人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ブラックマーケット 上空

アスカ『なんだよ、アレ…!?ビルの地下に、あんなものがあっただなんて!?』

ヤマト『アレは…恐らく、この世界にあるものだけじゃない』

アスカ『えっ!?』

ヤマト『感じるんだ。アレを止めないと…このキヴォトスが大変な事になる!』

アスカ『ヤマトさん…!』

ヤマト『アスカ、行こう!私達がやるんだ!』

アスカ『は、はい!やります!!』


アダム「聖杯…願望機を使った成れの果てだというのか…」

サラ『アダム先生!リッカ!』

リッカ「サラ!ヒフミちゃん!」

サラ『あの巨人のデータを解析しました!アレはオーパーツ…聖杯を使い、アリウス生徒を中核とした魔術生命体…!』

リッカ「聖杯を使って…!もしかして、生徒さん達の願いを…!?」

サラ『恐らくそうだ。対象は、アリウス分校で退学処分を受けた者達…密かに回収し聖杯の炉心とさせたんだ。或いは、初めからそのつもりで放逐者達をあのノウハウが詰まったビルに…』

アダム「──止めねば…!」

黒服【良いのですか?】

アダム「!」

黒服【アレらは暴走していますが…紛れもなく、生徒のものです。アリウス分校の生徒たちの意志なのです。即ち、あなたが愛する生徒達だ】

アダム「…!」

【あなたに彼女達を…傷つける事が出来ますか?】

「……………!!」




二者両得

【アアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーッ!!!】

 

ビルより這い出したおぞましき黒き汚泥の巨人、名称を【アポリオン】。100メートルの威容が顕現したその姿は、トリニティ総合学園へ女性の金切り声や慟哭と思わしき声を上げ進軍を開始する。

 

『くそっ!こんなものをトリニティに近付けさせちゃいけない!』

 

素早くヤマトが武装を展開し、ハイマット・フルバーストを叩き込む。輝く光線がアポリオンへと叩き込まれたが、たじろぐことすらせず進軍を続ける。

 

『効いていない…、…!』

 

瞬間、アポリオンの内部から無数の飛沫…子機と思わしき存在が展開される。それらは鋭利な刃と銃口を持った、対人殺戮兵器。汚染を齎す死の刃。

 

『あんなものをキヴォトス中にばら撒くつもりか!!』

 

『アスカ!』

 

『ふざけるなあああぁっ!!!』

 

理不尽な殺戮への怒りにより、アスカのSEEDが発現。ヘイローが真紅に輝き、無数の分身が生成され、子機と同じだけの数が静止にかかる。

 

『『『『『『やめろおぉおおぉおおぉおおぉおおぉお!!!』』』』』』

 

『アスカ!無茶だ、エネルギーが!』

 

ストライクフリーダム、デスティニー共にエネルギーが半分を切っている。チャージせねば物理攻撃を弾くことの出来る装甲も、動力も落ちてしまう。そうなれば…

 

『ヤマト!アスカを援護するぞ!』

 

『サラ!』

 

『こんなものを、トリニティに近づけさせてはならない!』

 

『…うん!』

 

分の悪い戦いであった。ヤマトとアスカは消耗しており、サラは対人に特化した武装。リフターはアダムとヒフミに託してある。

 

それでも、地上にいる生徒達も諦めていない今。彼女達も懸命に抗うのだ。トリニティを…

 

否。キヴォトス全てを護る為にと。

 

 

「……アダム先生。アリウスの学訓って知ってる?」

 

ティーパーティーの席にて、聖園ミカが一人破滅の巨人を見やる。

 

「全ては虚しい。どこまで行っても、全ては虚しい…なんだって。そうなのかな?全部、無意味なのかな?」

 

ミカは…誰にも告げず一人空を見上げる。

 

「アダム先生は…そんな結末を、どうするのかな。ゴミ掃除なんて、ただの建前。見せてよ、アダム先生。あなたが──」

 

(…立派な先生で、素敵な大人で、あるのなら──)

 

 

