間たちと轡を並べ、かけがえのない友を得ることができた
この旅路は、自分にとって、かけがえのないものだったと。胸を張って、総てを懸けて伝えられる
「本当に、ワタシは幸せでした!そして――ありがとうございます!」
エアは深々と、頭を下げる
「あなたが力を貸してくれたから、目にかけてくれたから、ワタシはこんなに幸せな旅路を歩むことができました!本当に、惜しみない感謝を!」
転生に、自らを使ってくれた
死んで、消えるだけだった自分を救ってくれた
自らの叫びに、応えてくれた
その貴方には、感謝以外に告げる言葉が見つからない
「ワタシを・・・送り出してくれて!ありがとうございました!」
ありがとう。ワタシが在ったのは。ワタシがあれたのは・・・貴方のお陰です
本当に、ありがとう――
「――・・・全く呆れたものだな」
興味深げに笑うような声音が帰ってくる
「私は、ただの舞台装置。最初の送り出しが終われば忘れ去られるものなのだが・・・いや、それは詭弁だな。であるならば、私は此処には来ていない」
「・・・?」
「実のところ、私は・・・一言でいい。誰かから何かを貰いたかったのさ。それだけが、私の何よりの報酬だ。――その笑顔、その感謝。ありがたく受け取ろう」
晴れやかに、声は告げる
「私はろくでなし。運命を弄ぶ何者か。人は私を全能と呼ぶ。人は私を根源と呼ぶ。人は私を因果と呼ぶ。――君を含め、あらゆるものの運命を弄んできたからね」
「・・・」
「多くは自己完結で終わった。栄華、繁栄、苦悩、終焉・・・どれも、自らの内で終わるものだった。――中には、私に挑んできたもいたっけ」
本当に、いろんな物語があった。そう告げる
「多くの物語が結末を迎えた。が・・・それは私にとって流れの一つでしかない。特に語ることでもない。単純に私は送り出しただけだからね。全くもって関わる理由は無い。が・・・君は、私に『感謝』をくれた」
それが、嬉しいと声は語る
「君の研鑽、君の歩みでその姿と魂に辿り着いた。今更何の用だと言ってもよかったものを、君は今、私に、感謝を告げた。――うん。うっかりと自我を産み出した全能には恨んだものだが・・・その言葉は、かけがえのない返礼だよ」
「・・・あなたは、一体・・・」
「・・・私はもとは人だった。どんな人だったかは解らない。性別も、趣味嗜好もだ。覚えていることは、自分は産まれながらにして全能だった」
ゆっくりと、語り始める
「何でもできたし、また、何でもやれた。人が出来ないことはさらりとこなし、人が作れぬものをたやすく創造した。私も疑問は抱かなかった。息をするように全能を行使した。それが当たり前だったがゆえに。・・・まぁ、その果てにあるものは、不理解と拒絶による死だったけどね」
産まれながらにして、総てを持っていたと声は語る
当然のように利用され、当然のように殺された。
その全能は、自らの幸せには何も貢献しなかったと
「まぁ自業自得なんだが。・・・死んだ後に、私は根源とやらに触れ、取り込まれてね。総てを把握し、掌握することができた。どうやら、一人くらいは自らを整理し、編纂する人格が要りようだったらしい・・・まぁ、君達が思い描く事は大抵できるようになっていた。・・・が」
その先に待っていたのは、倦怠だったと語る
「総てを知る、ということは停滞と同じだ。進まず、研鑽なく、愉悦がない。――死後にもそんな目に合うと思わなかった」
あぁ、こんなものか。と。真理の叡智に至った感想がそれだった
「知識あれど、ひけらかす友はおらず。全能あれど、それを示すものはなく。――本格的に、自分には意識しか残されていなくてね」
「・・・」
「――だから、私は寝ていたわけだ。意識は無くならない。だからといって死は剥奪されているからね。それくらいが、私の自由だった」
意識だけあってもどうしようもない
あぁ、真理とは何故こんなにも退屈なのだと、あくび混じりに微睡んでいた
そんな中、君の叫びを聞いたと、彼は語る
「死んでからやりたいことができた・・・なんて。私と正反対だったからね。興味を引かれたのが正直なところさ。鮮烈な無垢と、停滞の全能。今思えば、私たちは対極だったのだね」
