人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

2459 / 2547
その日、トリニティ総合学園に激震が走った───。


ヤマト『こちらは、『正義実現委員会』所属、保志ヤマトです。トリニティ総合学園に在籍する、全てのイジメ加害生徒に伝えます』

トリニティ総合学園に蔓延るイジメ一斉摘発作戦。その始まりを、証拠を元手に正義実現委員会に入部したヤマトが宣言する。同時に、学園内に正義実現委員会、救護騎士団の両者が加害者達の身柄を確保。

ヤマト『トリニティ総合学園の品位、共に学ぶべき学友を貶める邪悪な行為を行う生徒を正義実現委員会の名の下に断罪し、同時に脅迫や恫喝によりやむを得ず加担した生徒を心身傷害者としてそれぞれ身柄を拘束、同時に救護対象と認定します。抵抗は無意味です。速やかに指示に従い、指導と誘導に従ってください』

剣先ツルギ「人の目を盗んで好き勝手やってくれたなあぁああぁぁあ!!アダム先生に恥をかかせた奴等は死ねェエェエェエェエェエ!!くきぃいぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」

「「「「「「ひぃいぃいぃいぃいぃいぃい!!」」」」」」

蒼森ミネ「心身に不安を抱き悪辣に走った方を救護します!えぇ!迅速な救護を!」

「「「「きゃあぁあぁあぁあぁあ!!」」」」

正義実現委員会のエース、ツルギ。並びに救護騎士団の象徴ミネの殲滅とぼくさ…救護により、一斉に摘発と確保が果たされる。

ヤマト『誰にも気づかれず、恐怖政治と独裁を以て支配者気取りだったんだろうけど…残念だったね。私は全てみていたよ』

イジメ加害者「さ、最初から…このつもりで…!」

イジメ加害者「転校生…!聖園ミカの差し金…!」

ヤマト『止めてよね。本気で調査したら、そんな幼稚なイジメ見過ごす筈ないでしょ』

「「「「「…………!!!」」」」」

『イジメ加害者には賠償金のカタによる家財と備品の差し押さえ、並びに三年間の更生局の収監が課される事になった。当然、進路内定も単位も取り消しだ。何もかも失って、どれだけ自身らが重い罪を犯したか反省してくると良い』

「「「「「〜〜〜〜〜〜!!」」」」」

『残念だったね。そんな目に遭うのは、皆私より馬鹿だったからだよ』

一人も逃さぬ徹底ぶりにより、大粛清は完遂されようとしていた──。

〜屋上

アスカ(ヤマトさん、滅茶苦茶怒ってるな…。でも、それは私だって同じだ!)

「さぁ観念しろ!首謀者グループがお前らだってのは解ってるんだ!!」

加害者「私達が、何故こんな…!こんな、山猿如きに…!!」

アスカ「最初からお前らを炙り出すための計画だったんだよ!そんな事も解らないなんて、そんなバカだからイジメなんてくだらない真似をするんだ!」

加害者「黙りなさいよ!私は…私達は選ばれた存在!アンタらみたいなクズを搾取する側なのよ!」

アスカ「なんだと…!?」

「私達はアンタたちバカなトリニティ生徒を差し出せば将来を約束してもらえるよう契約したの!脳天気なクズを差し出すだけで、安定した未来が約束されるの!」

「勉強も品格も持たないのうのうとしたクズの一人や二人、死んだくらいなんだっていうの!?」

「私達は私達が幸せになるためなら、喜んで他人を地獄に蹴落とすわ!それが人間!それが社会の縮図!私達は何も悪い事していないのよ!」

「私達こそ選ばれた者達!社会に貢献できるエリートなのよ!クズはクズらしく私達に搾取されていなさいよ!」


アスカ「お前らぁあ………!!」



何をすれば。

私を、愛してくれますか──?



アスカ『ふざけるなァァァァァァァァァッ!!!!!』

アスカの怒りが頂点に達し、その身体に怒りの化身を纏う。

虐められた全ての者達の為に血涙を流す、紅き翼のガンダム──。

『イジメが赦される理由なんて、有るはずが無いッ!!』

デスティニーガンダム。…リッカから友好の証にと初めて教えてもらったガンダムを、その身に纏う。

『お前らが正しいって言うなら!私に勝ってみせろッ!!』

性根の腐った悪魔を倒し、生徒達の運命を切り拓く為に…!




