人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『なんかベディヴィエールの野郎が内緒話してるぜ!』

『覗いてやりましょう、そうしましょう!モードレッドと違って彼は真面目で優しいですからね!モードレッドと違って!』

「趣味の悪いことよな。夜闇に紛れて覗き見など騎士や王のすべきことではあるまい」

――うぅん、キャストオフ・・・キャストオフ・・・うぅん・・・すとーりぃ、きんぐぅ・・・

(どうしてくれるんだ!エアがうなされてるじゃないか!)

《ふむ、些か羽目を外しすぎたか?赦せ。魂のお前には刺激が強すぎたな?だが・・・夢の中ですら我を想うとは何処までも愛い奴よな!ふはははははは!》

(安眠を脅かされているんだよバカ――!!夢の中に!夢の中にボクよ現れろ!エアを助けるんだ!(テシテシ))

――フォウ・・・だいすき・・・


(あっ――)

シャボン玉に包まれ、ふよふよと浮き上がりぱぁんと破裂するフォウ

《静かに消えよ!見つかるであろうが!》

足下に白色の華が蕾を付け、その華から飛び出るフォウ

(ごめんごめん!)

『何を話しているんでしょうか・・・――』


「脚が欲しいなぁ」

「今更!?」

「そこら辺歩いてるスフィンクスに頼んでみよう!おーい!」

『汝に問う。朝はよんほ』

「乗せて欲しいな!」

頼みながらスフィンクスの右頬に拳を叩きつける

その一撃でスフィンクスは砕け散り、塵に還る

「しまった。力を込めすぎたな。王種じゃなきゃこんなものかぁ・・・安らかに、スフィンクス」

「待って待って!大丈夫だから!私歩いて頑張るから!」

「え、そう?じゃあ僕だけ先に行くけど大丈夫?」

「そういう意味じゃな――――い!!」

「取り合えず、何匹か説得してみようか。脚は歩むためにあり、拳は振るうためにある!」

「そうだっけ!?」

「何故聖人は拳を極めると思う?祈りは心に、痛みはもっと強く身体に届くからさ!つまり、祈りを極めることと拳を極めることは同じ!さぁ行こう!祈りと痛みは必ず届く!信仰とは尊く苛烈なのさ!」

「破戒僧にも程がある――――!!」



優しき罪人

『おや、こんな時間に会合かい?いや、勤務熱心なのはいいけど休むときに休まないともたないよ?大丈夫かい?』

 

 

 

パーティーグッズを片付けながらロマンがウィンドウを展開する

 

 

「丁度いい。魔術王、貴方にも知ってもらいましょう。私の自慢の騎士を」

 

「お、王・・・光栄です・・・」

 

騎士王の称賛に顔を真っ赤にしながら、気を取り直し告げる

 

 

「我が名はベディヴィエール。未熟な騎士ながら、円卓の騎士の末席に加えられし者。隻腕にて、やや地味で・・・その・・・」

 

「え?ベディヴィエールって地味なの?」

 

リッカの疑問に、ロマンが応える

 

 

『ベディヴィエール。隻腕の騎士。彼は円卓の騎士の一員で隻腕が特徴の騎士でね。その腕前は通常の騎士の三倍と言われるくらいの強さを誇っていたんだ!』

 

「通常の三倍!?すげぇ!!」

 

「そうでしょう。まぁ他の騎士たちは通常の騎士達の数百倍強かったのですが」

 

自慢気に胸を張る騎士王、縮こまるベディヴィエール

 

「はい・・・皆様超人ばかりで・・・ケイに『片腕無く三倍なら両腕あれば九倍くらい強いんじゃないか?まぁ相対的な立場は変わらないと思うが』と笑われていました・・・」

 

「ベディヴィエールさん・・・私の中のギャラハッドさんが言っています。『貴方の良さはそこではない』と・・・」

 

マシュの言葉に、ベディヴィエールは顔をあげる

 

 

