人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「・・・これが、貴様の詳細だと?子供が書きなぐった黒歴史のノートか?弱点らしき弱点がまるで見当たらぬが?」

『・・・はい。強いていうのなら・・・私は、大地を歩くことは出来ません。海を侵食し、足場を作らねば、大地に上がることはできないのです』

「むぅ・・・海を割るか、大洋を干上がらせるしか無いというわけか。神話時代ならともかく、サーヴァントにそのような真似が叶うかどうか。――マルドゥークの強化、モーセやカルナに一肌脱がせねばならんな。そして・・・『細胞強制(アミノギアス)』。泥に落としたモノを強制的に卷属とする、生命が有る限り死なぬ・・・――流石は創生の女神よ。笑えるほどに出鱈目よな」

『――ですが、あなたたちはこれを乗り越えなくてはなりません。・・・私も、その未来を掴み取ってほしいと願っています。だからこそ・・・』

「解っているとも。些か面食らっただけだ。情報さえ揃えば問題は無い。――マルドゥークも、あれだけでは足らぬな。真に『神』とせねば立ち行かぬか・・・」

『・・・・・・』

「・・・どうした?まだ伝える事柄があるか?話すがよい。当たり前のように解決してやろう」

『――はい。――ビーストと化した私は・・・『天に迫る』事が・・・出来るのです』

「――――――――――――――――――――――――」

『・・・だからこそ、海を封じた『先』をも、皆様は考えなくてはならないのです。ギルガメッシュ』

「――――――(絶句)」

『・・・ギルガメッシュ?』 

「――ふはは!そうこなくてはな!我がウルクを襲う終末に、まこと相応しいわ!!ふはははははは!!」

『――・・・・・・』


改装 決戦へ向けて。慢心?余裕というのだ!

「さて、ウルクの攻略も近い。打つ手は打たねばならぬわけだが・・・」

 

 

玉座に座りながら、英雄王ギルガメッシュは一人ごちる。穏やかな昼下がりではあるものの、その物言いと雰囲気は引き締まり、王ならではの緊張感、威厳を漂わせている。その気概に当てられつつ、エアは言葉を紡ぐ

 

――では、マルドゥークの起動や、メンテナンスをするというのはどうでしょう?かの戦艦は、必ずこちらの切り札となるわけですし

 

《それも不可欠よな。アレは神代に加え、極限環境に置かれようと戦果を叩き出すこちらの切り札。万に一つも手抜かりは許されまい。そして――かの時間神殿においても有用なものだ》

 

――時間神殿においても?

 

王の言葉に、思わず聞き返す。そして、直ぐ様思い至る

 

――大量の魔神柱との交戦が予想される、と言うわけですね?72柱の魔神を全て殲滅しなくてはならない、というような防護が張られている、といったからくりがかの本拠地には用意されていると

 

《然り。時間神殿とやらに辿り着くのが終わりではない。時間神殿に辿り着いてからが始まりなのだ。――手がない訳でもないが、それはマスター次第。我は常に、『磐石な対処法』を用意しておかねばならぬのでな》

 

(その意見には賛成だね。奇跡は起こるものであって期待するものじゃない。――そもそも、すがる奴に奇跡なんて起こりはしないのさ)

 

王の言葉に同意を示しながら、てしてしとキーボードを叩くフォウ。魔神柱のデータを割り出しているのだ

 

――奇跡はあてにできなくとも、準備と用心はけしてこちらを裏切らないはずです。此度の改築、マルドゥークに専心いたしてはどうでしょう?進言させていただきます

 

エアの言葉に頷き、玉座より立ち上がる英雄王。その姿には変わらず、揺るぎない自我、王気がみなぎっている

 

「よし――ならば動くとしよう!攻略まで残り四日、我がウルク、そして魔神柱の苗床を攻略する下準備を磐石にしてくれるわ!慢心を確信にするもまた、王の仕事!万に一つも!我が敗北は有り得ぬと教授してくれるわ!」

 

(頼もしいし、そうできるだけの手段はあるんだけど、オマエの口からその手の単語が出るとどうしても不安になるのは日頃の、いや、別次元の行いなんだよなぁ・・・)

 

王の決起、それに寄り添う姫。そして、呆れながらも愉快げに笑う獣

 

王とは常に働くもの。――最終改築、マルドゥークのメンテナンスが幕を開ける――

 

 

 

 

 

 

「エルキドゥ。これをくれてやろう。補助にでも使うがよい」

 

決起した王はエルキドゥの元へ脚を運び、いの一番に無色透明な聖杯をなげて寄越す。それを受け取った彼の身体に、粒子分解され結合、そして再融合を果たす

 

