イム【現れたか……】
(しくじればこの世は新時代を迎える事なく終わる。乗り越えてみせよ、ルシファー。そして…)
『エレジアの地形地図』
【……】
『◯マーク』
【新時代の国よ……】
〜
スラオシャ「こちらスラオシャ。カルデアの皆様に通達致します。これより私が、皆様と魔王達の試合情報伝達動機を行います」
キラナ「あ!スラオシャだー!」
スラオシャ「キラナ様、御機嫌よう。積もる話はいずれまた。私が皆様の攻撃を、あちらの世界と可能な限り同期いたします。攻撃を行う為の耳とタイミングはお任せください」
オルガマリー「助かるわ。こちらも全戦力を展開中よ。すぐに足並みを揃えます!」
〜
ケイオスカルデア
【魔王達の動向、ちゃーんと教えるからね。ニャル君!】
ニャル【ありがとう、ロキ君。こちらもどうやら…出し惜しみはしないようだ】
【■■■■■■■■!!!】
触れてはならないもの。音楽の魔王。人々が溜め込んだ負の想念、トットムジカ。エレジアに封印されし世界に淀んだ悪意と憎しみにより歪められし一枚の楽譜。それが今、ウタという万全な依代を得て遂に起動を果たした。
姿は第1楽章。上半身だけの案山子たる最弱の姿だが、これですらかつての赤髪海賊団の奮戦をものともせずエレジアを滅ぼした力を有する世界の終わりの音楽。五老星、世界政府が世界存続を放棄するほどの脅威。悪魔の力ひしめく海にて唯一の【魔王】
【─────!!】
瞬間、双眸より放たれた赤色の破壊光線はウタワールドの海を真っ二つに割ってみせた。誰を狙うでもない雑な攻撃、いや行動ですら戦略級の破壊力を垣間見せる。
トットムジカに意思はない。込められた憎しみと哀しみ、郷愁や悲哀を力に変えて全てを殺す機構と化している。ウタとトットムジカを取り込んでいる魔王といったところか。魔王が再び光線を放たんとした時……。
【何度も何度も、やらせない……!】
トットムジカの巨体を、更に巨大が締め上げる。海より大きく身体を伸ばしたのはレヴィアタン。海の支配者たる無敵の神獣にして嫉妬の魔王が先制の口火を切ったのだ。
【いいぞレヴィアタン!数秒後に戻れ!オレの欲望が迸るぞ!!今だ撃てェ!!】
マモンがエレジアの灯台に立ち、欲望に彩られた下品な金色の万魔殿より無秩序の一斉砲撃を放つ。国家拡大の欲望に形どられた兵器群が、トットムジカに叩きつけられる。王の財宝との違いは、現代的かつ無作為、乱暴極まる弾幕であることか。
【いたたた……!まだ離脱してないでしょ……!!】
当然タイミングも範囲もデタラメであり、むしろレヴィアタンに当たった数のほうが多い。苛立ち混じりにレヴィアタンは万魔殿に尻尾を振るい、その大半が崩壊する。
【ぬぉおぉおぉおぉおぉお!?何をするレヴィアタン!?直すのに時間がかかろうぞこれは!?】
【エアちゃんとギルコンビを見習え、成金魔王…!うあっ!?】
力付くでトットムジカはレヴィアタンの拘束を外さんと力を込める。だが、虚を付かれなくばまだ覆せる力の差ではない。
【この……!】
【よろしい、そのまま抑えなさいレヴィアタン。私が足掛かりとなるわ】
瞬間、レヴィアタンの頭上にアスモデウスが乗り、瞬間にてトットムジカの身体に乗り移る。そして身体中を駆け回る形、跳ね回る形で無数の連打を叩き込んで行く。
【攻撃判定を常に私が残しましょう。そうすれば現実のカルデアの皆様もやりやすくなるはず】
色欲の魔王アスモデウス。その二つ名とは裏腹に冷静で理性的、かつ協調性を有した彼女は冷静に事を運ぶ。彼女の色欲とは、ルシファーに捧ぐ愛一つで懐く名である。それ以外の悪魔的さや蠱惑的な所作は全て魔王としての責務を果たしているに過ぎない。
【!!!!】
トットムジカはそれらを煩わしく思い、直営子機たる音符の兵隊を招く。エレジアを狙った範囲攻撃にて、攻撃対象を分散させる狙いだ。
だが──。
【想定していたより悪辣だな。だが、それでこそだ】
ベルゼブブ──地獄にてルシファーやサタンに次ぐ二番手たる彼はそれを読んでいた。エレジアの成果や復興を、無下にはすまいという戦術を。
【行くぞ、お前達。夢の世界めいたとはいえ、ルシファー様の手掛けた地を穢させるな】
【【【【【【了解!!】】】】】】
ベルゼブブの言葉にて襲来せしは、地獄の軍勢たる中級から低級の魔物たち。ルシファーの固有結界を維持する動力に当たる雑兵たち。
ベルゼブブは自身の性質、土地汚染を鑑み手を打った。自身の眷属たる聖霊、そして死蠅の軍勢をとある人物に託し、単身魔王としてやってきていたのだ。それに伴い、代わりの雑魚散らしの軍勢を指揮する立場へと至る。