「・・・無礼を承知でお尋ねします。貴女は自分を、マシュ・キリエライトと名乗っている。だが今は、自分の中のギャラハッドと答えた。これは一体・・・?」

 

「あ、そっか。忘れてた。マシュの来歴って凄いヘンテコだもんね」

 

「ヘンテコは酷いです先輩!」

 

ごめんごめん、と笑うリッカが、真実を告げることを促す

 

「伝えるべきだよ、マシュ。その代わり、『ベディヴィエールの隠している事』も教えてもらうから」

 

「――!」

 

リッカの言葉に、ロマンも続く

 

「そうそう。『ベディヴィエール君、君は今何歳だい?』」

 

愕然とするベディヴィエール。呻くように呟く

 

「何故、それを――」

 

「人間観察は得意でさ。何かを隠している人は一発で解るんだ。仕草は色々あるけど・・・ベディヴィエールは解りやすいや。『王』って言葉を聞くと目を伏せたり、唇を噛んだり、右腕を抑えたりするしね」

 

「――ロマン殿は・・・?」

 

『ん?君からは魔術回路の励起を感じるし、モザイクみたいな乱れが常に観測されてるからね。マーリン辺りの細工だろ?そして、その右腕・・・肉体と魂を焼く人でなしの武装だ。そんなものを押し付けてくるのはあのクズ野郎しか思い浮かばない。槍をアーサー王に押し付けるようなヤツだしね』

 

さらり、とベディヴィエールの核心を突いてのけるロマン

 

『恐らくそれはヌァザの銀腕と言うだけじゃない。もうひとおし、仕掛けがあるんだろ?』

 

「――お見事です。二人とも・・・ですが、今は」

 

マシュに目線をやる。それに姿勢を正し、マシュは応える

 

 

「はい!私はデミ・サーヴァントと呼ばれる存在で、人間と英霊の融合体なのです。ですから、マシュ・キリエライトと言うのは私の名前で、ギャラハッドさんは、私に力を貸してくださった英雄の名前です」

 

「・・・最も強き騎士、最も猛き騎士、最も堅き騎士。数多の強さを誇る円卓の中でただ一人、精神の在り方を示した騎士、ギャラハッド。かの騎士は、この無垢なる少女を、それを助けた彼女を信じ、自らの総てを託したのです」

 

騎士王が二人の頭に手を置き、優しく撫でる

 

「――そうでしたか。・・・私は迷っていました。貴女が敵なのか、味方なのかと。ですが・・・迷いはもうありません。レディ・マシュ」

 

「れ、レディ・・・」

 

照れるマシュに、ベディヴィエールは真っ直ぐ告げる

 

「無礼をお許しいただきたい。その返礼と言うわけではありませんが、貴女に敬意と感謝を。――レディ・リッカ。貴女にも」

 

「ん?私何か敬意払われるようなことしたっけ?」

 

キョトンと頭をかくリッカ

 

「――そ、そういえば・・・貴女は、随分不思議な魔術を使われるのですね。その、龍のようになったり、翼を生やしたり、ビームを放ったり、モードレッドの攻撃を受けても平然としていたり・・・凄まじい格の魔術師なのですか?」

 

「ううん。私、人類悪みたいだから」

 

「――――え?」

 

あっけらかんとリッカは答える

 

「ちょっと地獄で腐った人類悪倒したの。この力は、ビースト、ifだっけかな。その能力の名残なの!アンリマユから聞いた!『ウチの邪龍がこんなに可愛くなっちまってなぁ』とかなんとか」

 

ベディヴィエールは目の前の少女の言葉を理解するのに数分掛かった。目を白黒させ、呆然とし、やがて平静を取り戻す

 

「――貴女の力がどのようであろうとも、私は貴女の戦う意志に動かされ剣を執った。獅子王への謁見を優先し、民達を見捨てようとした私を糺してくださった。・・・私は、貴女の誇り高き魂を信じましょう。マーリンが伝えし、人類悪を担いながら、誇り高く生きる貴女を」