「――随分と破格な補助だね。接続した途端、僕の性能が一瞬前とは比べ物にならないほど上昇したよ」

 

言葉の通り、彼から感じる魔力、風格が凄まじいレベルで上昇、そして転輪する。天地は震え、大気は軋み、寒気すら覚えるほどの鋭利さが肌を打つほどに放たれる

 

――それは、『界聖杯』。世界そのものを汲み取る聖杯で、中身がない場合は願望機としての効果は無い代わりに、莫大な魔力リソース、サーヴァントの限界突破に使用されます。その効力は、かつて円卓の騎士達が追い求め、歴史に伝わった本物の聖杯とも拮抗し、ともすればそれを上回る最上級の財宝となります。本来は、特異点攻略後にその力を発揮するのですが・・・

 

「攻略せねば中身は満ちぬ、そも世界が狂わねば日の目を見ぬ、無用の長物よ。この手の問題に誂え向きではあったがな。そのひとつ、貴様に預けよう」

 

二人の説明に、変わらずたおやかにほほえむエルキドゥ。涌き出る力に左右されない、柔和なしぐさで口許を抑える

 

「つまり、君達は僕に期待してくれてるんだね?ふふっ、嬉しいな。――任せてほしい。きっちり、正しく兵器として頑張って見せようじゃないか。――エア、もしかしたらギルの役目や見せ場を奪ってしまうかもしれないから、先に謝っておくね?」

 

からかうようにいたずらっぽく笑うエルキドゥにフォウがてしてしと肉球にて攻撃する

 

(こやつ、野心家だ!いい性格してるなぁ。いましめ!いましめ!)

 

「あいたたた、ごめんごめん、冗談だってば。ちゃんと指示には従うよ。マスターもいるしね。――ところで、彼女・・・」

 

「人類悪だ。愉快なことにな。――まぁ、目には目、歯には歯とハンムラビめが定めた。ゲーティアの企みを砕くには最適な人材であろうよ」

 

その事実を聞いて、エルキドゥは目を細める

 

「あぁ、やはり・・・そうなんだ。泥のような激しさと、かつて僕に形を教えてくれた優しさを感じる、不思議な子だと思っていたのだけれど」

 

――マスターは、素敵な人ですよ。信頼するに足る、世界で一番なマスターだと自信をもって推薦します!

 

今まで、彼女が英雄王のマスターであったことに不満や不安など欠片も無かったこと、今まで懸命に戦い続けたことをしっかり、自信をもって説明する。彼女に、偏見や誤解を持ってほしくないという、個人的な願望ではあるのだが

 

――エルキドゥさんが一緒にいるに相応しい、素敵な方だと、ワタシが保証します!

 

その一歩も譲らぬ態度を見てキョトンとしていたエルキドゥが、やがて表情を崩す

 

「――ふふっ。心配しないで。ギルがここまで大人しくしているマスターなのだから、そこは心配していないさ。――うん。解ったよ。防衛対象をまた増やそう。・・・君の言葉なら、信じるに値するとも」

 

――エルキドゥさん・・・

 

「貴様もエアめには甘いな。何処ぞで交流でもしていたか?」

 

その問いに、柔和な笑みと、髪を指でくるくるいじりながら舌を出し、答える

 

「お互い、カタチが定まらない時にね」

 

「?」

 

「――なんでもないよ。ありがとう。大切に使わせてもらうよ。アップグレードした身体の試運転もしたいし、君達にはまだやることがあるんだろう?気を付けてね」

 

エルキドゥはそれだけを告げ『瞬間移動』にて消え去る。残されたのは、木々の囀りと、三人のウルクメンバーのみであった・・・

 

「奴の懸念は消え去ったな。さぞやウルクでは敢闘するだろうよ。――では次だ。それと・・・」

 

――?

 

「あまりエルキドゥにうつつを抜かすなよ?あやつが穏やかなのは待機状態のみだ。起動した奴は・・・色々と、どうかと思うからな」

 

(抜き身の刃は恐ろしい。怪我しないようにね、エア)

 

――は、はい!

 

「ふはは、では行くとするか!ヤツの鳴らしに巻き込まれるも上手くは無いからな!」

 

 

・・・その後、シミュレーターの全てのエネミーが1時間で倒されるのは、また別の話である

 

 

――――場所を変え、SweetSじゃんぬの一席にて

 

 

「カルデアの位相を教えろ、だって?また、それはどうして?」

 

幸せに御菓子を頬張っていたロマンが、王がもたらした条件にて声を上げる

 

 

「カルデアの保護のために決まっていよう。ゲーティアすら掴めておらぬ位置情報、我が把握しておらずなんとする」

 

「や、それはまぁ解るんだけどさ・・・何に使用するんだい?君なら悪用なんてしないと思うんだけど・・・そこはほら、ドクター的にね?」

 

見ればロマンの顔色も体調も変わらず健康そうだ。・・・首筋に何か、小さい痣のようなものが出来ているのは気のせいだろうか?

