人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

2465 / 2547
リッカ【アンリ、アジーカ!解ってるよね!】

アジーカ【ムフー。バイキングに来たみたい。憎しみ食べ放題】

アンリマユ【おうよ。キラナの手がこのガンダムってのに入ってんのはそういう事だ】

リッカ「うん。アダム先生の言葉と想いを伝える助けになるために…ヴァルキュリアガンダムの真髄を使う!!」

『クアンタムバースト起動』
『ゼロシステム起動』

リッカ「シッテムの指揮範囲に干渉して、生徒の皆に最適な未来を見せる!!そして──アポリオンの中にいる生徒の皆にアダム先生の意志を届ける!」

アンリマユ【其の為にリッカ、お前がパンイチブライチになるけどな!】

リッカ【さしたっ…さ、さしたる、問題じゃない!!】

アジーカ【成長の恥じらい】

リッカ『迷いはするけど躊躇わない!!行くよ──見せるんだ!』

『生命を謳歌する権利は、誰にだって許されてる!──クアンタム!バーストォオォオォオォオォオッ!!!』

キヴォトス中に最高純度のGN粒子が満たされ──

リッカ『アダム先生!本質を──生徒の想いを…!!』

アダム「あぁ───!」

全ての憎しみをリッカ、アジーカ、アンリマユが受け止め、アダムの意志と魂をアポリオン内部の生徒達へと導く──!!




人理を守護する者達、青春を庇護する者達

「────ここは…」

 

クアンタムバーストに導かれ、どれほどの時間がたったであろうか。アダムは、寂れきった学校…アリウス分校の眼の前に立っていた。

 

『ごめんなさい、ごめんなさい…!』

 

『赦して、赦してください…!』

 

そこにいたのは、アリウスのかつての生徒達。大人も音を上げるような苛烈な訓練を受け、それに堪えきれぬ生徒に大人が手を上げ、暴力を振るう様が繰り広げられている。

 

「これは──アリウス生徒達の体験した記憶か」

 

そう、その苛烈な虐待こそがアリウスの青春、過酷な訓練を強いられ、動きや成績が悪ければ二度と生活できぬような傷を負うほどの暴力を振るわれる。子供である彼女らは、ただ怯えて堪えることしかできない。

 

『慈悲を…慈悲をください…どうか、赦してください…』

『助けて…助けて…!誰か、誰か…!』

 

血を吐きながら、アザだらけになりながら、生徒達は助けを求める。眼の前の、苛烈な暴力を振るう大人に。まともな食事も与えられていないのか、まともな発育すら見て取れない。

 

死の恐怖すら浮かべる生徒達に、苛烈な憎しみを植え付けんとする教官に当たる先生が拳を振りあげたその時──。

 

「生徒に────何をしているのだ貴様は───!!!

 

『『『『え…………』』』』

 

その暴虐を、アダムが阻んだ。生徒達を庇い、教官を殴り飛ばし、心の風景に過ぎねど、生徒達を護った。

 

「…無事か?皆」

 

『『『『…………!!』』』』

 

生徒達は、安堵したかのようにアダムの胸へと飛び込んだ。それは、千の言葉よりも、万の言葉よりも生徒達に示したのだ。

 

眼の前の存在は、自分達の絶望を吹き晴らしに来てくれた人なのだと。彼女達は、憎しみや殺意など抱いてはいなかった。

 

「君達は…、ただ、当たり前の学生でありたかっただけなのだな。アリウスの憎しみは、君達の憎しみでは決してない。それは、ただ刻まれ植え付けられたものだった…」

 

聖杯が汲み取ったものは、アリウスの憎しみではなかった。取り込まれた生徒達の『普通の人生がほしい』『当たり前の学園生活が送りたい』というありふれたもの。それを、憎しみと洗脳で塗りつぶした事によりトリニティへの攻撃性へと変えられた。

 

リッカのクアンタムバーストにてたどり着いたこの景色は、彼女達の本質にして想い。ならばこそ──先生として、アダムには伝えられる事がある。

 

「本当に、辛い目に遭ってきたのだな。教育などと呼ぶのも穢らわしい、下らぬ復讐の片棒を担がされてしまった」

 

『『『『………、…………』』』』

 

