「ぐっ――――」
「その傷じゃあ剣はふれねぇ。観念しな。――奇襲かけて拍子抜けだぜ。まさかギフトの一つも貰ってねぇとは、小賢しいテメェらしく無かったな」
「――モード、レッド・・・」
「・・・殺しはしない。我等は共に裏切り者だ。円卓の同胞を斬り倒した時からな。だが――貴様の奸計は捨て置けぬ。王の補佐として行った非道、償ってもらうぞ」
「バカ、余計な事言うんじゃ――」
「・・・裏切り者、だと?私が?お前と同じ?」
「っ――」
「はは。ははははははは。ははははははははははははははははははははは」
「――アグラヴェイ、ッ!?」
吹き飛ばされるランスロット、モードレッド。死に体ながら、それを感じさせぬすさまじき気迫のみで二人を押し返す――
「
「っ、なんだこいつ、どこにこんな――」
人理定礎の一つを奪いし獅子王の手により、ついに現れた『最果ての塔』。絶大なりし神の業の為に、人の手による破壊は不可能な究極の王の守護にして偉容
それを砕かねば獅子王へ謁見は叶わず、未来を手にすることは叶わない。――その結末ごと、完膚なきまでに粉砕するため――
「者共!ここが我等の最大の決戦と心得よ!神の権能を討ち果たせなくば、人という種に未来はない!」
ギルガメッシュの号令が、一同を駆り立て、それぞれの偉容と威厳をかけし攻撃、鋼の嵐が降り注ぐ――!
「解っておるわ。――我が庭園が完成した以上、我等の陣営の勝利は決まっているようなもの。哀れな神よ、己の選択を悔やむがいい――!」
十一の迎撃術式『十と一の黒棺』による断続的な魔術攻撃。一つ一つが対軍攻撃に匹敵するレーザー光線が間断なく叩き込まれる。20mを越える漆黒のプレートが絶え間なく移動し、照射し、放たれる『量』による蹂躙攻撃
7500メートルという超上空から放たれるその庭園の威厳が、塔を砕かんと牙を剥く――
「フハハハハハハ!!この勢いの前には貴様の自慢の槍など古船、薄紙の如し!哀れなり最果ての塔!――貴様の裁き、ここに潰えよ!!」
塔の土手っ腹を穿つは『光輝の大複合神殿』の主砲、『デンデラの大電球』による超長距離大神罰。超絶の雷撃を交えた大灼熱の太陽光、太古の神々の威光すら連想させる究極大神罰。東京を瞬時に炭化させ、神殿内部に焦点を合わせれば太陽面爆発にすら比肩するとされる秘中の秘。ファラオの神威、その具現にして降臨
近付いただけで大艦隊を蒸発消滅させるような『質』を持つ黄金の裁きが、槍をへし折らんと必殺の一撃となりて、ファラオに刃向かう愚か者を抹殺せんと光輝く雷撃を放つ――!
「ふははははははは!!界聖杯により稼働せし我が秘蔵の戦艦!まずは武装の在処を把握するがいい!言うまでもないが――此度は特別の大盤振る舞いよ!本来なら此は『原初の母』を抹殺する為の奥の手の一つなのだからな!」
その時の最適により全長、フォルムが変化する最古にして最新の黄金巨神、マルドゥーク。その全身に設置されし『財』の具現が余さず最果ての塔の全域を撃ち据える――
副砲、三連真エーテルカノン『ティアマト』による51口径51㎝砲による大砲撃。真エーテルを凝縮発射させる対神砲撃の怒濤の連射撃。ただの砲撃ですら対国宝具に匹敵する怒濤の射撃が庭園、神殿の攻撃と同調し凄まじいという言葉すら生ぬるい圧倒的な殲滅力となりて放たれる
両弦の真エーテルパルスレーザー『アプスー』による前域に息を着かせぬ連続射撃。本来なら迎撃用だが火力の足しにするため、レーザーを容赦なく吐き出し撃ち放ち聖槍を滅多撃つ
艦首魚雷『タイド』による魚雷の連続発射も油断なく発射する。神秘と質量が備わった戦艦を叩き落とすための武装を絶え間なく発射し続ける
その三種三様ながら、どれもが都市を焦土と化す凄まじい規模と破壊力が慈悲なく振るわれる。軌道上に在りし物体は余さず塵になり、聖槍が張っていた防衛の結界障壁を食い破らんと猛り狂う
世界を包み込むほどの凄まじい戦火と鉄雷。生物を絶滅に導き、歴史と地球を火に包まんとするその禁断のメギドの火は――
「全攻撃、一斉着弾!『塔』の前に張られた魔術障壁を加速度的に破壊し、間もなく塔そのものへと攻撃を届かせます!」
総て――人類の未来の為に振るわれる――!