 

「はぁ・・・魔術王の分際でこの程度の細やかな帰結も理解に至らぬのかドルオタめが」

 

「僕は逆転生なの!君みたいにすごい存在じゃなくなってから頑張ってきたんだから多目に見てほしいな!?」

 

涙目になりながら叫ぶロマンに僅かに目を伏せながら、王はバターケーキを口にする

 

「よいか。我等は次なる特異点にて、ゲーティアめが根城とする神殿の座標を知る。正しき時間軸にない、奴等の苗床へと至るのだ。――それは即ち、『奴等も我等の所在を知る』という事に他ならぬ。我等の座標もまた、黒幕たる奴等に把握される。奴等は神殿、空間を全て己がものとしているのは明白であろう。こちらが星の具現ならば、奴等は宇宙の具現。――不利となるのはどちらか、言うまでもあるまい」

 

その意味を、時間神殿の有り様を最も理解しているロマンは静かにうなずく

 

「・・・そう、だね。その通りだ。僕たちの規模、彼等の規模は比べ物にならない」

 

「故に、手を打たねばならんのだ。――案ずるな。『防衛』が敵わぬなら『殲滅』に移行するまでよ。――その装備も、設備も、備えも。――我等の手中にある」

 

「・・・勝算が生まれると、信じていいのかな?」

 

無論だと断言し、バターケーキを食べつくし、麦酒を飲み干す

 

「我が勝ち目の無い戦いなど招くと思うか?我が手にある総ての可能性を結集し、また我自身が先頭に立ち戦う。その様な奇跡を、貴様らは手にしているのだぞ?」

 

――そして、皆様は自らの手で、足で。この戦いを切り拓いてきた。卑下すること、臆することは何も無いと、ワタシは信じています

 

今まで一度も、楽な戦いなど無かった。ならば――これからも、雄々しく、あなたたちらしく足掻き、戦えば・・・必ず勝利できると。ワタシも、王も・・・信じているのだから

 

「――・・・そうか。うん。そうだよね。・・・解った!」

 

ロマンが片手でコンソールを立ち上げながら、3秒で座標を知らせる

 

「これがカルデアの座標証明だ。――君が何をするのかは解らないけど、それらは必ず・・・僕たちの力になるものと信じているよ」

 

「無論だ。任せておけ。そして噛み締めよ。ゴージャスたる我が、全面的に協力をしてやる事実、その奇跡をな。感涙し、土下座しても良いのだぞ?」

 

「いやぁははは、土下座してもしたりないから遠慮しておくよ。何せ、一度や二度じゃ返せないくらいお世話になっているからね!」

 

そんな気安く他愛ない会話を繰り広げながら、ロマンとギルガメッシュ・・・同じ眼を持つ二人は、様々な事を話した。互いの治世、互いの趣味や、今のトレンドなどを

 

「マギ☆マリに言われるんだ。とりあえずなんとしても生き残りなさい。そして幸せになりなさいってね。――彼女にそんな言葉をもらえただけで、僕は幸せなんだよなぁ・・・」

 

「(憐れみと生暖かい眼差し)」

 

「な、なんだい!?僕は変なことを言ったかい!?」

 

「いや、別に。・・・ネットとは業の深いものよ」

 

――そう言えば、マギ☆マリをプロデュースしているマネージャーは誰なのでしょう?アイドルならばいるはずですが・・・

 

その様子は、気のおけない同僚そのものであったという・・・

 

 

 

 

一息の休息を経て、ギルガメッシュは格納庫へ向かう。――マルドゥークのメンテナンスを行うための時空、空間歪曲を施した、特注ドックに脚を運ぶ

 

 

『エーテル精製メインエンジン『トゥプシマティ』、稼働問題無し。界聖杯6つ、問題なく稼働。大気圏活動、問題ありません』

 

シドゥリの報告に耳を傾け、各種部位の安全、状態を点検していく

 

「各種武装を報告せよ。使えぬ、などとは話にならん。委細要領良くな」

 

英雄王の言葉に、即座に頷き資料を作成し、粘土板にし手渡す。其処には、完全駆動し、解放された様々な兵装備の詳細が展開されていた

 