「鮮烈な無垢・・・停滞の、全能」
「――だが、君はこんなにも輝かしく成長し、研鑽され、今こうして目の前に立っている。その事実が・・・私は、嬉しく思う」
始まりは気紛れだが、君はそれに応えてくれた
素晴らしく、輝かしい物語を見せてくれた
「君が見せてくれた旅路は、本当に楽しかった。久方ぶり、いや・・・はじめて味わう感動と高揚だった。人は、神にすらも至ることができたのだね。魂の在り方そのままで」
「――それは、ワタシを取り巻く全てが幸福で、幸せだったからです。ワタシを形作ってくれたすべて、そして、そこに飛び込ませてくれたあなたが、いてくれたから」
それは、変わらぬ認識
皆がいてくれたから、ワタシは此処に至れた
皆と出逢う
「・・・そうだね。君はそういう道筋を、自我を選んだんだ」
ふわり、と身体が浮かび上がる
「ありがとう。――無為と倦怠の全能に、一つの誇りをくれて。君の存在の切っ掛けになれたことは、私の数少ない誇りだ」
ゆっくりと、意識が遠退いていく
「――君の魂は生きている。転生した時に贈られる特典は多々あるが、君の特典は、『生きている』という事実そのものだ」
「あなたは・・・!」
「『君こそが、運命と結末を変える生命である』。忘れないでくれ。君の望む未来には、君の在り方こそが不可欠なのだとね」
遠ざかる。声が遠ざかっていく
「さようなら。話せて、嬉しかったよ。こんな私に、お礼をくれてありがとう」
「――あなたは・・・!」
「――そうだ。名前。私の名前くらい教えなければ、無礼にすぎるな」
その名が、告げられる
「私は、アカシック。・・・君の名は?」
「――エア!ワタシの名前は・・・エアです!」
「――あぁ。忘れない。いい名前だ。――行ってらっしゃい。君の旅路は、間も無く終わる」
暖かな声が、再び響く
「そこからは、君だけの時間を思うがままに過ごすといい。――見ているよ。君の旅路を、ずっと」
フォウとやらに、よろしく。その言葉を最後に
エアの意識は、上っていった――
~
――ん
目を開けると、そこは書斎だった
王の傍にある魂を起こし、目を擦る
「よし、脱稿だ。随分と働かせてくれたな。俺のモチベーションに感謝して受けとるがいい、御機嫌王」
嫌味を告げながら、アンデルセンが本を投げ渡す
「『あなたのための物語』・・・最後に其処に名前を書け。そいつの望む姿になるだろうよ」
「期限に間に合わせたか。きさまも一端の作家、矜持と意地はあったようだな」
「当たり前だろう。締め切りは彼方、万全な仕事場。これで結果を出せない方がどうかしている。・・・不満があるとすれば」
ガン、と脚を置く
「お前が目指す姿、上機嫌の要因を突き止められなかったのが・・・心残りといえば心残りだな」
「この名の空白はそれか?まこと目敏い作家よ」
「当たり前だ。『何故だか機嫌がいい』で済ませられる程のレベルを越えているからな、今のお前のシャカリキぶりは。――それの要因の空白は入れてある。それをピリオドとして書き込め。それで宝具は完成だ」
最後の〆は、自分でやれ――
それは、偏屈作家の最後の激励でもあった
「ふっ。サービスはありがたく受け取っておこう。――その解明は、然るべき場所にて行う。楽しみにしておけよ」
「あぁ期待しているとも。ソレの原因を考えていたら筆が止まらなかったんだからな!シチューの一つも作らせなければ割に合わん!」
――アンデルセンさん
《だそうだ。高くついたな?旨いものを振る舞ってやれ》
――はい!ありがとうございます!
《晴れやかな顔をしている。よい夢を見たか?それはよい。晴れ姿を迎えるに相応しいと言うものよ》
――晴れ姿?
《ふはは、楽しみにしておけ。・・・そら、最後の集会に向かおうではないか》
王の言葉に、深くうなずく
最後の戦いが、始まる
・・・魔神王が待つ、玉座へ
総ての未来を、取り戻す戦いへ
――行きましょう。王
ワタシたちの総決算へ。その先の未来へ
(ボクも一緒だよ。いつまでもね!)
――もちろん!さぁ、行こう!
今こそ、研鑽の答えを見せつける時だ――!
