人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アダム『ミカ。もしよければ、これを』

『アダマンタイトの指輪』

ミカ『えっ…ゆ、指輪!?先生、これって…!』

アダム『あぁ。君はオレにファーストキスをくれた。それに見合うものを、オレも君に送りたい。オレが故郷の御守に持っていた貴金属を、指輪に加工したものだ』

ミカ『わ、わーお…これって、つまり、もしかして…!』

アダム『あぁ。君が初めてオレに人生を託してくれた生徒であり、オレが初めてエデンに連れて行くと決めた誓いの証だ。キミはずっと、オレの姫君だよ。ミカ』

ミカ『あ…アダム先生………!』

アダム『これからも末永くよろしく頼む。聖園ミカ。このキヴォトスで出逢えた、オレの姫君───』



ミカ「ふがっ!?」

(…………夢かぁ……もう何十回目だろ、アダム先生との夢…)

ミカ「…………」

『アダマンタイトの指輪』
『ネックレス用チェーン』
『ペンダント用収納箱』

「…うん!夢じゃ、ないもんね!」



『先日、アダム先生がその誠実な態度で連邦生徒会へのデモを解散させた映像が届いています。その様子をご覧ください。キヴォトスの危機を救ったアダム先生を助けたいと、シャーレの登板倍率は500倍以上に上がったとの連邦生徒会からの報告が…』

ミカ「私の王子様ってば、最強じゃんね☆ほらほら、皆もアダム先生を取り逃したら他の人で妥協するしかなくなるよ〜?妥協満足できるわけないだろうけどさ☆」

『モモトーク リッカちゃん』

リッカ『ドーモ、アダム先生の娘です』
ミカ「(ムムッ)」
ミカ『ドーモ、アダム先生のお姫様です!』

ミカ(ムフー)

リッカ『私はアダム先生と合体技したけど、ミカちゃんは?』

ミカ(ガビーン!)

ミカ『私はアダム先生の全力を見たけど、リッカちゃんは?』

(ドヤァ…)

リッカ『私はアダム先生と学園巡ったけど、ミカちゃんは?』

ミカ(ガーン!)



リッカ(ポカポカポカポカポカポカポカポカ)
ミカ(ポカポカポカポカポカポカポカポカ)

パパポポ『あれは何を…?』
ティマイオス『互いが腑抜けないよう高め合っているらしい』

パパ『アダムめ、果報者だっポ』



安眠グッズショップ

アダム「くしゅっ!……上手く決まらんな」

(ミカとまた来るか…)


エピローグ・ミカ編〜慈悲と調停のお姫様〜

「じゃあナギちゃん!セイアちゃん!行ってくるね〜!」

 

 

「えぇ、いってらっしゃい。ミカさん」

「くれぐれも癇癪を起こさないように。頼んだよ」

 

エデン条約の締結が果たされたトリニティ総合学園。そのトップたるティーパーティーの三人は変わらず、ホスト候補者として共同の位置と立場を維持していた。

 

 

「エデン条約の守護者、かぁ…!よーし、やるぞー!」

 

今回の件において、ミカは他校と秘密裏にエデン条約成立を取り持ち、長年の確執や憎しみを終結に導いた『慈悲と調停の聖女』としての名声と脚光を浴びることとなった。しかし彼女はトリニティの内部改革や派閥争い、権力闘争等を全てナギサとセイアに任せトリニティから他校への外交に尽力する形態を取っていた。

 

他校や連邦生徒会、勿論アリウス分校に自らの足を運び、何を求めているか、これからのエデン条約の為に自分達は何をすべきか。自身が窓口となってゲヘナやアリウスの架け橋たらんと奔走する役割。彼女曰く、

 

「お高くとまったプライドなんて何の意味もない。自分の目と、自分の足で相手に会って想いを伝えなきゃ」

 

という信念の下、単身で交渉のテーブルについているのだ。

 

「あー!ミカだー!イブキ、待ってたよー!」

「おはよー、イブキちゃん!今日もよろしくねー!」

 