その破滅的な攻撃を、皮一枚で槍は受けきる。聖槍を護る神の魔力障壁が、すんでのところで直撃を防いでいるのだ
「小癪!策を弄していたのは貴様もか獅子王!だが些末、あまりに矮小!余の霊基の二割を魔力変換し――もう五撃くれてやる!!」
言葉通りに魔力を増幅させ驚天動地の連射を可能とするファラオの裁き。先程とは比べ物にならぬ程の威力と破壊の大神罰が更なる威光を示し、全知全能の神すらも恐怖させる絶対制裁の能を振るい上げる――!!
「ファラオ!あのときのように御無理はなさらず!」
「解っておるわ!!勝利の凱旋、我が朋友の奮闘!そして我が民を庇護した勇者どもの戦いに――余は生きて報いねばならん!!」
世界のため、そこに生きる人々を救うため、あまねく全てを救うため
ファラオなりし我が身、全てを照らす真なる太陽とならん――
「地上にあってファラオに不可能無し!万物万象、我が手中にあり!!!」
ファラオの叫びと気迫すら力とし、エジプトの威信をかけた必滅の雷撃は荒れ狂う――!
「あはははは!よいぞ?手間暇かけて作り上げた庭園だ、そう手早く消えてはつまらぬ。足掻け足掻け、破滅から遠ざかれ。――すぐに追い付いて殺すがな――!」
カルデアの貯蓄電力の一割を使用し、十一の黒棺のビーム掃射を対城宝具にまで引き上げる。先程とは文字どおり桁が違う十一の一斉掃射が魔力変換を限界以上に炸裂させ見るもの全てを畏怖させる漆黒の光線に変わる――!
「艦内艦載機を出せ!徹底的に討ち滅ぼしてくれるわ!」
『了解。『アンズー』隊、下ろします』
シドゥリのコントロールによる千機からなる戦闘機『アンズー』が発艦する。最新型の黄金戦闘機、全長25メートルのフォルムを誇る大編隊が飛来し、障壁をエーテル砲で滅多撃つ――!
最早爆風と轟音と熱量で終末の光景と代わりない地獄を呈している三大波状攻撃。塔の障壁が砕け散らんとした際に、それは起こる
「――聖都に動きあり!『裁き』が此方に来ます!」
ニトクリスの報告にも、一同はけして攻撃の手を緩めなかった
「ニトクリス!その鏡にて万が一の事態に備えよ!我等は止まらず、攻撃に専念する!」
「はっ!」
「案ずるな、対策は取ってある!貴様は瞬間にでも堪えれたならばそれでよい!」
放たれる反撃の裁き。それを予期できぬ王達ではなかった。その言葉を信じ強く頷くニトクリス。弾かれたように玉座から離れ駆け抜ける
――王!アーサー王、配置につきました!
《うむ!《大終末》を落とす!終末剣を出せ!此処でヤツの神威、余さず失墜させてくれるわ!》
王の言葉と同時に波紋から取り出される『終末剣』
《些か時間が足りぬが構わぬ!時間加速の宝具にて代用してくれよう!》
選別にて、『エンキ』の認識時間を4日、つまり『一週間』と認識させ、必殺の終末を落下可能とさせる
「天を見よ!滅びの火は満ちた!天の星は潮となり、地に満ち、やがてまた天に帰すがいい。神よ、人よ、あらゆる万象を呑み込む大終末の波ナピシュテムよ、王に仇なす愚者どもを一掃せよ!神を名乗る愚者に示すは、終末の洪水!そして――」
マルドゥーク甲板に立ちし王が、真上にその黄金の矢を引き絞り放つ――!
「絶対にして始まりの王のその威光!英雄王たる我はここに在る!さぁ落ちるがいい――ナピュシュティムの大波よ!!!」
力の限り放たれた矢は、衛生軌道上に輝く七本の矢を取り纏め一つとなる。そして地上と世界一切を滅ぼした大海嘯『ナピュシュティムの大波』の莫大な質量と魔力となりて、天を穿つ――!!
聖槍の『裁き』を数値化し3,000,000とする。最高級の宝具火力が1,000、3,000とするならば――
世界を洗い流し、一掃し、蹴散らし、破滅させるナピュシュティムの大波、終末剣の最大出力は推定600,000,000。――地表一切を終わりへ導く破滅と崩壊の大波が、聖槍から放たれる裁きの『中心』そして『核』を穿つ
黄金の波と矢に穿たれ、その威力を何百分の一に減衰させられる『裁き』。だが、それでもワールドエンドクラスの威力は付与し、ピラミッドを呑み込まんと降り注ぐ
――だが、それは叶わない。庭園の先端にて、善なる輝きを打ち払う必殺の奔流が用意されていたからだ――!