「私は行く…。行かねばならない」

 

それでも尚、アダムは迷いを振り切った。アレを止めねば、更に無数の被害が出る。

 

【行ってどうします?アレらはアリウスの生徒達の憎しみ、その総意。トリニティへの憎しみを形として生まれた、アリウスの生徒なのですよ】

 

黒服の言葉がシッテムから響く。ヤマト達が、サラが、アスカが、生徒達が戦っている。

 

【生徒達の力を借りてどうします?倒すのですか?それでは、彼女達の心は癒えないでしょう】

『な、何を…!』

 

【ただ倒すだけでは、それは生徒を排斥しただけです。かつてトリニティが、アリウスにしたように。御覧ください】

 

黒服はアポリオンを指差す。圧倒的な暴威を振るいながら、時折胸や頭を掻きむしるような動作が見られる。

 

【苦しんでいるのです。憎しみを注がれ、それのみを教えられた生徒達が、自らの憎しみに身体を焼かれている。彼女らもまた、被害者である者達なのですよ、アダム先生】

 

「…………」

 

【ですが、アレを止めねばキヴォトスの全てが虚しさに呑み込まれるでしょう。アレの原動力は世界への虚無感、トリニティへの憎しみ。最後まで果たされなかった、学園生活への憧憬と嫉妬…そのようなものなのですから】

 

どちらを助け、どちらを救うか。どちらかを助けるために、どちらかを切り捨てるか。

 

【あなたの拳はどちらに握られ、どちらに差し向けられるのですか?輝ける光の世界ですか?それとも救われぬ闇にですか?】

 

アダムに黒服は問いかける。大人として、どのような判断を下すのか、と。

 

【エデンの王として──あなたは、どちらを楽園から排斥するのですか?】

 

「────」

 

リッカは、何も言わなかった。

 

『せ、先生…!』

 

アロナは不安げに、アダムの言葉を持った。

 

「決まっている」

 

シャーレの先生、アダム・カドモンは──

 

「────どちらも救い上げるのだ」

 

懐より、光り輝く『神のカード』を取り出した。

 

【おお……!アダム先生………!!】

 

「アロナ!戦闘教導モード展開、連邦生徒会に通達!ビースト級、或いはそれに準ずる学園外の脅威感知を通達!」

 

そして、彼は切り札の一つを切る。自身が『個人』としての極地であるならば──

 

『はい、先生!』

 

「───『ビースト対策課』、並びに委員会の実力行使を要請する!シッテムの箱、その制御人格アロナに同時に承諾要請!」

 

『シッテムの箱、アロナ承認!先生、パスワードを!』

 

「───我々は望む、七つの嘆きを。

───我々は覚えている、ジェリコの古則を」

 

これから成し遂げる事は、アダムの『先生』としての切り札である。

 

『所有者、アダム・カドモンの認証確認!神のカードをシッテムに!』

 

そして、闇を切り裂くように掲げる神のカードを──シッテムの箱へと読み込ませる。

 

『オーパーツ、『神のカード』承認!生徒教導領域極限拡張───』

 

「リッカ。私達の…楽園の戦いはどのようなものだ?」

 

アダムが立ち上がり、リッカに力強く問う。

 

「!……憎み、滅ぼすんじゃなく。尊び、重んじる戦い!」

 

「その楽園が、示すものは?」

 

「────完全無欠の!はっぴぃえんど!!」

 

その答えに、彼は力強く頷き。

 

「それこそが…、楽園に至る為の全てだ」

 

『──指揮領域!キヴォトス全域に完全拡張──!!!!』

 

──その戦いを完成させるための力を揮う!