「君達を助けるべき時に、君達を救うべき時に…傍にいてあげる事が出来なかった。本当に、すまなかった。大人が君達を…私が君達を苦しめたのだ」

 

かつてのアリウスの生徒たちは、アダムを見上げている。彼が、先の大人とは違うことを心より理解しているのだろう。

 

「もし許されるのならば…私に、君達の未来を預けてほしい。君達が理不尽に奪われた未来を、そして刻まれた苦痛を、全て癒やし君達に返すと約束する」

 

アダムの前に、生徒達が増えていく。アポリオンに囚われた生徒達の心が、アダムの意志に触れんと集っているのだ。

 

「私は君達の味方だ。君達全ての先を生きるものだ。君達の未来は私達の宝であり、希望そのものだ」

 

彼の暖かく、親身な立ち振る舞いは彼女らに刻まれた憎しみを引き剥がしていく。自分の本当の願いを、思い返すという形で。

 

「だからどうか、もう一度私や大人を信じてもらいたい。君達の願いを、君達の想いを私に背負わせ、叶えさせてはくれないだろうか。私は──先生として、全ての生徒の味方であろうとするものだ」

 

『『『『『『………!』』』』』』

 

「我が名はアダム・カドモン。君達の青春と全てを愛する───先を生きるものなのだ」

 

真摯に語るアダム。長い、しかし一瞬の沈黙が生徒達を包む。

 

すると…突如、生徒達が道を開けるように脇へと捌ける。

 

「!」

 

『───この娘たちを、よろしくね』

 

その心に現れたのは、物々しいガスマスクを付けた小柄な少女。生徒達の、心の希望であったのだろう。

 

『そして──もし、良かったら……』

 

アダムはその少女から、生徒達の手で作られた花輪を受け取り…

 

『…!』

 

『私の大切な仲間達も…助けに来てくれたら、嬉しいな』 

「君は───!」

 

何者かを告げる前に、光が全てを呑み込んでいく。アリウスも、曇天も、生徒達も。

 

「──約束だ!私は必ず君の仲間達を助けに行くと誓おう!」

 

『うん』

 

「そして──君も一緒に必ず!!ここにいる彼女たちと同じ様に助けよう!私は先生!遍く全ての…!!」

 

『──』

 

「先を!生きるものであるのだから───!!」

 

アダムは、生徒達の願いを連れ心象のアリウスから弾き出される。生徒達が胸に抱いていた『希望』のイメージは……。

 

『──待ってるね、アダム先生』

 

ガスマスクを付けながらも、可愛らしく頷いた──。

 

 

【────ァ………】

 

瞬間、奇跡が起こる。生徒達の懸命の攻撃を受けながら歩みを止めなかったアポリオンの動きが、明確に精彩を欠いたのだ。

 

「今です!アカペロロ様!!」

「くきゃあぁあぁあっ!!」

「アダム先生の御心と共に、救護の完遂を!!」

 

『ジャスティス、突撃する!!』

 

ツルギ、ミネ、そしてヒフミをミーティア上部に乗せたサラが猛突進。アポリオンの内部に存在する生徒を一斉に救出にかかる。

 

「アダム先生より取り込まれた生徒のリストは把握しております!ヒフミさん、保護した人数の確認を!」

「ひーふーみーよー…!大丈夫です!ミネ団長が抱えた三十人あまり、名簿照らし合わせの全員いますっ!」

「だったらさっさとおさらばだ…!アダム先生の邪魔になるからなぁっ!!きひゃひゃひゃひゃ!!」

 

『ミーティアに掴まれ!離脱するぞ!』

 

サラ達は対話により聖杯に縛られたアリウスメンバー達を、アポリオン内部にて突入し全て保護。救護騎士団団長ミネ、トリニティの戦略兵器ツルギというトリニティ最強戦力、並びにヒフミによる救出を完遂。

 

『アスカ!救出は完了した!押し返せ!!』

 

サラの報告に、アポリオンの拳と大量のビームシールドで拮抗していたアスカが満面の笑みを浮かべる。

 

『ありがとうございました!ミネ団長!ツルギさん!ヒフミちゃん!!なら後は──聖杯を撃ち抜くだけだ!!』

 

