奇しくも、同じタイミングで先生が動く事になりました…!
アダム先生とカルデアの奮闘にご期待ください!
「──やぁ、アダム先生。はじめまして…かもしれないね」
キヴォトス、シャーレに属する先生…アダム・カドモン。夜通しラーメンと紅茶とロールケーキの共存を考え寝不足気味になっていた彼は、いつの間にか夜のトリニティ総合学園、その最高権力者が座るティーパーティーの席に座っていた。
「あなたの事は見ていたし、メイから話は聞いていたよ。今はすっかり姿を見せられていないが、メイは私の従者でもあるんだ。その説は、彼女が…トリニティそのものが大変お世話になったね」
「ほう……。紅茶とロールケーキとラーメンの共存を真剣に案じれば新たなる生徒と出会える。これもまたペロロ様の思し召しなのやもしれんな」
「???…私は、百合園セイア。ティーパーティーの…ミカやナギサの、個人的な友人でもある。今は理由があり、姿を見せられてはいないけれど…ね」
百合園セイア。そう名乗る生徒はアダムと向き合う。傍らには、尾張メイが静かに侍り佇んでいた。アダムは柴犬カップラーメンにティーポットからお湯をぶちこみ向き直る。
「先生は先んじて、トリニティとゲヘナの向き合う問題…「エデン条約」に触れたようだね」
「エデン。楽園の名を冠する条約。…素晴らしい名前だな」
「…つまるところ、エデン条約とは『憎み合うのはもうやめよう』というもの。互いに積み重ねてきた憎悪を捨て去り、また新しい信頼を、未来を始めようというプロセスだ。早い話、お互いに結ばれる、平和条約。名前はまた、連邦生徒会長の悪癖だろうね」
憎しみを捨て、未来を築くために手を取り合う。それは夢と希望に満ちた、素晴らしい目論見。幸福の結末。
「だが、連邦生徒会長が失踪し…この条約はなんの意味もなくなってしまった。アダム先生、キヴォトスの七つの古則…その五つめを御存知かい?」
「『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することは出来るのか』…だったな」
「流石だね。……これは意地悪な、ある意味で言えば悪意と諦観に沿って結論を先行させた問いでもあるんだ」
お湯を入れ、紅茶を啜りながらアダムはセイアなる生徒の問を続ける。
「楽園に到達したものは、その悦楽と幸福から二度と楽園から出ることはない。もし楽園から出たのならば、それは真なる楽園で無かったという事である」
「そうだね。であるならば、存在しないものを証明する事はできるのか?という、最初から答えを有しようのない、不可解な問いなのだよ」
セイアは目を閉じ、アダムに問を投げかけ続ける。
「この冷笑のような命題には、何か思うところがあるのだろうか?なにか我々に、問いたい事があるのではないか?そう、私は思うんだ。アダム先生。エデン…経典にのみ存在する楽園。どこにも存在せず、探すことも能わぬ場所。夢想家が思い描いた、甘い甘い虚像」
「…………」
「どうかな、アダム先生?奇しくもあなたは、楽園の追放者と同じ名前を冠している。あなたから見て、このエデン条約はどう見えているのかな?」
セイアは念を押すように、言葉を締めくくる。
「これから先の話は、あなたのような強く、気高い存在には似つかわしくない話かもしれない。不快で、不愉快で、忌まわしく、あらゆるものを疑い、眉を顰めるように苦い後味で…悲しくて、憂鬱になるような」
「………」
「しかし同時に、紛れもない真実の話でもある。アダム先生、あなたは背を向けず、目を逸らさず、しっかりと見届けてほしい。それが、この先を選んだあなたの───」
「見ろ、セイア」
それまで沈黙を保っていたアダムが、セイアを制した。それは──お湯を入れた3分後であった。
「これは柴犬らーめんの大将と作り上げたカップラーメン、同時に袋麺でもある。いつでもどこでも柴犬らーめんの味が堪能できる。素晴らしいとは思わないか」
「…あ、あぁ。たしかアビドス地域の…アダム先生贔屓のラーメン屋だったね」
「あぁ。私はこの味を得難く感じている。これを食べている時…私は感じるのだ。エデンを。楽園を」
味の素にかやくを放り込み、かき回しながらアダムは問い返す。
「楽園はあるのか?それをどうすれば証明できるのか?それがその問いの本質だったな?…問いかけには時として、出題者の悪意が顕在したものも往々にして存在する」