運命を切り拓く戦士

「撃て!撃ち殺せ!もうすぐ助けが来る、コイツは私達をコケにした!」

「手土産として死体を持ち帰ってやる…!材料として使えるはずだ!」

 

もはや人面獣心を隠そうともしないイジメ加害者の中核グループは、屋上にて隠し持っていた殺傷力を持つ銃弾を装填可能な黒い銃に持ちかえ一斉掃射を行った。トリニティの銃を投げ捨てたことは、在学生の誇りすら捨てたことの暗喩だろう。一撃当たれば致命傷になる、ブラックマーケットにて流通する違法装備だ。

 

『舐めるなァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

だが、アスカの怒りは悪意、エゴ、独善、その全てを焼き尽くし凌駕した。榊原の制作した執念の傑作、デスティニーガンダムのプラモデルを夏草の技術と開発部の共同で礼装化したその姿は、人間の想定される力を遥かに凌駕していたのだ。

 

銃が当たらない、という話ですらなく、射線すら合わせられない。翼を広げて残像を纏いながら自在に飛び回るデスティニーに、生半可な攻撃などはかするどころか撃てもしないのだ。

 

『今までは証拠集めだったからやられっぱなしだったんだ!!』

 

「ぎゃあぁあぁあぁあ!!」

 

『倒していいなら!お前らなんかにぃいぃいぃいぃいッ!!!』

 

「ぎぃいぃいぃいぃいぃい!?」

 

瞬間に近付きながら、ビームブーメランを抜刀し銃ごと加害者を切り刻み、ビームライフルで膝や肩を一方的に撃ち貫く。それらは理不尽に憤る声なき声。イジメを受けてきた者達の怒りを乗せた必殺であった。

 

「ひいっ!?ば、化け物!?」

 

「く、来るなぁあっ!!」

 

半狂乱になった者達が破れかぶれで撃ちまくるが、そんな自棄になった弾などに当たるような手抜かりを今のアスカが犯すはずもなく。

 

『これが!!イジメられた皆の怒りの力だぁぁぁぁぁっ!!!!』

 

彼女は自身ではなく、イジメられた皆の為にのみ怒っていた。踏み躙られた青春。傷つけられた心。それら全てをクズと断じた邪悪な者達。

 

全方位に囲まれながらも、ただの一度も被弾することの無いアスカは両掌のビーム砲、パルマフィオキーナを展開し猛進を果たす。苦戦どころか戦いにすらならないその蹂躙──。

 

「ぎゃあぁぁあぁあぁあぁあ!!」

「ぎぇえぇえぇえぇえぇえ!!」

 

醜い悲鳴を上げ、頭部を掴まれ爆散する首謀格。憤怒と決心に満ちたアスカにより、高学年で構成された首謀格は瞬く間に鎮圧される。

 

『こんな程度で終わると思うなよ!お前らには一生かけて罪を償ってもらうんだからな!』

 

息の一つも乱さずに、叩きのめされた加害者達に歩み寄るアスカ。各地の摘発と確保は完了している。これで万事解決。イジメの悪の芽は確かに摘み取った──

 

かに、思われた。

 

『わっ!?なんだ!?』

 

瞬間屋上にて巻き起こる暴風。そして浮かび上がる、黒きフィルムとシルエットの巨大飛行物体。それはステルスにより接近していた存在。

 

『ステルス戦闘機!?なんだってそんな!?』

 

そう、軍用ステルス戦闘機。隠匿を施されたそれは、ブラックマーケット方面から飛来していたのだ。

 

『あっ!お前ら!?なんのつもりだ!!』

 

そして戦闘武装に身を包んだ謎の兵士達がステルス戦闘機から降り立ち即座に加害者グループを回収していく。身柄を回収しに来たことは容易に見て取れた。

 

『待てよお前ら!そいつらは今から償いを…!!』

 

言葉はかわされることなく、回収を終えた謎のステルス戦闘機は、即座に屋上より離れ飛び去ってしまう。事実上の学園追放だが──。

 

『逃がすもんか!そいつらに、罪と向き合わせて償ってもらうんだ!』

 

自業自得と地獄に送るつもりもないアスカは即座に背部の推進システム『ヴォワチュール・リュミエール』を展開。無限推進剤にて、ジェット機を追いかけんとする。

 

「アスカちゃん!」

 

その時だった。彼女に声をかけしは尾張メイ。アスカのそばに、息を切らして走ってきたのである。

 

『メイ!?どうして…!』

 

「はぁ、はぁ…私達も、更生局に行くから…暫く、会えないから…」

 

『なんで!?イジメなんてしてないじゃないか!?』

 