ベルゼブブはバアル・ゼブル。高い館の主たる彼の指揮と統率力は、良くも悪くも自身本位のルシファーを遥かに上回る。事実その違いは、雑魚や取るに足らないものである雑兵達を惰弱なき精兵と化す指揮として現れていた。
【必要なのは手数だ。手が空いたものはトットムジカへと攻撃を開始しろ。今のお前たちの奮闘が後に響くのだ】
ベルゼブブの言葉は無機質だが、確かな熱と高揚を誘う神の威光が確かに宿っている。彼こそはデミウルゴスこそが最も危惧した主神である。高貴さや優雅さ、気品に礼節は糞に塗れようと微塵も陰りはしない。
【( ˘ω˘)スヤァ】
とはいえ、敵は紛れもなく魔王。秒単位で負傷者や破壊された建物は増えていく。手が足りない程の戦線拡大は即ち崩壊の綻び。ベルフェゴール…バアル・ペオルはそれに対した。
鼻提灯がシャボン玉のように膨れ、傷ついた者たちを癒やしていく。都市も、建物も、人も、動物も癒やされていく。自身は何一つ行う気もないが、味方に怠惰は強要することが無い。ベルフェゴールはそういったもので戦いに参じたのである。
【フッハッハッハッ!!どちらかがタイミングを合わせなくてはならぬなら、こちらの世界は絶え間なく攻撃をかましてやればよい!スラオシャにロキが攻撃集中飽和箇所を伝えるだろうからな!】
【解りやすいのは好き…。カルデアのナイスフォローで羨ましがられる予定…】
【第1楽章如きでサタン様の手を煩わせていては、あの御方の失望をさけられません。死活問題ですのよ私には!!】
彼女らに様子見や手加減などと行った様相はない。常に最大火力をもって活動と攻撃判定を稼ぎ行く戦線を張る。
カルデアと異なるのはその混沌と無慈悲さだ。アスモデウス、ベルゼブブを除いて魔王達は同士討ちも辞さないレベルの攻撃を振りまいている。
戦いにおいて、魔王達に互いへの情は希薄だ。あるのはただ、魔王サタンに報いるという使命感のみ。
【……………】
ルシファー、そしてサタンは静かに事の顛末を見つめている。まだ第1楽章、戦線は構築されたばかり。まだ手足たる七大魔王で事足りると彼は読んでいる。
他の魔王達の危惧とは、サタンの失望。彼らの首魁のサタンへの忠誠が揺らがぬ限り、いくらでも味方を傷つけながら戦うだろう。そして今回はそれが幸いにも機能を果たす。
【─────!!】
もはや耳が裂け身体が消し飛ぶ領域の火力は、トットムジカの全身を覆い尽くす。恐ろしいことに、トットムジカを攻撃しているのはレヴィアタン、アスモデウス、マモンの三人。たった三人の攻撃が、1国家の総力に匹敵しているのだ。
重ね重ね伝えるが、これはあくまで開戦でしかない。国を沈めかねない程の大火力は、トットムジカを容易く封殺せしめる。
(まだこんなものではない。あくまでこれはカルデアへのパスに過ぎないのだから)
サタンは静かにゴードンに用意してもらった自分用の玉座に座りながら、鉄風雷火の魔王たちの戦場を見つめ見やる。
(本当に護りたい現実世界を任せられるのはカルデアだけだ。頼んだよ、皆)
憤懣竜王、並びに宝具開封もすること無いルシファーが考えていたのは、皮肉にも祈りにも似たカルデアへの信頼の発露。
ウタはルシファーに救われたと言っていた。しかしそれは、ルシファーも同じである。彼を動かすのは、エアから教わった至尊の理。
理論であるそれを実例、実技に昇華せしはウタとのふれあいの中。ウタを通じて、何かを尊ぶという概念を身に着けたのだ。ウタもまた、ルシファーを助けていたのである。
ウタワールド側のトットムジカは、最早攻撃を受けていない箇所のほうが少ない。現実世界のトットムジカを攻撃できれば、即座にダメージが通る領域にあった。
共同戦線──魔王側は、十二分にその役割を果たしたと言えよう。
ウタ「ん………あれ、ここは…」
トットムジカ『起きたか、ウタ!』
ウタ「トットムジカ?どこここ?」
トットムジカ『ここは…オレの心だ。トットムジカの中と言っていい。ここは、憎しみと哀しみの中心なんだ』
ウタ「憎しみと哀しみの…」
トットムジカ『実はな、ウタ。この中心には、オレという存在の核たる楽譜がある。それを取れれば、魔王トットムジカに影響を与えられるはずだ!』
ウタ「あ、そうなんだ!じゃあ取りに行こう!皆を助けるために!」
トットムジカ『あぁ…!憎悪の中を進むことになるが…!』
レタッソク「それならば!」
ウロヤソク「我等に任せろ!」
ウタ「わっ!?天竜人のみんな!?」
「我らは、歌姫の道を切り拓く!」
「進むのだ!新時代のために!」
ウタ「うん!ありがとうっ!行こう、皆!!」
それぞれの場所にて──戦いが始まる。
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