『英雄王!朝ですよ!出立のお時間です!さぁ頑張りましょう!』
「ンン――」
快活な声に瞼を開ける。辺りにはうっすらと朝の日差しが木々の間から差し込んでいた
「今は何時だ、ジャンヌ」
『はい、六時半ですね!皆さん起きて、慌ただしく仕事を始めていますよ』
快活な声、ジャンヌだ。本当に目覚ましをしてくれるとは
「……そうか。凡俗はこのような早朝からもあくせく働かなければたち行かんのだな。マメな事よ」
ハンモックより身体を起こす。そのまま黄金の波紋に回収し、歯ブラシセットで歯を磨く
「……よもや貴様、本当に我を毎日叩き起こす気か?」
『そのつもりですが?「助かるよ!寝起きなんてデリケートな時間を対応するなんてとんでもない!殺されたくないから是非お願いする!」とロマンさんに頼まれましたから!』
「あの甘味医師め……面倒事をルーラーめに押し付けるとは」
気持ちは解る。自分だって寝起きの悪さで起こしにいったら処断なんて考えたくもない
そもそも王の眠りを外的要因で妨げる、なんて考えもつかないだろうけれど……本来の英雄王なら、どうなるかは予想は何となくつくのが恐い
「はぁ……まぁこれも集団生活の宿業か。修学旅行でテンションの高いバカどもに叩き起こされるのが御約束であろうからな……」
『ルーラー?真名で呼んではくれないのですか?』
「は?」
聞き直す。
――そういえば、昨日はうっかりジャンヌと呼んでしまったのを思い出す
『良いのですよ?田舎の小娘、よりジャンヌのほうがいざというとき呼びやすいでしょう?』
「うつけか貴様。真名で呼ぶなぞなんのメリットがある。いざというときとはなんだ」
『田舎の小娘、は八文字、ジャンヌは四文字!半分も短縮されますね!私が入り用になった際には手軽に呼びやすくなるはずです!旗を振ってほしい時とかに!』
「貴様のマスターはリッカであろうが。第一我にそんな気安い振る舞いは――」
『嫌ですか?』
――ぐ。と言いよどむ。言葉飾りを気にせず本質を突かれると非常にやりづらい
閉口してしまう器。かわりに話す事にする
「……まぁ、田舎の小娘、とよんであちら側とこちら側を混乱させるのも上手くはない。戦場にて漫才を繰り広げるのは致命的な隙になるやも知れぬしな。まぁ今の我は隙など潰しにいくが」
「……よし、共に歩く向こうをルーラー、甲斐甲斐しい貴様をジャンヌと分ける。カルデアに召喚されし英霊だ。この際高らかに真名を謳うがよい」
うん、こちらとしてもジャンヌが呼びやすい。田舎の小娘、なんて早口だと噛みそうだ
――話を聞いてくれたお礼もかねて、向こうが不快で無いならいいだろう
『はい、英雄王!宜しくお願いいたします!頑張りましょうね!』
ブツリ、と通信が切れる
「……叩き起こしたらすぐに下がる、か……農家の娘は忙しないのだな。我的にはどうでもよいが」
~
「ギル、おはよう!」
「うむ。よく眠れたか?疲労を残してはおるまいな?」
二人に声をかける。目を合わせて笑う二人
「うん!持ち運びカプセルルームのベッドでぐっすり!」
「なんだか変な感じです。地面の上で寝るものと思っていたのですが」
「地べたに臥伏など大した休息にはならぬ。我がいる以上、みすぼらしい真似は許さん」
二人とも顔に疲労は見られない。しっかりと眠れたようだ。良かった
「これぞホワイトキング、部下を思いやる理想のキングなのだナ。ゴールドなのにホワイトとはこれ如何に?ホレ、フレンチなトーストだ」
キャットに焼きたてのフレンチを出される。香ばしくいい匂いが鼻をつく
「……貴様が作ったと?」
「然り、夜のドンファン、朝のキャット。おはようからお休みまであなたの胃袋をがっしり仕留めるがモットーなのだな。食えゴージャス」
「……ゴージャス?」
器がその単語に、ピクリと反応する
「うむ、豪華絢爛、カルデアを背負ってたつフラッシュなキングに与えられるレアクラスなのだ。気に召したか?ブルジョワがよいか?」
「……ゴージャス、ゴージャスか……フハハ、よい響きだ!よいぞ、特別にそのパン、口に運んでやろう!」
上機嫌になる器。気に入ったのだろうか、ゴージャス
「本当に美味しいよ!」
「はい、キャットさん意外な一面です!」
「キャットさん、すみませんがおかわりを……」
口々に褒める三人
この猫、……女子力が高いのか