ミカが推進しているのは、エデン条約の争いにおいて大いなる成果をもたらした『学園の垣根を超え力を合わせる』という事。非常時の際は円滑にシャーレ、ひいてはアダムの指揮下に入れるよう日頃からの交流会やレクリエーション、合同訓練といったカリキュラムの成立と交渉だ。

 

「ここがミレニアム?すっごいインテリって感じだねー!」

「ようこそ、聖園ミカさん。歓迎いたします」

「そ、その…先生のお姫様というのは、どういう…?」

「んー?そのまんまの意味かな☆」

「!!!」

 

あらゆる学園に、自らが率先して関わりを持つ。そのスタンスは、彼女が愛してやまないアダム、その育成論に大いなる影響を受けたものだ。

 

「アリウスの修繕費用に補修に必要な人員…うわーお…」

「内戦に次ぐ内戦、争いに次ぐ争いだったから凄いことになってて…でも、やらなきゃいけないこと」

「うん、勿論!大丈夫、私…いい交渉相手を見つけたんだ!」

「交渉相手?」

 

「おーい!ミカちゃーん!」

「リッカちゃん!おーい!」

「リッカとミカ…二人揃ったね」

 

「行ってくるね!いい返事、期待してて!」

 

ミカはリッカをアダムの娘と知り、交友を結んだ。それは風紀委員とゲヘナのコネクションづくりが副産物に着き、更に更に強力な政治的パイプの設立の足掛かりともなっていた。

 

「ギル〜!ミカちゃん連れてきたよ〜!」

 

「わーお…カルデアってこんなピカピカなんだ…」

 

「先生王が見出した姫ではないか。良くぞ来たなモラトリアムのおませさんめ!此度は我に交渉が必要と聞いていたが?」

「はい!実はアリウス分校の復興修繕や、アダム先生のシャーレに対する個人的な投資とかのお話しを…」

 

リッカを通じて、楽園カルデアの頂点たるギルガメッシュに支援と投資の願いを直訴。全体的な資金問題や労働環境の改善、親睦校の復興といった際に必要な資金援助のスポンサー交渉を執り行ったのだ。

 

「エデン条約とやらにおいて一皮剥けたようではないか。よもや聖女と呼ばれる事も織り込み済みか?」

「大袈裟なんですよ、皆。私はただ、素晴らしい先生にもらった教えを大切にしてるだけだもん」

「ふはははは!恋は魔女を聖女に変える特効薬か。我ながら今良いことを言った!リッカよ、ギルガメ金言帳に書き足しておけ!」

「あーい!」

「良かろう!単身我に投資を願う度量、大いに気に入った!我が財の投資を許可しよう。誰もが夢見る理想、綺麗事をどこまで形にできるか!見せてもらおうではないか!」

「本当ですか!?わーい!ありがとう!ギルガメおじさん!」

「ふふはははははおじさんはやめよ!ゴージャス☆お兄さんと呼べぃ!」

──アダム先生、見ていますか?ミカちゃんはこんなにも立派になりましたよ…!

 

奇跡に連なる奇跡、希望に重なる希望の具現によってエデン条約は形となった。長い争いと確執は終わり、全ては新しい明日へと歩を進め始めている。

 

「疲れた〜〜〜……!アダム先生、いつもこんな事してるんだ……」

「お疲れ様です♡パンゲア・パーラメント一同…お待ちしていましたよ♡」

「もうすぐアツコやサオリ達もくる。もうひと踏ん張りだ」

「ナギサ様や、メイちゃんやセイア様もです!」

「お、お疲れ様…凄いね、ミカさん…!」

「ありがと〜!リッカちゃん、すいーつじゃんぬに出前して〜」

「アイ!」

「あなたゲヘナの風紀委員でしょ!?なんでここに!?」

「私のボディーガードなんだ☆」

「アイ!」

「ボディーガードぉ!?」

「アツコちゃんとの通詞もやってまーす!」

「通詞ぃ!?」

 

だが、一夜限りの奇跡では意味がない。自分達が新しい歴史を始めたのなら、その足がかりを作り礎を築き上げなければ。

 

