人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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Aaaaaa、Aaaaaa


・・・あなたたちの未来は、あなたたちのもの・・・もう、私は必要ない・・・


Aaaaaa――――


・・・――泣かないで、母さん


・・・――?


そうだ。顔をあげよ、前を向くのだ、母よ


・・・――あなた、たちは・・・


大丈夫。この世界には・・・彼等がいる。未来を望む、彼等が


世界は永遠である。――そなたが愛した子らも、また


――・・・・・・


召喚 決起編

「さて、何の拠り所もない完全な運任せ。何が来るのやら」

 

 

 

楽しげにグラスを揺らす英雄王。アルトリア召喚の儀は、一応の決着を迎えたためその振る舞いはどこか穏やかかつ緩やかだ

 

 

――ほ、本当にランダムガチャガチャめいてきましたね!英雄を相手に物凄く罰当たりなような気がしますが・・・

 

 

(構わない構わない。先人が残したものを後人が使うのは当然の権利であり、先人はそれを許容してしかるべきなんだ。だからこそ、英雄は召喚に応える。最新の世界に生きる命の助けとなるために)

 

――先人が残したものを・・・

 

 

《単純に、呼ばねば英雄は戦えぬというのもあるがな。いくら強かろうがそれは終わった生命。時代を切り拓くような生存力は持ち合わせぬ。――だからこそ、人間は、生命は足掻かねばならぬのだ。先人が重ね、研磨し、積み上げた紋様を紡ぐためにな。――まぁ、受肉の一つもすれば話は変わるがな》

 

英雄王、フォウの言葉を反芻する。――先人は、後進の助けとなるために未来を紡ぐ

 

――なら、ワタシ達も頑張らなければなりませんね!世界に生きる全ての為に!世界を取り戻さなくては!

 

それこそ、自分が果たすべき功績、為すべき事だ

 

後進の生命全ての為に、その生命全てが生きる土台を取り戻さなくてはならない

 

 

そこから先に紡がれる、生命の絢爛たる物語を目の当たりにし、――愉悦、するためにも

 

 

《よくぞ言った。――では、我が庭を整理するための戦いを行うとするか!》

 

パチリ、と指を鳴らしサークルを回す。召喚術式が起動し、回り、輝きを強く強く増していく

 

 

「誰が来るのやら・・・?おおっ!?」

 

コーヒーを吹き出し、ロマンがコンソールをいじる

 

 

「誰?誰!?」

 

「霊基パターン、ランサー!凄い反応だ!これは――」

 

目を見開き、その降臨を見守る一同。そこに現れし、サーヴァントとは――

 

 

「――(ローマ)が」

 

天性の肉体。神を表す紅き瞳。総てを受け入れる度量。つまり――ローマ

 

「――ローマだ」

 

輝ける神祖。――建国王ロムルスがカルデアに降臨せしめたのであった――

 

「ローマだ――おおっ、ローマだ・・・!!」

 

無条件でひれ伏し崇めるリッカ。偉大すぎるローマに平身低頭の身で尊顔を拝する

 

「ローマを感じたぞ!もしやこのローマすぎるローマはぐおぉあぁあ!?神祖、神祖ロムルスではないかぁあぁ――!?」

 

即座にリッカの上にて重なり正座で頭を下げるネロ。ちなみにスタジオの扉は開けっぱなしだったので練習中だったエリザベートの歌をたまたま通りかかったスカサハと兄貴が耳にし死にかけたのは別の話(コンラの耳をスカサハと兄貴が塞いだため直撃した)

 

――神祖、ロムルス・・・!

 

忘れもしない。無銘であった自分に暖かいお声をかけ、世界に足を踏み出させてくださった偉大なる御方・・・!

