マモン【うむ!魔王として眷属を選ぶという作業、選定というのは愉快であったな!次は更に触媒を探しておこう!】
アスモデウス【はぁ、はぁ、はぁ…】
レヴィアタン【あ、帰ってきた】
アスモデウス【うぅ…不敬極まる真似を…】
ベルゼブブ【色欲の魔王の名前は不似合いなように見える姿だな、アスモデウス】
アスモデウス【返す言葉もありませんわ…でも、名前を呼ぶ、心を繋げるという行為は肉欲や渇愛などより何万倍も崇高で大切なのです!そこは譲れません!】
レヴィアタン【………】
マモン【…どうだ?一つお前の鱗を使い…】
ベルゼブブ【…!?】
アスモデウス【?ベルゼブブ?】
ベルゼブブ【待て…。またなにか来るぞ】
召喚が一区切りを迎えた魔界。そして、静寂が戻った地獄。各々は対策の準備に戻らんとしていたのだが…そこに、さらなる波乱の兆しが起きる。
【先のカマエルの様に、また新たなる襲撃か?】
【愚劣な。サタン様は今息抜き中。此度は我等が仕留めてくれましょう…!】
ベルゼブブ、アスモデウスが敵意と戦意を滾らせる先は、召喚サークル。なんと停止管理してあるはずのサークルが、再び人知れず動き始めているのだ。
【鱗…使うのはまた後で、マモン】
【うむうむ。必ず試みるのだぞレヴィアタン。いいことが起きるやもしれん!】
魔王一同が、現れんとする召喚サークルの励起を睨み見やる。先のサタンの暴虐で軽視されがちだが、大天使のカテゴリは決して弱者ではない。先の大天使カマエルは、相性で言えばベルゼブブの聖霊達を焼き払う火力を有していたし、海の神獣レヴィアタンには蒸発という副次効果を齎され苦戦を強いられていただろう。
先の蹂躙はただ単純な強さと格において、ルシファーとそれ以外という力関係であったに過ぎない。神が如きものに加え、魔王の力まで有した彼を憤懣にたぎらせた結果と言えよう。
そして──そんな彼等を止められる者、という意味ではこの暴走は天啓、或いは福音であった。
【フ、ハハハハハハハハハハ!!ここが地獄、汎人類史の冥界か!喚ばれ、招かれ、しかしこのオレが再び決起する場所であるものか!!】
召喚サークルより飛び立つ黒い影。手脚が異様に長く、複雑な形状の翼を生やし、露出の多い民族衣装に身を包み、巨大な鎌を携えた、褐色肌な長身の怪人。
【彼の地にて果て、しかしオレを利用せんとする歴史よ!あの戦いを、あの決戦をいまだ忘れぬというのならば!オレが使役されるは道理である!!】
【だ、誰…?】
【知らぬも無理はない!オレは汎人類史の英霊で無く、元は神霊ですらないものだ!そう、何者でもない弱き王、かつての過去を全て忘却していた無様な王!しかし!!】
【(ポカーン)】
【我等の仇を取ったのがカルデアであるならば、時空を越えて返礼をせねばならん!我等の悲願、我等の戦いをいまだ忘れず刻むのならば!!オレは王として、貴様ら勝者の歴史を支えよう!!】
明朗に語り上げる存在と、楽園カルデアは縁を結んでいない。正確には他のカルデア、他の藤丸立香が結んだ縁であろう。
しかし、彼を忘れぬ者がいるならば。彼を【■■■■】ではなく、『□□□』として覚えた者がいるならば、彼が来たるは道理であろう。
勇者は魔王を、討ち果たすもの故に。
【名乗りを上げよう、地獄に蠢く魔王ども!オレはカマソッソ!此処ならぬ国、カーンの民達の全てを背負いし王である!!強大なるカマソッソが、お前達の願いに応えて馳せ参じよう!互いの理になるが契約!オレは契約を違えぬ王であるからなァ!!】
カマソッソ。そう名乗る褐色の男性が高らかに名乗りを上げた。恐ろしい見た目、恐ろしい表情、そして──聞くものを奮い立たせる勇猛極まる声音を魔王達は受け止めた。
【うるさ…めちゃくちゃ格好良い声なのにうるさ…】
【カマソッソ…マヤ文明の創世神話における蝙蝠の悪神…。しかし、カーンなる国はあまり聞き慣れぬな。もしや…】
【うむ、貴様の思案する通りである。強大なるカマソッソとは汎人類史の出自の見知らぬカマソッソではない。とある異聞帯、とある別時空の縁で此処に来た外様なるカマソッソなのだ】
先の勇壮なテンションと打って変わって冷静に分析するカマソッソ。そう、彼は異聞帯からやってきた存在なのだ。これ程恐ろしき見た目でも、カマソッソは徹頭徹尾自らの現状を違えない。