 

ベディヴィエールの真っ直ぐな言葉に、照れ臭そうにもじもじするリッカ

 

「ううん、新鮮!いいね、敬意を受けるのって!」

 

「はい。貴女は事実、偽りの騎士達を打ち砕いた。かの騎士達は獅子王の騎士。悪では、けして砕けない」

 

騎士王の言葉に、頷くロマン

 

『戦い方が随分アニメやゲームめいてるけど・・・こだわりがあるのかい?』

 

「勿論あるよ?でも――内緒!」

 

「・・・リッカ、マシュ。私から改めて問いましょう」

 

姿勢を正し、まっすぐに目線を送る騎士王

 

「私達は、獅子王に挑み、打倒しなくてはならない。・・・それはつまり、円卓同士の戦い。私達は同胞と生命を奪い合うこととなる。トリスタンを倒した今、もう後戻りは出来ずとも。その口から聞かせてください。――狂い果てた円卓を糺す。貴女達に、その決意と覚悟はありますか?」

 

「・・・トリスタン。やはり・・・彼は」

 

心苦しげに、ベディヴィエールは目を閉じる

 

 

・・・彼とトリスタンは、御互いが御互いを深く理解する友人であったのだ。だからこそ、ベディヴィエールは胸を痛めた。出逢わずとも、獣と成り果てた友を想い

 

・・・寧ろ、かのトリスタンには救いになったかもしれない。自らを目の当たりにし、涙を流す友を見ずに住んだのだから

 

 

「勿論。私の前に、人類の未来を取り返す邪魔をするなら、蹴散らすだけだよ!」

 

バシリ、と拳を掌に叩きつけるリッカ。彼女はとっくに決意している

 

彼等に想いがあったとしても

 

彼等に決意があったとしても

 

それはきっと、今の私達と相容れる事はないと。ならば――戦うのみ

 

お互い譲れないものがあるのなら、粉々になるまでぶつかり合えばいい

 

どちらが正しいかではない。『どちらが想いを貫き通せたか』だ

 

答えは、自ずと解る。獅子が龍の喉笛を食い千切るか、龍が獅子を抑え込むか

 

恨みではなく、怒りではなく。ただ――譲れない想いのために

 

「――はい。私も迷いません。円卓の皆さんが狂ったのならば、此を正す。――かつて父が行った不貞を、不義を、敢えて犯す。人理を護る願いと共に。――私は、人類を救うオーダーをこなします。必ず、きっと――」

 

ギャラハッドの願い

 

マシュの決意

 

その二つを懐き、決意を顕した瞬間、マシュの身体に変化が起こる

 

『おおっ!マシュの霊基がパワーアップした!再臨だ!』

 

腰の鎧が追加され、剣を帯刀する。より美しく、凛々しく。マシュが変化する

 

「――ギャラハッド卿・・・」

 

ベディヴィエールは息を呑んだ。その在り方は、振る舞いは。紛れもなく・・・ギャラハッドのモノだったからだ

 

在り方だけではない。その気高さ、凛々しさ。そして――儚さすらも

 

『勿論僕たちもそのつもりだよ。納得してくれたかな?二人とも?』

 

「――はい。私は・・・頼もしき同胞、剣を預けるに相応しきマスターを得た」

 

胸に手を当て、目を閉じる騎士王

 

「・・・共に戦えること、光栄に思います。どうか、共に。レディ・マシュ、レディ・リッカ」

 

迷いの晴れた顔でベディヴィエールは笑う

 

・・・彼女たちこそ、第二の生にて王が得た、新たなる円卓の騎士達

 

災厄の席に立つ者

 

猛き席に立つ者

 

そして、何よりも・・・王の心に、寄り添いし者であると、ベディヴィエールは確信し、胸に安堵と信頼を抱くのであった

 

「はい!よろしくお願いいたします!」

 