「
白銀の騎士王、アーサー・ペンドラゴンが高らかに、世界を救う為の決議を開始する――!
是は、生きるための戦いである
ケイ――承認
是は、己よりも強大な者との戦いである
ベディヴィエール――承認
是は、人道に背かぬ戦いである
ガヘリス――承認
是は、真実のための戦いである
アグラヴェイン――承認
是は、精霊との戦いではない
ランスロット――承認。ロンゴミニアドは神霊なため
是は、私欲なき戦いである
ギャラハッド――承認
共に戦うものは勇者でなくてはならない
――承認
この戦いが、誉れ高き戦いであること
――承認。そして――
「是は、世界を救う戦いである――!!」
アーサー、――承認
放たれし黄金の爆風、荒れ狂いし星の奔流。女神ロンゴミニアドは邪悪ではないため全解放とはいかなかったが――
「狂い果てた我が姿よ!この一撃に、真なる騎士の道を示して見せる!――獅子王よ、独善の終わりの刻だ――!!」
それでもなお――減衰した裁きを打倒するには充分である輝きを放つ――!!
そして、放たれる――
「『
理想の具現、星が鍛え上げし最強の聖剣が、アーサーの烈吼の気合いと共に一閃し振るわれる!
空を金色に染め上げるほどの莫大な魔力量。純白の裁きをも呑み込み粉砕する程の究極の一撃。拮抗すらしなかった。減衰した槍にはあまりにも相手が悪すぎた
槍の裁きは、人々の願いと理想により鍛え上げられたその輝きに呑まれ――粉々に粉砕され、霧散していったのである――
「――裁きは討ち果たした!ありがとう、英雄王!さぁ――決着をつけよう!!」
アーサー王の鋭い言葉が、甲板にいる英雄王の耳に届く――!
「フッ、よい仕事をしたな!――決着をつけてやろう!エレシュキガル!操艦を此方に回せ!」
素早く指示を飛ばし、同時に乖離剣を甲板に突き刺し――いよいよ以て、マルドゥークの最大武装を発揮する!
「惑星破砕主砲『エヌマ・エリシュ』!発射用意!!いよいよ以てその目障りな輝き――我が一撃によって消し飛ぶときだ!」
――解りました!艦内、再起動に備え電源を落とし、非常電源を用意します!
エアのコントロールにより、総ての電源が落とされる。同時に突き刺した乖離剣を専用操縦コントローラーとして使用し、艦首方向を聖都に調整、真正面に相対させる
『回路、開きます。強制エーテル注入器、作動』
艦首に設置されし惑星破砕主砲が展開し、起動されし回路に真エーテル注入器による最大稼働が展開される
《エア。お前も手を重ねよ。――共に放つぞ!》
――はい!
フォウを胸にしまい、王の傍らにて乖離剣に手を重ね合う
――補足スコープ、展開!
英雄王の千里眼を補助するスコープが競り上がり、その全てを見通す眼にて、誤差を即座に修正する
――明度、20!
『エネルギー充填、120%なのだわ!』
マルドゥークの通常航行のエネルギーすら回した最大火力の充填が完全に完了する
「者共!対衝撃、対閃光への備えを怠るな!まともに浴びればたまらず消し飛ぶぞ!」
シドゥリが全員に魔術防護を施し、放たれる最大火力の一撃への保護を成す
『さいしゅう、せーふてぃ・・・かいじょ』
ティアマトのごうれいにより最終安全装置『リットゥ』が解除される
同時に蓄積される膨大な、あまりにも膨大な真エーテルの波動。真紅の輝きと奔流が艦首前方、最果ての塔にて放たれんとチャージされる・・・!
(発射、10秒前!10、9、8、7・・・)
オジマンディアスの防護に張られる冥界の鏡、十と一の黒棺を完全防御に回す、セミラミスの庭園
(6、5、4、3・・・2・・・1!)
臨海寸前にまでチャージされる真エーテル。真紅の輝き――そして――
「惑星破砕主砲エヌマ・エリシュ――!!撃てぇい!!」
――エヌマ・エリシュ――
同時にトリガーを押す王、そして姫
数多のエンジンが産み出せし莫大なエネルギー、真エーテルを圧縮放出させ、マルドゥークそのものを大砲として昇華させ放つ空前絶後の大砲撃に――!