「ううん…私達は、見殺しにしたから。見捨ててしまった、同罪だから。…だから、最後に…」

 

メイは、そっとアスカの手を握る。そこには、メイの端末。『アスカちゃんを応援する会』のモモトーク画面。

 

「皆、あなたを応援してる。…そしてどうか、攫われてしまった皆も、助けてほしい…!」

 

『メイ…』

 

「償われることのない罪があってはならないように…赦される事のない罰も、あってはならないから…!」

 

メイはアスカを抱きしめ、自らの願いを託すように身体を強く重ねる。

 

「どうか──運命を切り拓いて!鈴村アスカ…トリニティの運命を貴女に…!」

 

『───うん!その願い…!確かに受け取ったから!!』

 

アスカはそっとメイを離し、笑顔とピースサインを彼女に託し。

 

『逃さないと言ったろ!!させるもんかァァァァァァッ!!!』

 

桃色の粒子を輝かせながら、ジェット機に向かって飛び立っていった。その輝きを、メイは祈りと共に見やり。

 

「──あなたの道行きに…光あれ…!」

 

遠い未来の光を掴む希望に、全てを託すのであった──。

 

 

 

『うぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお!!!!』

 

トリニティから離れ、ブラックマーケット領空に到達する位置に差し掛かる頃、アスカとデスティニーは最早人知を超越する領域にあった。生身で、マッハを誇るジェット戦闘機に肉薄しまさに攻撃範囲に捉える程の超高速にて追従していたからだ。それはまさに奇跡とも言うべき現象、デスティニーガンダムの真価そのもの。

 

『!?』

 

対地より対空に無数の砲撃が撃ち込まれる。ブラックマーケットの違法武装、無数の対空ミサイルに戦車の一斉掃射がアスカに降り注いだのだ。更に立て続けに、アスカのレーダーが機影をとらえる。

 

『戦闘機の同型…!直衛か!』

 

小型ではあるが、同速の機体が約4機。狙いの一機を合わせ空中に5機、地上に無数の対空戦力。アスカは完全に誘い込まれた形となった。本来ならば多勢に無勢の窮地そのものだ。

 

だが───。

 

『こんな程度で、私を包囲して殲滅するつもりなのかよ!!』

 

今の鈴村アスカ、デスティニーガンダムは比類無き超人と化しているが故にそんな道理や戦略の不利すらも押し返す奇跡を見せる。

 

『包囲殲滅は!!こうやるんだぁあぁあぁあぁあッ!!!!!!』

 

デスティニーが──分身を果たす。一つ、二つ、四つ、八つ。倍々に、自身と同じシルエットを生成し、加速度的に増殖していく。

 

瞬く間に、キヴォトスの戦闘領空を満たし尽くしたデスティニーの分身。本来ならばそれらは残像、幻影の類でしか無い。しかし今のアスカは全ての雑念が消え、世界の全てをクリアに見据えている。

 

更に、ヘイローが光り輝き神秘を励起させた事により、奇跡と物理現象を超克した超常現象を巻き起こしている。それがアスカの持つ秘められし次世代へと蒔かれし種子『SEED』を発現。SEEDとヘイローの相乗効果により、敵にとってはおぞましい事実を作り出す。

 

『『『『『『『うぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお!!!』』』』』』』

 

数多のデスティニーガンダムの長距離射程ビーム砲の一斉掃射が、対地戦車と対空ミサイルの地上戦力を薙ぎ払い。

 

数多のデスティニーガンダムの投擲した無数のフラッシュエッジビームブーメランが戦闘機の一体を切り刻み破壊する。

 

数多のデスティニーガンダムのビームライフルが戦闘機の一体を滅多撃ちにし爆散させ。

 

数多のデスティニーガンダムの対艦刀アロンダイトが、戦闘機二体を八つ裂きにし木端微塵へと破壊する。

 

それらが成されたのは全くの同時。決して有り得ない筈の単独波状撃破。

 

【な、なんだあの化け物は!?普通、分身は『どれかが本物』な筈だ!な、何故…!】

 

狼狽もあらわに戦闘機搭乗員が叫ぶ。それは、レーダーが示す【無数のデスティニーガンダム】の証明。

 

【どうして…!どうして【どれもが本物】なんだあっ!!!??】

 

『てぇえぇえやぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!』

 

掌を輝かせたデスティニーが眼前に迫り、自身の運命を完全に悟ったパイロット。

 

【う、うわぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!】

 