 

《よもや今になって召喚に応じようとはな。――此処が、天下分け目の戦いと感じ取ったか》

 

王が愉快げに玉座にてその様子を眺める。新たなる神の有り様を示すもの、国を造りし偉大なる者を、王は高く評価し、また有用だと裁定を下した

 

「――我が子らよ、顔を上げよ」

 

優しく目線を合わせ、問い掛けるロムルス

 

「世界があまねく照らされる日は近い。滅びの風は流れ、また新たに生命は芽吹く。――そなたらの尽力により、ローマは此処に復興を間近としている」

 

「ははあっ・・・!」

 

「ロムルス・・・あなたに、ローマそのものたるあなたにその様な言葉をいただけるとは・・・!」

 

畏まるリッカ、涙ぐむネロ。その新しきローマ、良きローマを優しく見据え、頷く

 

「星は潰えぬ。如何なる獣性を浴びようとも、そなたらの輝きは永遠である。――忘れるな。『悪』の真実を、違えてはならぬ。――この世にローマでなきものは存在しない。星を越え、遥か彼方に往こうとも。その胸に輝きが有る限り――全ては、ローマなのだ」

 

「「神祖ロムルス・・・!!」」

 

あふれでるローマに打ちのめされ、涙を流す二人。静かに立ち上がり、ゆっくりと退室する

 

「あ、あの・・・案内は必要ですか?」

 

オルガマリーの言葉に、ロムルスは穏やかに笑み、肩に手を置く

 

「――自らを愛せよ。お前の核が如何なるものであろうとも、生命が芽吹き、根付いている。ならば――ローマに他ならぬ」

 

「は、はい・・・!」

 

有無を言わせぬ優しき肯定に、背筋を伸ばすオルガマリー

 

「・・・カルデアには数多の王が集ったが、貴様ほど懐の深い王はいるまいよ」

 

笑いながらも真剣に告げる王に向き直るロムルス

 

『――獣よ。お前の生命の果ては未だ彼方なり。忘れるな。自己の献身は、涙を切り離せぬ物である』

 

(――・・・)

 

『そして、学び続け、愛し続け、愉しみ続けるローマ。――尊き、姫なるローマよ』

 

――!は、はい!

 

『お前の見いだした答えこそ――神に突き付ける人類の抱く結論に相応しきものである。――いつか至る回帰の獣の、手向けと救いとなるであろうソレを、手放さぬよう進むのだ』

 

ロムルスは、フォウとエアの行く末を暖かく照らす。そして――

 

「――英雄王。・・・ウルクもまた、ローマである」

 

「ミーム汚染は止めよ!ウルクはウルクであろうが!」

 

問答無用の抱擁に若干ペースを乱され脅威を感じる英雄王。声が荒ぶるがロムルスは首を振る

 

「いや、ローマでなきものは存在しない。ローマの、人類の基礎となりしウルクは、メソポタミアは・・・ローマに他ならぬのだ」

 

揺るぎない確信を以て告げられる深遠なるローマ哲学に、脱力し息を吐く英雄王

 

「――もう、なんでもよいわ・・・ともかく、そこのキメラボイスを引き取るがよい」

 

「だからキメラボイスではないっ!余はもっと可愛く雄々しいであろう!獅子とか~。よいぞ~。獅子とか~」

 

「キメラのメインって獅子じゃないの?」

 

「うむ!そうであったな!やはり獅子はよい!なーぜ完成したフォルムに不純物を混ぜるのかてんでわからぬ!あの聖女の辛味並みに解らぬ!」

 

(解らないのはあんたのセンスなんだよなぁ。グロテスクの語源はあいつだよ、エア)

 

――えっ!?

 

予想外の所から予想外の起源を聞き、口を抑えるエア

 

《まぁ些か意味は違うがな。現代のソレは『おぞましきもの』との用法だが、起源のそれは『理解が及ばぬ意味不明なもの』としての意味が主であった》

 

――どちらも、芸術を嗜む者へ与えられる称号ではないと思うのですが・・・

 

(しょうがないよ、誰にでも向き不向きはある。――声はもう最高にキュートで愛くるしいのに、ネロというフィルター入れたら御覧の有り様だよ。下手に歌うって上手く歌うより難しいんだよね。声帯の英霊さんお疲れ様です)

 

愕然とするエアに、フォウフォーウと声をあげ歌い出すフォウ

 