・・・エアの決意と、時を同じくして
「・・・これで、最終調整はおしまい、と」
ロマンがコンソールを打ち、カルデアの座標をマルドゥークに移す
「お疲れ様でぇす♪ロマン様」
後ろからシバにゃんが、ロマンに抱きつきコンソールを覗きこむ
「うわぁ!?や、その・・・こんにちは」
「こんにちは~♥あとは作戦決行を待つばかり、ですね♥」
「・・・うん。ここまで、長いようで、あっという間だった」
シバにゃんと共に、今までを振り返る
「人間になったとき、僕は人類終了の未来を視た。それを覆す為に、僕はあらゆることをやってきた。調査と研究。――そればかりの十年だった。悲鳴を上げるような毎日だった。・・・でも、それでも・・・」
「・・・あなたの時間は、価千金のものだった、ですか?」
シバにゃんの言葉に、静かに頷く
「――何かをする自由。何かを選ぶ自由。それは、僕にとって宝物だ。そしてそれは、今目の前にある。・・・この旅が終わったら、本当の意味で、僕は自分の時間を、自分の為に使えるんだ」
・・・そういって、ロマンはシバにゃんに向き直る
「――・・・あの、だから・・・その。・・・だから」
「・・・~」
「・・・その、自由の時間に・・・君が、傍にいてほしいんだ。僕もそろそろ、身持ちを固める時期だし・・・」
「~・・・♥」
「――これからの自由に、・・・傍に、いてくれるかい?」
ロマンの手に、シバにゃんは手を重ねる
「――健やかなるときも、病めるときも。御互いを信じ、寄り添い、乗り越えるもの・・・なーんだ♥」
「・・・ふ、・・・夫婦?」
「せいかーい♥・・・今度こそ」
まっすぐ、瞳を覗きこむ
「今度こそ、幸せになりましょうね。ロマン様♥」
「・・・あぁ!」
・・・臆病者は、一歩を踏み出す
自らの運命を乗り越える自由を、確かに選ぶ
・・・微かな縁を手繰り寄せ、現世に参じてくれた女性を、慈しみながら・・・
・・・同時に、マシュのカプセルの操作を行いながら、オルガマリーが息を吐く
「平均寿命、80才台。・・・ようやく、人並みの寿命に届いたわ。お疲れ様、マシュ」
これにて、寿命の問題は解消されたことになる。カプセルにて、歓喜を表すマシュ
「はい!本当に、本当にありがとうございます・・・!」
「私より、師匠に言ってあげなさい。常にカルデアやカプセルを保ってくれたのは、あの人なんだから」
自分は、細やかなメンテナンスをしていただけだ。師匠より胸を張るのは、まだ早い
「いいえ。・・・所長はいつも、話し相手になってくれました」
「・・・!」
メンテにマシュがいる間、オルガマリーは常にマシュの傍にいた。マシュが退屈せぬように、マシュが疎外感を感じぬよう、ずっと一緒にいたのだ
その事実が・・・マシュには、たまらなく嬉しかったのである。自らを気遣ってくれる人がいる。横に立って、案じてもらえる喜びを感じ、胸が暖かくなっていたのである
「私に、血縁はありませんが・・・姉、という存在がいるのなら、それはきっと・・・所長のような存在だと信じています」
「・・・大袈裟なんだから、もう」
その言葉に、顔を赤らめ、うつむくオルガマリーを不思議そうに眺める
「?どこか、身体の具合でも悪いのですか・・・?」
「あなたが恥ずかしいことを言うからよ」
「?恥ずかしいこと・・・?」
「いいわ、気にしないで。・・・あなたも、考えておくのよ」
マシュを見上げ、オルガマリーは言葉を紡ぐ
「全てが終わった後、あなたは何をしたいのか。何をすべきなのか。戦いから解放された後、何を望むのか。――しっかりと考えなさい」
それは、純粋な配慮。人として・・・当然の思案
「デミ・サーヴァントだろうと、生まれが何であろうと・・・あなたは、普通の女の子なのだから」
その暖かい心に、マシュは笑顔を以て応える
「・・・ありがとうございます。オルガマリー所長。・・・私は、しっかりと考えたいと思います。自分が何をしたいのか。自分は、何を夢見るのか」
マシュは思い描く。旅が終わった後、これからのこと
・・・そんな中、ふと思い至る
「所長や、先輩は・・・未来を、思い描いているんですか?」
「――そうね。私は・・・カルデアに残るわ。カルデアを、何とかしてしがらみから解放しなくちゃね」
私の戦いは、むしろ戦いの後なのだから・・・と。決意を抱いた瞳で見据える
「とりあえずプロモーションビデオを作るわ。ビジョンは見えてるから。・・・となると・・・」
二人は、顔を見合わせる
「・・・先輩は、何を目指すのでしょうか・・・」
件の先輩、リッカはと言うと・・・
「髪を伸ばそうと思います」
ジャンヌオルタに髪を手入れしてもらいながら、リッカは告げる
「あら、イメチェンですか?あなたもいよいよファッションに目をかけるようになるのね」
「ジャンヌオルタの髪型可愛いしね!私もセミロングぐらいにはなりたいな!」
「あなたなら、なんでも似合いますよ。私が保証します」
「ありがとうございまッ!!いやぁ・・・」
リッカがぼんやりと、天上を見上げる