そう、憎しみの中核となる聖杯をアポリオンから引き剥がせば…残るは核のない植え付けられた憎しみを排除するのみ。アスカは、巻き込まれる者の杞憂を打ち払い最後の力を振り絞る。

 

『トリニティは、キヴォトスは──!私達が護るんだあああぁぁあっ!!!』

【オオ、オオ───!!】

 

無数の分身を結集させ、アポリオンの拳をなんと弾き返す。体勢が崩れたその瞬間──。

 

『アスカ──!』

『!』

 

『あそこに、ある!』

 

アスカに語り掛けた何者かが、アスカの意識に正確な『聖杯』の位置を指し示す。

 

『───よぉし!そこだぁあぁあぁっ!!』

 

その天啓、直感を信じ──アスカはデスティニーのゼウスシルエットによる携行レールガンを撃ち放つ!聖杯を憎しみから引き剥がす為に──!

 

『行けぇえぇえぇえぇえぇぇッ────!!!』

 

…鈴村アスカの闇は、平行世界の自身に比べ浅く、小さい。今いる彼女が護らねばならない程の深さは無い。

 

ただその代わり──。真っ直ぐ育ち、友がいて、家族があり、夢を持つ彼女の心には、闇ではなく光がある。理不尽を焼き尽くし、正しい道を照らす光が。

 

『聖杯、アポリオン内部より離反!!』

 

『やった──!当たったんだ!!』

『やったね、アスカ…!□□□、信じてた…!』

 

その輝かしい光は、時空を越え──彼、彼女に寄り添う魂を引き合わせたのだ。

 

『ずっと、そのままでいてね。アスカ』

『ぁ……』

『あえるから。またあしたね!あした──!』

 

『………ステ、ラ…?』

 

アスカにとっては、縁の無いはずの単語、或いは言葉を…彼女は反動で後退しながら、呟いた。

 

『ッ!!』

 

最後の悪足掻きとばかりに、無数の殺戮子機を展開するアポリオン。動力を抜かれ、取り戻すために暴走の意志を有したのだろう。

 

『くそっ!もういい加減に──!!』

 

『大丈夫、アスカ』

 

『ヤマトさん!?』

 

『皆の頑張りを…無駄にはしないから!』

 

アスカの言葉に応えるように、ヤマトが駆るフリーダム……マイティストライクフリーダムガンダムが天高く飛翔し、翼を開く。

 

『ヤマトさん。マルチロックの補佐はキラが。わたくしは捕捉を致します』

 

『撃つよ、ヤマトちゃん。眼の前に在る全てを』

『はい!仮称、プラウドライトニング展開!』

 

ヤマトとキラ、ラクスの協力により、空を埋め尽くす子機が全てマイティストライクフリーダムの発した雷撃に撃ち落とされる。キヴォトス全域を容易くカバーできる範囲の雷撃に、ヤマトは内心衝撃を受けるも平静を装う。

 

『健やかに育つべき子供たちを洗脳し、あまつさえ生き方を強制させる。そのような行いを、断じて許してはなりません!』

『ラクスさん…』

『キラ!ディスラプターの承諾をわたくしに!ヤマトさんにこの力を託します!』

『…!……解ったよ、ラクス』

 

『え?ディスラプター…?この期に及んでまだ新兵器が…?』

 

困惑するヤマトの懸念は、最高の形で的中する事となる。

 

『ヤマトちゃん。ごにょごにょ…』

『わ、わかりました。…キラ・ヤマトの義妹、保志ヤマト!ディスラプターの使用を申請!』

『コンパス総裁、ラクス・クライン!承認しますわ!ヤマトさん、私と意識とリンクしてくださいまし。キラ!照準を!』

 

『了解!討つべきは、彼女達や憎しみじゃない…!』

 

ハロと額をくっつけたヤマトの脳に流れるは、この場に無き次元の空間。そこにいる、悪辣なる存在。赤い肌と、白きドレスの女性。

 

『二度と、こんな事を赦さない為にも…!』

 

ストライクフリーダムの額アンテナの紅いパーツが割れ、顕となる収束重核子ビーム砲ディスラプター。ストライクフリーダムに未来に備わる、戦略兵器クラスのビーム砲。

 

『貴女の全てを終わらせる────!!!』

 

ヤマトはそれを、この悪意と憎しみの根源に撃ち放つ──!!