 

 

確率変動弾――これらは『確率』が働く事象を全て良好な結果にしもたらすという概念付与だ。『効かない』という事象を『効かないという事はない』という事象に塗り潰し、総ての防御を突破する概念を付け、放つというもの。あらゆる防御を、『突破する』という事に長けた掟やぶりの兵器である

 

「――完全なる結果には効きが悪いのが難点よな。神体には作用すまいよ」

 

王の言う通り・・・『完全無欠の法則』を突破することは叶わぬだろう。あくまで、同じ土俵に立つものにしか効果はあるまい

 

掌式昇華魔術グガランナ――至極単純だ。エネルギーを右の掌に叩き付け、無限の熱量にて昇華させるという単純明快な術式。単純ゆえに絶大な理をもたらすその必殺技。――膨大なエネルギーは、ティグリスやユーフラテスを蒸発させる程の破滅的な威力を誇る、という触れ込みである

 

 

「津波ですら蒸発が叶うだろうよ。まぁ当然よな。ウルクは日常的に滅亡が傍にある。その要因は取り除かねばならぬからな」

 

『七度滅びようと八度蘇る。それが、ウルクのモットーですからね』

 

――ウルクってすごい!改めてそう思いました!

 

 

「光速ミサイルは特に説明はいらんな。星斬剣も、星の触覚、代行者ども、死の星、帝国等を切り捨てるためのもの。――となると、天元螺旋腕イルカルラか」

 

・・・天元螺旋腕イルカルラ。それはマルドゥークの左手に展開される、冥界にまで繋がる大穴を瞬時に掘削するための超巨大ドリルである。マルドゥークの数倍の巨大さを誇るドリルが現れ、敵対者を周りの大地ごと抉り、叩き落とす為の必殺武装。――だが、これは諸刃の剣でもある

 

「冥界の法はエレシュキガルのもの。自らが冥界に囚われる前に離脱しなければ、脱出は困難となる。――地形も著しく破壊される故、環境に良いとは口が裂けても言えぬ。それに『そこまでして落とさねばならぬ相手』というのも中々おらぬゆえ――あまり使い道があるとは言えんな」

 

『私にまつわる名前を冠していながらそれは酷いのだわ!?』

 

「仕方あるまい。冥界を頼る事など滅多に起こり得ぬのだからな。まぁ、出番があれば幸運と思うがいい」

 

――次は、『次元の可能性を観測する』コンピューター、アン。『遮断』による防壁を展開する相転位防御壁、ナンム・・・惑星転移機構、イナンナでしょうか

 

一通りの機能の確認を終え、マルドゥークが最終調整へと入るため、ドック上層にあげられる

 

「マルチロック機構、機動力、推進力、マニピュレーターの強度を上昇を最優先とせよ。メソポタミアを飛び回るのだ。余波で有象無象を蹴散らす程度で丁度よい」

 

『承知しました。――では、英雄王』

 

「うむ。――シドゥリ、エレシュキガル。これより貴様らの総力を上げ、『マルドゥークの権能』を下ろし、『マルドゥークの疑神化』を果たすがよい」

 

即座に頷き、慌ただしく準備に入る。同時に英雄王は蔵より、マルドゥーク神が所持していたと言われる粘土版『トゥプシマティ』を取り出す

 

――マルドゥークの、疑神化・・・かの戦艦に、マルドゥーク神の権能を下ろす・・・ということですか!?

 

エアの瞠目に、確信と愉悦に満ちた様子で頷き、トゥプシマティに手を置く

 

《神代のみにおける秘技ではあるがな。――神代の直中であるメソポタミア、古代ウルク。まず間違いなく敵は神、女神の類いだ。そうでなければウルクが滅亡の危機になど至りはすまい。――目には目、歯には歯、神には神、権能には権能を用意するまでよ。マルドゥークを『神体』とし、カルデアそのものを『都市』とさだめ、その力のみをマルドゥークに降臨させ、神々を滅する神としての力を振るう》

 

――神々を、滅する神・・・

 

《神に頼るのは些か気に食わぬが・・・我の所感と、仕事の出来は別のもの。あらゆる手段、あらゆる財を振るうがゴージャス戦法。今更異論を唱える必要はどこにもあるまい。――ウルクの明日がかかっているのだ、失敗は許されぬからな》

 

強い決意と共に、ギルガメッシュは右手をトゥプシマティに置き、魔力を練る

 

《エア、お前も唱えよ。神の力を下ろすのだ、我の力と、人たるお前の祈りがいる》

 

その言葉に、目を丸くするエア

 

――ワタシの、祈りですか?

