人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アダム「……皆、聞いてくれ。私はアリウスの生徒を助けるため、全ての生徒を護るため、エデン条約のうちは君達の傍にいられないだろう」

アズサ「………サオリ達、アリウススクワッドの事だな」

アダム「あぁ。……エデン条約を巡る答えは、私が導き出しては意味がない」

ナギサ「先生…?」

アダム「ゲヘナや、トリニティの仲間達。一人一人が答えを出し合い真理を導き出してほしい。私がもたらす答えでなく、皆が出した答えを私は尊重し、支えたいのだ」

セイア「それは……」

アダム「私は君達の到達点ではない。君達の礎だ。君達が導く楽園の形を…心から、楽しみにしている」

ヒフミ「あ、あはは…先生?それじゃあまるで、先生はその答えを見れないような物言いですよ?」

アダム「…そんなことはないさ。私は死ぬつもりはない。そう、君達を確かに強く導くまで」

そう────導くのだ。その可能性を。自分が到達点、最適解では意味がない。

これまでの数千年のように…

心血を注いで、私は私を再生産してはならない。

彼女達を、『アダム』にも、『リリス』にも。してはならないのだから。

──エデン条約を頼んだぞ、みんな。

私は、皆の全てを信じている。


幕開け

エデン条約調印、当日───。

 

ゲヘナ、トリニティの長きに渡る確執の終結。一つの時代の幕開け。不倶戴天の者達の手を取り合う締結。記念すべきその日は、キヴォトス全域にテレビ中継され全ての生徒が進展を見守るほどの一大行事となった。

 

シスターフッド、救護騎士団、正義実現委員会。ティーパーティー、風紀委員会、万魔殿。ゲヘナ、トリニティ両方の重大なポジションの生徒たちが続々と会場へ集まる。それらはその調印の大切さ、重要さを否応なく表している。

 

そして、シャーレ…連邦生徒会長の立場の代わりたるアダムも、静かに腕を組みその時を待っていた。エデン条約の調印、それ以上にそれらを阻むアリウスの介入を。

 

「………………」

『先生、緊張していますか?アロナはしています…ぶるぶる』

 

張り詰めた空気を和まそうと、シッテムの箱よりアロナが語る。シスターフッドの教会、無人の聖堂にてアダムが目を開く。

 

「少しな。…………このエデン条約で、私の今までの教育論の真価が問われる」

『教育論の、真価?』

 

「私の教え子たちが、自らの行く末をどう決めるか、何を選ぶか。……心配はしていない。故に私は、アリウスの生徒達に全力で取り組むまでだ」

『アズサちゃんの仲間達…ですね』

 

「彼女達は必ず来る。……背後にいる下劣な輩が、私を排除するよう指示しているだろうからな」

 

時間を見る。いよいよ、全てが結ばれる時間だ。トリニティの生徒と、ゲヘナの生徒が手を取り合い────。

 

『み、皆さん!突然ですが緊急事態です!突如、超大規模の高高度ハリケーンが発生!まっすぐこの、エデン条約調印会場に向かってきているとの事です!』

 

『えええっ!?ハリケーン!?』

アダムは素早く画像を確認する。超大規模ハリケーン、積乱雲。それらは金色の装飾を要している牛に見受けられる。

 

「これは……」

 

【天の牡牛、グガランナ。その複製ですよ、アダム先生】

 

現れしは黒服、マエストロ、ゴルゴンダにデカルコマニー。アダムの大人の友人たちが、一同に介す。

 

【我等の知人は、なりふり構わずこの場を破壊するつもりのようです。坊主憎けりゃ袈裟までにくい、でしょうか】

【憎しみで我を忘れているようだな。貴方を排除することに固執し、神秘による複製すら手を出した】

【このままでは、キヴォトス全域が不毛の地となるでしょう。如何しますか、アダム先生】

 

「愚問を問うな」

 

アダムは立ち上がる。アロナと、肩にパパポポを呼び乗せて。

 

「止めるのみだ」

 

【生徒の為に、ただ一人で?】

 

「愚問を問うなと言った。それに…覆せば出会うだろう」

 

【アリウスの生徒に、かね?】

 

「助けると誓ったからな」

 

それだけを告げ、アロナとパパポポと共に走り出す。

 

「アロナ、神のカードをスキャンする。青輝12000を使い、一時的な私の全力を開放する」

『了解!スーパーアダム先生モード、起動!!』

『私が導く。抜かるなよ、アダム』

 

アダムは跳躍し、翔び立つ。超高高度の、グガランナ・ミメシスへと。

 

【…ご無事で、アダム先生】

 