「世界を救った後の生き甲斐、探さなくちゃね」
「・・・」
無言で髪を手入れする。流れる沈黙
世界を救ったあとは、もう人類悪は不要となる
激動を駆け抜けた龍は、人の世には望まれぬ
その事実を・・・ぼんやりと思い起こす
「・・・」
そんなリッカに、ジャンヌオルタは・・・
「んむぅ~」
頬をつねり、一気に引っ張る
「あなたがどんな決断を選ぼうとも、忘れないでください」
「?」
頬に手を当て、こちらを見られないようにしながら・・・
「どんな未来にも、私は一緒にいますから」
――・・・
「・・・うん」
リッカは、茶化すことも。からかうこともせず
「ありがとう。ジャンヌ」
自らに寄り添うことを選ぶ優しき復讐者に心から、感謝を告げたのだった
「・・・そうだね。ありがとう、ジャンヌ」
「どういたしまして。私のリッカ」
お互いの絆を確かめあった・・・その時
「母も傍におりますよ」
スッと扉を開き現れ
「私も・・・」
天井からせーひつが現れ
「ますたぁ♥」
ベッドの下からきよひーも現れ
「リッカ!月に興味ある!?」
ふよふよとアルテミスがログインし
「御主人様!私もお忘れなきように!♥」
クダヨケから玉藻も現れる
「寂しいこと言わないでよねリッカさん!」
武蔵もうどんを食べながら、エントリーを果たす
「どっから湧いて出るのよあんたらァ!散りなさい!今は私のイベントなんだから!」
「母を阻む権利は誰にもありません!そう!母と子の絆は永遠です!」
「あっ・・・うん。あなたはリッカの傍にね」
「私もマスターの背後に・・・」
「くたばれトカゲ!」
「私も御主人様の天照に!♥」
「鼻息荒いのよ発情狐!」
「私も・・・」
「死ぬまで一緒!死んでも一緒!」
「美少年を頂く旅・・・こほん。食べ歩きに参りましょうよ!リッカさん!」
「マトモなのは私だけなの!?」
「大丈夫!皆まとめて私が面倒見るから!」
「またそういう事言う――!」
どったんばったん大騒ぎなマイルーム
「・・・」
「なんだ?中に入らねぇのかい?」
アヴェンジャー、クー・フーリンがドア前にて笑う
「かしましい中に、男子は不要だろう」
「ハッ、気配りも出来るじゃねぇか。・・・しかし」
「・・・」
「・・・厄介な女しかいねぇな、嬢ちゃん」
「・・・あぁ」
「女運が最悪・・・黒ひげ、リッカたんの行く末が心配ですぞ・・・」
【ヒヒヒ、まぁ、嬢ちゃんならうまくやんだろ!】
男性陣の生暖かい思惑が、リッカに注がれるのだった・・・
・・・最後の戦いの前の、穏やかな一時――
そして、一日が過ぎ・・・
「はーい!じゃあ出席とるよー!リッカちゃん!」
「はーい!」
「マシュ~!」
「はい!」
「愛弟子~!」
「はいっ」
「ロマニ!」
「はいはい・・・」
「シバにゃん!」
「はぁーい♥」
「ギルくーん!」
「ふははは!」
「よーし!皆集まったね!じゃあ始めよう!ラストブリーフィング!時間神殿攻略、始まりだ!」
「「「「「「おーっ!!」」」」」」
・・・最後の、戦いが始まる――
どのキャラのイラストを見たい?
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コンラ
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桃太郎(髀)
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温羅(異聞帯)
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坂上田村麻呂
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オーディン
-
アマノザコ
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ビリィ・ヘリント
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ルゥ・アンセス
-
アイリーン・アドラー
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崇徳上皇(和御魂)
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平将門公
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シモ・ヘイヘ
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ロジェロ
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パパポポ
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リリス(汎人類史)