ベアトリーチェ【アハハハハハハ!無様だな、ユスティナの聖女!最も尊き血筋であろうと、私の前ではこんなものだ!】
『………!』
【武器は砕け、まともに立つのもやっとな状態で何を守ろうと言うのです?あの女か?自身の子孫がそれほどまでに大事だと?ああ──それとも、あなたもありもしない幸福に手を伸ばすと?】
『────!!』
【記憶力の無い愚鈍な輩め!そもそもお前達ユスティナ聖徒会がアリウス分校を迫害し弾圧したことが!この憎悪の歴史のはじまりであることを!!もう忘れたのかぁッッ!!】
『………!!!』
【醜く滅び去るがいい、過去の亡霊!お前達の威光など、疾うの昔の幻想に過ぎない────!!】
バルバラ『…………!』
?「────それは違うな」
ベアトリーチェ【!!】
『!』
「尊き祈りは、無垢なる願いはけして滅びることはない。彼女の願いが、今アリウスの憎しみを終わらせんとしている事がその証」
『…!』
【来たか……!】
「そして、私は全ての生徒の味方たるもの。その願いが正しいものならば、時空を越えて手を差し伸べよう」
バルバラ『…………!』
「──良くぞ時間を稼いでくれた、ユスティナの聖女よ。後は私が引き受けよう」
【アダム・カドモン…!神の作りし木偶人形め…!】
アダム「君は成すべきことを果たしに行くといい。君が蘇ったのは、このような輩にかかずらうためでは無いはずだ」
バルバラ『………(こくり)』
ベアトリーチェ【どこへ行く!私に楯突いて生きていられるなどと…!】
アダム「─────」
ベアトリーチェ【ッッ……】
黒服【憎悪に取り憑かれた哀しい女…】
マエストロ【今、貴様の幕が降りる】
ゴルゴンダ【アダム先生…エデンの王の手によって】
デカルコマニー【そういうこった!】
ベアトリーチェ【裏切り者共がァ……!!】
「……最期となるのだ。貴様も教師の端くれ、教育論の一つも語り死んでいけ」
【何ィ…!?】
「貴様の存在もまた、忘れてはならないのだ。私の胸に刻まねばならない。…唾棄すべき、反面教師として。どうせ貴様はここで死ぬのだ。無価値なまま退場するのは忍びあるまい」
此処に在りしは、大人の戦い。神のワープにて現れしアダム・カドモン。アリウスに根差し暗躍していたベアトリーチェ。そして、アダムを見届ける他のゲマトリアメンバー。陰陽の形でエデン条約を創り上げてきた存在が、此処に最後の戦いを行おうとしていた。
そんな中、アダムはベアトリーチェに最後の情けを渡す。教育者として、彼女のスタンスを聞きおよぶ姿勢を見せた。赤い肌に無数の目、黒髪に白きドレスの淑女、ベアトリーチェはその言葉を聞き及び、口を引き裂き笑う。
【何を言い出すかと思えば…。私があの餓鬼達にほんの一欠片でも情を与えたなどと期待でもしているのか?バカめ。私はただ、アリウスにて行き場をなくしていた嘆きと負を利用していただけだ!】
(口調すらも変異している。度重なる憎悪の浸食に、【色彩】すらも越える宇宙の意志との交信で自我が壊れかけているのですね、ベアトリーチェ)
黒服の懸念のまま、ベアトリーチェは明朗に語りかける。
【そう!憎悪、怒り、軽蔑、嫌悪──そういった負の感情を利用し、偽りと欺瞞で子供たちを支配してきました!それがどうした!なんらおかしいことは無い!】
「……………………」
【生の謙虚さを教える金言は無価値な空虚へと歪曲し!堕落を警戒する厳格な自責は、逃れられない罪悪感へと歪曲し!!事実を歪曲し、真実を隠蔽し、本心を曲解し、嫌悪を助長し、憎悪を煽り、他人を──他人を、永遠に他人とすること!!】
それこそがアリウスに刻まれた教育の本質。ベアトリーチェが差し向けた、教育方針。
【楽園は永遠に届かないからこそ楽園たり得る!その地獄の中で「大人」は「子供」を支配し、搾取し、捕食する!ええ──誰かにとっては地獄でしょう!子供達にとっては牢獄でしょう!これこそ「大人」の!私の安らかなる楽園!私はアリウスにそれを作り上げた!私と!宇宙の大いなる意志たる神の手により!!】
(ビーストΩ……。宇宙意志と合一した、アダム先生の不倶戴天の存在)
【神の手掛けた木偶人形よ!おまえにとっての「楽園」は、エデン条約なのでしょう?みんなの友情で悪を退ける!単純で理解しやすい、手垢のついた何の捻りもない飽きられたジャンルの三文脚本の世界!!くくくくくっ…アハハハハハハ!!】
ベアトリーチェの笑みは偏執的な狂気を孕んでいた。とうに正気は無いのだろう。