人智を越えた領域で飛翔するアダムの姿を、黒服達は静かに見つめていた。

 

彼の健闘の、成就を願って。

 

 

『ブモオォオォオォオォオォオォオォオ!!!』

 

天の牡牛。女神イシュタルがギルガメッシュにこてんぱんに振られた腹いせにウルクに放った生体大災害。嵐の化身にして女神の眷属。干魃と地割れを引き起こす、天の厄災。それは複製され、キヴォトスの上空に顕現した。どの様な銃火器も、自然災害に勝てはしない。

 

「─────」

 

故にそれの打破は、キヴォトスにてアダムのみに託された。神のカード、並びにリソースを使い数分間全力を引き出したアダムが、拳を握る。

 

『ブモオォオォオォオォオォオォオ!!!』

 

嵐、雷、怒号に雨がアダムを打ち付ける。祝福にて足を踏ん張り腰を入れ、振りかぶるアダムはそんなものを意に介さない。

 

「消え去れ。悪辣なる複製の牡牛よ」

 

そしてそのまま、左腕をしまい、背中の筋肉を挽き絞り放つ渾身の右ストレートをアダムは放った。それは、グガランナの血肉たる積乱雲を一瞬で吹き晴らし、依代となる金属機器をチリへと還した絶技。

 

ソリタリー・ウェーブ・ナックル。物質には固有の振動数があり、それに合わせた振動をぶつければ相殺により破壊されるという原理を、拳で引き起こす技。アダムの拳を必殺付けている原理。アダムは三つの全宇宙をEDENにて管理した王。宇宙の果ての素粒子の数まで把握しているが故の一撃必殺である。

 

『ブモオォオォオォオォオォオォオ…………』

 

グガランナ・ミメシスは断末魔を上げて消えていく。──その中、飛来する12の影。

 

【ムナシイ、ムナシイ】

【スベテハ、ムナシイ】

【タダタダ、ムナシイ】

 

顔面に口があり、強靭な肉体を有する奇特な存在。虚しさを口にする、かつてのウルクに現れた『新人類』。

 

「ベル・ラフム。これも複製か」

『あわわわ、気持ち悪いです!』

 

ベル・ラフム・ミメシスは飛行形態を取り、アダムに向かって飛来する。それは戦闘機にも匹敵するスピードではあるが──

 

 

「許せ、ティアマト神の子らよ」

 

生きている以上、存在している以上、アダムの拳の裁決から逃れられはしない。突進をいなされ、かわされ、返す拳で叩き殺されていくベル・ラフム・ミメシス。

 

【ムナシイ、ムナシイ……】

【タスケテ、センセイ……タスケテ……】

 

「…………勿論だ。その心ごと、助けるとも」

 

砕けて散っていくベル・ラフム・ミメシスに哀悼の意を示し、アダムは向き直る。これらは、あくまで前座に過ぎない。

 

「来たか」

 

空中より浮かび現れしは、超巨大な地表へ降り立たんとする小惑星。星の裁き、ハルマゲドン・ミメシスといったところだろう。複製で限りなく小さくなってはいれど、星は星だ。到達を許せば当然地表は滅び去るだろう。

 

「ミサイルの代わりとしては充分すぎる。余程辛酸を嘗めたのが屈辱だったようだな」

『す、推定直径3km…!?あ、あんなの…どうすれば…!』

 

『どうやら偽神がスポンサーというのは間違いないようだな。探求家が一人で用意できる規模では無いっポ』

 

「─────」

 

アダムは静かに確信を得ていた。これを処理すれば、必ずや消耗した自身にトドメを刺すためにアリウスの刺客がやってくると。

 

自分はアリウスの生徒達を救うと決めている。ならば、この困難と事象から逃げるという選択肢は存在しない。エデン条約の成立は、生徒達に託してある。『最後の一押し』には参加しなくてはならないが…。

 

「父よ、アロナを彼女の下へ」

 

『えっ!?』

『……やるのだな、アダム』

 

「あぁ。この為に私はトリニティにやってきたのだ」

 

『な、なんですか?何をする気なんですか?アダム先生!?ひゃあ!?』

 

アロナとシッテムの箱を預かったパパポポが、外界へと飛翔していく。生徒達の希望を抱えて。

 

『パパポポさん!?なんで、なんでアダム先生から離れて…!?』

 

『巻き込まれて、万が一にも君と箱を失ってはならない。…アダムの願いだっポ』

『アダム先生は!アダム先生はどうなるんですか!?』

 

『信じるしかあるまい。彼の…生徒に懸ける情熱を』

 

『そんな…!アダム先生─────!!』

 