 

 

ゲマトリア本拠地。

 

【…今、確かに誰かに見られた感覚がありました。一体、何が──】

 

ゲマトリアにて事の顛末を見下ろしていた『淑女』と呼ばれる存在が謎の感覚を訝しんだ…

 

次の瞬間。

 

【な───】

 

──ゲマトリアの本拠地は、シャーレにいたマエストロ、ゴルゴンダ、黒服の不在に座していた『淑女』もろとも…

 

飛来したビーム砲により、次元ごと照射両断されたのだった。

 

 

『これで自らの愚かさの報いの幾ばくかを受け取ったでしょう。さぁ、ヤマトさん?この機体の習熟を三人で行いますわよ』

『は、はい……!』

『お疲れ様。普段は承認が無いと撃てないから安心してね』

 

ラクスのアシスト、キラの照準補正を受けながらも、淑女の悪意そのものを感知したのはヤマトの空間把握能力である。

 

『これが…未来のストライクフリーダム……』

 

そのあまりに隔絶した傲慢なまでの性能に…高揚と恐怖の相反した感情を懐くヤマトであった。

 

【オ、オオ………オオ……】

 

『!アダム先生!リッカ!今です、トドメを!!』

 

素早く気を取り直し、聖杯を回収したヤマトが決着を促す。

 

『リッカ!カルデアの彼からクラスカードを受け取っているわ!』

 

『クラスカード…!?』

 

『相手は『日本武尊』。伝言は『自然諸力にて穢を祓え』だそうよ!』

 

『タケちゃん…!はいっ!!』

 

「アロナ、決着を付ける。オメガ・オーバード・レールキャノン──『A.R.O.N.A』、展開!」

 

『了解です!青輝石12000投入!オメガ・オーバード・レールキャノン、展開!』

 

リッカとアダムが頷き、同時に決着の必殺武器を展開する。

 

「インストール!『日本武尊』!!」

 

クラスカードにて、古代日本衣装に身を包んだリッカの手に握られる界剣、『天叢雲剣』。カルデアにおける荒御魂、日本武尊の赦しを得て放つ禊の一太刀。

 

『シッテム変形!ハンドガンモジュールモード!シャーレ内部のクラフトチェンバーにリソース投入、Ωレールキャノン生成!』

 

シッテムの箱と、アダムが有する資源を全投入する、五体を武器とするアダム・カドモン唯一の『武器』。全長十メートルにも及ぶ空色と白色のレールキャノンを生成、シッテムの箱を神のカードにより変形させ、発射体勢に移らせる戦略決戦武装。

 

『行くよ───父さん!』

『あぁ。───青輝石12000、追加投入!エネルギー、弾頭生成!』

 

右手に持つハンドガンモードとなったシッテムの箱を接続。全ての統制をアロナが制御。アダム・カドモンの五体を制御導体として撃ち放つ、対神超絶射撃。

 

『天叢雲剣完全開放──!!』

『『A.R.O.N.A』、エネルギー臨界!いっけー!アダムせんせーっ!!』

 

娘が父と肩を並べて放つ、日本最強の剣の一閃。

父が娘と肩を並べて放つ、キヴォトス崇高の一撃。

 

『御祓!!大波涛ォオーーーーーッッッッ!!!!!』

「生徒の青春は──私が護る──!!」

 

【ォオ、ォオ、ォオォオォオォオォオォオォオ────!!!】

 

対界宝具たる界剣の一撃と、最大出力にて星の内核すら撃ち抜く威力の銃撃の合わせ技。二者の、人理を守護する一閃。青春を守護する一射。

 

それらは100メートルのアポリオンの抜け殻を数十倍の大きさを以て呑み込み──塵も残さず完全に御祓される。

 

 

『敵対反応無し!先生…皆様!お疲れ様でした!』

 

そしてアロナの宣言と共に──地平線より、朝日が登り朝焼けが、生徒達の歓喜と共にキヴォトスを照らすのであった──。




黒服【まさか……まさかアダム先生の切り札をこうまで拝見できるとは……!】

アダム「────」

【間違いない…胸を張って伝えましょう…!アダム先生…!あなたこそが、私の崇高だと──!!】

トリニティ総合学園


ミカ「………わーお…………」

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。