人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「聖地・・・まさか、いや、まさか・・・」


(もしや、【初代様】が魔術師殿の天命を見据えた、等と言うことは・・・まさか、いや・・・)


【わぁ、凄い砂嵐!皆ー!いるー!?はぐれてないー!?――ん?】


【骸骨の人影】


【――ん、んん・・・?】

(気の、せい・・・?)

【・・・なんだろ?鐘の音、止まない・・・耳なりかなぁ?】


王達の道標、開拓――ニトクリス涙目――

「砂だな」

 

 

英雄王が所感を漏らす

 

 

 

「砂ですね」

 

騎士王が感慨無さげに呟く

 

 

「うむ、侵入者、敵対者を阻む熱砂の洗礼!ファラオなりし業である!」

 

 

太陽王が愉快げに笑う

 

 

――砂嵐・・・!何にも見えない――!!

 

 

そう、砂だ。目の前を覆い尽くす砂、砂、砂・・・

 

 

意思を持つ嵐。巻き起こり、害をなす砂嵐。レイシフトを終えた一行を待ち受けたのは、僅かな先すら見通せぬ程の凄まじい熱砂の暴威であった――

 

 

『そこはファラオ・オジマンディアスに導かれ召喚されしエジプト領地。その砂嵐は人払いにて張られたファラオの業のようだね』

 

 

ロマン・・・ソロモンが即座に現状を看破し、一行に告げる

 

 

「成る程、召喚に民草をも巻き込むとはな。王としての礼儀、道理は弁えているようだな、太陽の」

 

愉快げに笑う英雄王。砂嵐、いや。外界に自らの絶対さを崩されることはないその偉容に、エアは頼もしさすら覚える

 

(蔵の中に退避だ!退避!)

 

ピョコンと黄金の波紋に飛び込むフォウ

 

――っつ!まずはこれを何とかしないと、探索どころではありませんね・・・!

 

 

『リッカ!マシュ!大丈夫!?』

 

オルガマリーの声が飛ぶ。声帯に拡声魔術をかけているので、問題なく声は届く

 

【私は大丈夫。マシュも・・・】

 

泥の翼で己を覆い、砂を弾き飛ばすリッカ

 

「せーーんーーぱーーいーー!!大丈夫ですかー!!お返事をお願いいたしまーす!!せんぱーい!!」

 

 

声を張り上げながら、盾をブンブンと振り回すマシュを見て、サムズアップを行うリッカ

 

【・・・大丈夫!】

 

『良かった・・・』

 

胸を撫で下ろすオルガマリー

 

【ほーらマシュ、暖かいよ~】

 

尻尾でマシュを引き寄せ、離れないよう寄り添う

 

 

「あ!先輩!」

 

「ふむ、これはニトクリスめのファラオ・呪術か。その効き目は見事ではあるが、余がこの場に降臨したことを察知できず即座に解除せぬのは減点せざるを得まい」

 

砂嵐をものともせず、オジマンディアスは涼やかに歌い上げる

 

 

ファラオの中のファラオたるオジマンディアスにとって、辺りを埋め尽くす砂塵など微風に等しいのだ

 

 

「試練、なのでしょうか。『我が下に来たくば力を示せ』といった、ファラオなりの」

 

同じく泰然とある騎士王。リッカとマシュにマントを授け聖剣に手をかけている

 

「なきにしも非ず!!その見識の方がニトクリスめの威厳も保たれよう!『試練』として受け取り!正面から蹴散らし、ファラオの威光を知らしめるも良かろう!!」

 

【じゃあ、その!王様三人に進言いたします!】

 

深々と御辞儀をかまし、嘆願するリッカ

 

 

【この砂嵐!何とかしてくださーい!!】

 

 

「承りました」

 

即座にエクスカリバーを引き抜き、魔力を変換し暴風を巻き起こす

 

「手早いなアルトリア。力押しは望むところ、と言ったところか?」

 

「この世には個人の力量ではどうにもならないことが多々ある。だからこそ、力で解決できる事は早急に解決すべきなのです」

 

騎士王の王威に、軽く鼻を鳴らし応える

 

《エア、遅れをとるのも癪だ。此方もそれなりの挨拶をファラオめに贈るとしよう》

 

――大丈夫ですか王!その、裸の上半身に羽織る布を選別いたしましたが!