「それは……」
「出題者の中に既に確定付けられた結論があるもの。すでに答えが『こう』であるという前提を補強する為に定義されるもの。今回のその問いには『楽園など存在しない』『夢想にしか、楽園はありえない』という出題者の悲観的な諦念を前提とした問いかけであると私は仮定しよう」
カップラーメンを一口で啜り、アダムは真っ直ぐセイアに問い返す。
「その上で、私はこの古則に答えを出そう。『楽園はある』。『幸福の果てには行き止まりしかなく、楽園には限界がある』。『楽園の更にその先を求め、人は幸福を求め旅を始める』という答えをな」
はっきりと言葉にし、セイアの提示した悲観に否を唱える。
誰もが夢見た綺麗事。
誰もが描いた絵空事。
それを、セイア…並びにメイへと指し示した。
「!」
「……あなたという大人が、根拠のない理想論を振りかざすものではないよ。アダム先生」
「根拠はあるとも。私の知る楽園は科学、自然、文明の三つの発展を極めた星と宇宙を管理する超巨大管理ステーションであったからだ。数万、数億年紡ぎ上げたその場所において、あらゆる悲劇は起こらなかった。無原動力に宇宙のエントロピー熱量問題、資源開発。それら全てを解決したが故にな」
「…………そんな、夢のような…」
「信じられないか?だが、どこぞの偏屈者が考え出した屁理屈などより、余程信じてみたくなるような具体性のあるビジョンだとは思えないか?セイア、メイ」
自信ありげに、アダムは不敵に笑う。まるで、見てきたかのようにその言葉には確信があった。
「そして、楽園から出たからその楽園は偽りだったというのも真の楽園を知らぬ者の稚拙な断定だ。完璧すぎるが故に、完璧であるが故に先がない事象が真の楽園には存在する。学ぶことも、育つことも無意味な、完成と言う名の停滞がな」
「………!」
「それを疎い、楽園に住む全ての者の為に苦難に満ちた荒野に旅立つ者こそ、真の楽園を知る者だ。真の楽園では無かったから楽園を出るのではない。楽園に住む全ての者たち…並びにその楽園そのものに未来をもたらすために、楽園を出る者はエデンに背を向けるのだ。楽園の存在を伝えるために。エデンに住む者全ての為に」
スープを啜り、結論とばかりにアダムは確かに告げた。
「楽園は存在する。誰もが笑い、争いを捨て、分かち合い、許し合い、助け合い、幸福な未来を掴み取れた世界は確かに存在するのだ。セイア」
「!」
「下らぬ悲観論者のカビの生えた持論等に人生観の影響を受けるのは勿体無いぞ、セイア。世の中は楽観的、夢と希望を信じ日々を生きていった方が楽しくなるというものだ。そも、娯楽においてバッドエンドや鬱展開などを望む者は幸福な者に限られる。本当の絶望を知るものが空想に懐く願いは一つだ」
「…それは?」
「『どうか何処かに、夢と希望と幸福な物語がありますように』…だ。私が見てきた世界は、私が助けた人々は皆、それを懐き私の手を取った。その願いに、私は応えてきたのだから」
ラーメンを完食したアダムは、セイアに頷く。それは、アダムの揺るぎない古則への答え。
「楽園はある。エデンは確かに存在する。だから誰かの絶望や諦観など気にするな。望むならば、私が君たちを楽園へと導こう。私はアダム・カドモン。君たち全ての先を生きる者だからな」
「……あなたは、楽園を…エデンを知っているのかい?」
「無論だ。私は其処から来たからな」
力強く、アダムは笑った。
──それは全ての苦い結末を、力強く打ち払う笑みだった。
パパポポ『机で突っ伏して寝るやつがあるかっポ』
アダム「痛い!…くちばしか」
パパポポ『エデン条約も近いし、補習部の依頼もある。英気を養わないと保たないぞ、アダム』
アダム「私は夢でもカップラーメンを食べていた」
パパポポ『頭トンコツっポか』
シャワー浴びて寝るか…シャーレのオフィスにて伸びをするアダムに、
『先生。ミカだよ。夜にごめんね☆』
アダム「ミカ?」
『トリニティの…懺悔室に、来てくれるかな?あっ、先生は神父側に座ってね☆』
アダム「………行くか」
ミカの呼び出しに、静かに立ち上がるアダムであった。
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