迫りくる天体現象。小惑星衝突による生命への断罪、その複製。アダムでなければ対応できない脅威。アダムでなければ払えない絶望。故にこそ、用意されたのだろう。徹底的な大規模攻撃にも、それが見て取れる。

 

「──今、会いに行くぞ」

 

だが、星に向かう小惑星の破壊など異聞帯エデンにおいては当然の責務であった事からアダムにさしたる恐怖も感傷もない。かつてエデンでしていたことを、今また行うだけだ。

 

『反動』は避けられないが─…。それでも生徒達を守る為、成さないという答えははじめからない。全盛期のアダムの速さにて、小惑星の前に飛び立つ。

 

「見るがいい、アリウスを操りし者よ」

 

アダムは強く、強く。極めて強く拳を握りしめ───

 

「これが私の、貴様の教育への宣戦布告だ──!!」

 

力の全てを込め──力の限り、拳を小惑星へと叩き付けた。

 

発光、発熱、爆発、霧散、消滅。エデン条約調印会場に現れた厄災は皆、アダムの手によって払われる事となる。

 

 

『し、信じられない事が起こりました!立て続けに巻き起こった超常現象、大ハリケーン、未確認飛行物体、そして最後に超巨大隕石!それらをなんと、シャーレのアダム先生が打ち払ってしまいました!なんという目茶苦茶さ!これが、これが大人の真価であるのでしょうか!しかし光が収まった後、アダム先生はどこにも──え、後ろ!?きゃあぁあぁ!?』

 

同時刻。トリニティ全域に『戒律』の守護者『ユスティナ聖徒会』が出現。トリニティ生徒、ゲヘナ生徒へと攻撃を開始する。

 

厳粛な会場は一転し、混乱と騒乱の坩堝となる。

 

──これを予見していた、一部の生徒達を除いて。

 

 

「…………………、………………──────」 

 

星を砕いたアダムは、その反動をもろに受け超高高度から、地表へとなんの防護も無く叩き付けられた。十度バウンドし、勢いを殺しきったところでようやく静止した形となる。

 

「…………満身創痍とは、この事か……」

 

念の為残しておいた右ではなく、殴りつけた左腕は壊死寸前にまで黒ずみ、動かすことは叶わない。体中の傷からは血が噴き出し神殺しの咎が強く強くアダムを苛む。まさに今、アダムは半死半生の状態に陥っていた。

 

「だが、これで……こちらに、来るはずだ」

 

脚に力を込め、身体を動かす。破片の下や瓦礫に埋もれては意味がない。会うべき生徒に、向き合わなくては。

 

「───まさか、単独であれらを退けるとはな。彼女の言う通り、人間のフリをした化け物のようだ、お前は」

 

「……来たか」

 

安堵の声と共に、アダムは目の前の生徒達を見やる。アダムを化け物と称した、すらりと引き締まった体躯に長い黒髪を持ち、黒いキャップと顔の半分を覆うマスクを装着している黒いヘソ出しノースリーブのインナーの少女。

 

「いや、用意していた側も対処した側も引くんだけど…まぁいいや、予定通りに事は進んだから」

 

黒いマスクと耳につけた大量のピアス、携えるFIM-92が特徴的な少女。

 

「あぁ、そんなにボロボロになって…!痛いですよね、苦しいですよね…死んだほうがマシですよねぇ…!」

 

背中に大きな荷物と狙撃銃を背負った少女。

 

「……………」

 

「…君が、そうか…」

 

そして、アダムがアリウス生徒達の意識で垣間見た『救いのイメージ』にして、約束の対象。ガスマスクで顔を隠した、ミステリアスな少女。

 

「君達が──アリウスの刺客たる生徒で、間違いないようだな…」

 

朦朧としていた意識と眼に、光が戻る。アダムは話しに来たのだ。満身創痍になれば、必ず来ると信じ。

 

「無様な姿だ。生徒を一人も傷付けず護るなどという酔狂に傾倒した結果がそれだ、神が作った木偶人形」

 

「…………」

 

「彼女はお前さえ排除すれば如何様にも事は成ると言っていた。トリニティも、ゲヘナも、所詮はお前の駒。お前を喪えば容易く瓦解するものだと」

 

「彼女………その女が、アリウスと…君達の人生を悪用する、私の敵だな」

 

アダムの身体からは夥しい出血と、亀裂が走っている。どうやら神殺しの呪詛を励起する仕掛けでもあったのだろう。だが、それは意志においてなんら無意味なものだ。

 

「感謝する…。私が排除するべき敵を、教えてくれた」

 

「お前が成せる事など何もない」

 