「じゃーん!トリニティが使える資金が投資により100倍以上になりました〜!やったね☆」

「ブーーーーーーーッ!!」

「ナギサ様ー!?」

「ゴージャス☆お兄さん…何者なんだい…?」

 

ミカはさらなる理想を追い続ける。誰もが仲良しでいられる楽園。手と手を取り合える物語。

手と手を取り合える物語。

 

「やほ。アリウス生徒会長現着だよ」

「ボディーガードの錠前サオリだ。…こんにちは、皆」

「風紀委員長ヒナ、リッカの付き添いで来たわ。マコトはイブキのチョーカーが気になるみたいだから代理で」

 

「よーし!皆集まったね!それじゃあ…御茶会でもしよっか!」

 

それを始めたのは自身であるのだから、自身の過ちが始めた物語であるのだから。この理想を、ずっとずっと護っていかなくてはいけないから。

 

「見て!ミカ様よ!」「エデン条約の守護者!」「慈悲と調停の聖女…!パテル分派の女神!」

 

「「「「「ミカ様ーーーー!素敵ですわー!」」」」」

 

「支持ありがとー!☆陰湿なイジメしたら、アスカちゃんと一緒にぶっ飛ばしに行くからねー!☆」

 

「「「「「きゃーーー!ぶっ飛ばしてーーーー!!」」」」」

 

それが、この物語を始めた自分が成すべきこと。

 

これが、罪を犯した自分のすべき償い。

 

子供が大きくなるにつれ、捨てていってしまう理想や夢。誰もが懐いた綺麗な未来。

 

「またね、リッカちゃん!アダム先生によろしくー!」

「さよーならー!今日もミカちゃんアグレッシブだったよー!」

 

「もー!それ褒めてるの〜!?」

 

それを決して捨てる事無く、カタチにしていく。実現していく。皆で手と手を取り合って、一つ一つ現実にしていく。

 

「今日も歩き回って飛び回った〜……疲れたよ〜〜……」

 

生半可な苦労でなくても、労力は並大抵でなくても。きっともう折れることも挫けることもない。

 

「…ふふっ。エデン条約に関わった皆で撮った写真…アダム先生にもあげちゃおっと」

 

手を取り合える仲間がいる。支え合える友達がいる。

 

心も身体も捧げた、大好きな一人の男性がいる。

 

「アダム先生。……私を幸せにしてくれて、ありがとう」

 

エデン条約の皆で撮った写真の隣にある、アダムとミカの二人で撮った写真。

 

「アダム先生の教えが、もっともっとたくさんの人達に伝わるように…アダム先生がもっともっとたくさんの生徒たちと関われるように。私…頑張るからね」

 

もう自分は大丈夫。二度と魔女なんかにはならない。

 

魔女になる前に、止めてくれるたくさんの絆があるから。

 

「あなたの隣に相応しい、大人の女性になれるよう…。毎日毎日を大切に過ごしていくからね」

 

奇跡を夢見たお姫様は、王子様に見初められ大いなる成長を遂げた。

 

彼女の手で、『楽園の夢物語』は形となっていくであろう。

 

『モモトーク通知 私のアダム先生』

 

「!!!」

 

『ミカ 今日もお疲れ様。今度一緒にショッピングはどうかな?オレ、安眠用グッズを買いに行きたいんだ』

『行く!絶対一緒に行くからね!楽しみ〜!☆絶対絶対行くから!』

 

トリニティにおける、慈悲と調停の聖女として。

 

そして何より……

 

 

『そろそろ寝る時間だね。お休み、オレの姫君』

『うん!お休みなさい、私の王子様♡』

 

愛と希望を手に入れた、一人の女の子として。

 

「アダム先生の魅力に気付く生徒が、もっともっと増えますように…」

 

彼女はずっと、未来へ羽ばたく事だろう。

 

聖園ミカの全ては──

 

正しく、救われたのだから。




ミカ【……………………良かった】

【私が幸せな未来…世界…ちゃんと、あったんだ……】


【………………先生。皆……】

【………殺さなければ、良かったなぁ……】

…ミカの一日を見ていた、何者かは。

涙を浮かべ…人知れず、姿を消した。

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