人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ルシファー「すぅ……」

アスモデウス【ご立派でした、ルシファー様。あなた様はいつだって、その輝きで我等を照らしてくださいます…】

(その苦しみを、私達が少しでも払うことができたなら…それに勝る喜びはありません。どうか健やかに、ルシファー様…)

ルシファー「うぅ〜ん……素敵だ…」

【!?】

「凄く、綺麗だよ…」

【る、ルシファー様…!?夢で、誰かと逢瀬を…!?】

(さ、差し出がましいですが…その相手がもし、もし…私であったなら…)

「素敵だね…バアル……」

アスモデウス【へっ?】

「君こそ…一番キレイな女神だね…むにゃむにゃ…」




アスモデウス【どういう事ですのベルゼブブ!?】

ベルゼブブ【あぁ、私は豊穣の女神にもなれる。主神だからな。前にルシファー様に披露したところ、いたく気に入られたのだ」

アスモデウス【な、な………】

ベルゼブブ【これがあの方が作ってくださった髪飾りだ。アスモデウス、お前もすぐにルシファー様に見初められよう。諦めるな】

アスモデウス【恋敵あなたでしたのぉおぉおーーーーーーー!?】

ベルゼブブ【?】


ルシファー「むにゃむにゃ…バアル…背中流して〜…」

アスモデウスの叫びと、ルシファーの安らかな寝言が地獄に響くのであった。


一区切り じごくのまぞく!

「私、魔王を目指します!」

 

 

杏里の虚飾の魔王顕現から数日後、完全に体調とメンタルが復帰した杏里の第一声は、魔王となる事への決意表明であった。

 

【まぁ、我等にも魔王を生み出さねばならない理由というものがある。本気で考え、導き出した結論がそれならば止めはしない。だが…理由だけは、聞いておこう】

 

面接担当となったベルゼブブは、杏里にその選択への詳しい理由を問わねばならなかった。どのような理屈があれ、魔王という存在は世界の敵対者の一面を有する。生半な覚悟では務まらないがためだ。

 

「それが、私アスモデウスさんから聞いたんです。今ルシファーさんは、自分の中のもう一つの姿が暴走寸前で苦しんでいるって。その為に、憤怒の魔王としての存在が今、必要なんだって」

 

【………そうだな】

 

アスモデウスは誰にでも親身になってしまうのが長所でもあり短所でもある。どうやら包み隠さず教えたようだ。もはやその点は隠す理由も無いので、ベルゼブブは静かに頷く。

 

「それなら私、目指してみようと思います。サタン…ううん、ルシファーさんには自分の人生が嘘ばかりじゃないことを教えてもらいました。シャミ子や皆と過ごした日々は、本当に大切なものに間違いないよって」

 

【あぁ。ルシファー様はそれをお前に伝えたかったのだ】

 

「そんな恩人のルシファーさんの苦しみを、少しでも和らげられるなら。私は魔王としての道を選びたいと思います。それがきっと、私がここに来た意味なんだと思います!」

 

杏里の物言いに嘘はない。どうやら彼女は、自分なりの魔王を志す理由を見出すことに成功していたらしい。

 

【ルシファー様の為に…か。ならば私達の誰もが、その決断を無視することはできないな】

 

ベルゼブブの言う通り、魔王達に共通しているのはルシファーへの恩義。神の理不尽にて零落した自身らを拾い上げ、輝かせてくれた彼への至上の献身こそが活動理由の根源。それを否定できる理由はどこにも無いだろう。

 

【しかし、生半な道ではない。知っているかはわからんが、空いている席の名は憤怒。自らを焼き尽くし、世界の全てを呑み込まんとする怒りを司る魔王でなくてはならない】

 

「憤怒……」

 

【恩讐の炎にて未来すら焼き尽くす復讐者と極めて近しい在り方となり得る魔王…ともすれば、お前は遠からず消えてなくなる道やもしれん。家族を奪われたお前の怒りは、サタン様の憤怒として強く結びつくだろう。…ただ】

 

ただ、それを以て今までの佐田杏里たり得る望みは薄い。怒りは人生を変え、憤怒は在り様を変える。彼女には、家族を奪った相手という絶好の存在も待っているのだ。

 

【憤怒の魔王を目指すならば、お前は遠からず何かを失い消え去る覚悟が要るだろう】

 

「!」

 

【それだけでなく、燃えたぎる怒りはお前自身の人生を変えてしまうやもしれん。下手をすれば二度と元の自分には戻れない炎そのものになるやもしれん。その覚悟を、本当に決めることができるか?】

 

魔王達は絶大な力を持つ。それは人類達の敵対者として、ひいては人類の持つ力が大罪と原罪を乗り越えられる証明となる為の、敗北を前提とした力だ。

 

魔王達が真の意味で勝利することはきっと無い。いつか輝ける人の輝き、人類が歩み重ねてきた星の輝きに打ち払われるだろう。魔王は、確約された敗者としての覚悟を決めねばならない。

 

そして憤怒の座に就いた魔王に安寧は与えられない。常に世界を、自身を、理不尽への怒りを燃やし尽くさねばならない。憎悪と似て非なる憤怒。明確な対象を定めない、世界すべてを焼き尽くす炎。

 

いずれそうなるとされる未来は、一人の少女が担うには重すぎる。ベルゼブブは杏里の人生と将来を案じて声をかけているのだ。本当ならば、魔王など目指して良いものではないのだと。

 

「…確かに、私は家族を奪われた記憶を取り戻して、怒りました。怒らない、なんてそれこそ嘘ですから」

 

【……】

 