マスクのリーダー格の少女が、銃を突きつける。

 

「死ね。それで全てはおしまいだ」

 

一発、二発、三発、四発、五発、六発。連続で、アダムに向けて引き金を引き撃ち放った。

 

しかし───

 

「…当たるわけにはいかん。これはお互いに、消えない傷になる」

 

その銃弾を、アダムは完璧に凌いでいた。一度も傷つかなかったアダムを見て、四人の少女に僅かながら動揺が走る。

 

 

「化け物め…」

 

「ど、どうやったんですかぁ!?マダムから貰った特殊弾、撃ち切ってしまいましたけど…!」

 

「死にかけのくせに銃弾は掴めるの…?本当に生き物なの、あんた…」

 

「……………」

 

「君達に……伝えたいことが、ある。まだ、死ねんのだ」

 

アダムは向き直り、少女達に告げる。

 

「その憎しみは……君達のものでは、ない。為すがまま、利用されて…生きる必要は、ない…」

 

「………!」

 

ガスマスクの少女が顔を上げる。アダムは瀕死でありながら、言葉の力強さに微塵の翳りもない。

 

「君達の人生は…君達のものだ。君達の人生に…虚しいものなど、何一つない…それだけは、伝えたかった。どうしても」

 

「………………………」

 

「変わることを…恐れなくていい。アズサも、卒業生たちも変われた。君達も、変われる…変わろうと、思えたならば…」

 

「…何言ってるの、こいつ」

 

「解りません…えっと、もう意識も定かでは無いのでしょうか…?」

 

「…………………(スッ、スーッ…スッ)」

 

困惑が広がる中、ガスマスクの少女が手話を行う。どうやら、それが意思疎通の手段のようだ。

 

「……駄目だ、姫。それはできない。必ずトドメを刺せとの、命令だ」

 

「(スッ、スーッ…スッ)」

 

「解ってくれ、姫…こいつを殺すのは今しかない。こいつはキヴォトス全ての武力を上回る存在だ。殺すのは今なんだ」

 

(スーッ、スーッ。スッ…)

 

「……なら、私がやる?……解った」

 

ガスマスクの少女が歩み寄り、ナイフを取り出す。それを、ゆっくりとアダムへと突きつける。

 

「────…っ」

 

アダムの肉体にも限界が来ていた。片膝をつき、血反吐を吐く。見下ろす少女と、見上げるアダム。ガスマスク越しに、視線が混じり合う。

 

「………無粋な、ガスマスクだな……」

 

「………………」

 

「きっと、外していたほうが…可愛らしい筈だ……」

 

「……………!」

 

それきり、アダムは項垂れた。最早言葉を発する気力すら尽きようとしていたからだ。

 

「さぁ、姫、トドメを」

 

「………」

 

姫と呼ばれる少女は、アダムに重なるようにして──

 

(あなたが、アリウスの皆を助けてくれたんだね)

(…!)

 

(もし良かったら…あの三人も、助けてあげて)

 

そして、少女はアダムに突き刺す。…隠し持っていた、先が引っ込むナイフを。

 

(……君、は…)

 

とん、と少女に押され倒れ伏す。踏ん張る力も、残っていなかったが故に。

 

「死んだのかな」

 

「ね、念の為頭にも撃っておいた方が…」

 

「(ふるふる)」

 

「……解った。もういい。引き上げるぞ。あとは複製達に…」

 

 

【逃がすとお思いですか?】

 

瞬間、アダムを庇い立てるように放たれる圧倒的火力制圧。すんでのところで姫たる少女を、リーダー格の少女が庇い立てる。

 

【あぁ、あなた様…!なんとお労しいお姿に、あぁ…!ご心配なく、今助けが向かっていますから今暫しの辛抱を…!】

 

「……【災厄の狐】…!?なんでこんなところに……」

 

狐坂ワカモ。

 

矯正局を脱走した「七囚人」の一人で、襲撃事件を複数起こしている。無差別かつ大規模な破壊行為を行う事から「災厄の狐」と呼ばれている。

 

「ど、どうしてですかぁ!?トリニティでも、ゲヘナでも無かったような…!」

 

【…一目惚れした殿方の傍にいる。それがそんなにおかしい事でしょうか?】

 

彼女の実力は、学園有数の特殊部隊総掛かりでやっと互角、と言う程のもの。個人的な一目惚れから、アダムの視界外のどこにでもいる…アダム個人が頼りにする切り札の一人である。

 

【そしてあなた達は、事もあろうにアダム先生をこの様な目に遭わせ、あまつさえ彼の悲願の条約すら打ち砕こうとした】

 