 

 

「連邦生徒会、生徒会長代行七神リン、アダム先生の要請を受諾。オーパーツ『聖杯』の励起を確認。ビースト対策課、人理保障機関介入の必要性有りと判断。教育実習生──『シャングリラ・カルデア』所長、オルガマリー・アニムスフィアに承諾要請」

 

「教育実習生、カルデア所長オルガマリー・アニムスフィア、要請を承諾。これより私達は、聖杯を有した人理の脅威に、シャーレと共に立ち向かう!」

 

「承諾確認。シャーレ顧問、アダム・カドモンの要請、全承認。──特例措置としてキヴォトス全域へと放送開始。『現時刻より、シャーレの当番の資格を有する生徒は自由意志を以てアダム先生を支援せよ』!繰り返す!現時刻より、シャーレの当番の資格を有する生徒は自由意志を以てアダム先生を支援せよ──!」

 

 

キヴォトス中に響き渡る、連邦生徒会…否、カルデアの施設を使用した魔術的念話放送。それらは、オルガマリーと連邦生徒会会長代理、七神リンの共同声明。

 

先のビースト・ゲマトリア討伐のおり、連邦生徒会はシャーレの同列組織としてカルデアが所属する『ビースト対策課』の設置を容認。聖杯、或いは人類悪に類じた脅威を見越した対策戦力を用意していたのだ。当然、連邦生徒会内部では想定される危機の不明瞭さに設置に対する疑問の声が上がったが、アダムのビーストに対する戦闘記録とその脅威に設置を決断。

 

リンとオルガマリーが出した共同声明は、キヴォトスに『人類の危機が現れた』という意味の非常事態宣言であり、シャーレの当番に当たる生徒のみがこれの対処を許される。普段のキヴォトスの脅威とは比べ物にならぬため、参加は自由意志であるが──。

 

アダムの地道な生徒との交流は、それらの戦力を盤石とした。

 

 

『うへ~。早朝5時起きは辛いよ〜。アダム先生、おはよ〜』

 

「ホシノか。おはよう。よく起きた、偉いぞ」

 

『うへへ、だってここは起きなきゃダメだもんね〜。アビドス対策委員会一同、戦列に参加するよ〜』

 

『こちらゲヘナ風紀委員会、空崎ヒナ。先生、おはよう』

 

「おはよう。すまないなヒナ、傍にいてあげられなくて…」

 

『ううん。いいわ、私が傍に行く。風紀委員会一同、戦列に参加するわ』

 

続々と立候補されていく戦力。それらは、加速度的に増えていく。

 

『アダム先生!早瀬ユウカ、生塩ノア両名、セミナーとして作戦に参加します!』

『生徒の皆さんの支援はお任せくださいね、先生♪』

 

「ありがとう。君達は来てくれると信じていた」

 

『もう、やっぱり先生には私達が必要ね!行くわよ、ノア!』

『ふふ、はい♪私達でね、ユウカちゃん♪』

 

『アダム先生!スーパー便利屋一同、あなたを助けに来たわよ!オルガマリーのお願いだもの、聞かないわけないわよね!』

 

「ありがとう。流石は大企業の社長だな、アル」

 

『ふふん、見返りを求めず繋がりを重んじるのが社長の魅力よ!行くわよ皆!』

 

『アダム先生!勇者一行ゲーム開発部、並びにエンジニア部!アダム先生をお助けします!』

 

「助かる。勇者の力を私に貸してくれ」

 

『お任せください!勇者は困った人を見捨てません!』

 

『よぉ、先生。C&Cの力は必要か?』

 

「勿論だ。君達程心強い応援はそういない」

 

『へへ、そうかよ。なら任せとけ!ミレニアムエージェントC&C!出撃だ!!』

 

学園の垣根を越え、アダム個人に力を貸すシャーレの当直の資格を持つ生徒達。シャーレの当番の倍率が100倍に跳ね上がった理由の一端がこれだ。

 

アダムでは破壊することしか出来ないものを、そうでないようにするために。自らには行えない事を、皆で成し遂げるために。

 

『シャーレ当直生徒に通達!相手は肉体部分に大量の生徒を閉じ込めているわ!』

『足止め、或いは部位欠損に攻撃を留めてください!作戦の要はトリニティをメインとした中核摘出です!』

 

神のカードにより、続々と生徒が現着。神のカードにより極限まで広げられた指揮範囲が、全ての生徒の力を最大限まで引き出され一丸となる。

 