 

《でかした!そしてそれではない!エンキだ!エンキを持て!》

 

――終末剣ですか!?このタイミングで・・・!?

 

 

《何来る《裁き》とやらの前準備だ。本領を発揮するまで七日掛かる寝起きの悪さを誇る問題児、此処で渇を入れてやらねばなるまい!》

 

――解りました!即座に!

 

王の言葉に即座にエンキを選別、王の左手に弓の形態で装備してもらう

 

 

「――嵐の怒り、我が王命に応えよ」

 

白銀の暴風が辺りの砂丘、砂塵をまとめて消し飛ばし、サーヴァントでない常人ならば遥か天空を舞い飛ぶ程の暴威を放ち、唸りをあげる竜の如くに吼え上がる

 

 

「天に座す火よ、滅びの焔よ。真なる王の命を待ち、星の果てにて輝くがいい。然る七日にて地上を一掃せし潮騒、大終末の扉は開かれるであろう」

 

王の言霊に答え、黄金の矢、七つの巨大な矢が衛星軌道上の高さ、空の彼方まで飛来していく。その軌道に在りし砂は余さず吹き散らされ、七つの天空に穿たれし穴から青空が顔を見せる。

 

 

「『風王鉄槌(ストライク・エア)』」

 

下段から一息に聖剣を振るい上げ、纏った風を即座に辺り一帯に叩き付ける

 

 

せめぎあい高まった嵐の塊は砂嵐とファラオの王威を蹴散らし、渦巻く竜巻は辺りの砂塵を巻き込み取り込み、遥か天空に延びる竜巻となりてファラオの領地を席巻する

 

 

「先輩!私の後ろに!!」

 

【勿論!】

 

マシュの展開したシールドに加え、両手のガントレットに変更したアキレウスの盾を展開し、完全防塵の体勢を作り上げる

 

風圧、衝撃は余すことなく視界全てを吹き飛ばし、猛烈な勢いを以て辺りの万物を慈悲なく消し飛ばす

 

 

「――このくらいでいいでしょう」

 

ゆっくりと聖剣を下ろす頃には、天と地を覆い尽くしていた砂嵐は跡形もなく消え去っており

 

「――我が星の輝きを邪魔するとは。まこと目障りなことよ」

 

空には光帯と、輝ける七つの星が煌めく神秘的な青空が広がっていたのだった

 

二人の王にて、砂漠の守護たる砂嵐は形跡を残さず吹き散らされたのである

 

 

「フハッ!ハハハハハハ!!良いぞ!王を名乗る者共!これくらいは成さねばなるまいな!まこと愉快!痛快なり!」

 

ファラオ・オジマンディアスは高らかに笑う。砂塵と害意が無くなった砂漠にて、地上の太陽と在りて輝く

 

――いや、害意は未だ消えず

 

次に訪れしは、地響き、そして咆哮

 

『そちらに向かう神獣反応・・・神獣!?』

 

冷静さを失ったロマンの悲鳴が響き渡る

 

『この反応は――スフィンクス!エジプトに伝わるスフィンクスの反応が数十体単位で確認されているわ!!』

 

オルガマリーの言葉通り、眼前から四足歩行の人面獣なりし獣が徒党を組んで殺到してくるのを王達は認める

 

「ふむ、そういえば放し飼いにしていたな。忘れていた」

 

『忘れないで!?どうするんだい!?逃げるのかい!?』

 

「――笑止!!!」

 

即座に手に王杖を掴み取り、振るい上げる

 

「黄金のは天に星を戴き!騎士王は嵐を顕現させた!ならば余は、太陽となりて威光を示すまでのこと!!」

 

杖の底を叩き付け、顕したるは太陽王自身が身体を預けし『闇夜の太陽の船(メセケテット)』。そして――

 

「太陽の威光にて賜りし生命でありながら太陽に刃向かい!不遜にも刃を向ける我が威光の一欠片ども!貴様らに真なるファラオの武勇を見せるとしよう――!」

 

目の前のスフィンクスを遥かに上回る地響き、偉容、神威、威光、巨体。時空を切り裂き、顕れたるはスフィンクス全てを率いたる王種。肉体を銀河で構成されし、全長25メートルを誇るコスモスフィンクス

