人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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?『私はカグラの巫女達の導き手。ここは歴代のカグラの巫女達の魂の座。全てが歴史を超え、カグラの力を拝領した者達』

ウタ「皆…血の涙を流してる…」

?『カグラは、この世界に文化と文明を齎した。遥か昔に、カグラは一つの楽譜を発展した人間の文化に授けた』

ウロヤソク「トットムジカの楽譜か…?」

?『それは無垢の楽譜。世界の有り様を記し、神が在り、人を助けるためにあらゆる感情を受け止めるもの。カグラはそれを人に託した。この楽譜が、喜びに満ちる世界であれと』

レタッソク「!?」

?『だが……カグラの楽譜を知った人間は喜びを懐かなかった。カグラの旋律に挫折するもの、奪おうとするもの、争うもの。思い描くカタチを掴めぬもの。楽譜は、やがてそれらを吸い始めた』

ウタ「みんなの悲しみや辛さを受け止めてしまったカグラの楽譜が、トットムジカ…」

「カグラは信じていた。人はやがて正しく成長すると。夫のニカと共に人を信じた。しかし──カグラの力を拝領した巫女達は、堪えきれなかったのだ」

トットムジカ『みんな……オレに歌うことを願った…破滅の歌を…』

「やがてニカは去り、カグラは巫女達の感情を受け止め心を壊した。憎しみの歌は未だ捕らえている。トットムジカ…カグラの楽譜を」

ウタ「カグラの楽譜…カグラ様が、人に託した楽譜…」

レタッソク「それはもしや、今この空間のどこかにあるのか!?」

?「ある」

トットムジカ『!』

「今の憎悪の根源…それこそが、トットムジカ。歪み果てた『カグラの楽譜』だ」


破滅の第三楽章〜トットムジカ〜

「魔力反応更に増大!聖杯が生み出す魔力総量に匹敵します!」

 

「同時に、ダメージ修復を確認!尚も魔力総量、指数関数的に増大!」

 

「推定魔力量…!異聞帯ケルヌンノス神に匹敵します!」

 

カルデア、オペレーション管制室にて報告が相次ぐ。モニターの向こうには、漆黒の夜空に浮かぶトットムジカ最終形態。紅き稲妻を撒き散らし、エレジアを覆う暗雲を齎し、異様なる姿を以ていよいよ顕現せしめる。

 

腕は四本になり、黒い翼が生え、ネックレスのような骸骨の数珠を有し、豪奢な帽子を被ったまさに魔王たる存在感を放つ。その魔力量はカルデアが観測してきた最大級に連ねるものであり、カルデア首脳陣に衝撃をもたらす。

 

「トットムジカの中核とは人間の負の感情。大海賊時代やそれ以前に積み重ねられた時代の悲惨を力にしているが故の…」

 

「オルガマリー所長!!」

 

「どうしたの!?」

 

「カルデア侵入経路迎撃エリアに音符兵が出現!カルデアに侵入を試みています!」

 

カルデアへの直接攻撃、トットムジカとカルデアのある次元は隔絶している。別次元という隔たりがありながら、トットムジカは明確な悪意を以てカルデアそのものに攻撃を仕掛けてきたのである。

 

「ロマニ!魔力防護起動!楽園在住護衛のOK召喚組を迎撃に回して!終末の大潮牙に誘導するわ!」

 

「了解!既にギーツIX、ボルシャックら火文明ドラゴン、ロックマンゼロ、オーマジオウやカナメ、東方不敗マスター・アジアが戦闘中!」

 

「総員戦闘配備!カルデア防衛戦線発令!ギルが築いた楽園に刃を向けるものを許してはならないわ!ゴルドルフ副所長、指揮を頼みます」

 

「はっ!?君はどうするのかね!?」

 

「決まっています。リッカ達の帰る場所を護るため戦う!ロマニ、行くわよ!」

「了解!」

 

「ちょっとぉ!?この局面で所長権限を渡してくるのかね───!?」

 

オルガマリーとロマニがカルデア防衛の戦線の陣頭となり管制室を後とする。そしてトットムジカ討伐指揮権現はゴルドルフへと渡ることとなる。

 

「Mr.ゴルドルフ。我々がサポートします。迷っている暇は生憎許されないようだ」

 

「し、しかしホームズ君ねぇ…!」

 

「どうやら、悪い事は重なる様です。或いは…悪意を以て我々の奮闘を嘲笑っているのか…」

 

ホームズの言葉の通り、モニターの向こうに展開される光景は、加速度的な状況の悪化を指し示すに相応しいものであることを如実に示していた───。

 

 

トットムジカの攻勢は先に比べ物にならぬ程の苛烈さを以てエレジア全域を震撼させる。破壊光線、音符兵による弾幕、四つの剛腕による圧倒的な範囲攻撃。シンプルながら単純な暴虐の極み。攻撃どころか近付く事すら容易ではない。

 

「急に元気いっぱいになりやがって!三味線弾いてやがったか!?」

 

ベリルの目から見た今までのそれは、俗に言う舐めプというものに映るほどの圧倒的な苛烈さを誇っていた。全力とそうでない状態においてはまさに別次元としか形容できないものであったからだ。シミュレーションで垣間見た第三楽章とすら比べ物にすらならない。

 

「この強さ…そして苛烈さと能力の洗練、トットムジカ本人だけの要素ではない」

 

「あん?そいつはどういう意味よデイビット」

 

「アレは神の楽譜だ。それが巫女達の破滅の願いで歪められたものがトットムジカだ。その能力は当代のウタウタの実…いや、ヒトヒトの実、モデル『カグラ』の能力者に依存する」

 

「は?…は?」

 