その破壊のエネルギーは瞬時に塔に着弾し、破滅的かつ絶対的な破壊と裁きの具現となりて荒れ狂い、瞬時に光の壁を呑み込む。撃ち放つエネルギーは遥かに強度を越え、都市上部、槍の先端から中心を叩き折り、塵にし消し飛ばす――!
マルドゥークと同程度の太さの真紅の大砲撃は、塔の外装、鞘のみを消し飛ばす。界聖杯が揃っていないため、神の権能を消し飛ばすのが精々で王都、王城を消し飛ばすには至らない
いや、至ってはいけない。だからこそ、未完成なこの状態で使用に踏み切った
その思惑、その目論見は正しく形を成し――
「――聖槍、消滅!無事に――王城への道は開かれました!」
ニトクリスの歓喜の声が、ピラミッドに響き渡る
――やったぁ!!マルドゥークが、皆がやってくれました!!
フォウを抱き抱え、空中を飛び回るエア。乖離剣を引き抜き、王は笑う
(エア・・・何もかもが素晴らしい――)
何処からか仕入れた艦長服と帽子を着込み、敬礼し安らかに目を閉じ、プレシャスパワーと一つになるフォウ
「ふははははははは!!思い知ったか!最早神に――いや!この星に!我の威光を阻むものはおらぬわ!!崇めよ、奉れ!そして死ね!!この世で絶対真理を掲げ、永劫不滅を体現せしはこの――英雄王ギルガメッシュに他ならぬのだからな!!ハハハハ!!ふははははははは!ハーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
丸裸にされし王城を愉快げに笑い飛ばしながら、英雄王は高らかに笑うのであった――
「フン、黄金のめ、やるではないか。ならば――此方も大神罰のその上!!余の墓を獅子王にくれてやるしかあるまい!!」
「お止めください!お待ちくださいファラオ――!」
「・・・戦艦、か・・・人の欲望とは何処までも底のない――まるで、あの男のようではないか・・・――」
息巻くオジマンディアス、止めるニトクリス。遠き誰かを思い出すセミラミス
――此処に、王達の大破壊により裁きは覆される
・・・鞘は消し飛ばされ、後は、謁見を残すのみ――
「……私の母親は、狂っていた。
いつかブリテンを統べる王になる、などと。私は枕言葉に、その怨念を聞かされて育った。
私は母親モルガンの企みで、おまえたちの席に座った。円卓など、なりたくもなかったが、それが最短距離だった。
私は、アーサー王から円卓を奪い、母親に渡すためだけの、道具だった。
私はそれに同意した。ブリテンには強い王が必要だと理解していたからだ。
私の目的はブリテンの存続だけだ。その為にアーサー王を利用した。
―――利用、したのだ」
二人の騎士を、力と気迫で押し返していくアグラヴェイン
「私が求めたのは、うまく働く王だ。ブリテンをわずかでも長らえさせるための王だ。
私の計画に見合う者がいればいい。誰を王にするかなど、私にとってはどうでもいい。
ただ、結果としてアーサー王が最適だった。モルガンよりアーサー王の方が使いやすかっただけだ」
身体は致命傷。だが、まくしたてる怨嗟も、剣も、止まりはしない
「私は女は嫌いだ。モルガンは醜く淫蕩だった。清らかさを謳ったギネヴィアは貴様との愛に落ちた。私は生涯、女というものを嫌悪し続ける。人間というものを軽蔑し続ける。愛などという感情を憎み続ける。その、私が―――はじめて。嫌われる事を恐れた者が、男性であった時の安堵が、おまえに分かるか。……それが。貴様とギネヴィアのふざけた末路で。王の苦悩を知った時の、私の空白が、おまえたちに分かるか。」
顔を歪ませ、怨嗟を叩き付ける
「そして、モードレッド。――貴様の稚拙な癇癪で、国を、治世を、何もかもを壊された王の絶望と慟哭が、お前に解るか」
「っ、ぐ!」
「テメェ――」
「私には、まだやるべき事が残っている。
―――報いを受けろ。貴様らはまた、我が王を裏切った」
そして――
「槍が、光が消し飛んだ!?」
「英雄王――やってくれましたか」
『今なら玉座まで一直線だ!邪魔はない!いよいよ――謁見の時だ!』
「はい!行きましょう!皆さん!」
「生きているな貴様ら!」
『ギル!』
「此処にいたって、言葉はいらぬ!さぁヴィマーナに乗れ!――決着の時だ!」
「――王よ、必ずや・・・!」
――獅子王・・・
(・・・大丈夫かい、エア)
――うん。さぁ、行こう!全てを取り戻しに!
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