「でも、それより何より!私が憤怒の魔王になれれば、今も苦しんでいるルシファーさんが救われる事実には変わりないんですよね!?復讐も考えるし、魔王になってどうなるかはわからないけれど!それでも…!それでも!ルシファーさんのことは助けてあげられるじゃないですか!」

 

【!】

 

「私は誰かを憎んだり怒るために魔王になりたいんじゃなくて、助けられる誰かのために魔王になりたい!それに、魔王としての力で私は私みたいな境遇の誰かを少しでも減らしたい!助ける為の、魔王を目指したいんです!」

 

杏里の決意を聞き及んだベルゼブブは、納得した様に頷く。

 

軽はずみな興味本位ではなく、確かな決意と想いで魔王の座を目指さんとしている。ならばそれを手折ることも、阻む事もしてはならない野暮と言うものだ。

 

【……いいだろう。その決意はよく解った。条件付きで、お前の魔王の道行きを認めよう】

 

「条件、ですか?」

 

【あぁ。まずは通う学校を卒業しろ。三年間確かに学び、心身ともに成長を果たせ。未成年のまま操れるほど、憤怒の力は容易ではない。お前には、人間としての人生が確かに在るのだから】

 

まずは自身の人生を全うしろ。そして成長し、成人を果たせ。それが、ベルゼブブが彼女に課した魔王としての試練であった。

 

【我等もお前の魔王の道行きを支えはする。学業の傍ら、通信教育で手解きをする。地獄に来れぬ場合はこの手段を使え】

 

魔王達の通信教育。それはシュールな響きであるが、縁は確かに繋がっている事への証明に他ならない。

 

【魔王としての道行きと同じくらい、自身の人としての道行きを大事にしろ。三年間それが出来たのなら、憤怒の魔王の資格ありと認めよう。できるな?】

 

「はい!停学も留年もしないよう、一生懸命頑張ります!」

 

【それでいい。そして、お前の意志…ルシファー様を助けたいという気持ちに嘘偽りがないかも試させてもらう】

 

そう言うと、ベルゼブブはルシファーから預かっていたそれを託す。それは、赤き小さいドラゴン。

 

【しゃー!】

 

「わ!ドラゴン…かな?小さくて可愛い!」

 

【憤怒の魔王、ドラゴラース。その力の凝縮体だ。憤怒の魔王としての道を選ぶのであれば、お前の無二のパートナーとなる。この竜を三年間、護り育ててみせろ。それが、お前の魔王としての修練だ】

 

サタンの力を凝縮したドラゴラース。ルシファーの熱量を詰め込んだこの存在を守り抜ければ、彼女の魔王の道行きは明るいものとなるだろう。

 

「おお…!可愛いドラゴン、絶対に大切にします!」

 

【そうした方がいい。ドラゴラースの内側には超新星爆発クラスのエネルギーが凝縮されている。何かの手違いでドラゴラースの命が尽きた場合、お前の地球は跡形もなく焼け落ちる】

 

「えっ!?」

 

【注意しておけ。魔王の力を預かるというのは、そう言う事なのだ】

 

ベルゼブブの言葉に気後れするも、杏里は力強く頷きドラゴラースを受け取る。

 

【きしゃー!】

「よろしくね、ラーちゃん…!守護ってみせるから!」

 

【そして、最後の条件だ。お前の人生の宿敵の決着は、お前自身の力でつけてみせろ。敵を前にどの様な答えを出したか…その答えを、卒業までに懐いておけ】

 

「…はい!」

 

【以上だ。お前の人生に期待している】

 

…こうして、佐田杏里の魔王を目指す道は山盛りの課題を以て幕を開けた。

 

杏里の決断により、ルシファーの熱量はドラゴラースのラーが担当。快復に向かったという。

 

 

杏里はちょくちょく地獄に遊びに来るようになり、順調に地獄の面々と仲良くなっている。

 

これより先の未来は、未だ未知数だが…

 

「思ったんですけど、ベルゼブブさんって…」

 

【?】

 

「カッコイイですよね!世界一カッコいいハエだと思います!!」

 

【…………そうか。それはまぁ、褒め言葉として受け取ろう】

 

魔王見習いとして、彼女は支えられている。

 

地獄に生きる、数多のまぞくと共に。

 




そして同時期。

シャミ子「こ、此処ドコー!?楽園カルデア!?なんでこんなとこに!?」

桃「落ち着いてシャミ子」

リッカ「ここに来たのはシャミ子が悪いんだよ…!」

シャミ子「そんなぁ!?」


リリス(やはり混浴こそ真の男女平等よね……)


桃「あの人がこの世界のリリスさん…色々とでかい」

ごせん像『おい待てキサマ。それはどういう意味だ』




桃「これがスパルタ式トレーニング…凄く参考になりそう!」

シャミ子「桃の目が凄いキラキラと光ってるー!?」

レオニダス「おやぁ?お二人も筋肉に興味がお有りで?」

シャミ子「ひぃ〜!?」

ミカン「なんかカルデアママ友の会に誘われたんだけどなぜかしら…」

ごせん像『それはお主がウガルルのママだから誘われたんではないのか?』

ミカン「だからママはやめてくれる!?ってかなんでママ友の会の方たち知ってるの!?」

ごせん像『ママは何でも知っているのだ』

「ママ凄いなぁ!」




ウガルル「んがっ!あのメイドっぽい人、スゴイ!あの人に料理習えばオレ、ミカンの手伝いデキるかも」

ミカン「確かにあの料理の腕前は凄いわね…」

ウガルル「でも…オレもあのメイドも手の毛ぼーぼーだケド、厨房二毛まみレで入っていいのカ…?」

キャット「うむ、手を洗えばよいのだな。衛生極めたビースト即ち厨房の守護獣!」


カルデアに魔王のカウンターが召喚されていたという。

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