《――叫ぶのは良いが、喉を潰すなと言うに。代えの効かぬ唯一無二の声帯を酷使せねばならぬというのが世知辛き実情よな》

 

英雄王が喉を労るように擦る。そこから出る声音を慈しむように

 

――英雄王の笑い方は真似できませんからね~。ふははははは(棒読み)とワタシはなってしまうのですが、こう、英雄王のは・・・ふははははハハハハハァ!!と、圧力と愉快さが違う、といいますか。聞いているだけで勝利と安心を確約させるその笑い声はまさにカリスマと王気の具現、ギルガメ高笑いとでも名付けますか。それが素晴らしく、誘い笑いを引き起こし皆が笑顔になると言いますか

 

(エア)

 

突然フォウが取り寄せた謎の本のページを差し出す

 

――?

 

ビリリ、と破いてみると・・・――

 

《ふははははははははははははははは!!これが笑わずにいられるか!!傑作だァ!!エアよ、それはな、優雅めの魔導書なのだぞ?》

 

――えっ!!?

 

《よい!気にするな!どうせ用足しにしか使えぬ愚書だ!しかし貴様、いつの間にそれを持っていたのだ!》

 

(ギルガメッシュ)

 

イケボにて二人揃ってページを破く

 

《ははははははははは!!ふははははははははははははははは!ははははははははは!!あー、っああ、っあぁ・・・!(引きつけ)》

 

(ギルガメッシュ(つマーリンの美人画メモ帳))

 

《おいおい――(ビリッ)ふははははははははははははははは!ははははははははは!わははははははは!!》

 

(プフー、フフー。きゃははっ)

 

紙を破きながら笑い転げる二人。ツボにはいったようだ

 

――これもまた、愉悦だというのですか・・・!

 

取り合えず、破いた紙を丁寧に拾うエアであった。優雅な人、マーリン・・・申し訳ありません・・・

 

「ネロよ。来るがよい」

 

「よーし!余が案内するぞ~!」

 

 

そんな中、穏やかに部屋を後にするネロ、ロムルスであった・・・

 

「さっきから肩を震わせているけど・・・大丈夫かい?」

 

ロマンの心配に、案ずるなとばかりに手を振る英雄王

 

「・・・うん!なんだか調子悪そうだし、今日はここまでにしようか!さぁ皆、スイーツジャンヌに行こう!僕が奢るよ!」

 

「マジで!?やった!マシュはカプセルの時間だから、なんか買ってあげなきゃ!」

 

「そうね。――フルーツタルト、マシュは気に入るかしら・・・」

 

想い想いの主観を洩らしながら、それぞれ部屋を後にし、スイーツを楽しみに胸踊らせる一同

 

「はぁ――笑った笑った。うむ。無駄な所で安息を得た気がしないでもないが、今日は此処までにしておくか?シドゥリめに睨まれるのも堪えるからな」

 

笑いながら玉座を立ち、杯を放り投げ回収する。スタイリッシュ容器片しとして英雄王の777の隠し芸の一つだ

 

(イシュタルを呪い避けとして使った事に弁明は?)

 

《――シドゥリには言うな》

 

(ただで口を塞げと?黄金の王もケチなんだねぇ?進言を足蹴にされちゃいましたと知ったらシドゥリさんどう思うだろうなぁ?)

 

ニヤニヤと笑いながら揺するフォウに歯噛みする英雄王

 

《えぇい、獣風情が図に乗りおって!シドゥリはマルドゥークのメインプログラム、ヤツ無くして巨神はまともに駆動すらせぬ!ストライキでも起こされマルドゥーク起動せず等になったらウルクの民を害させぬ結末に至れぬではないか!『マルドゥークの疑神化』の儀式も終えておらぬのだ、速まるな!――飴とバターケーキで手を打ってやろう!》

 

(よし、エアとボクの分な)

 

《足許を見おって――!人類愛に変じようと、小憎らしい態度は変わらぬな!》

 

当たり前だろ、とフォウは鼻を鳴らす

 

(ボクだって次は本気を出すんだ。メソポタミアをボクの力で満たすくらいの全力を出させるくらいの働きをさせるんだから投資しろよ投資)

 

《――ほう?》

 

――フォウ、そんな事が可能なの・・・!?