その戦闘能力は……彼女ら四人を合わせてなお、及びもつかないだろう。

 

【肉片一つ残らず塵にしても飽き足りません。阿鼻の地獄の底の底まで叩き落としてその罪業を思い知らせて差し上げましょう…!!】

 

怒りに燃えるワカモが、四人に向けて銃を構える。もはや、アダムの生死を気に掛けるような事態ではない事を一同は把握し撤退戦へと移るしかなくなるほどの窮地。

 

「アダム先生ーーーーーーー!!迎えに来たわよーーーーーー!!!!」

 

その時、風を切る装甲車と共に、颯爽と現れる者がある。

 

「便利屋68!パートナーのあなたを助けに来たわよ!オルガマリーの要望込みで依頼を遂行するわーー!!」

 

「ワカモ……アル……」

 

【さぁ、あなた様!誰かにあなた様を任せるのは癪ですが、今は御身の傷を癒やしてください!】

 

ワカモに抱き起こされるアダム。その目は、死んでいない。

 

「ありがとう、ワカモ…君に惚れてもらえて、光栄だ…」

【…!そんな、あなた様がそのような…】

 

「手を伸ばしてちょうだい!走り抜けるわよーー!!」

 

【……………睦言はまたいずれ。無粋な輩が消え去った後に。どうか、御自愛を!】

 

ワカモが添えた手を、アルに向けて伸ばす。その手を、アルは強く強く掴んだ。

 

「あぁ、先生…!こんなにひどい怪我を…!」

 

「アル…すまない。持ち合わせの報酬は、今…」

 

「いいのよ、そんなの!私達の仲じゃない!離脱よみんな!全速力!!」

 

「オッケー!しっかり掴まってね!!」

 

「よくも、よくもよくもよくもアル様の大切なパートナーのアダム先生にこんな、こんな!死んでください死んで死んで死んで死んで死んでくださいいいいい!!!」

 

「殿はやるよ。離脱する…!」

 

 

かくして、アダムはすんでのところで命を拾う。少女達へ、言葉を残して。

 

 

「まぁいい…!あの傷では長くはない。最早手遅れだ…!」

 

「……………」

 

「行こう、姫。あとはゲヘナとトリニティをすり潰せばいい…!」

 

「………うん」

 

ワカモの怒りの追撃を必死にかいくぐりながら、少女達は去っていく装甲車を見やる。

 

姫と呼ばれた少女は…特にその様を強く見つめていた。




ゲヘナサイド

ヒナ「アダム先生の言った通り、一筋縄じゃいかなかったみたいね…特にこれは…!」

アコ「アダム先生は!?安否確認できたんですか!?どうなんです!?」

チナツ「まだ、確保の連絡は…!」

アコ「探してください!何よりも!!最優先にです!!」

イオリ「落ち着け!アダム先生が死ぬもんか!アダム先生だぞ!?」

アコ「ですが……!!」

リッカ「委員長!!皆さん!ここは私が引き受けます!万魔殿のみんなと一緒に、ティーパーティーの皆と合流を!」

ヒナ「!」

リッカ「敵はエデン条約を悪用しています!それを打ち破るために、トリニティの皆と話し合って決めてください!エデン条約の本当を、その在り方を!」

チナツ「リッカさん…!」

ヒナ「……………任せて、いいのね」

アコ「委員長!?」

リッカ「勿論です!風紀委員指揮官の称号は伊達じゃないですよ!」


ユスティナ
『』『』『』『』『』『』

ラフム・ミメシス
【【【【【【ムナシイ、ムナシイ。スベテハ、ムナシイ】】】】】】

ヒナ「…風紀委員、撤退。ティーパーティー達と合流する」

イオリ「いいのか!?リッカは…!」

ヒナ「これは命令。戦線維持は、指揮官と部下に一任する。急いで!」

アコ「リッカさん…!大見得切ったんですから!やってくださいね!」

リッカ「当たり前ですって!見つけてください。皆の物語のカタチ!」

ヒナ「必ず、戻るから…!」

リッカ「───よーし!」
アロナ『今は!行きますよ、リッカさん!』

「おうっ!!行くよ、風紀委員の皆!!」

「「「「「「了解です!!リッカ隊長!!」」」」」」

「風紀委員────突撃────!!!!」



ティーパーティー本拠地

サクラコ「…集まりましたね」

マコト「…………」

ヒナ「………」

ミカ「…………」

ナギサ「…………」

セイア「…………」

サクラコ「ではこれより……この状況を打開する手段を、お伝えいたします」

彼女たちは、ただ出し抜かれたわけではない。

アダムの導きの下、確かな反撃の力を蓄えていた。

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