深々と頭を下げるマシュ

 

「ぶいっ!」

 

ピースサインを行い、はにかむリッカ。それを受け、微笑むベディヴィエールと騎士王

 

『よし、絆も深まったところで・・・ベディヴィエール?君の来歴を教えてもらえるかな?』

 

鋭くロマンが告げる

 

『映像記録は秘匿させてもらうよ。所長や、ダ・ヴィンチちゃん。最高責任者クラスにしか伝えないと誓う。・・・教えてくれ。魂と肉体が死に果ててしまうほどの、その旅路を』

 

その声音には、心配と労りが込められていた

 

『ただの人間』であることを見抜いたロマンは、好奇心で伝えたわけではない

 

純粋に・・・『そんな辛い旅をしてきた理由』を、訪ねたかっただけの話なのだ

 

 

「――はい。話します。貴方達は・・・きっと、私の戦いを助けてくれるものと信じている」

 

――そして、ベディヴィエールは話し始めた

 

優しき罪過。自らの想いが産み出した、その罪の所業を・・・

 

 

~~~~~~~~

 

・・・私は此処ならぬ何処にて、アーサー王に参列した騎士、ベディヴィエール。

 

 

聖剣を持ちながら、最果てを維持する槍を所持し続けたアーサー王に仕えし騎士でした

 

if、というのでしょうか。そのありえた歴史の住人が、今此処にいる私

 

・・・歴史の強制力は絶大だ。如何な時空であろうとも、如何な因果であろうとも、ブリテンは滅び、円卓は割れ、騎士王は死に瀕する

 

――・・・

 

申し訳ありません、騎士王。・・・ですが、此は皆様に伝えねばならないこと

 

――構わない。続けよ、ベディヴィエール

 

はい。・・・死に瀕した王を、私は森に運んだ

 

 

左手に槍を握りながら、王は血塗れの聖剣を私に託した

 

 

――これを、湖の乙女に。最早、星の聖剣は不要なものだ。在るべき場所に、返してほしい

 

私は首を振り、王の助命を懇願したのです

 

――何故手放すのです!それは貴方が持つべきものだ!貴方は死んではならない!貴方は、貴方は・・・!

 

私は涙を流し、無様に懇願した

 

生きてほしい。ただ、貴方に生きていてほしいと

 

アーサー王は、ただ私に告げたのです

 

――王命を果たせ。ベディヴィエール

 

・・・私は、言葉に従い馬を走らせた

 

王は優しく、確かに私に告げた。ならば私は騎士として、それを果たさなくてはならない

 

湖の前に立ち、私は聖剣を投げ入れようとした

 

これこそ王命

 

これを返却すれば、王は苦しみから解き放たれ、理想郷に至るだろう

 

解っている、解っている

 

解っている、筈なのに・・・

 

――王、王よ・・・!私は・・・!

 

 

出来なかった。どうしても、身体が動かなかった

 

此を手放せば、アーサー王は死んでしまう

 

己より国を、総てを捧げた誉れ高き王

 

 

その代償に・・・あらゆる人の生を投げ捨てた理想の王

 

 

私は、一度しかかの王の笑顔を見たことがなかった

 

 

・・・生きていてほしい

 

王ではなく、人として当たり前の生を取り戻してほしい

 

それを知らずに、人の営みの幸せを眺めるだけでなく

 

その素晴らしさを、かの王にも味わってほしい――

 

・・・そんな愚かな我欲を優先し、私は王の王命を偽った

 

――聖剣は返還いたしました。どうか・・・

 

王は、優しく笑っていた

 

――貴卿は嘘が下手だ、ベディヴィエール。――王命を、果たしてほしい

 

私の顔は、涙で腫れ上がっていた。どうしても、どうしても。偽りを貫くことが出来なかったのだ

 

そんな私を、王は赦してくださった。『王命を果たしてほしい』と・・・私などに託してくださった

 

二度目を私は駆け抜けた。だが、湖の前に立ち、聖剣を振りかぶると――脳裏をよぎるのだ

 

王の気高き姿

 

聖剣を構え、誇り高く在るその姿

 

 

そして――一度だけ見た、営みを慈しむその笑顔

 

――喪いたくない

 

アーサー王を、失いたくない

 

かの王を、国を、総てを護るために、己の総てを捧げた一人の少女を、このまま果てさせたくなどない

 

私は、それを想い・・・嘆き、泣き続けた

 

私はひざまずき、聖剣を涙で汚し、嗚咽を漏らし続けた

 

――私には、私には・・・王・・・!

 

 

二度目にも関わらず、私はおめおめと逃げ帰った。『聖剣は返却した』などと、不敬を働いた

 

そんな私に、穏やかに告げたのだ

 

――王命を、果たしてほしい。ベディヴィエール

 

一度ならず二度も、王は私を赦してくださった

 

 

・・・これが最期。本当に、本当に最期の機会

 

 

本来ならば、この三度目の機会にて返還は果たされ、騎士王は妖精郷に旅立つ

 

それが正しい選択だった

 

それが正しい歴史だった

 

 

それなのに

 

――あぁ、あぁあぁあぁぁあ・・・!!

 

 

それなのに・・・――

 

 

――お許しを、お赦しを・・・!アーサー王!私は、私は・・・!!

 

 

私は――三度目の機会ですらも・・・

 

 

――私は貴方に――生きてほしい・・・――っ!!

 

 

・・・王命を果たせなかった私の罪は、王に降りかかる事となる

 

――王!?アーサー王!?

 

 

王は、消え去っていた。跡形もなく、何処へと

 

――何処へ!どちらへ!王!王っ!!

 

――聖槍、ロンゴミニアドによる属性の変換。地に属す伝承ではなく、天に在る神としての変化

 

 

・・・はい。長年ロンゴミニアドを所持していたアーサー王は、完全に槍に取り込まれてしまったのです

 

 

人として死ぬことすらできず・・・世界をさ迷う神霊となり、理想郷に至ることも、永遠に叶わなくなり――

 

 

――アーサー王・・・――っ・・・――

 

 

王は、消えてしまった。愚かな不忠者である私と、私の手に、・・・私の永劫の罪の証である・・・

 

――アーサー王ぉおぉおぉおぉおぉおっーー!!!!!

 

穢れ無き、聖剣だけを残して――

 

 

 