【どうして子供たちの考えはこんなに純粋で単純なのか?それを真っ直ぐ信じ、あまつさえそれを真理として広めてしまうのは、正しいも誤りも分からぬシステムに徹した人形が故か?楽園の名前を付けたからと言って、何が変わることはない!むしろ大人ならば、こう教えなくてはならない!】
【【【……………】】】
【裏切り者のゲマトリア共!お前達にも冥土の土産に真実を教えて差し上げましょう!それが私の最後の情けだ!】
朗々と、高らかに謳い上げる。それが真実と宣うように。
【「その楽園こそ、原罪が始まった場所だ」と!アダム・カドモン!お前が神を殺した蛮行の始まり!真の楽園こそ憎悪、怒り、嫌悪、苦痛、悔恨。そういったもので溢れかえっているのだと!!】
『この人は…!』
【理解できないのなら、せめて私の捕食の邪魔をするな木偶人形!……ああ、それともシステムには自分で考えるような知性も備わっていないのか?】
「……………」
【今なら全てを水に流してもいい───ロイヤルブラッドを明け渡し降伏するがいい!あの子は私が丹精込めて教えた生徒だ!生贄として捧げれば、きっと私という大人に素晴らしい福音を与えてくれる!】
【あなたという人は……】
【気になりませんか?儀式を終えた私がどんな偉業に到達するのか!それを知れば、お前の無様極まる放浪の旅も一端の意味を持つだろうアダム・カドモン!一つの楽園を【終わらせた】愚王よ!】
嘲笑と哄笑をもって、ベアトリーチェは侮蔑する。アダムの足跡を。歩んできた全てを。
【お前が先生の真似事とは最も滑稽な冗談だ!エデンでお前は大量のお前を再生産したのだろう?大量のお前の複製品を生み出したのだろう?大量の劣化品でエデンを満たし!その全ての可能性を断ち切ったのだろう!?】
「…………………」
【お前こそ、最も教壇に立ってはならない存在だ!いくら心血を注いでも、お前はお前を再生産することしかできないのだから!お前が教えを授けた全ては!【やがて全てお前の劣化品となるだろう】!その絶望に気づいていない程にお前は愚かだったのか!?】
何を言われても、アダムの表情は変わらない。腕を組み、静かにベアトリーチェの教育論を聞き及んでいた。
【お前に何かを生み出すことなど出来はしない!最後の希望に縋ってやってきた汎人類史ですら!お前は全ての可能性を喰らい尽くすのだ!お前という到達点を以て!あらゆる可能性を断ち切って!そう──】
「……………」
【お前という存在そのものが!【生徒の悪しき見本】そのものなのですよアダム先生ェ!!アハハハハハハ!アッハハハハハハ─────!!】
語り尽くし、狂ったように笑い続けるベアトリーチェ。
────同時に。
「確かに聞き届けた。お前という反面教師がいた事を、私は生涯忘れる事は無いだろう」
アダムの拝聴もまた、終わった。
「では────黙れ」
【は────】
アダムの拳の一振りが、空間を支配した。それは音を遥かに置き去りにする、神速すらも越えた拳。
身動ぎ一つする事無く、ベアトリーチェはミンチとなって四散する。全盛期に限りなく近くなったアダムの拳は、最早現存する現代の全てで止められる者はいないだろう。
アダムは討論する気など毛頭無かった。ただ、ベアトリーチェという教材を反面教師にするために、その言葉にひたすら真摯に耳を傾けていたたけだったのだ。
語り終えたのならば、最早存在させる様な意味もない。速やかなる鎧袖一触にて始末するのみだ。
ベアトリーチェ程度など、最早敵にすらなり得ないのだから。だが──。
【一度や二度私を殺した所で無意味だと、何も理解していないようだなァ?】
ベアトリーチェの声が響き渡り、同時に肉片が凝固し再構成を果たしていく。
【神に作られながら神を殺せし人類の過ちそのものよ!全ての原罪の始まりよ!憐れなる楽園の追放者たる貴様に見せてやろう──この私の!完全無欠なる崇高の姿を!!】
そこに現れたのは──。
【アハハハハハハ!!アッハハハハハハハハハハハ!!黒服!マエストロ!ゴルゴンダ!デカルコマニー!!お前達も見るがいい!これがゲマトリアの結論!お前達が望んで止まぬ美しき崇高の姿だ────!!】
……アダムが庇護し、保護してきた全ての幻獣達の複製。黒服が複製したビースト達。マエストロの『ヒエロニムス』。ゴルゴンダの『ゴズ』『ペロロジラ』。そして無数の生徒達の意匠の人形達を放り込んだ黄金の聖杯を持つ、おぞましきケモノとすら呼べぬ集合体。
【……我々の探求は、我々の作品は、みなあやつに取り込まれた。あの様なグロテスクなパッチワークに貶められ、悪趣味なメタファーに辱められた】