その次の瞬間、コクピットを叩き潰され、そして即座に加害者グループを回収された瞬間に大爆発を起こす。

 

『お前達に、どんな理由があろうと関係無い…!』

 

爆散し豪炎の戦場の天空で、アスカは一人へと戻る。

 

『イジメなんて、学園生活に必要ない!イジメの無い学園生活以上に素晴らしい学園生活なんてあるはずがないんだ!』

 

「う、ううっ…」

「う…」

 

『…でも、アンタたちだって生徒なんだ。償ったなら、その先の人生はあって然るべきなんだ』

 

アスカは静かに──独りごちる。

 

『無くなるべきはイジメだけだ。一度間違えたら死ねだなんて…そんな極論も、正しいはずが無いんだから…』

 

アスカはそう告げ、攫われた生徒達を抱えトリニティへと帰還する。

 

──そしてその日により、イジメの加担グループは完全壊滅。イジメを知りながら見過ごした者は休学、脅され加担した者は停学、主犯格などの悪質な生徒は更生局送りの処分の処置を受ける事となった。

 

トリニティ総合学園は、在籍数を大幅に削減。待ち受けるエデン条約の際の戦力低下が懸念されたが…

 

たった一人でイジメと戦い、弾劾した鈴村アスカの名はキヴォトス中へ轟き、トリニティの権威失墜を防いだと言う。

 

トリニティの生徒達は彼女をこう呼んだとされる。

 

──『不義を赦さぬ怒れる瞳』…と。




ホテル貸し切りレストラン

リッカ「というわけで!!トリニティの悪質なイジメ駆逐をお祝いしてー!かんぱーい!!」

一同「「「「「かんぱーい!!」」」」」

アダム「よくぞ、よくぞやってくれた。皆…心より感謝する…!アスカ君、本当にありがとう!」

アスカ「いやぁ、へへ…!私は出来ることをしただけです!皆が支えてくれたから、私は頑張れました!」

ヤマト「映像見たけど…凄かったよ、アスカ。デスティニーがあんな動きできるなんて知らなかった。本当に凄いね」

アスカ「へへ…!きっと榊原先生のお陰ですよ!」

リッカ「そんな事無い。アスカが本当に頑張ってくれたから、正しい裁きを与えられたんだよ」

アスカ「リッカ…」

リッカ「ありがとう。皆の心を動かしてくれて。アスカや皆にお願いして本当に良かった!」

アスカ「〜〜〜!うん!役に立てて嬉しいよ!頼ってくれて、ありがとう!ヤマトさんも褒めてくれて嬉しいです!」

サラ「そう喜んでばかりもいられないぞ、アスカ。気を引き締めるんだ」

アスカ「む…。アンタは褒めてくれないんすか?私、頑張りましたけど」

サラ「…………」

アスカ「…………」

サラ「…あぁ。お前は凄いよ。本当に…よく頑張った。友人として誇りに思う」

アスカ「〜〜〜〜〜〜〜!!!」

サラ「辛いイジメによく耐えた。お手柄だな、アスカ」

アスカ「…私だけじゃないっすよ。皆が支えてくれたんです。…勿論」

サラ「?」

アスカ「────アンタもね。サラ」

サラ「……そうか。なら野暮は言いっこなしだ。私がレビューするために食べ尽くした店、存分に食え!」

アスカ「言われなくても!!」

ヤマト「ふふ…良かったね、アスカ」
リッカ「ヤマトもキレキレだったね!演説!」

ヤマト「私も怒ってたから。…リッカの気持ち、無下にしたくないって」
リッカ「!」

ヤマト「いつでも頼って。君より皆弱いかもだけど…それでも、私達はあなたの友達だから」

リッカ「───うん!」

サラ「ちゃんと野菜も食え!栄養を偏らせるな!調子に乗ると足元を救われるぞ!」
アスカ「うるさいなぁ!やっぱアンタめんどくさい!」
サラ「アスカ!!」
アスカ「なんだよ!!」

リッカ「あーもー!まーまーまー!」
ヤマト「二人共、喧嘩はやめてよね…リッカに勝てるわけないでしょ?」

リッカ「そこで私!?」

アダム「………夏草の学生…素晴らしき者達だ…」

ミカ『先生!』

アダム「ミカ…?」

『まだ終わってないから、気を引き締めてね♪』

「…無論だ」

そう、まだ行方不明の生徒探索に復学手続きが残っている。

アスカが拭き晴らした闇の向こうには──

深き憎しみと、空虚が聳えているのだから。


どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。