~~~~~~

 

 

『・・・聖剣は、持つものに不老と癒しを与える。それを手放さず、君は旅を続けてきたんだね。ベディヴィエール』

 

言葉を紡ぐロマン。マシュは泣き出してしまい、リッカが抱き寄せ、慰めているからだ

 

「はい。1500年ほどさ迷った私は、この地にたどり着きました。今度こそ、今度こそ。私は獅子王を殺すため。聖なるものを、返還するために」

 

「――果たせなかった王命を、貴方は抱え、生きてきたのですね。ベディヴィエール」

 

静かに呟く騎士王に、首を振るベディヴィエール

 

「――申し訳ありません、騎士王。私は貴方に・・・アーサー王そのものに、不敬と不忠を・・・――王!?」

 

騎士王の行動に、ベディヴィエールは目を見開く

 

王が聖剣を鞘から抜き、その鞘をベディヴィエールの身体に埋め込んだからだ

 

「――まずは肉体と魂を癒せ。万全でなくば、獅子の王には届くまい」

 

英雄王のカプセルと、騎士王の鞘により、凄まじい勢いで肉体と魂が快復していくベディヴィエール

 

「私に、こんな・・・鞘まで・・・」

 

堪えきれず涙を流す、忠義の騎士、ベディヴィエール

 

「私は人の心が解らぬ王だ。故に・・・私は貴方が仕えた王ではない。貴方の罪など知らぬ」

 

ベディヴィエールに、騎士王は優しく告げる

 