 

その真名を――

 

 

「絶望による死を赦す!!『スフィンクス・ウフェムメスウト』!塵芥どもに真なる雄壮を示せ!!我が太陽の船!一欠片の有象無象、衆生一切を薙ぎ払え!!ネフェルタリ!余の威光と神威、全てお前に捧げよう!!」

 

号令を下す。――太陽は無慈悲な灼熱となりて、立ちはだかる衆生を焼き尽くす

 

太陽の船に備えられし主砲、副砲、総ての武装から黄金の光線が放たれ、飛来するスフィンクスを切り裂き穿ち焼き尽くし爆発に呑み込む。火焔の火だるまとなり墜落していく様は虫の如しだ

 

スフィンクス・ウェヘムメスウトの無貌より銀河光線が照射される。宇宙の暗黒物質を叩き付ける死の光に晒され、暗黒に呑まれていく地上のスフィンクス達

 

 

『こ、これが――王達の力・・・!』

 

【すごぉい・・・】

 

――王って、やっぱり物凄い生き物なんだ・・・!凄い!

 

「――はい!そして、最高に頼もしいです!この三人が、全員味方であることに――!」

 

王の威光を見据えし者は、賛辞と感嘆を隠すことなく顕す

 

 

「つまらぬ!惰弱惰弱!!余に牙の一つも届かせられぬ有象無象が熱砂の守護獣を名のるなど笑止千万!いや――やはり種の違いは覆せぬか!余が悪辣であったか!フハッ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

「我の庇護せしラマッスとよい競合相手になろうな。ふはは!神獣とはこうあるべきよな!!」

 

上機嫌に笑う英雄王、太陽王

 

「これで進路は確保できました。反応は西ですね?ドクター」

 

リッカとマシュを助け起こし、聖剣を指し示す

 

「さぁ、行きましょう。私達の戦いは、旅路はこれから始まるのです」

 

【うん!】

 

「はい!アルトリアさん!」

 

三人の王が、三種三様の道を示した、その時だった

 

「ホホホホ!あまりに苛烈かつ美しい道標、お見事でした!正直震えが止まりませんがファラオ的に奮い立ちます!良き女性は私情を仕事にはさまないものなのです!はい!」

 

美しさと麗しさ、理知的な高笑いが砂漠に木霊する

 

「何者ですか!?」

 

「――フッ、そういえば外交役として召喚していたな」

 

オジマンディアスが愉快げに笑い、見据える

 

「こんにちは!珠玉の王者達!そして人類最後のマスター!サーヴァント!妾はあの、本当に名乗るような者ではないのですが!礼儀として!畏れ多さに堪えながら自己紹介をいたします!」

 

レザーとホットパンツ、深緑の長髪。叡知と聡明さを振り撒き物理的に眩しく輝く絶世の美女が、深々と御辞儀をかまし挨拶する

 

「妾はクレオパトラ・フィロパトル!アサシンのクラス、外交担当としてファラオ・オジマンディアスに招かれました!貴方達の武勇と威光を認め、ファラオ!オジマンディアスの神殿へと招き入れぇえぇえぇえぇえ!?ファラッ、ファラオ・オジマンディアスが此方にも――!?」

 

 

「知己か?太陽の」

 

「ファラオだ、黄金の」

 

「水先案内人ですか。助かります」

 

王達が訝しげに見やる中、エアとリッカ達が異変に気づく

 

――あれ?

 

クレオパトラと名乗る女性が抱き抱えているのは・・・

 

【ニトちゃん!?】

 

スヤスヤと眠りにつく、ニトクリスであった――




「えぇい!砂嵐に紛れてファラオを拉致する作戦がなんて様だ!星が飛び、嵐が嵐に飲まれ、太陽の光が飛び交う!そして煌めくふざけたアサシンの女に返り討ち!!いつからここは世紀末になった!」

「いいから撤退しましょう!巻き込まれますよ!!」

「ぐぬぬぬぬ・・・!あの輝くアサシン、けして忘れぬぞ・・・!というか輝くアサシンとかふざけているのかぁ!!」


「・・・あの風・・・」

「・・・もしや、そんな・・・まさか――」

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