「要するに、ウタの成長度合いに合わせた力を発揮しているという事だ。遊んでいた、というのも強ち間違いではない。悪趣味さと悪辣さは、巫女達が思い描いた世界の有り様なのだろうな」

 

「いやいやちょっと待て!横にぬっと出てきてネタバレトークしてくるのは勘弁してくれや!こちとら」

 

「来るぞ」

 

「うぉおぉおぉおぉおぉお!?」

 

トットムジカは明確にマスター達を敵対者として認識しており、隙あらば命を奪おうと攻撃を集中してくる。トットムジカ第三楽章となってから数分、ただの一度もグランドマスターズは攻撃を届かせていない。あまりに攻撃が苛烈すぎるのだ。

 

「来るぞ、お前達。最大限の警戒をしろ」

 

そんな中、デイビットだけは機械的なまでに、超越的な視座と感性を以て現状を見据える。

 

「トットムジカの切り札だな、恐らくアレは」

 

そう──デイビットの言葉が指し示すものは、そう形容するに相応しいもの。

 

其処に在りしは、睡眠状態に在る同盟関係の魔王達。アスモデウス、マモン、ベルフェゴール、レヴィアタン。七大魔王の大半がそこに…トットムジカの支配下にいた。

 

「…………帰りてぇ………」

 

「ベルゼブブとサタン、ルシファーが見えん。あちら側で何かしらの手を打っていたか…?」

 

デイビットの言葉はともすれば希望となるが…甘い見通しは決して許されない。魔王達が、トットムジカと共に動く。

 

アスモデウスはトットムジカに近寄る者を苛烈な体術で迎撃し、マモンの万魔殿はトットムジカに圧倒的な物流と弾幕を提供する。レヴィアタンの巻き起こす水はトットムジカの防護の鎧と化す。

 

【( ˘ω˘)スヤァ】

 

なんと、ベルフェゴールだけはトットムジカの干渉をものともせず鼻提灯を無制限に展開。一際大きい鼻提灯はエレジアの都市をすっぽりと覆い保護。苛烈なダメージを受けたマスターが鼻提灯に入れば、それは回復の様相をもたらす。

 

「成る程、眠りと安らぎは怠惰の相反する美徳か。ベルフェゴール一人で良きボスポイントを稼ぐとは」

 

「一周回って一番凄いのアイツじゃね…?」

 

「だが魔王達も手をこまねいている訳ではないはずだ。対処に当たる者達が来る」

 

その言葉通り───周辺の魔王達に向かい駆ける星の軌跡がある。それこそは、魔王を阻む召喚の縁。

 

混迷の極地の中、最終決戦は幕を開ける。

 

 

 

【──────!!!!】

 

【くっ……!こいつ……!】

 

ウタワールド。懸命にトットムジカを押し留めていたレヴィアタンの力を、更に上回る力で無理矢理に解き放つ。そして──

 

【うあああっ……!!】

 

海岸線付近の灯台へと叩きつける。灯台は砕け、そしてレヴィアタンに筆舌に尽くしがたい屈辱を与えたのだ。

 

【ああっ…!サタン様がせっかく直した灯台…!】

 

【落ち着きなさいレヴィアタン!今助け、ッ!】

 

瞬間、音符兵が空を埋め尽くし、アスモデウスただ一人に過剰極まる弾幕を叩き込む。夜空が赤く染まるほどの大波状攻撃…流石のアスモデウスも、全てを回避するのは困難な程の。

 

【くっ──!!】

 

翼を展開し、重力を無視したジグザグ機動で回避する。否、回避行動を強いられている。救援も反撃も叶わない程の弾幕の足止めだ。

 

【ぐぉおおぉおぉお!?】

 

マモンの万魔殿には、トットムジカ怒濤のラッシュが叩き込まれる。下品な金色の万魔殿が瞬く間にベコベコに凹み、崩壊していく程の苛烈な破壊。理解しているのだろう。補給線であることを。

 

【おのれ!オレは殴るのは好きだが殴られるのは好まんのだ!!】

 

【( ˘ω˘)スヤァ】

 

【お前は変わらんなベルフェゴール!安心感すら感じるわ!】

 

【くっ……!攻撃する暇が……!!】

 

【灯台……うぅ、灯台がぁ…】

 

三人の魔王すら互角以上に抑え込むわ暴威。その苛烈極まる実力に、サタンはふと思い至る。

 

【あれ……ウタの成長に合わせて力をつけてない?】

 

【その様です。かつてのエレジア崩壊の際は、ウタ少女の身体が眠りについて終わりました。今はその逆…】

 

【そっか。…ウタの成長を利用…ううん、共鳴してるんだ】

 

サタンは静かに頷き、そして──。

 

【──【俺】が行く】

 

【!サタン様…!】

 

【ウタの成長を見守っていたのは…こんな事をさせるためじゃないからね】

 

【──はっ。御武運を】

 

ベルゼブブは静かに傅き、そしてサタンは立ち上がる。

 

【後悔させてやるよ、積み重ねられた悪意ども。お前達が今、何を弄んだのかを】

 

玉座から飛び出したサタンの身体が──

 

紅蓮の竜へと変化した。

 

 




ウタ「どうすれば…どうすればカグラの楽譜を取り戻せるの!?」

?『カグラの巫女達の絶望、怒り、憎しみ…集められた負の感情の先にある、トットムジカの核。そこの呪いを祓う他ありません』

トットムジカ『オレの核…それがカグラの楽譜…』

?『カグラの巫女、その実を拝領した者等は皆破滅の歌を紡いだ。歴史と世界への負の呪いを謳い上げた。それを越えなくては、カグラの楽譜へは辿り着けない』

ウタ「!」

?『その身に覚悟はありますか?余すことなく破滅を紡いだ、カグラの巫女達を超える覚悟が』

ウタ「……………!!」

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