「貴方の王ではないからこそ、私は私として、貴方を助けたい。王の身を案じ、優しい罪を懐いた貴方を。貴方が何者かなど解りきっている。最期まで私に寄り添い、私の身を案じてくれた――心優しい、一人の騎士だ」

 

「――アーサー王・・・!」

 

「今度こそ、王命を果たしなさい。そして、聖なるものを返還しなさい。『その右腕に宿りし』聖なるものを」

 

『うんうん!全部終わった後は、カルデアにおいでよ!1500年の疲れなんか一週間で取れちゃうからさ!ね?リッカ君!』 

 

「うん!――ベディヴィエール。貴方の罪を赦せるのは、きっとあの獅子王と・・・貴方自身しかいないとおもう」

 

リッカが拳を握り、突き出す

 

「――でも、罪を一緒に背負うことは出来る!行こう!獅子王の下へ!今度こそ――役目を果たそうよ!」

 

朗らかに、リッカは笑った

 

貴方は悪いことなどをしていない、という綺麗事ではなく

 

涙を流す、悼みや感傷、同情ではなく

 

共に戦い、共に進む勇気と決意を、ベディヴィエールに示したのだ

 

 

「――はい!この身のすべてをかけて、皆様と共に!」

 

涙で顔を真っ赤にしながら、ベディヴィエールが頷く

 

「私も、全力で頑張ります!やりましょう、皆さん!」

 

マシュもまた、雪花の決意を奮い立たせる

 

「はい。――ギャラハッド、モードレッド。そして・・・ベディヴィエール。貴方達は、私の円卓の騎士だ」

 

上る朝日、朝焼けに、聖剣を高々と掲げる

 

「マスター、共に往きましょう。騎士王の名の下、奪われた歴史、狂いし円卓を正しき姿に」

 

「うん!よーし!やるぞ――!!」

 

「・・・ベディヴィエール。ロマンの言う通り、貴方には招きたい場所がある。――私に働いた感傷を罪と言うなら、我が王命を護りなさい」

 

騎士王は、告げる

 

「――総てを無事に終えた後は、カルデアにて疲れを癒しなさい。それを、貴方への勅令とします

 

「――はい!騎士王――!」

 

此処に、獅子の円卓に立ち向かう力が集う

 

 

今度こそ、王を殺すために

 

今度こそ――王命を果たすために・・・――




『ぢぢうえが、ぢぢうえがオレをえんだぐだっで・・・』

『ベディ・・・やっぱり貴方はいつだって私の味方でした・・・!ベディのやさしみに触れて私は涙を流す・・・最高に尊い・・・!』


「ヤツのはんのうが定かではないのはそういうことであったか。花の魔術師め、悪辣な真似を」

(本来なら精神が真っ先に燃え尽きるのに大したものだよね、本当に。まぁ、ボクもエアの為なら1500と言わず数億年だって生きてやるけどさ)

《死など何度でも味わえばいいだけの話であろうに。まこと、信義や忠義を抱えた人間は此だから侮れぬ。価値を定めるには不安定に過ぎよう。まこと、腹立たしいにも程がある》

(定命の者が、成し得る奇跡、か・・・)

――むにゃ、むにゅ・・・

(――君も、そんな奇跡が起こせる・・・今を生きる生命なんだよね、エア・・・――)



「騎士王!マシュとベディヴィエールをお願い!」

「どちらへ?」

童子切を抜き放ち、空中に円を描いて鎧を召喚し纏い・・・

【母上の真似してみよ!】

翼を生やせし、漆黒かつ真紅の眼を頂く天馬を泥で形作り、それに跨がり天空を駆け抜ける

【名付けて【龍騎】!私を呼んでる人がいるから、其処へ!すぐ帰ってくるから皆によろしくね――!】

「マスター――・・・」



霊廟



【・・・――晩鐘、対話の龍を招くか】

『アル・ブクール』

【汝が示すは蛮勇か、それとも――】

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