 

《神には信仰が届かねばならん。神そのものではないとはいえそれは変わらぬ。――人がおらねば神は立ち行かぬ。――この手段は、お前がいればこそ取れる反則手なのだ》

 

王の言葉に、ゆっくりと頷く。身体を寄せ、王の手に手を重ねる

 

《唱えよ。『彼の頭髪、それは御柳、彼の頬髭、それは扇。彼の足首、それは林檎の木。彼の男根、それは蛇。彼の腹、それはリリス太鼓。彼の頭骸骨、それは銀。彼の精気、それは金』》

 

――彼の頭髪、それは御柳。彼の頬髭、それは扇、彼の足首、それは林檎の木。彼の男根、それは蛇。彼の腹、それはリリス太鼓。彼の頭骸骨、それは銀。彼の精気、それは金――・・・

 

 

王と姫の詠唱が、マルドゥークの格納庫に広く響き渡っていく。同時にマルドゥークの周りを灼熱の炎が、荒れ狂う洪水が、巻き起こる嵐が取り巻き、包み込んでいく

 

『――伝承に曰く。『かの神は、最も高き山を潰滅させ、海の波を狂ったように掻き分ける。四つの目と耳を持ち、口が動けば炎を吐き出し、七つの悪風、洪水を武器とし、他の神々10柱分の力を持ち、その二倍の実力を誇る』という、あらゆる神々の頂点に立つ『英雄神』・・・』

 

『――あの暴れん坊が・・・人類を、護る為に・・・』

 

その光景に打ちのめされるシドゥリ、複雑な表情のティアマト

 

 

・・・マルドゥークの権能降臨の儀式は、朝から始まり、丸一日を掛けて行われた・・・その成果を顕現させる場は、もうすぐそこまで来ている

 

 

・・・メソポタミアを舞台とした『人と神々の決戦』は――すぐそこまで迫っているのであった――




『ウルクの下に冥界をですって!?』

「仮定の話だ。どうだ、叶うか?そして期限はいつまでかかる?」

『で、出来ると考えて・・・十年はかかるのだわ。クタ市だって半年はかかるのよ?あんな都市となると・・・』

「ぬぅう・・・お前が言うならばそれが真として相違あるまい。・・・ティアマトの観点からして、真っ先に大地の心臓たるウルクを狙いにくるは確実。クタなど目もくれぬ。――冥界に叩き落とす案は使えぬか・・・」

『お母様が、どうかしたの?』

「いや、気にするな。もしもの話よ」

『・・・?』


玉座

(サーヴァントとなった者にはいくらか強化がかかる例は確かにある。だがそれがティアマトに付与されるとは思いもせなんだ。――()たる女神が(アン)に近付くとは誰が思おう。――先んじて知ることが出来たと前向きに考えるしかあるまい。・・・しかし、それでは冥界の刑罰に『神体』を晒し、一日も経たず世界は泥に覆われよう。――・・・しかし、中々の難題よな。冥界には落とせぬ、さりとて地にて殺すことも叶わぬ・・・どうしたものやら・・・)

――王?

《む。――エアか。儀式を終え、疲労困憊であろう。早々に休めと伝えた筈だが?》

――王が思い悩んでいる中、ワタシが眠る訳にもいきません

《・・・――》

――王が答えを導き出せぬ難題、ワタシが答えを出せるとは思えません。ですが・・・せめて、おそばにいさせてください。・・・きっと、気休めにはなれる筈と・・・思いたいです

《――ふん。何処までも甲斐甲斐しいものよ。・・・そうさな。少し一息入れるとするか》

――はい!バターケーキを作ってきますね!

《・・・悩みを表に出すとは、我も甘くなったものよ。――盟約を果たすに、あとどれ程かかるのやら――、・・・――!》


~~

人理を取り戻したら、いつか――皆で星を飛び出して、果てしないソラにこぎだしませんか!?


~~


《――――》

――バターケーキ、出来ました!・・・王?


《――・・・ク、ははははははははははははははは!!ふはははははは!!はははははははははははははははははははは!!はははははは!!そうか――そういう事であったか!!その手があったか!ふはははははは!!これならば天に届こうとも――いや、天に届くからこそ有用というものよ!まさに起死回生の妙手よな!!》

――?、???

《でかしたエア!やはりお前は――我が唯一無二の姫に相応しき魂よ!》

――あ、あ、ありがとうございます!

《よい!ちこうよれ!我が難題に活路を与えた褒美に――我がお前にバターケーキを食べさせてやろうではないか!!》

――えぇえぇ!?嬉しいですが、畏れ多いです――!

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