 

(ふふっ。お楽しみさ)

 

フォウは胸に飛び込み、すりすりと身体を預けてくる

 

・・・フォウが語らないなら、自分は信じるだけだと・・・優しく、抱き返した

 

「さて、では――」

 

王もまた、後にしようとしたその時・・・

 

 

「――兵器には、直衛やサブパイロットが不可欠だ。それは君も理解しているんじゃないかな?」

 

 

・・・その声がした瞬間、王は弾かれたようにサークルに目をやる

 

光っていた、回っていた。召喚が始まっていた

 

「――ウルクは広大だ。誰も失いたくないというのなら、兵器は過重や過剰なくらいが丁度いい。四つの目、四つの耳、神々10柱分かつ、その二倍の力を持つ原初の英雄神、マルドゥークの力を借りるのなら、僕の存在はサブ、補助にしか成り得ないだろう」

 

たおやかな声が、響き渡る

 

――あな、たは・・・

 

 

『――うん。我慢できなくて来ちゃったよ。許してほしい。だって――嫌だもの。君の心が曇るのは。君を喪えば、また彼は深く沈んでしまうだろうからね』

 

その声は、知っていた。ファーストオーダーの頃から、響き、見守ってくれていた優しく、穏やかな声・・・

 

『僕の勝手なお願いに、君はずっとずっと応えてくれていた。――君は最早無二の存在だ。ならば僕は、君と、彼を防衛する兵器となろう』

 

召喚が、収まる

 

 

「――やぁ。久しぶり。改めて、自己紹介しようかな」

 

たおやかな表情、美しき緑髪。金色の瞳――

 

「――――フッ。界聖杯の担い手が、想いもよらぬ所で現れたわ・・・――!!」

 

其処に現れしは・・・英雄王の、無二の友・・・――

 

「おはよう。こんにちは、こんばんは。おやすみ・・・いや、起きて?僕は何処にでもいる・・・いやごめん、気に入ってるんだこの語り。こほん。――僕はエルキドゥ。君達の愉快な笑いに合わせて起動したよ。エアに、フォウくん。そしてギル。宜しくね。あ、錆び、汚れのクリーニングは任せておくれよ」

 

いたずらっぽく笑う、神代最強兵器エルキドゥが・・・此処に起動したのであった――




『――・・・』 

「お母様・・・?」

「――嘆いてばかりも、いられない」

「?」 

「私にも、できることを・・・」

『あいうえおの本』

「お母様!?」

「まずは、コミュニケーション・・・あ、あい、う、えお。あ、あ・・・Aaaaaa――」

「突然の歌唱は震えが来るのだわお母様――!」



温泉

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(・・・静かだ・・・静かすぎる。こんな穏やかな時間はいつぶりか・・・いつぶりだ・・・ガウェインがポテトを潰す音も、トリスタンの飛翔も、王の環境破壊も、何もない、穏やかな・・・)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(・・・いつ頃出ればよいのだろうか・・・)

『五時間ほど入り死にかけたところをベディに救出された』


「フォウフォウ、フォウ(ボクについてこい!)」

「まっ、待ってくださいフォウさん!私はまだ未熟な剣士、そんなに早くは!」

「おや、何をしているのですか?」

「騎士王!それがフォウさんが・・・」


「フォウ!(ここだ!)」

「フォウさん・・・?」

「――おや、こんにちは、レディ。ベディの簡素で美味しい旅立ちお弁当が入り用ですか?」

「ベディさん!?ここは・・・」

「個人経営の売店です。お弁当を用意していますよ。いかがですか?」

「は、はい!いただきます!」

「――フォウ。あなたは親善大使も兼ねているのですか?」

(尊い出会いをメイクするのが、今のボクの趣味だからね)

「クスッ――あなたはやはり、プリンセスの守護獣なのですね――」

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