【身内の恥もここまで来ると笑える様です。あなたという存在への憎悪…。偽神ビーストΩの憎しみに彼女は共鳴しすぎてしまった】
【名を冠するのなら……アレは【ベアトリーチェ・レチェッド】。意味はお察しください】
【そういうこった!】
【…アダム先生。この様なお願いは筋違いだというのは解っています。ですが…】
「皆まで言わずともいい」
アダムは制し、ネクタイを下げる。
「友人たちの頼みは、無言で察するのが大人というものだ」
【友人…!!!】
【私達が…か?】
【おぉ……】
「少なくとも──ゲームを共にプレイし、ラーメンを共に啜る程度のな」
一歩歩み出し、アダムはベアトリーチェに向き直る。
「ベアトリーチェ。それが貴様の崇高だと言うのなら、私も私自身の崇高を見せてやろう」
【いいだろう!見せてみろ!所詮私に踏み躙られて消え去る程度のものであろうがなァ!!】
「──できるかな?貴様に」
『はい!黙って聞いていればアダム先生の悪口ばっかり!アロナ、本気の本気の、本気で怒りましたからね!』
シッテムの箱、アロナのシステムが映し出す。
『カルデアの皆さんの協力で出来た新機能!あなたに見せてやります!』
【!?】
『展開再現!『固有結界』!更に『キヴォトス・コンバット・モード』起動!行きますよ若作りおばさん!神秘の貯蔵は充分ですか───!!』
シッテムの箱を中心に、『心象風景の具現化』が辺りを満たしていく。それは、魔術師の秘奥にして極致。
【これ、は───!】
ならばそれをアロナが、神秘の秘奥たるシッテムの箱が再現出来ない道理はない。そこは何処までも澄み渡る青空。何処までも走り抜けられる草原。──学園都市キヴォトスを遠くに見渡す、外れの風景。
「私の心象風景の一つだ。初めてキヴォトスを見た時の光景は、私の変わらぬ福音としてともにある。──そして」
其処に現れる、無数の銃火器。ヘイローと共に召喚される、『生徒達の神秘の顕現』。あらゆる銃火器が、あらゆる武装がアダムの周囲に展開される。
「私の崇高…。それはこの世界に生きる彼女達、生徒達一人一人に他ならない。奇しくも私達は結論を極致に置いたものだ。ベアトリーチェ」
【………!!】
「生徒を喰らう貴様と、生徒を尊ぶ私。どちらの教育がより高みに、崇高に至るのか──。此処で決着をつける」
シッテムの箱をハンドガンに変え、ホルスターに収め腕組みを解く。
「万を越える罪過がある。それらを断つまで楽になれると思うな」
【貴様ァァァ………!!】
「───貴様は私を怒らせたのだ、ベアトリーチェ。百や二百の死程度で楽になれると思うな……!!」
怒りと共に、アダムは駆ける。
──此処に、大人の全てを懸けた戦いが始まった。
ミカ「もう…邪魔しないでよ!」
ラフム・ミメシス【【【【【【!】】】】】】
(大聖堂に行かなくちゃいけないのに!早く行かなきゃ、この渦巻く憎しみを祓わなきゃ…!)
〜
セイア『大聖堂に行くんだろう?ルートは計算してあるよ』
ナギサ『下手に作戦に組み込めませんものね、あなたは。任せましたよ、ミカさん』
〜
(本気でやってアリウスを壊したくないし…!もー!もどかしいなぁ!)
ラフム・ミメシス【【【【【【!!!】】】】】】
ミカ「わっ!?…え?」
バルバラ『………………』
ミカ「え、ユスティナの…?うわ背、高い…2メートル?」
バルバラ『………………』
ミカ「え…ついてこいって?大聖堂に?」
バルバラ『………………』
ミカ「助けて…くれるんだ?」
バルバラ『………………』
「あっ、ちょっと待って!速いよ〜!」
〜大聖堂前
ビナー・イミテーション『──────!!!!!』
ミカ「わぁ…これ、番人かな?大きいな…」
バルバラ『……』
ミカ「倒さなきゃ…中に入れないんだよね?でもあなた、ボロボロで…」
バルバラ『……!』
ミカ「…うん。解った。それどころじゃないんだね。早く、アリウスの皆を解放してあげなくちゃ」
ビナー・イミテーション『!!!!!』
ミカ「行こう、ユスティナの人!大聖堂に行くために!」
バルバラ『───────!!』
大聖堂を護る複製品と、ミカとバルバラの異色のタッグバトルが同時に幕を開ける──。
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シモ・ヘイヘ
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ロジェロ
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