「ふっ、思い上がったな珍獣。下賤の連中に好評を得たからといって王に通じるとは思わぬこと――」
パクり、と一口食べてみた
――
「どうだ?ウマイか?それともウマイか?」
「……やるではないか……珍獣」
「ニャハハ、褒めるな照れる。昨日料理を拒否されたと赤マントが凹んでいたからな。ゴールドの料理は合作である」
「贋作にしては上出来だ。及第点をやろう。……なるほど、どうせなら世話を任せるような英霊どもを呼び寄せよとは思ったが……見た目では測れぬものよ」
サーヴァントは食事が必要ないとはいうが、自分はまだ食事を切り捨てるほど慣れてはいない、ありがたく、いただこう
「よし。珍獣、貴様にはウルクの味付けを伝授してやろう。足らぬ頭で記憶せよ」
「うむ、キャットは博識である。一日も保てぬ記憶野に詰め込むぞ」
「……そこはバーサーカーなのだな」
~
三人で方針を話し合い、まずは情報収集をすることを決めたらしい。
『オルレアンにいきなりの突撃はよくないわ。あちらの戦力が把握できていないし、聖杯を誰が所持しているかも解らない。ルーラーの真名看破と探知も機能していないみたいだし』
オルガマリーが概要を説明する
『ジャンヌが処刑されて間もない時期だから、そちらのジャンヌはサーヴァントとしての自覚が薄いらしい。新人のような感覚なんだってさ』
「なるほど、合点がいった。サーヴァントにあるまじき狼狽えようはそれか」
聞けば、聖杯戦争を経ずに誰かに聖杯が渡る、『勝者を決していないのに聖杯が誰かの手にある』というバグを修正するため、いくつかのサーヴァントがカウンターで召喚されているらしい
「すみません、英雄王。貴方のお力がありながら遠回りな作戦を立てることをお許しください」
「慎重な運びだ。それでよい。身の程に合った選択は恥ではない。急がば回れというやつよ」
――そこで、まずは情報収集に専念するらしい。近場の町、ラ・シャリテに向かう方針のようだ
「幸い土地勘は失われていません。あの鉄馬ならば、迅速な進軍が可能です。どうか英雄王、その威光を今一度私達に与えてくださいますか?」
嘆願するジャンヌ。サーヴァントとしての仕組みは頭にいれたつもりだが……こちらのジャンヌは、落ち着いた気品を強く感じる
「やはり人を変えるは環境か……」
「はい?」
「独り言だ、忘れよ。マスターもマシュもよいな?」
「うん!」
「もちろんです。楽に逃げるな、が私達のモットーですから。地道なことを積み上げていきましょう」
『こちらにも異論はないわ』
『ギルギルマシンがあれば20分でつける距離だ。すぐに出発しよう!』
「よし、それでは出立だ!寝惚けた頭を叩き起こす最高の疾走を、このゴージャスな王が見せてやろう!」
――気に入ったのか、ゴージャス?
――
「フハハ、今日も我の愛馬は快調なようだな!流石は我、整備メンテも一流よ!」
「主よ、どうか我等の疾走をお護りください。唸りをあげて爆走する我等が道行きを見守りください。事故なき様に、無事に目的を果たせるように――我等を御護りください」
両手を合わせて祈りをささげるジャンヌ
「フォウ!(もう対応したのか!さすがルーラーだ、身体はあんなに柔らかいのに)」
『フォウ君、今よこしまな事を考えなかった?』
「フォウ!キュルル(特に張り出た胸は柔らかかった。マシュに勝るとも劣らない柔らかさ、大きさだったよ。マシュがマシュマロのような沈みこむ柔らかさだとすれば、ジャンヌは張りのある餅だね。リッカはしなやかさに秀でているからノーカンとして、皆思っているはずだよ?そんな異性を惹き付ける素敵なボディで裁定者は無理があるって――)」
「何を言ってるのですかフォウさん!?」
「フハハハハハ!そら見えてきたぞ!小さい町だが、存分に情報を集めるがよい!我は手伝わんがな!ゴージャスに待つとしよう!」
――やっぱり気に入ったのか、ゴージャス
――これは、もしもの話だが
あと少し遅ければ、ラ・シャリテは無事ではすまなかった
あと少し行軍が遅ければ、ラ・シャリテは火に焼かれていた
――王の行軍が、図らずとも
1つの町の存続を、繋いだのである
「ボクはおっぱいには一家言あるよ?おっぱいソムリエと呼んでもいいよ?(フォウ!フォウ!キュー!)」
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