【クラスはランサー。貴様らの召喚の目的は押し留め、戦い、勝機を逃さぬ一点を貫くものであると受け取っている。ならばオレは適任であるぞ蝿の魔王。恐ろしい話だが、その手の無理難題にかつてオレは挑んだ経験があるからだ】
【───成し遂げたのだろう?】
【無論だ。故にこそオレは此処にいる。弱き王、愚かなる王が英雄として…神として語られる理由があるならば、オレと、民と、国が成し遂げたソレこそが理由に他ならぬ筈だ。詳しくは語らん。強大なるカマソッソはネタバレ配慮にも余念がない】
疑っていたならば即座に殺し合いの局面をベルゼブブはかわし、カマソッソはうむうむと満足気に頷く。
【未だ此度のカルデアの世界はミクトランに来ていないと見える。そして貴様らもかつてのカルデアの神官が呼び寄せた影法師共には見なかった顔ぶれだ。おお、ニアピンに今日カマソッソは少々哀愁を感じられずにはおれぬ】
【強大って…自分で言うんだ、それ】
【…忘れることは禁じられている。オレを讃える民はもういないのでな。こうしてオレが民と国の偉業を覚えねばならん。カマソッソの強大さとは、カーンの民と国の偉業なる。今は小さき神獣よ】
【………そっか】
【故に期待せよ。安心せよ、安堵せよ。このオレは再び立ち上がる事を決意した。貴様らがどれほどの魔であろうと、どれほどの暴虐を働こうと、この強大なるカマソッソが押し留めよう。それを果たすためにオレはここにいる。それを果たすためにオレはここに来たのだ】
カマソッソの発言は尊大で大仰だが、それに見合う力は有していることをベルゼブブは見抜いていた。
何故ならば、彼の霊基は億に至らんとする程の混濁と混合を極めており、それは恐らく彼の■であろう。ベルゼブブ…否、バアルには覚えがあった。ありすぎた。
【良いだろう、ランサー、カマソッソ。お前の参列を認める。その勇壮さと苛烈さをもって、本懐を果たしてもらうとしよう】
【ベルゼブブ!?サタン様不在である最中のサーヴァントですよ!?】
【良いのだ。彼は信頼できる……カナンの王として、保証しよう】
【フッ。強大なるカマソッソは安堵する。噂の令呪で自害の一つを命じられ、デオチなる醜態を晒さずに済んだという事象そのものにだ。であるならばァ!!】
【うるさい……】
【この時より、カーンの王たるオレは貴様らの同盟者である!頼り、任せ、オレを望むが良い!サーヴァントとして、その働きを魅せてやるとも!そう!オレは其の為に此処に来たのだからなァ!!】
気炎を蒔き散らすカマソッソに、耳を抑えるレヴィアタン。全くを以て予想外な加入であったが、ベルゼブブの判断によりこれは【良し】とされた。
【すまぬな、アスモデウス。偉そうに説教をしておきながら示しがつかん】
【…まぁ、あなたがサタン様へ不都合な事をしないのは信頼しています。あなたが特例と言うのであれば、良いでしょう】
【助かる。今度有給を出す故サタン様と時間を作れ】
【あ、ありがとうございます。ではなくて!?良いのですよ!?気を遣わなくても!?】
【〜。そこの小さき神獣よ。カマソッソは所望する事象がある】
【小さき神獣って…これは仮の姿だから…!…何?】
【太陽が見てみたい。何か記録はあるか?】
【マモン…蔵から何か出して…】
【無論だとも!見ろ!ポータブル天体望遠鏡だ!覗き込め!】
【ハハハ!便利なものだ!カーンにもこの手のものはかつて腐る程あった…どれどれ…】
【躁鬱くさい…】
【……成る程。あれが太陽。心臓ならぬ天体か。そうか。そうか……】
カマソッソは、やはり自身の存在した世界とはあまりにも違いすぎるこの世界の在り方に深く納得し。
【忘れぬぞ。この望外の幸福を。オレの…強大なるカマソッソの戦いは、あの輝きを護ることより始めよう。かつてのカーンの戦いのようにな】
改めて、力を貸す動機と意志を再確認したのであった。
ベルゼブブ【貴様の内にいるものは…】
カマソッソ【貴様の周りにいるものは…】
ベルゼブブ【……そうか。偉大なるカマソッソよ】
カマソッソ【そうか。慈愛なる神なのだな、貴様は】
ベルゼブブ【呑むか。奢りだ】
カマソッソ【相伴に預かろう。活きの良い血を望むぞ、館の主よ】
二人は強く意気投合を果たしたという。
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