「アダム先生!クアンタムバーストを使えば、聖杯に注がれ続けるアリウス生徒の憎しみを私達が引き受けられる!」

 

「リッカ…!」

 

「その隙をついて、聖杯の回収と生徒の救出を!滅ぼすんじゃなく、救うための戦いの仕上げをしよう!」

 

リッカは全てを確信し、アダムに伝えた。榊原の願いは、この状況を見据えたものだったのだ。

 

「あぁ、頼む!」

 

最後に、異世界にて出逢った自らの義娘に力強く肯定を返し…

 

「行くぞ皆──。我等の青春を護り抜く!」

 

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

完全無欠の物語への快進撃が、クライマックスへ向けて始まった──!




アダム「リッカ、これをヤマトたちに!」

リッカ「!」

『神のカード』

リッカ「これ…!」

アダム「君にも使える」

リッカ「!」

アダム「私達は親子なのだから」

リッカ「────うんっ!!」

上空

『ENERGY EMERGENCY』

アスカ『くそぉ…!皆が来てくれたこんな時に…!』

ヤマト『まだ、何も護れていない…!』

サラ『ヤマト!アスカ!』

【【【【【【アアアアアアアアアアアアアアア!!!】】】】】】

リッカ『三人共ーーーーッ!!』

素早く三人に飛来したリッカが、両手にライフルを持ち乱回転するローリング・バスターライフルにて敵を一掃。

リッカ『受け取って!アダム先生の…父さんの奇跡を!!』

三人に向け、高々と神のカードを掲げる。すると、道理を越えた不条理に等しい奇跡が起こされる。

サラ『これは…!ミーティアか!?』

サラのインフィニットジャスティスガンダムには、ジャスティス専用のアームドモジュール『ミーティア』が召喚され。

アスカ『うわぁっ!?な、なんだこれ!?また榊原先生の新作か!?』

アスカのデスティニーには、巨大レールガンに推進武装が備わった『ゼウスシルエット』が搭載され。

ハロ『あなたが、保志ヤマトさんなのですね?』

ヤマト『え…誰?』

ラクス『ピンク色のハロのわたくしはラクスですわ。そしてこちらの青白のハロはキラといいます』
キラ『よろしくね、ヤマトちゃん。──君に、僕達の想いと力を!』

ヤマト『えっ…、あ、ドラグーンユニット…!』

ラクス『プラウドディフェンダー、保志ヤマトへドッキング!キラ、ドッキング補助を!』
キラ『うん、ラクス。ヤマトちゃん、動かないでね』

ヤマト『えっ?外れたのこれ?プラウドディフェンダー?なに?なに?えっ、ええっ!?』

蒼き翼が外され、金と銀の厳かな翼が装着。ストライクフリーダムは、未知の進化を遂げる。

ラクス『ドッキング完了!マイティストライクフリーダム、ロールアウト!』
ヤマト『ど、どういう事…!?どうなってるの…!?』
キラ『大丈夫だよ。僕達が君を支えるからね』

ヤマト『誰なんです…!?二人は誰なんです…!?』


?『いっしょ!』
アスカ『!』
?『違っても、□□□、ずっといっしょ!□□□、まもる!』

アスカ『──よぉおし!!良くわかんないけどやる気出てきたぁあぁ!!』

ヒフミ「サラさん!!」
サラ『ヒフミ!』

ヒフミ「わかりました!サラさんはアカペロロ様の使者だったんですね!!」
サラ『いや、違うが…』

ヒフミ「とことんお支えします!!さぁ、行きますよ!!」
サラ『錯乱したのか!?』

オルガマリー『リッカ!クアンタムバーストは近付いて行いなさい!私の聖杯とカルデアスがサポートするわ!』
リッカ『わかった!行くよ皆!!』

ラクス『うふふ…キラに似て、愛らしいですわね♪』
キラ『僕達の方にも遊びに来てね、ヤマトちゃん』
ヤマト『怖いよぉ〜〜〜っ……!』

四人が今、憎しみに向け飛翔する──!


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